9 一緒にいたい
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「時間とれたから、今夜はゆっくりディナーでもどうかな〜」
フランスに戻る前の短い滞在。そう言われて胸が高鳴り、自然と笑みがこぼれた。
「うん、いいよ」
「じゃあさ、ちょっとオシャレしてきてくれると嬉しいな〜」
電話越しに甘えるような声音で言われると、普段よりも少し背伸びをしてみたくなる。
指定された場所に着くと、そこに立っていたのはフォーマルな装いの彼がいた。
背筋を伸ばし、シンプルなのにどこか洗練された雰囲気を纏っている。
「……そんなにオシャレしていくところなの? 私、これで大丈夫?」
不安を口にすると、彼はふっと笑い、柔らかく首を振った。
「大丈夫どころか……いつも可愛いけど、今日は綺麗の方が勝ってるね〜」
頬が熱くなるのを隠せず、胸の奥がぎゅっと掴まれるように高鳴った。
着いた先は、名前だけは聞いたことのある有名なレストラン。
店内に入ると一気に緊張が押し寄せる。
「ちょっと緊張しちゃうね」
「実は俺も緊張してるんだよ」
彼はいつもの飄々とした笑みを浮かべながらも、その声音には僅かに熱が滲んでいた。
フランスで、味覚の勉強だと有名どころの店を巡ってきた彼。そんな彼でも、日本ではまた違う感覚を覚えるのかもしれない。
食事は驚くほど美味しく、彼との会話は軽やかで、あっという間に時間が過ぎていった。
ワインの余韻に浸りながら、笑みを浮かべていると──テーブルの上に小さな箱が置かれる。
一瞬で心臓が跳ね、息を飲んだ。
「本当は片ひざついて言いたいんだけど……○○さん、恥ずかしがるでしょ?」
そう言って少し首を傾げる彼の瞳は、真剣そのものだった。
「だから、このまま言わせてね」
呼吸を整えるように間を置き、彼の口から紡がれた言葉は、静かで、けれど深く心に響く。
「俺は恋人じゃなくて、夫婦になりたい。ずっと一緒にいられる形が欲しいんだ」
箱を開けると、洗練されたデザインの指輪が光を放っていた。
豪華すぎず、それでいて確かに高価な気配を纏っている。
思わず指先が震え、箱に触れながらも、躊躇いが押し寄せる。
──彼が高校生の頃、ただ弟の後輩として異性とも見ていなかった時代。
── 一回り違う年齢差。
──彼の親は、私をどう思うだろう。
様々な思い出や不安が一気に駆け巡り、手が引きかけられる。
けれど、その瞬間。
彼がすっと手を伸ばし、私の手を強く取った。
「……手続きが楽になるから、とかじゃないんだよ。でも……○○さん、フランスに一緒に来てくれるって言ったよね?」
必死に縋るような声。
その瞳には、甘さだけでなく、どうしようもない独占欲と、私を失いたくないという焦りが滲んでいた。
その熱に射抜かれるように見返し、気づけば指先から力が抜けていた。
箱を閉じようとするのではなく──彼に託すように。
「……覚」
名前を呼ぶと、彼の瞳が揺れた。
次の瞬間、そっと指輪が薬指にはめられる。
ひやりとした感触と共に、胸の奥まで温かさが広がっていく。
「……ありがとう。俺を信じてくれて」
彼が微笑んだ。
それは今まで見たどんな笑みよりも優しく、そして強く、私の心を掴んで離さなかった。
フランスに戻る前の短い滞在。そう言われて胸が高鳴り、自然と笑みがこぼれた。
「うん、いいよ」
「じゃあさ、ちょっとオシャレしてきてくれると嬉しいな〜」
電話越しに甘えるような声音で言われると、普段よりも少し背伸びをしてみたくなる。
指定された場所に着くと、そこに立っていたのはフォーマルな装いの彼がいた。
背筋を伸ばし、シンプルなのにどこか洗練された雰囲気を纏っている。
「……そんなにオシャレしていくところなの? 私、これで大丈夫?」
不安を口にすると、彼はふっと笑い、柔らかく首を振った。
「大丈夫どころか……いつも可愛いけど、今日は綺麗の方が勝ってるね〜」
頬が熱くなるのを隠せず、胸の奥がぎゅっと掴まれるように高鳴った。
着いた先は、名前だけは聞いたことのある有名なレストラン。
店内に入ると一気に緊張が押し寄せる。
「ちょっと緊張しちゃうね」
「実は俺も緊張してるんだよ」
彼はいつもの飄々とした笑みを浮かべながらも、その声音には僅かに熱が滲んでいた。
フランスで、味覚の勉強だと有名どころの店を巡ってきた彼。そんな彼でも、日本ではまた違う感覚を覚えるのかもしれない。
食事は驚くほど美味しく、彼との会話は軽やかで、あっという間に時間が過ぎていった。
ワインの余韻に浸りながら、笑みを浮かべていると──テーブルの上に小さな箱が置かれる。
一瞬で心臓が跳ね、息を飲んだ。
「本当は片ひざついて言いたいんだけど……○○さん、恥ずかしがるでしょ?」
そう言って少し首を傾げる彼の瞳は、真剣そのものだった。
「だから、このまま言わせてね」
呼吸を整えるように間を置き、彼の口から紡がれた言葉は、静かで、けれど深く心に響く。
「俺は恋人じゃなくて、夫婦になりたい。ずっと一緒にいられる形が欲しいんだ」
箱を開けると、洗練されたデザインの指輪が光を放っていた。
豪華すぎず、それでいて確かに高価な気配を纏っている。
思わず指先が震え、箱に触れながらも、躊躇いが押し寄せる。
──彼が高校生の頃、ただ弟の後輩として異性とも見ていなかった時代。
── 一回り違う年齢差。
──彼の親は、私をどう思うだろう。
様々な思い出や不安が一気に駆け巡り、手が引きかけられる。
けれど、その瞬間。
彼がすっと手を伸ばし、私の手を強く取った。
「……手続きが楽になるから、とかじゃないんだよ。でも……○○さん、フランスに一緒に来てくれるって言ったよね?」
必死に縋るような声。
その瞳には、甘さだけでなく、どうしようもない独占欲と、私を失いたくないという焦りが滲んでいた。
その熱に射抜かれるように見返し、気づけば指先から力が抜けていた。
箱を閉じようとするのではなく──彼に託すように。
「……覚」
名前を呼ぶと、彼の瞳が揺れた。
次の瞬間、そっと指輪が薬指にはめられる。
ひやりとした感触と共に、胸の奥まで温かさが広がっていく。
「……ありがとう。俺を信じてくれて」
彼が微笑んだ。
それは今まで見たどんな笑みよりも優しく、そして強く、私の心を掴んで離さなかった。
