2 高校生編
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ゴールデンウィークが明けた夜、電話の向こうから弾む声が響いた。
「聞いてよ〜! まだレギュラーじゃないけどさ、ユニフォームもらえたんだよ!」
その言葉に思わず笑みがこぼれる。
ふざけた調子に聞こえても、彼の声には抑えきれない熱がこもっていた。
「よかったね。頑張ったじゃない」
そう返すと、電話越しにしばしの沈黙。そして、いたずらを仕掛けるような声。
「ねえ……約束、覚えてる?」
「約束?」
首をかしげた私に、彼は得意げに続ける。
「俺がユニフォームもらえたら、名前教えてくれるって言ったじゃん〜。あれ、ちゃんと守ってよ?」
──そんな約束、私がした覚えはない。
けれど彼が勝手に作ったそれを、今さら笑って否定することもできなかった。
「……弟から聞いたんじゃないの?」
軽くかわすように言うと、電話の向こうで苦笑が落ちた。
「聞いたよ。でも絶対教えてくれなかった。"姉ちゃんのことは自分で聞け"ってさ。シスコンだよね、あれ」
その言い方が可笑しくて、思わず笑い声がもれた。
けれど次の瞬間、彼の声色はわずかに真剣さを帯びる。
「だからさ、教えて。……俺、"お姉さん"って呼ぶの、もうやめたいんだ」
胸が小さくざわつく。
彼にとっては軽口の延長なのかもしれない。
けれど、名前を聞こうとするその響きに、私はほんの一瞬だけ、彼の眼差しを意識してしまう。
「……○○」
名乗った途端、電話口で空気がふっと弾んだ。
「○○……ちゃん」
無邪気な声に、思わず苦笑する。
「"ちゃん"はやめて。同世代でもないんだから」
子どもを諭すように言うと、わずかな沈黙のあと、少し照れた声が返ってきた
「……じゃあ、"○○さん"。それならいい?」
ふざけた調子を保ちながらも、その言葉の端には確かな熱が滲んでいた。
「うん、それなら」
そう答えながら、私は心の奥に小さなざわめきを抱えた。
"勝手な約束"を守るために聞き出した名前。
しかし、名前を聞いたあと、軽く「ちゃん」と呼ぶのではなく「さん」と丁寧に呼んだ瞬間、ただの冗談や揶揄いではなく、天童くんが少し大人としての距離や配慮を意識していることに気づいてしまった。
それまでの軽いからかいやふざけた口調とは、どこか違う響きがあったのだ。
「聞いてよ〜! まだレギュラーじゃないけどさ、ユニフォームもらえたんだよ!」
その言葉に思わず笑みがこぼれる。
ふざけた調子に聞こえても、彼の声には抑えきれない熱がこもっていた。
「よかったね。頑張ったじゃない」
そう返すと、電話越しにしばしの沈黙。そして、いたずらを仕掛けるような声。
「ねえ……約束、覚えてる?」
「約束?」
首をかしげた私に、彼は得意げに続ける。
「俺がユニフォームもらえたら、名前教えてくれるって言ったじゃん〜。あれ、ちゃんと守ってよ?」
──そんな約束、私がした覚えはない。
けれど彼が勝手に作ったそれを、今さら笑って否定することもできなかった。
「……弟から聞いたんじゃないの?」
軽くかわすように言うと、電話の向こうで苦笑が落ちた。
「聞いたよ。でも絶対教えてくれなかった。"姉ちゃんのことは自分で聞け"ってさ。シスコンだよね、あれ」
その言い方が可笑しくて、思わず笑い声がもれた。
けれど次の瞬間、彼の声色はわずかに真剣さを帯びる。
「だからさ、教えて。……俺、"お姉さん"って呼ぶの、もうやめたいんだ」
胸が小さくざわつく。
彼にとっては軽口の延長なのかもしれない。
けれど、名前を聞こうとするその響きに、私はほんの一瞬だけ、彼の眼差しを意識してしまう。
「……○○」
名乗った途端、電話口で空気がふっと弾んだ。
「○○……ちゃん」
無邪気な声に、思わず苦笑する。
「"ちゃん"はやめて。同世代でもないんだから」
子どもを諭すように言うと、わずかな沈黙のあと、少し照れた声が返ってきた
「……じゃあ、"○○さん"。それならいい?」
ふざけた調子を保ちながらも、その言葉の端には確かな熱が滲んでいた。
「うん、それなら」
そう答えながら、私は心の奥に小さなざわめきを抱えた。
"勝手な約束"を守るために聞き出した名前。
しかし、名前を聞いたあと、軽く「ちゃん」と呼ぶのではなく「さん」と丁寧に呼んだ瞬間、ただの冗談や揶揄いではなく、天童くんが少し大人としての距離や配慮を意識していることに気づいてしまった。
それまでの軽いからかいやふざけた口調とは、どこか違う響きがあったのだ。
