5 冬
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連絡先を聞かれて少しだけ迷った。
でも、このテンションで来られると断りづらい。
教えたところで、こんな感じの人だしすぐ飽きて連絡なんて来なくなるかもしれない。
……あと。
本当はどういう人なんだろうって、少し気になった。
怖いのに、不思議で。
なんだか面白そうだったから。
連絡先を教えたら、そのまま天童さんと牛島さんとは別れて、日向くんと二人で文化祭を回ると思っていた。
でも歩き出した途端、後ろから声が飛んでくる。
「ねぇねぇ、せっかくだしチビちゃんの校舎案内してよ~。教室どこ?」
「あっ俺、甘いの食べたい!チョコバナナとかクレープあったよね?」
止まらない質問攻め。
距離を取るのも変な空気になりそうで、結局四人で回ることになった。
知らない人達だしどうなるんだろうって思ってたけど、意外と楽しかった。
天童さんはずっと喋ってる。
話題もころころ変わるし、反応も大きい。
牛島さんは逆に口数少ないのに、たまにズレたことを真面目に言うから面白い。
2個上の先輩だし怖いと思ってたのに面白かった。
途中でさらに白鳥沢の人達と合流して、その流れで二人とは別れることになった。
「……。」
隣を歩く日向くんが少し静かで、なんとなく気になる。
「どうしたの?」
そう聞くと、少しだけむすっとした顔でこっちを見た。
「俺、苗字さんのメアド知らないのに、先に天童さんが知ってるの悔しい」
思わず笑ってしまった。
クラスが一緒だし、話したい時は学校で話せるからって思っていたけど、改めて連絡先を交換するのはなんだか新鮮だった。
そのあと日向くんに白鳥沢の話を聞いた。
凄く強かったこと。
また試合したいって思ってること。
でも三年生だから、もう高校では戦えないこと。
悔しそうなのに、話してる顔は楽しそうで。
本当にバレーが好きなんだなって思った。
文化祭が終わって家に帰ると、携帯が鳴った。
『○○ちゃん! 天童だよー。覚えてる?』
思わず吹き出す。
連絡先交換したばっかりなのに、覚えてる?って。
『覚えてます』
『よかった~。忘れられてたら泣いてた』
文面まで軽い。
文化祭では圧が強い人だと思ったのに、メールだとなんだか変だった。
『さとりんって呼んでね』
『先輩にあだ名はハードル高いです』
『えー距離感じる~』
そう返されると、逆に『天童さん』って呼びづらくなる。
本人がいいって言うならいいか、と少しずつ文面も砕けていった。
すぐ飽きる人かと思っていたのに、やり取りは一ヶ月経っても続いていた。
三年生って受験で忙しい時期じゃないのかなって心配になるくらい。
『受験大丈夫なんですか?』
『心配してくれるの嬉しい~』
……はぐらかされてる気もする。
でも、
『○○ちゃんとメールするの楽しい』
なんて返ってくると、つい笑ってしまった。
そんなある日。
『今度デートしない?』
その言葉に思わず携帯を落としそうになった。
けど、すぐ次のメッセージ。
『駅前のケーキ屋行きたいんだよね! 男一人だと浮くし、女の子一緒なら入りやすいじゃん?』
……断りづらい。
家でママに相談したら、何故かそのまま服を買いに行く流れになった。
「男の人と二人きりなんだから、ちゃんとしなさい」
「ケーキ食べるだけだよ?」
「好きな人じゃなくても、可愛い格好で行くのがベストなの!」
そういうものなのかな、と思いながら選んでくれたのは、自分じゃあまり着ない綺麗めの服。
でも新しい服は普通に嬉しかった。
日曜日。
待ち合わせ場所には、すぐ天童さんを見つけた。
背が高くて、赤い髪で。
