9 一緒にいたい
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仕事を辞める手続き、今まで請け負ってきた仕事の引き継ぎ。
それだけでも十分に時間を奪われていたのに、覚は次々と予定を組み込み、気づけば両家への挨拶、フランスでの生活準備までカレンダーに書き込まれていた。
「覚……私の予定、なんでそんなに把握してるの?」
思わず呆れ混じりに問いかけると、彼は軽やかに笑った。
「だって俺の人生に直結してる予定だもん、当然でしょ〜」
その調子の良さに苦笑いしつつも、ふと胸の奥に小さな引け目が芽生える。
かつては弟のように思っていた彼が、今はもう "恋人"を越えて"伴侶"になろうとしている。
余裕を見せているのではなく、ただ本当に仕事ができる人になっている。
その姿に、どうしても自分との差を感じてしまう。
***
両家の挨拶の時
気になっていた覚の両親は、拍子抜けするほど温かく迎えてくれた。
「言い出したら止まらない子だから、無理してたりする?強引に進めてるんじゃない?結婚してくれるのは反対じゃないし嬉しいんだけど、大丈夫?」
「ちゃんと休んでる?」
むしろ私の方を心配してくれる言葉に、肩の力が抜ける。
私の両親には、知らない間から彼はずっと連絡を取っていたらしい。晴斗の結婚式の頃から、まるで当然のように。外堀は、とっくに埋められていた。
「ようやくここまできました〜。初恋が実りました〜。任せてください、絶対に幸せにしますから」
笑顔でそう口にする覚は、詐欺師じみたほどに口が上手いく、妙に場を和ませてしまう。
……少し引いてしまうくらい、上手かった。
両親が笑顔を返しているのを見て、安心よりも少し引いてしまうくらいに。
そんな私の気持ちを代弁するように、不満を隠さないのが晴斗だった。
「……やっぱりか。まあ、そうなる気はしてたけど」
複雑そうに呟いた後、彼を睨みつけて言い放つ。
「ていうかさ、俺より年下なんだから、呼び捨てやめろよ!」
「え〜? 弟くん、まだまだお姉ちゃんに甘えたいんだ〜?」
覚が茶化せば茶化すほど、晴斗の顔がむくれていく。
私のために怒ってくれているのだとわかるけれど、そのやり取りはまるで漫才のようで、思わず苦笑が漏れた。
けれど、そんなやり取りも、私にとっては家族が一歩ずつ認めてくれている証のように思えた。
そんな日々の中でも、準備は止まらない。
私の年齢もあって「式はしたくない」とはっきり伝えたのに、覚は涼しい顔で言う。
「ふたりだけの結婚式ってのも、なんか良いと思うんだよね〜」
気づけば彼の手元には、ウエディングドレスのカタログまで取り寄せられていた。
「ちょっと待って! これ以上は無理。仕事の引き継ぎもあるし、フランスでの準備もあるし……もうキャパオーバー!」
思わず声を張り上げると、覚は一瞬驚いたように瞬きをした後、ふっと笑った。
「……ごめんね。俺が先に走りすぎちゃったかな〜」
軽く言っているようで、その声には少し悔しさが混じっていた。
私の手を取り、そっと指先を撫でながら彼が言う。
「でもね、俺は全部用意してあげたいんだよ。○○さんに"不安"とか"足りない"って思わせたくないから」
その真っ直ぐさに胸が熱くなる。
だけど同時に、だからこそ伝えなければと思った。
「……全部は、要らないよ。覚がいてくれるだけで十分だから」
その言葉に、彼は一瞬黙り込んで、それから子供のように無邪気な笑みを浮かべた。
「そっか〜。……でも、ドレスは諦められないかも」
「もう……!」
呆れ混じりにため息をつく私を見て、覚は嬉しそうに目を細める。
忙しさの中で翻弄されながらも、確かに彼と歩んでいく未来が形になっていくのを感じていた。
それだけでも十分に時間を奪われていたのに、覚は次々と予定を組み込み、気づけば両家への挨拶、フランスでの生活準備までカレンダーに書き込まれていた。
「覚……私の予定、なんでそんなに把握してるの?」
思わず呆れ混じりに問いかけると、彼は軽やかに笑った。
「だって俺の人生に直結してる予定だもん、当然でしょ〜」
その調子の良さに苦笑いしつつも、ふと胸の奥に小さな引け目が芽生える。
かつては弟のように思っていた彼が、今はもう "恋人"を越えて"伴侶"になろうとしている。
余裕を見せているのではなく、ただ本当に仕事ができる人になっている。
その姿に、どうしても自分との差を感じてしまう。
***
両家の挨拶の時
気になっていた覚の両親は、拍子抜けするほど温かく迎えてくれた。
「言い出したら止まらない子だから、無理してたりする?強引に進めてるんじゃない?結婚してくれるのは反対じゃないし嬉しいんだけど、大丈夫?」
「ちゃんと休んでる?」
むしろ私の方を心配してくれる言葉に、肩の力が抜ける。
私の両親には、知らない間から彼はずっと連絡を取っていたらしい。晴斗の結婚式の頃から、まるで当然のように。外堀は、とっくに埋められていた。
「ようやくここまできました〜。初恋が実りました〜。任せてください、絶対に幸せにしますから」
笑顔でそう口にする覚は、詐欺師じみたほどに口が上手いく、妙に場を和ませてしまう。
……少し引いてしまうくらい、上手かった。
両親が笑顔を返しているのを見て、安心よりも少し引いてしまうくらいに。
そんな私の気持ちを代弁するように、不満を隠さないのが晴斗だった。
「……やっぱりか。まあ、そうなる気はしてたけど」
複雑そうに呟いた後、彼を睨みつけて言い放つ。
「ていうかさ、俺より年下なんだから、呼び捨てやめろよ!」
「え〜? 弟くん、まだまだお姉ちゃんに甘えたいんだ〜?」
覚が茶化せば茶化すほど、晴斗の顔がむくれていく。
私のために怒ってくれているのだとわかるけれど、そのやり取りはまるで漫才のようで、思わず苦笑が漏れた。
けれど、そんなやり取りも、私にとっては家族が一歩ずつ認めてくれている証のように思えた。
そんな日々の中でも、準備は止まらない。
私の年齢もあって「式はしたくない」とはっきり伝えたのに、覚は涼しい顔で言う。
「ふたりだけの結婚式ってのも、なんか良いと思うんだよね〜」
気づけば彼の手元には、ウエディングドレスのカタログまで取り寄せられていた。
「ちょっと待って! これ以上は無理。仕事の引き継ぎもあるし、フランスでの準備もあるし……もうキャパオーバー!」
思わず声を張り上げると、覚は一瞬驚いたように瞬きをした後、ふっと笑った。
「……ごめんね。俺が先に走りすぎちゃったかな〜」
軽く言っているようで、その声には少し悔しさが混じっていた。
私の手を取り、そっと指先を撫でながら彼が言う。
「でもね、俺は全部用意してあげたいんだよ。○○さんに"不安"とか"足りない"って思わせたくないから」
その真っ直ぐさに胸が熱くなる。
だけど同時に、だからこそ伝えなければと思った。
「……全部は、要らないよ。覚がいてくれるだけで十分だから」
その言葉に、彼は一瞬黙り込んで、それから子供のように無邪気な笑みを浮かべた。
「そっか〜。……でも、ドレスは諦められないかも」
「もう……!」
呆れ混じりにため息をつく私を見て、覚は嬉しそうに目を細める。
忙しさの中で翻弄されながらも、確かに彼と歩んでいく未来が形になっていくのを感じていた。
