2 高校生編
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奇妙な関係は、まだ続いていた。
弟でもない。年が十も離れている弟のさらに二つ下の、しかももう高校も違う子から、月に二度は電話。メールはその倍。
「……社会人と高校生がこんなに話してるの、変だよね」
と苦笑いしながらも、私自身もそれを切れずにいた。電話はもっぱら天童くんの独壇場。軽口と、日常のどうでもいい出来事を楽しそうに話す声。
けれど合間に滲む「練習がきつい」とか「今日は上手く出来た」といった言葉が、不思議と私自身の仕事への励みになっていた。
アラサーと言われる年頃。友人たちは次々と結婚し、子供の話題で盛り上がる。そんな中、結婚を意識した恋人もできたのに、踏ん切りがつかず別れてしまった。
──まだまだ自分の事で精一杯だから。
そう思いながら、会社からの転勤話をきっかけに東京に行く事になった。
***
「○○さん、春高の予選だよ〜。応援来てよ〜!」
その声は変わらず、少しも距離を縮めすぎない。けれど、電話越しに弾む響きに、胸の奥が温かくなる。
「今、東京にいるんだよ。転勤で」
「え、運命だね〜! 勝って春高行ったら応援してくれるでしょ?」
──東京をひとくくりにするその無邪気さ。
思わず笑ってしまった。
「東京って広いよ。……でも、仕事忙しいから」
「知ってるよ〜。でももうレギュラーだし、○○さんに見てほしいな〜」
少し拗ねるような声音。その奥に、ほんのかすかな寂しさが滲んでいた。
ふと、寮生活に入ってからなかなか会えなくなった弟を思い出す。甘える場所をなくした高校生の、控えめな甘え。
そう思ったら、自然と口から答えがこぼれた。
「……予選勝って、春高に行けたら。応援、するよ」
電話口の向こうで、ふわりと笑う声がした。
「やった〜。約束だからね、○○さん」
──その一言が、不意に胸の奥をざわつかせた。
勝手に取りつけた約束を、大事そうに口にする彼。弟の後輩でしかなかったはずなのに。
彼の「○○さん」という呼び方が、だんだんと重みを帯びていくのを感じてしまう。
天童くんの宣言どおり、白鳥沢は春高に駒を進めた。
絶対的なエース、牛島の存在はすでに全国的に知られていて、ユースにも選ばれ、雑誌でも取り上げられるほど。
だが、その背後で着実にレギュラー入りしている天童くんの名前も、少しずつ知られるようになっていた。
彼自身は「まだスタメンじゃないときもあるし〜」と軽い調子で言っていたけれど、それが謙遜であることは分かっていた。
弟でもない。年が十も離れている弟のさらに二つ下の、しかももう高校も違う子から、月に二度は電話。メールはその倍。
「……社会人と高校生がこんなに話してるの、変だよね」
と苦笑いしながらも、私自身もそれを切れずにいた。電話はもっぱら天童くんの独壇場。軽口と、日常のどうでもいい出来事を楽しそうに話す声。
けれど合間に滲む「練習がきつい」とか「今日は上手く出来た」といった言葉が、不思議と私自身の仕事への励みになっていた。
アラサーと言われる年頃。友人たちは次々と結婚し、子供の話題で盛り上がる。そんな中、結婚を意識した恋人もできたのに、踏ん切りがつかず別れてしまった。
──まだまだ自分の事で精一杯だから。
そう思いながら、会社からの転勤話をきっかけに東京に行く事になった。
***
「○○さん、春高の予選だよ〜。応援来てよ〜!」
その声は変わらず、少しも距離を縮めすぎない。けれど、電話越しに弾む響きに、胸の奥が温かくなる。
「今、東京にいるんだよ。転勤で」
「え、運命だね〜! 勝って春高行ったら応援してくれるでしょ?」
──東京をひとくくりにするその無邪気さ。
思わず笑ってしまった。
「東京って広いよ。……でも、仕事忙しいから」
「知ってるよ〜。でももうレギュラーだし、○○さんに見てほしいな〜」
少し拗ねるような声音。その奥に、ほんのかすかな寂しさが滲んでいた。
ふと、寮生活に入ってからなかなか会えなくなった弟を思い出す。甘える場所をなくした高校生の、控えめな甘え。
そう思ったら、自然と口から答えがこぼれた。
「……予選勝って、春高に行けたら。応援、するよ」
電話口の向こうで、ふわりと笑う声がした。
「やった〜。約束だからね、○○さん」
──その一言が、不意に胸の奥をざわつかせた。
勝手に取りつけた約束を、大事そうに口にする彼。弟の後輩でしかなかったはずなのに。
彼の「○○さん」という呼び方が、だんだんと重みを帯びていくのを感じてしまう。
天童くんの宣言どおり、白鳥沢は春高に駒を進めた。
絶対的なエース、牛島の存在はすでに全国的に知られていて、ユースにも選ばれ、雑誌でも取り上げられるほど。
だが、その背後で着実にレギュラー入りしている天童くんの名前も、少しずつ知られるようになっていた。
彼自身は「まだスタメンじゃないときもあるし〜」と軽い調子で言っていたけれど、それが謙遜であることは分かっていた。