立ってるだけで目立つ。
メールだとずっとふざけてるし、文化祭でも表情がころころ変わっていたから面白い人って印象だった。
でも。
待ち合わせ場所で静かに立ってる姿は、やっぱり少し怖い。
……本当にこの人と二人でケーキ屋行くんだ。
そう思った瞬間、
急に自分の服装とか、会話とか、不安になってきた。
待ち合わせの時は少し怖いって思ったのに、歩き始めたらその印象はすぐに変わった。
「その服、首元の形かわいいネ。髪下ろしてるのも新鮮」
さらっと言われてしまって思わず「ママが選んだ服なんです」って言い訳みたいに返してしまう。
「へぇ〜。でも○○ちゃんっぽい」
「……そうですか?」
「うん。なんか柔らかい感じ」
天童さんはそう言いながら、自分の服の袖を摘まむ。
「俺こういう派手なの好きだけど、○○ちゃんはシンプルなの似合いそう」
歩きながらそんな話をしていると、本当に会話が止まらない。
普段どんな服を着るのか。
休みの日は何してるのか。
好きなお菓子。
嫌いな食べ物。
家族の話。
質問ばっかりなのに不思議と一方的ではないし、天童さん自身もいっぱい喋るから、気づけば私も普通に返していた。
「ここ!」
そう言って立ち止まったケーキ屋は、ガラス張りの綺麗なお店だった。
店内に入ると甘い匂いが広がる。
「わぁ……」
ショーケースには色とりどりのケーキ。
苺のショートケーキ、艶のあるチョコレートケーキ、モンブランにフルーツタルト。
「○○ちゃんどれ好き?」
「えっ、急に聞かれると迷う……」
「いっぱい迷っていいヨ。ケーキ屋は迷う場所だからネ」
そう言いながら天童さんはショーケースの前でしゃがみこむみたいにして真剣に眺めている。
「これスポンジ柔らかそう〜」
「その栗絶対美味いやつ」
「わっ、この断面かわい〜」
反応がいちいち大きい。
「……覚さん甘いもの好きなんですね」
「超好き」
即答だった。
「疲れた時とか糖分最高だヨ」
楽しそうに話しながらも、「○○ちゃん生クリーム平気?」「チョコ濃すぎるの苦手?」ってちゃんと聞いてくれる。
結局、ショートケーキと季節限定のタルト、チョコレートケーキにモンブラン。
四つも頼んでいた。
「多くないですか?」
「食べれる食べれる」
そう言って、飲み物まで勝手に注文される。
「○○ちゃん紅茶の方が好きそうだけど、ここのココア美味しいらしいヨ」
「なんで知ってるんです?」
「調べた」
なんか、そういうところがマメ。
会計で財布を出そうとすると、「今日は俺が誘ったから」と軽く止められる。
「でも……」
「次また来た時、飲み物奢ってネ」
次って言葉に少しだけ胸がくすぐったくなる。
店内の席に座ると、天童さんは早速ケーキの写真を撮り始めた。
「映えってやつ?」
「記録用〜。あとあと見返して幸せになる」
「女子みたい」
「偏見だヨ」
笑いながらフォークを入れる。
ショートケーキはスポンジがふわふわで、生クリームは濃厚なのに軽い。
思わず「美味しい……」って声が漏れると、天童さんがすごく嬉しそうな顔をした。
「でしょ?ここ来たかったんだよネ〜」
自分が作ったわけでもないのに、褒められて嬉しそう。天童さんは甘いものを食べる時、本当に幸せそうだった。
大きな口で頬張って、「ん〜!」って目を細めたり。逆にチョコケーキは一口をじっくり味わったり。
「……なんか意外です」
「何が?」
「もっと、好き嫌い激しい人かと思ってました」
「ウヒャヒャ、失礼〜」
笑いながらも「でも偏食だヨ」とあっさり認める。
「野菜あんま好きじゃない」
「子供じゃないですか」
「ケーキ食べれるから実質優勝」
意味不明なことを言ってるのに、なんか面白い。 気づけば最初に感じていた緊張はほとんど消えていた。
