5 結婚式後
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店を出る頃には、いつの間にか会計も済んでいて──「え、払ってないよ!」と慌てても、「ごちそうしたかっただけだから〜」とさらり。
さりげなくドアを開けて待っていたり、歩幅を合わせて横を歩いてくれたり。エスコートなんて言葉が似合うようになった彼に、なんだか息苦しくなる。
タクシーを呼んでくれて、「家まで送るよ」と当然のように言われる。
「忙しいんでしょ? 私はあとでいいよ」
そう口にすると、彼は小さく首を振った。
「ん〜、それじゃ"忙しいから"って理由で○○さん放っといたみたいになっちゃうじゃん。それは嫌だなぁ」
唇に小さな笑みを浮かべながら、けれど目だけは真っ直ぐ。
軽口のようでいて、冗談に逃げ切らせてくれない。
タクシーに乗り込んで、走り出す夜の街を眺めながら、不意に天童くんが言った。
「日本に帰ってきたの、久しぶりなんだ〜。しばらくはもう少しいるつもりだから……また会ってくれる?」
窓の外に視線を逸らしたまま、心臓の鼓動を落ち着けようとする。
「……いいよ」
それだけを答えた声は、思っていたよりもずっと小さかった。
「うん、約束ね」
彼は嬉しそうに笑い、深くそれ以上追わなかった。
***
家に着き、メイクを落とし、シャワーを浴びる。
湿った髪をタオルで押さえながらベッドに座り込むと、ようやく一人になった空間の静けさが押し寄せてきた。
今日一日があまりに非日常すぎて、頭がまだ追いつかない。
弟の晴斗の結婚式もそうだった。
でも──それ以上に。
まさか、天童くんが。
あの頃の彼が、まだ私を想っていたなんて。
年の離れた弟よりも更に年下。
一回りも違う年齢。
これから先にだって、きっともっとたくさんの未来が広がっている人。
そう分かっているのに。
久しぶりに会った彼は、もう"弟の後輩の男の子"ではなくて。大人の男として、隣に立っていた。
胸の奥が、まだ少し熱い。
心地よい疲労感に混じって、眠れない夜が始まる気がして──私はタオルを置き、静かに目を閉じた。
さりげなくドアを開けて待っていたり、歩幅を合わせて横を歩いてくれたり。エスコートなんて言葉が似合うようになった彼に、なんだか息苦しくなる。
タクシーを呼んでくれて、「家まで送るよ」と当然のように言われる。
「忙しいんでしょ? 私はあとでいいよ」
そう口にすると、彼は小さく首を振った。
「ん〜、それじゃ"忙しいから"って理由で○○さん放っといたみたいになっちゃうじゃん。それは嫌だなぁ」
唇に小さな笑みを浮かべながら、けれど目だけは真っ直ぐ。
軽口のようでいて、冗談に逃げ切らせてくれない。
タクシーに乗り込んで、走り出す夜の街を眺めながら、不意に天童くんが言った。
「日本に帰ってきたの、久しぶりなんだ〜。しばらくはもう少しいるつもりだから……また会ってくれる?」
窓の外に視線を逸らしたまま、心臓の鼓動を落ち着けようとする。
「……いいよ」
それだけを答えた声は、思っていたよりもずっと小さかった。
「うん、約束ね」
彼は嬉しそうに笑い、深くそれ以上追わなかった。
***
家に着き、メイクを落とし、シャワーを浴びる。
湿った髪をタオルで押さえながらベッドに座り込むと、ようやく一人になった空間の静けさが押し寄せてきた。
今日一日があまりに非日常すぎて、頭がまだ追いつかない。
弟の晴斗の結婚式もそうだった。
でも──それ以上に。
まさか、天童くんが。
あの頃の彼が、まだ私を想っていたなんて。
年の離れた弟よりも更に年下。
一回りも違う年齢。
これから先にだって、きっともっとたくさんの未来が広がっている人。
そう分かっているのに。
久しぶりに会った彼は、もう"弟の後輩の男の子"ではなくて。大人の男として、隣に立っていた。
胸の奥が、まだ少し熱い。
心地よい疲労感に混じって、眠れない夜が始まる気がして──私はタオルを置き、静かに目を閉じた。
