3 一日
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三月。
彼と会う約束の日。
メールでは何度かやり取りをしていたけれど、やはり直接顔を合わせるのは久しぶりだった。
大学には行かず、フランスに渡る──そう告げられたときは驚きよりも「あぁ、やっぱり」という納得が先にきた。
日本に収まりきらない、その奔放さも大胆さも、彼ならきっとやり遂げてしまうだろうという確信めいたものがある。
羨ましいと同時に、どこか憧れてしまう自分がいた。「欲しい物があるなら言ってみなさい。少しくらいなら、大人の余裕で買ってあげられるんだから」
電話口ではそう強がってみせたけれど──。
これから異国へ飛び立つ彼の買い物に付き合うことを想像すると、なんだか自分の胸の奥が落ち着かなくなった。
彼が言った「一日時間が欲しい」という言葉が、単なる気まぐれではなく、自分に向けられた確かな意志のように感じられて。
約束の時間は昼前。
少し奮発して財布にランチ代と買い物資金を忍ばせ、駅へ向かう。
休日の東京駅は人で賑わっていたけれど、改札を抜けた瞬間、すぐに見つけてしまった。
──赤髪。
人混みの中でもひときわ目を引く長身のシルエット。
「○○さーん!」
名前を大きな声で呼び、両腕を大げさに振ってみせる。
高校生のときから変わらない、少し子供っぽいようでいて、でもそれが彼自身の天真爛漫さそのものなのだと、思わず笑ってしまう。
「……ほんとに、よく目立つね」
「でしょ〜? わかりやすい方が見つけてもらえるかなって思って〜」
「十分すぎるくらい目立ってる」
笑い合いながら歩き出す。
ただそれだけなのに、どこか不思議な高揚感が胸に灯っていた。
彼にとって、この一日は何の意味を持つのだろう。
自分にとっては──どんな一日になるのだろう。
それをまだ知らないまま、春の空の下、二人の一日が始まろうとしていた。
彼と会う約束の日。
メールでは何度かやり取りをしていたけれど、やはり直接顔を合わせるのは久しぶりだった。
大学には行かず、フランスに渡る──そう告げられたときは驚きよりも「あぁ、やっぱり」という納得が先にきた。
日本に収まりきらない、その奔放さも大胆さも、彼ならきっとやり遂げてしまうだろうという確信めいたものがある。
羨ましいと同時に、どこか憧れてしまう自分がいた。「欲しい物があるなら言ってみなさい。少しくらいなら、大人の余裕で買ってあげられるんだから」
電話口ではそう強がってみせたけれど──。
これから異国へ飛び立つ彼の買い物に付き合うことを想像すると、なんだか自分の胸の奥が落ち着かなくなった。
彼が言った「一日時間が欲しい」という言葉が、単なる気まぐれではなく、自分に向けられた確かな意志のように感じられて。
約束の時間は昼前。
少し奮発して財布にランチ代と買い物資金を忍ばせ、駅へ向かう。
休日の東京駅は人で賑わっていたけれど、改札を抜けた瞬間、すぐに見つけてしまった。
──赤髪。
人混みの中でもひときわ目を引く長身のシルエット。
「○○さーん!」
名前を大きな声で呼び、両腕を大げさに振ってみせる。
高校生のときから変わらない、少し子供っぽいようでいて、でもそれが彼自身の天真爛漫さそのものなのだと、思わず笑ってしまう。
「……ほんとに、よく目立つね」
「でしょ〜? わかりやすい方が見つけてもらえるかなって思って〜」
「十分すぎるくらい目立ってる」
笑い合いながら歩き出す。
ただそれだけなのに、どこか不思議な高揚感が胸に灯っていた。
彼にとって、この一日は何の意味を持つのだろう。
自分にとっては──どんな一日になるのだろう。
それをまだ知らないまま、春の空の下、二人の一日が始まろうとしていた。