「○○ちゃんが笑うと安心する。」
ぽつりと言われて、思わず瞬きをする。
「え?」
「最初ちょっと緊張してたでしょ」
……バレてた。
「だってさとりん、背高いし怖そうだし」
「傷ついた〜」
そう言いながら全然傷ついてなさそうに笑ってる。
「でも今は?」
「……今は、楽しいです」
そう答えると、天童さんは少しだけ目を丸くしてから、ふっと柔らかく笑った。
その顔が、文化祭で見た時よりずっと優しく見えて、何も言えずに微笑んだ。
冬の夕方。
外はもう真っ暗なのに、駅前は仕事帰りや買い物帰りの人で賑わっていた。
車のライト。
遠くで鳴る電車の音。
人の話し声。
夜みたいなのに、まだ一日が終わってない空気。
でもベンチに座っていると、その喧騒から少しだけ切り離されたみたいだった。
天童さんとの会話は楽しい。
話題は尽きないし、笑ってばかりいる。
なのに。
──このまま話してたら、時間過ぎるの早そうだな。
そんなことを思った瞬間だった。
さっきまで笑っていた天童さんが、ふと会話を止める。
そのまま、じっと私を見る。
「……?」
視線を向け返すと、目が合ったまま逸れない。
さっきまでずっと会話してたのに。
なんで急に黙るんだろう。
なんとなく落ち着かなくなって視線を揺らすと、天童さんが小さく笑った。
「怖かった?」
「え?」
「俺」
意外な言葉に目を瞬く。
少し考えてから、冗談っぽく返した。
「怖がらせたかったんですか?」
その瞬間、天童さんが声を上げて笑う。
「ウヒャヒャ!なにそれ!」
大きな笑い声。
周りの人が少し振り向くくらい。
でも笑い終わると、また少し静かになった。
今度は視線を落として、自分の手元を見ている。 何か言いたそうなのに、言葉を探してるみたいだった。
……言いづらい話なのかな。
変な沈黙が落ちるのが怖くて、私は今日のことをぽつぽつ喋る。
「ケーキ美味しかったです」
「モンブラン結構重かったですよね」
「あと、試着したあの服似合ってました」
独り言みたいに話していると、天童さんがふっと顔を上げた。
少しだけ気まずそうに笑って、それから真っ直ぐこっちを見る。
「文化祭の時さ」
低めの声。
「演じてる○○ちゃん見て、どんな子なんだろって気になったんだよネ」
静かな声だった。
「もっと話したいって思ったし、興味あるっていうか……異性として、気になった」
胸がぎゅっとなる。
「メールしてても楽しかった。今日も楽しかったし、もっと知りたいって思った」
さっきまで軽かった空気が、少しずつ変わっていく。
「本当はもっと友達として仲良くなってから〜とか思ってたんだけど」
天童さんが困ったみたいに笑う。
「俺、自分で思ってたより焦ってたみたい」
そのまま、少しだけ身体を前に倒して。
「○○ちゃんのこと好きなんだ。付き合って欲しい」
デートって言われた時。
冗談だと思った。
恋愛感情とかじゃなく、一人でケーキ屋に行きづらいから誘われたんだって。
でも。
天童さんって、多分そういう人じゃない。
好きなもののためなら、一人でも平気で行けそうなのに。
なのに今日、私を誘った。
……私、気づかないふりをしてた。
視線が合う。
でも天童さんは、すぐに少しだけ目を逸らして笑った。
急かさないみたいに。
その場の空気で答えて欲しいんじゃなくて。
ちゃんと考えて欲しいって伝わる。
メールしてきた時も。
話してる時も。
この人、軽そうに見えるのに、ちゃんと相手の反応を見てる。
だから。
私もちゃんと向き合わないといけない気がした。
その場の雰囲気じゃなく。
ちゃんと、自分の気持ちと。
【選択して下さい】
