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グラスの中のシャンパンが揺れる。
泡の音が静かに弾けるのを聞きながら、
俺は○○ちゃんの腰に自然な動作で手を添えた。
「うわ、天童さんとこ、本当仲良いよね〜!結婚してどれくらい? ずっとラブラブじゃん」
そんな言葉が隣のテーブルから聞こえてきて、俺はわざとらしく目を細めて笑った。
「まぁ〜……毎日、奥さんが可愛くて困ってるくらいかな?」
そう言うと、○○ちゃんが一瞬、ぴくりと肩を揺らしたのがわかった。
視線を横に送ると、彼女は俺の顔色をちらっと見る。
……うん、いい子。
こういうとき、言葉を選ばずにポンと冗談を返せる人もいるけど、○○ちゃんは違う。
ちゃんと「俺がどう言ってほしいか」を考えて、選ぶ。
空気を読むんじゃない。
"俺"を読むようになってる。
「えっと……私も、覚くんに、いつも助けてもらってて……」
少しぎこちない微笑みを浮かべて、彼女はそう答えた。
それがたまらなく愛しい。
……可愛いなぁ、ほんと。
もう、完璧に俺のものって感じ。
「ね〜、○○ちゃん、大人しいタイプだったよね? 天童さんみたいな明るい人と、どうやって出会ったの?」
「高校が一緒だったんです。でも当時は全然話してなくて……」
ぽつぽつと話しながらも、○○ちゃんの指は、
俺の手に触れたまま離れない。
"安心するように"ってふうを装ってるけど、
本当は「離したくない」って思ってる。
自分の意思でそうしてるつもりで、
もう、それしか選べないように、俺が組んでる。
「……へぇー! なんか運命だね〜!」
「運命かぁ。……ねぇ、○○ちゃん?」
言葉をかけながら、彼女の手を握る強さをほんの少しだけ増やす。
そうすると彼女は、ちゃんと微笑み返してくれる。
さっきよりも自然に、でも少しだけ表情がこわばってる。
周囲は気づかない。
気づいたとしても、"違和感"でしかない。
「……あれ、あの子、なんで旦那さんの顔色見てから喋ってるんだろう?」
「ちょっと、目の奥が疲れてるような……」
「でも幸せそうだし、ま、いっか」──その程度。
俺は誰にも嫌われないように笑う。
気さくで、面倒見が良くて、
奥さんにべた惚れな"いい夫"。
それを信じてくれたら、もうこっちの勝ち。
会場をひととおりまわり終える頃、○○ちゃんが小さく俺の耳元で言った。
「……ねぇ、そろそろ帰らない? ちょっと疲れちゃった」
うん、限界か。
じゃあ、甘く慰めて、締めくくろう。
「うん。ごめんね、無理させたね。……ほら、俺の方、もっと近く来て?」
そう言って、腰をぐっと引き寄せると、
周囲からまた「ほんと仲良いな〜!」と笑い声がこぼれる。
でも彼女はその瞬間──少しだけ、ほんの一瞬だけ、息を詰めた。
その音を、俺は聞き逃さない。
いいよ、いいよ。
怖がらなくていい。
全部、俺が守ってあげるんだから。
その代わり──全部、俺に委ねてね?
夜、車の中。
助手席で静かに目を伏せる○○ちゃんを、横目で見ながら。
窓の外には、夜景が流れていく。
「……○○ちゃん、さっきの人たちのこと、気にしてないよね?」
「えっ……うん、大丈夫だよ」
うん。ちゃんと、いい子だね。
「ほんとに? だって、"俺が好きすぎて困る"って話、あんまりしてなかったからさ。もしかして、照れてた?」
そう言って笑うと、○○ちゃんは少しだけ困ったように笑って、こっちに目を向けた。
「……うん。照れてただけ。……覚くんのこと、ちゃんと、好きだよ」
その答えを聞いて、満足そうに頷く。
「うん、知ってる。俺も、○○ちゃんのこと、
誰より大事だよ」
その言葉に嘘はない。
ただ、"大事"の意味が、周囲の人とちょっと違うだけ。
誰にも渡さない。
誰にも見せたくない。
誰にも、邪魔されたくない。
彼女の心も身体も、行動も視線も、
全部、俺のものであってほしい。
もう、そうじゃないと落ち着かない。
「……ねぇ、今夜、帰ったらさ」
信号で車を止めながら、ゆっくりと彼女の手に触れる。
「いっぱい愛していい?」
彼女の頬が赤くなる。
目が揺れて、でも、微かに首を縦に振る。
それでいい。
それがいい。
──なにも気づかないままで、
俺だけに溺れてくれれば。
朝。
カーテンの隙間から差し込む光の中で、
彼女は小さな声で、俺の名前を呼んだ。
目元が赤くて、涙の跡が残っている。
でも、表情はいつもの穏やかな笑顔のままだ。
「おはよう……覚くん」
「おはよう、○○ちゃん」
彼女の頬に触れて、涙の跡を指でなぞる。
「泣いてるじゃん、笑ってるのに」
そう言うと、彼女は困ったように笑った。
「わかんない……なんでだろ」
「……平気だよ。
その涙も、俺が全部、包んであげるから」
彼女の頭を胸に抱き寄せ、髪にキスを落とす。
優しくて、甘くて、穏やかな朝。
でもその中に確かにある、
"逃れられない"鎖の気配。
俺の腕の中にいる限り、
君は安心できる。
でも、もう──自由には、なれないんだよ。
それでいい。
それが、俺たちの"幸せ"なんだから。
