3 一日
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結局、街をぶらぶらと歩き、カフェで時間を潰すうちに、気づけば夕飯の時間になっていた。
「夕飯は……コンビニでいいかな〜」
気楽そうに言う彼に、思わず呆れが混じる。
「ダメ。せっかくなんだから、ちゃんと食べなさい。奢るから」
ホテルの近くにあったチェーン店のレストランに入り、ドリンクバーをつけて席につくと、天童くんは「話したいからさ」と笑った。
その言葉の奥に、今までと違う熱があるのを感じて、自然と姿勢を正す。
「中学3年のときにね、鍛治くんから推薦の話が来てさ。俺は"お前がやりたいようにやって、気持ちよくプレーすればいい"って言われて、それで白鳥沢に行ったんだ」
ぽつり、ぽつりと彼は語り出した。
「でもさ、入ってすぐに目ぇつけられたんだよね〜。体育会系の縦社会っていうか……居心地悪かった」
ふっと視線を落とした彼は、続ける。
「そこに、晴斗くんがいた。割って入って気にかけてくれてさ。ああいう関係性って、俺にはなかったから……嬉しかったんだよね」
弟の名前を聞いて、胸が少しざわつく。
「でもね、レギュラーの晴斗くんには嫉妬もあったんだ。羨ましかった」
テーブルに置かれた彼の指が、無意識に揺れる。
「晴斗くんがシスコン気味だって聞いて、俺にも話しかけてくれるようになったんだよね。それが……羨ましかったのか、嬉しかったのか……多分どっちも」
そこから彼の話は、さらに踏み込んでいった。
「上級生にやっかまれて、きつかったときがあったんだ。その時、晴斗くんがこっそりくれたんだよ。『特別だから』って言ってさ」
「……何を?」
「高級チョコ。○○さんが晴斗くんにあげた箱に入ってたやつ」
一瞬、言葉を失う。そんなことがあったなんて知らなかった。
天童くんは淡く笑う。
「あの時、すっごく嬉しかった。もっと欲しかったけど……俺は"特別"じゃないんだなって思った」
「……」
胸が少し痛む。けれど彼は続けた。
「でもね、○○さんが俺の話を聞いてくれた。電話でも、ちゃんと受け止めてくれた。……それが、嬉しかったんだ。あのときは、それだけで十分だった」
彼の声は次第に熱を帯びていく。
「でも今は違う。俺は──異性として、○○さんが好きなんだ」
まっすぐに向けられた言葉。
胸の奥に届いたその響きは、けれど私の中で"弟のような存在"という重い蓋に押し留められてしまう。
「……天童くん」
「依存とか、特別とか、そういうんじゃない。ちゃんと、好きなんだよ」
その真剣さが伝わるほどに、苦しくなる。
彼の思いは間違いではない。
けれど──根底にあるのはやっぱり、不安や寂しさから私に向かってきた気持ちなのだと思えてしまう。
深夜に差し掛かるまで、彼の言葉を聞き続けた。
告白も、はっきりと受け取った。
それでも私は、笑みを作って答える。
「……もっと、いい男になってね」
途端に、彼の表情が曇る。
「それって、弟としてってこと? 俺は違うから」
「……私より、いい人がいるよ」
そう言いながら、彼の頭に手を伸ばして撫でた。
その仕草が余計に"弟扱い"だと分かっていながら──それしかできなかった。
彼は、フランスに行った。
「夕飯は……コンビニでいいかな〜」
気楽そうに言う彼に、思わず呆れが混じる。
「ダメ。せっかくなんだから、ちゃんと食べなさい。奢るから」
ホテルの近くにあったチェーン店のレストランに入り、ドリンクバーをつけて席につくと、天童くんは「話したいからさ」と笑った。
その言葉の奥に、今までと違う熱があるのを感じて、自然と姿勢を正す。
「中学3年のときにね、鍛治くんから推薦の話が来てさ。俺は"お前がやりたいようにやって、気持ちよくプレーすればいい"って言われて、それで白鳥沢に行ったんだ」
ぽつり、ぽつりと彼は語り出した。
「でもさ、入ってすぐに目ぇつけられたんだよね〜。体育会系の縦社会っていうか……居心地悪かった」
ふっと視線を落とした彼は、続ける。
「そこに、晴斗くんがいた。割って入って気にかけてくれてさ。ああいう関係性って、俺にはなかったから……嬉しかったんだよね」
弟の名前を聞いて、胸が少しざわつく。
「でもね、レギュラーの晴斗くんには嫉妬もあったんだ。羨ましかった」
テーブルに置かれた彼の指が、無意識に揺れる。
「晴斗くんがシスコン気味だって聞いて、俺にも話しかけてくれるようになったんだよね。それが……羨ましかったのか、嬉しかったのか……多分どっちも」
そこから彼の話は、さらに踏み込んでいった。
「上級生にやっかまれて、きつかったときがあったんだ。その時、晴斗くんがこっそりくれたんだよ。『特別だから』って言ってさ」
「……何を?」
「高級チョコ。○○さんが晴斗くんにあげた箱に入ってたやつ」
一瞬、言葉を失う。そんなことがあったなんて知らなかった。
天童くんは淡く笑う。
「あの時、すっごく嬉しかった。もっと欲しかったけど……俺は"特別"じゃないんだなって思った」
「……」
胸が少し痛む。けれど彼は続けた。
「でもね、○○さんが俺の話を聞いてくれた。電話でも、ちゃんと受け止めてくれた。……それが、嬉しかったんだ。あのときは、それだけで十分だった」
彼の声は次第に熱を帯びていく。
「でも今は違う。俺は──異性として、○○さんが好きなんだ」
まっすぐに向けられた言葉。
胸の奥に届いたその響きは、けれど私の中で"弟のような存在"という重い蓋に押し留められてしまう。
「……天童くん」
「依存とか、特別とか、そういうんじゃない。ちゃんと、好きなんだよ」
その真剣さが伝わるほどに、苦しくなる。
彼の思いは間違いではない。
けれど──根底にあるのはやっぱり、不安や寂しさから私に向かってきた気持ちなのだと思えてしまう。
深夜に差し掛かるまで、彼の言葉を聞き続けた。
告白も、はっきりと受け取った。
それでも私は、笑みを作って答える。
「……もっと、いい男になってね」
途端に、彼の表情が曇る。
「それって、弟としてってこと? 俺は違うから」
「……私より、いい人がいるよ」
そう言いながら、彼の頭に手を伸ばして撫でた。
その仕草が余計に"弟扱い"だと分かっていながら──それしかできなかった。
彼は、フランスに行った。