・天童に好きと伝える →7その後、③へ
・天童の告白を受け取らない→7その後、④へ
でも、このテンションで来られると断りづらい。
教えたところで、こんな感じの人だしすぐ飽きて連絡なんて来なくなるかもしれない。
……あと。
本当はどういう人なんだろうって、少し気になった。
怖いのに、不思議で。
なんだか面白そうだったから。
連絡先を教えたら、そのまま天童さんと牛島さんとは別れて、日向くんと二人で文化祭を回ると思っていた。
でも歩き出した途端、後ろから声が飛んでくる。
「ねぇねぇ、せっかくだしチビちゃんの校舎案内してよ~。教室どこ?」
「あっ俺、甘いの食べたい!チョコバナナとかクレープあったよね?」
止まらない質問攻め。
距離を取るのも変な空気になりそうで、結局四人で回ることになった。
知らない人達だしどうなるんだろうって思ってたけど、意外と楽しかった。
天童さんはずっと喋ってる。
話題もころころ変わるし、反応も大きい。
牛島さんは逆に口数少ないのに、たまにズレたことを真面目に言うから面白い。
2個上の先輩だし怖いと思ってたのに面白かった。
途中でさらに白鳥沢の人達と合流して、その流れで二人とは別れることになった。
「……。」
隣を歩く日向くんが少し静かで、なんとなく気になる。
「どうしたの?」
そう聞くと、少しだけむすっとした顔でこっちを見た。
「俺、苗字さんのメアド知らないのに、先に天童さんが知ってるの悔しい」
思わず笑ってしまった。
クラスが一緒だし、話したい時は学校で話せるからって思っていたけど、改めて連絡先を交換するのはなんだか新鮮だった。
そのあと日向くんに白鳥沢の話を聞いた。
凄く強かったこと。
また試合したいって思ってること。
でも三年生だから、もう高校では戦えないこと。
悔しそうなのに、話してる顔は楽しそうで。
本当にバレーが好きなんだなって思った。
文化祭が終わって家に帰ると、携帯が鳴った。
『○○ちゃん! 天童だよー。覚えてる?』
思わず吹き出す。
連絡先交換したばっかりなのに、覚えてる?って。
『覚えてます』
『よかった~。忘れられてたら泣いてた』
文面まで軽い。
文化祭では圧が強い人だと思ったのに、メールだとなんだか変だった。
『さとりんって呼んでね』
『先輩にあだ名はハードル高いです』
『えー距離感じる~』
そう返されると、逆に『天童さん』って呼びづらくなる。
本人がいいって言うならいいか、と少しずつ文面も砕けていった。
すぐ飽きる人かと思っていたのに、やり取りは一ヶ月経っても続いていた。
三年生って受験で忙しい時期じゃないのかなって心配になるくらい。
『受験大丈夫なんですか?』
『心配してくれるの嬉しい~』
……はぐらかされてる気もする。
でも、
『○○ちゃんとメールするの楽しい』
なんて返ってくると、つい笑ってしまった。
そんなある日。
『今度デートしない?』
その言葉に思わず携帯を落としそうになった。
けど、すぐ次のメッセージ。
『駅前のケーキ屋行きたいんだよね! 男一人だと浮くし、女の子一緒なら入りやすいじゃん?』
……断りづらい。
家でママに相談したら、何故かそのまま服を買いに行く流れになった。
「男の人と二人きりなんだから、ちゃんとしなさい」
「ケーキ食べるだけだよ?」
「好きな人じゃなくても、可愛い格好で行くのがベストなの!」
そういうものなのかな、と思いながら選んでくれたのは、自分じゃあまり着ない綺麗めの服。
でも新しい服は普通に嬉しかった。
日曜日。
待ち合わせ場所には、すぐ天童さんを見つけた。
背が高くて、赤い髪で。
立ってるだけで目立つ。
メールだとずっとふざけてるし、文化祭でも表情がころころ変わっていたから面白い人って印象だった。