〈終〉
泡の音が静かに弾けるのを聞きながら、
俺は○○ちゃんの腰に自然な動作で手を添えた。
「うわ、天童さんとこ、本当仲良いよね〜!結婚してどれくらい? ずっとラブラブじゃん」
そんな言葉が隣のテーブルから聞こえてきて、俺はわざとらしく目を細めて笑った。
「まぁ〜……毎日、奥さんが可愛くて困ってるくらいかな?」
そう言うと、○○ちゃんが一瞬、ぴくりと肩を揺らしたのがわかった。
視線を横に送ると、彼女は俺の顔色をちらっと見る。
……うん、いい子。
こういうとき、言葉を選ばずにポンと冗談を返せる人もいるけど、○○ちゃんは違う。
ちゃんと「俺がどう言ってほしいか」を考えて、選ぶ。
空気を読むんじゃない。
"俺"を読むようになってる。
「えっと……私も、覚くんに、いつも助けてもらってて……」
少しぎこちない微笑みを浮かべて、彼女はそう答えた。
それがたまらなく愛しい。
……可愛いなぁ、ほんと。
もう、完璧に俺のものって感じ。
「ね〜、○○ちゃん、大人しいタイプだったよね? 天童さんみたいな明るい人と、どうやって出会ったの?」
「高校が一緒だったんです。でも当時は全然話してなくて……」
ぽつぽつと話しながらも、○○ちゃんの指は、
俺の手に触れたまま離れない。
"安心するように"ってふうを装ってるけど、
本当は「離したくない」って思ってる。
自分の意思でそうしてるつもりで、
もう、それしか選べないように、俺が組んでる。
「……へぇー! なんか運命だね〜!」
「運命かぁ。……ねぇ、○○ちゃん?」
言葉をかけながら、彼女の手を握る強さをほんの少しだけ増やす。
そうすると彼女は、ちゃんと微笑み返してくれる。
さっきよりも自然に、でも少しだけ表情がこわばってる。
周囲は気づかない。
気づいたとしても、"違和感"でしかない。
「……あれ、あの子、なんで旦那さんの顔色見てから喋ってるんだろう?」
「ちょっと、目の奥が疲れてるような……」
「でも幸せそうだし、ま、いっか」──その程度。
俺は誰にも嫌われないように笑う。
気さくで、面倒見が良くて、
奥さんにべた惚れな"いい夫"。
それを信じてくれたら、もうこっちの勝ち。
会場をひととおりまわり終える頃、○○ちゃんが小さく俺の耳元で言った。
「……ねぇ、そろそろ帰らない? ちょっと疲れちゃった」
うん、限界か。
じゃあ、甘く慰めて、締めくくろう。
「うん。ごめんね、無理させたね。……ほら、俺の方、もっと近く来て?」
そう言って、腰をぐっと引き寄せると、
周囲からまた「ほんと仲良いな〜!」と笑い声がこぼれる。
でも彼女はその瞬間──少しだけ、ほんの一瞬だけ、息を詰めた。
その音を、俺は聞き逃さない。
いいよ、いいよ。
怖がらなくていい。
全部、俺が守ってあげるんだから。
その代わり──全部、俺に委ねてね?
夜、車の中。
助手席で静かに目を伏せる○○ちゃんを、横目で見ながら。
窓の外には、夜景が流れていく。
「……○○ちゃん、さっきの人たちのこと、気にしてないよね?」
「えっ……うん、大丈夫だよ」
うん。ちゃんと、いい子だね。
「ほんとに? だって、"俺が好きすぎて困る"って話、あんまりしてなかったからさ。もしかして、照れてた?」
そう言って笑うと、○○ちゃんは少しだけ困ったように笑って、こっちに目を向けた。
「……うん。照れてただけ。……覚くんのこと、ちゃんと、好きだよ」
その答えを聞いて、満足そうに頷く。
「うん、知ってる。俺も、○○ちゃんのこと、
誰より大事だよ」
その言葉に嘘はない。
ただ、"大事"の意味が、周囲の人とちょっと違うだけ。
誰にも渡さない。
誰にも見せたくない。
誰にも、邪魔されたくない。
彼女の心も身体も、行動も視線も、
全部、俺のものであってほしい。
もう、そうじゃないと落ち着かない。
「……ねぇ、今夜、帰ったらさ」
信号で車を止めながら、ゆっくりと彼女の手に触れる。
「いっぱい愛していい?」
彼女の頬が赤くなる。
目が揺れて、でも、微かに首を縦に振る。
それでいい。
それがいい。
──なにも気づかないままで、
俺だけに溺れてくれれば。
朝。
カーテンの隙間から差し込む光の中で、
彼女は小さな声で、俺の名前を呼んだ。
目元が赤くて、涙の跡が残っている。
でも、表情はいつもの穏やかな笑顔のままだ。
「おはよう……覚くん」
「おはよう、○○ちゃん」
彼女の頬に触れて、涙の跡を指でなぞる。
「泣いてるじゃん、笑ってるのに」
そう言うと、彼女は困ったように笑った。
「わかんない……なんでだろ」
「……平気だよ。
その涙も、俺が全部、包んであげるから」
彼女の頭を胸に抱き寄せ、髪にキスを落とす。
優しくて、甘くて、穏やかな朝。
でもその中に確かにある、
"逃れられない"鎖の気配。
俺の腕の中にいる限り、
君は安心できる。
でも、もう──自由には、なれないんだよ。
それでいい。
それが、俺たちの"幸せ"なんだから。
〈終〉
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