6 変わる気持ち
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最初に「付き合おう」と言葉にしてしまえば、それだけでどこか特別な空気が漂うのだと思っていた。
けれど実際には、変わったようで変わらない──ただ隣に天童くんがいて、肩が近くなるだけ。
それがどうしようもなく意識されて、心臓が落ち着かない。
その日、彼が提案してきたのは休日の昼間。
選んでくれたのは植物園だった。
「こういうの、○○さん好きそうだなって思ったんだ〜」
「……よく覚えてるね」
「当たり前だよ〜。高校のときから晴斗くんから聞いてたし、○○さん写真撮ってたでしょ?」
何気なく言われたことに胸が熱くなる。
自分でも忘れかけていた記憶を、彼は鮮明に覚えている。
それだけで、あの「長い時間」を軽やかに飛び越えてしまったように感じた。
温室の中、鮮やかな花に囲まれながら彼はひたすら楽しそうだった。
背の高い身体を少しかがめて説明書きを読んだり、花の香りをわざと大げさに吸い込んで「○○さんの香水より甘いかな〜」なんて冗談を言ったり。
大人になったのに、やっぱりどこか少年のまま。
「ねぇ、写真撮ってあげよっか」
「え?いいよ、恥ずかしいし」
「じゃあ俺と一緒に撮ろ〜」
半ば強引にスマホを差し出され、二人で映る画面。
ピースをする彼の肩に自然と触れてしまい、シャッター音が響く。
──こんな小さなことですら、心が揺れる。
外に出ると、芝生広場で子どもたちが走り回っていた。
その様子を眺めながらベンチに座ると、彼はペットボトルの水を差し出してきた。
「喉乾いたでしょ〜。一口どうぞ」
「ありがとう」
何でもない仕草なのに、自然すぎて恋人らしさを感じてしまう。
沈黙が続いても、彼は焦らない。
ただ隣で同じ景色を眺めるだけで十分だと言わんばかりの顔をしていた。
──それが、逆に苦しくなる。
「……ねぇ、天童くん」
「ん〜?」
「やっぱり、弟にはまだ言えないよね」
「無理に言う必要ないと思うよ〜。俺は秘密でも平気だし」
あっけらかんと答える彼に、安堵と罪悪感が同時に込み上げた。
「でも……隠してるのも、なんだか悪いような気がして」
「それなら、バレるまで隠し通そっか〜。俺たちの秘密ってことで」
にやりと笑いながら、彼は指先でそっと私の手に触れた。
一瞬の仕草。けれどそれだけで「恋人」という言葉が現実のものになる。
「俺ね、結構楽しんでるんだ。○○さんと付き合ってることを、誰も知らないって状況」
「……どういう意味?」
「だって、二人だけの世界でしょ。内緒の関係って、なんか特別だなって」
彼らしい軽い言い回しの裏に、独占欲のような熱を感じる。
気づけば私も笑ってしまっていた。
「ほんとに変わってないようで……大人になったね」
「でしょ〜? でも、○○さんの前では、あんまり大人ぶれないんだよなぁ」
空を見上げる横顔は穏やかで、どこまでも真っ直ぐだった。
この人と秘密を抱えながら歩んでいくのは、少し怖くて、でも不思議と楽しみにも思えてしまう。
──付き合いはじめの甘い休日と、まだ誰にも言えない秘密。
その両方が同時に存在して、私の心を少しずつ掴んでいった。
けれど実際には、変わったようで変わらない──ただ隣に天童くんがいて、肩が近くなるだけ。
それがどうしようもなく意識されて、心臓が落ち着かない。
その日、彼が提案してきたのは休日の昼間。
選んでくれたのは植物園だった。
「こういうの、○○さん好きそうだなって思ったんだ〜」
「……よく覚えてるね」
「当たり前だよ〜。高校のときから晴斗くんから聞いてたし、○○さん写真撮ってたでしょ?」
何気なく言われたことに胸が熱くなる。
自分でも忘れかけていた記憶を、彼は鮮明に覚えている。
それだけで、あの「長い時間」を軽やかに飛び越えてしまったように感じた。
温室の中、鮮やかな花に囲まれながら彼はひたすら楽しそうだった。
背の高い身体を少しかがめて説明書きを読んだり、花の香りをわざと大げさに吸い込んで「○○さんの香水より甘いかな〜」なんて冗談を言ったり。
大人になったのに、やっぱりどこか少年のまま。
「ねぇ、写真撮ってあげよっか」
「え?いいよ、恥ずかしいし」
「じゃあ俺と一緒に撮ろ〜」
半ば強引にスマホを差し出され、二人で映る画面。
ピースをする彼の肩に自然と触れてしまい、シャッター音が響く。
──こんな小さなことですら、心が揺れる。
外に出ると、芝生広場で子どもたちが走り回っていた。
その様子を眺めながらベンチに座ると、彼はペットボトルの水を差し出してきた。
「喉乾いたでしょ〜。一口どうぞ」
「ありがとう」
何でもない仕草なのに、自然すぎて恋人らしさを感じてしまう。
沈黙が続いても、彼は焦らない。
ただ隣で同じ景色を眺めるだけで十分だと言わんばかりの顔をしていた。
──それが、逆に苦しくなる。
「……ねぇ、天童くん」
「ん〜?」
「やっぱり、弟にはまだ言えないよね」
「無理に言う必要ないと思うよ〜。俺は秘密でも平気だし」
あっけらかんと答える彼に、安堵と罪悪感が同時に込み上げた。
「でも……隠してるのも、なんだか悪いような気がして」
「それなら、バレるまで隠し通そっか〜。俺たちの秘密ってことで」
にやりと笑いながら、彼は指先でそっと私の手に触れた。
一瞬の仕草。けれどそれだけで「恋人」という言葉が現実のものになる。
「俺ね、結構楽しんでるんだ。○○さんと付き合ってることを、誰も知らないって状況」
「……どういう意味?」
「だって、二人だけの世界でしょ。内緒の関係って、なんか特別だなって」
彼らしい軽い言い回しの裏に、独占欲のような熱を感じる。
気づけば私も笑ってしまっていた。
「ほんとに変わってないようで……大人になったね」
「でしょ〜? でも、○○さんの前では、あんまり大人ぶれないんだよなぁ」
空を見上げる横顔は穏やかで、どこまでも真っ直ぐだった。
この人と秘密を抱えながら歩んでいくのは、少し怖くて、でも不思議と楽しみにも思えてしまう。
──付き合いはじめの甘い休日と、まだ誰にも言えない秘密。
その両方が同時に存在して、私の心を少しずつ掴んでいった。