でも。
待ち合わせ場所で静かに立ってる姿は、やっぱり少し怖い。
……本当にこの人と二人でケーキ屋行くんだ。
そう思った瞬間、
急に自分の服装とか、会話とか、不安になってきた。
待ち合わせの時は少し怖いって思ったのに、歩き始めたらその印象はすぐに変わった。
「その服、首元の形かわいいネ。髪下ろしてるのも新鮮」
さらっと言われてしまって思わず「ママが選んだ服なんです」って言い訳みたいに返してしまう。
「へぇ〜。でも○○ちゃんっぽい」
「……そうですか?」
「うん。なんか柔らかい感じ」
天童さんはそう言いながら、自分の服の袖を摘まむ。
「俺こういう派手なの好きだけど、○○ちゃんはシンプルなの似合いそう」
歩きながらそんな話をしていると、本当に会話が止まらない。
普段どんな服を着るのか。
休みの日は何してるのか。
好きなお菓子。
嫌いな食べ物。
家族の話。
質問ばっかりなのに不思議と一方的ではないし、天童さん自身もいっぱい喋るから、気づけば私も普通に返していた。
「ここ!」
そう言って立ち止まったケーキ屋は、ガラス張りの綺麗なお店だった。
店内に入ると甘い匂いが広がる。
「わぁ……」
ショーケースには色とりどりのケーキ。
苺のショートケーキ、艶のあるチョコレートケーキ、モンブランにフルーツタルト。
「○○ちゃんどれ好き?」
「えっ、急に聞かれると迷う……」
「いっぱい迷っていいヨ。ケーキ屋は迷う場所だからネ」
そう言いながら天童さんはショーケースの前でしゃがみこむみたいにして真剣に眺めている。
「これスポンジ柔らかそう〜」
「その栗絶対美味いやつ」
「わっ、この断面かわい〜」
反応がいちいち大きい。
「……覚さん甘いもの好きなんですね」
「超好き」
即答だった。
「疲れた時とか糖分最高だヨ」
楽しそうに話しながらも、「○○ちゃん生クリーム平気?」「チョコ濃すぎるの苦手?」ってちゃんと聞いてくれる。
結局、ショートケーキと季節限定のタルト、チョコレートケーキにモンブラン。
四つも頼んでいた。
「多くないですか?」
「食べれる食べれる」
そう言って、飲み物まで勝手に注文される。
「○○ちゃん紅茶の方が好きそうだけど、ここのココア美味しいらしいヨ」
「なんで知ってるんです?」
「調べた」
なんか、そういうところがマメ。
会計で財布を出そうとすると、「今日は俺が誘ったから」と軽く止められる。
「でも……」
「次また来た時、飲み物奢ってネ」
次って言葉に少しだけ胸がくすぐったくなる。
店内の席に座ると、天童さんは早速ケーキの写真を撮り始めた。
「映えってやつ?」
「記録用〜。あとあと見返して幸せになる」
「女子みたい」
「偏見だヨ」
笑いながらフォークを入れる。
ショートケーキはスポンジがふわふわで、生クリームは濃厚なのに軽い。
思わず「美味しい……」って声が漏れると、天童さんがすごく嬉しそうな顔をした。
「でしょ?ここ来たかったんだよネ〜」
自分が作ったわけでもないのに、褒められて嬉しそう。天童さんは甘いものを食べる時、本当に幸せそうだった。
大きな口で頬張って、「ん〜!」って目を細めたり。逆にチョコケーキは一口をじっくり味わったり。
「……なんか意外です」
「何が?」
「もっと、好き嫌い激しい人かと思ってました」
「ウヒャヒャ、失礼〜」
笑いながらも「でも偏食だヨ」とあっさり認める。
「野菜あんま好きじゃない」
「子供じゃないですか」
「ケーキ食べれるから実質優勝」
意味不明なことを言ってるのに、なんか面白い。 気づけば最初に感じていた緊張はほとんど消えていた。
「○○ちゃんが笑うと安心する。」
ぽつりと言われて、思わず瞬きをする。
「え?」
「最初ちょっと緊張してたでしょ」
……バレてた。
「だってさとりん、背高いし怖そうだし」
「傷ついた〜」
そう言いながら全然傷ついてなさそうに笑ってる。
「でも今は?」
「……今は、楽しいです」
そう答えると、天童さんは少しだけ目を丸くしてから、ふっと柔らかく笑った。
その顔が、文化祭で見た時よりずっと優しく見えて、何も言えずに微笑んだ。
冬の夕方。
外はもう真っ暗なのに、駅前は仕事帰りや買い物帰りの人で賑わっていた。
車のライト。
遠くで鳴る電車の音。
人の話し声。
夜みたいなのに、まだ一日が終わってない空気。
でもベンチに座っていると、その喧騒から少しだけ切り離されたみたいだった。
天童さんとの会話は楽しい。
話題は尽きないし、笑ってばかりいる。
なのに。
──このまま話してたら、時間過ぎるの早そうだな。
そんなことを思った瞬間だった。
さっきまで笑っていた天童さんが、ふと会話を止める。
そのまま、じっと私を見る。
「……?」
視線を向け返すと、目が合ったまま逸れない。
さっきまでずっと会話してたのに。
なんで急に黙るんだろう。
なんとなく落ち着かなくなって視線を揺らすと、天童さんが小さく笑った。
「怖かった?」
「え?」
「俺」
意外な言葉に目を瞬く。
少し考えてから、冗談っぽく返した。
「怖がらせたかったんですか?」
その瞬間、天童さんが声を上げて笑う。
「ウヒャヒャ!なにそれ!」
大きな笑い声。
周りの人が少し振り向くくらい。
でも笑い終わると、また少し静かになった。
今度は視線を落として、自分の手元を見ている。 何か言いたそうなのに、言葉を探してるみたいだった。
……言いづらい話なのかな。
変な沈黙が落ちるのが怖くて、私は今日のことをぽつぽつ喋る。
「ケーキ美味しかったです」
「モンブラン結構重かったですよね」
「あと、試着したあの服似合ってました」
独り言みたいに話していると、天童さんがふっと顔を上げた。
少しだけ気まずそうに笑って、それから真っ直ぐこっちを見る。
「文化祭の時さ」
低めの声。
「演じてる○○ちゃん見て、どんな子なんだろって気になったんだよネ」
静かな声だった。
「もっと話したいって思ったし、興味あるっていうか……異性として、気になった」
胸がぎゅっとなる。
「メールしてても楽しかった。今日も楽しかったし、もっと知りたいって思った」
さっきまで軽かった空気が、少しずつ変わっていく。
「本当はもっと友達として仲良くなってから〜とか思ってたんだけど」
天童さんが困ったみたいに笑う。
「俺、自分で思ってたより焦ってたみたい」
そのまま、少しだけ身体を前に倒して。
「○○ちゃんのこと好きなんだ。付き合って欲しい」
デートって言われた時。
冗談だと思った。
恋愛感情とかじゃなく、一人でケーキ屋に行きづらいから誘われたんだって。
でも。
天童さんって、多分そういう人じゃない。
好きなもののためなら、一人でも平気で行けそうなのに。
なのに今日、私を誘った。
……私、気づかないふりをしてた。
視線が合う。
でも天童さんは、すぐに少しだけ目を逸らして笑った。
急かさないみたいに。
その場の空気で答えて欲しいんじゃなくて。
ちゃんと考えて欲しいって伝わる。
メールしてきた時も。
話してる時も。
この人、軽そうに見えるのに、ちゃんと相手の反応を見てる。
だから。
私もちゃんと向き合わないといけない気がした。
その場の雰囲気じゃなく。
ちゃんと、自分の気持ちと。
【選択して下さい】
・天童に好きと伝える →7その後、③へ
・天童の告白を受け取らない→7その後、④へ
