13
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ほんとは、
全部俺ひとりで終わらせるつもりだったんだよ。
段ボールの中身に、
彼女が触れる可能性なんて
──考えたくもなかった。
引っ越しの日。
新しい生活、新しい家。
○○ちゃんが浮かれてるの、
見てて可愛いって思ってた。
……でも。
俺の中には、明確な線引きがある。
触れてもいいものと、ダメなもの。
踏み込んでいい場所と、
絶対に触れさせたくない場所。
今回の荷物は、その後者。
俺の「好き」を記録したもの。
俺の「彼女」を保存したもの。
過去の○○ちゃん。
泣いてる声も、寝息も、
俺に見せなかった表情も、
全部、残ってる。
誰にも見せたことのない彼女の姿。
……もちろん、彼女自身にも。
だから俺は先回りして、「やらせて」って言った。
「重いから危ないよ」
「手伝わなくていいよ」
優しく、笑顔で。
それでも彼女の気持ちを潰さないように、
ちゃんと"彼女のため"に見せかけて。
なのに──
あの箱のフタを開けた瞬間、背筋が氷のように冷えた。
音でわかった。
テープをはがす、小さな音。
すぐに気づいて、リビングへ戻った。
何か冗談を言う余裕なんて、微塵もなかった。
その手元を見た瞬間───
俺の中の何かが、パキン、と音を立てて割れた気がした。
「……何してるの?」
彼女の肩がぴくりと跳ねたのがわかる。
……そう。君のその反応が、すごく正しい。
「……あ、ごめん、勝手に開けちゃった。何か資料かと思って」
「俺、あれ片付けるって言ってたよね?」
それ以上、言わないように喉を噛みしめた。
怒りじゃない。
──怖いって思った。
このまま見られたら、"彼女"が今のままでいられなくなる。
だから俺は、いつものように笑った。
「怒ってないよ〜。うん、全然。
ただ……ちょっと恥ずかしいかな」
フタを閉じて、
彼女の手からそっと箱を引き離す。
「なんか変な趣味だと思われたらやだし。
メモとか、過去のレシピとか、取っておきたくなるタイプなんだ〜」
ウソは言ってない。
でも、肝心な真実は何も渡さない。
彼女が何か言いかけたけど、
俺はそれをやさしくかき消すように、頭を撫でた。
「ほら、○○ちゃんの部屋、まだ飾ってないでしょ〜。ぬいぐるみ並べよ」
視線を誘導する。
不安を触れさせないように、甘く、柔らかく。
だけど──俺の中には、ひとつの"決意"が生まれていた。
もう、彼女には自由なんて与えない。
あの箱の中身に手を伸ばした瞬間──
彼女は、自分から"ここ"に踏み込んだ。
だったら、最後まで責任取ってもらわないと。
優しく、甘く、でも確実に。
彼女の意識が、"俺から離れられないように"。
その夜──
俺は彼女が寝たあと、そっとPCを開き、箱の中のメモリーカードを確認した。
映像の中の彼女は、知らないうちに髪をかきあげたり、口元に指を当てたり。
何気ない動きすら、俺にはたまらなく愛しく映る。
「……ほんと、もうちょっとで、見られるとこだったね」
画面越しに、彼女の寝顔を見ながら囁いた。
君は知らない。
この部屋のどこにカメラがあるのかも。
どの瞬間が記録されてるのかも。
でも、知らなくていいんだよ。
俺だけが知ってる“○○ちゃん”でいてくれれば、それでいい。
君の過去も、未来も、俺が管理するから。
──君は、俺だけを見て、俺だけに縋って生きていればいい。
そう、思ってることなんて、きっと彼女は一生気づかない。
……でも、それが一番、幸せでしょ?
全部俺ひとりで終わらせるつもりだったんだよ。
段ボールの中身に、
彼女が触れる可能性なんて
──考えたくもなかった。
引っ越しの日。
新しい生活、新しい家。
○○ちゃんが浮かれてるの、
見てて可愛いって思ってた。
……でも。
俺の中には、明確な線引きがある。
触れてもいいものと、ダメなもの。
踏み込んでいい場所と、
絶対に触れさせたくない場所。
今回の荷物は、その後者。
俺の「好き」を記録したもの。
俺の「彼女」を保存したもの。
過去の○○ちゃん。
泣いてる声も、寝息も、
俺に見せなかった表情も、
全部、残ってる。
誰にも見せたことのない彼女の姿。
……もちろん、彼女自身にも。
だから俺は先回りして、「やらせて」って言った。
「重いから危ないよ」
「手伝わなくていいよ」
優しく、笑顔で。
それでも彼女の気持ちを潰さないように、
ちゃんと"彼女のため"に見せかけて。
なのに──
あの箱のフタを開けた瞬間、背筋が氷のように冷えた。
音でわかった。
テープをはがす、小さな音。
すぐに気づいて、リビングへ戻った。
何か冗談を言う余裕なんて、微塵もなかった。
その手元を見た瞬間───
俺の中の何かが、パキン、と音を立てて割れた気がした。
「……何してるの?」
彼女の肩がぴくりと跳ねたのがわかる。
……そう。君のその反応が、すごく正しい。
「……あ、ごめん、勝手に開けちゃった。何か資料かと思って」
「俺、あれ片付けるって言ってたよね?」
それ以上、言わないように喉を噛みしめた。
怒りじゃない。
──怖いって思った。
このまま見られたら、"彼女"が今のままでいられなくなる。
だから俺は、いつものように笑った。
「怒ってないよ〜。うん、全然。
ただ……ちょっと恥ずかしいかな」
フタを閉じて、
彼女の手からそっと箱を引き離す。
「なんか変な趣味だと思われたらやだし。
メモとか、過去のレシピとか、取っておきたくなるタイプなんだ〜」
ウソは言ってない。
でも、肝心な真実は何も渡さない。
彼女が何か言いかけたけど、
俺はそれをやさしくかき消すように、頭を撫でた。
「ほら、○○ちゃんの部屋、まだ飾ってないでしょ〜。ぬいぐるみ並べよ」
視線を誘導する。
不安を触れさせないように、甘く、柔らかく。
だけど──俺の中には、ひとつの"決意"が生まれていた。
もう、彼女には自由なんて与えない。
あの箱の中身に手を伸ばした瞬間──
彼女は、自分から"ここ"に踏み込んだ。
だったら、最後まで責任取ってもらわないと。
優しく、甘く、でも確実に。
彼女の意識が、"俺から離れられないように"。
その夜──
俺は彼女が寝たあと、そっとPCを開き、箱の中のメモリーカードを確認した。
映像の中の彼女は、知らないうちに髪をかきあげたり、口元に指を当てたり。
何気ない動きすら、俺にはたまらなく愛しく映る。
「……ほんと、もうちょっとで、見られるとこだったね」
画面越しに、彼女の寝顔を見ながら囁いた。
君は知らない。
この部屋のどこにカメラがあるのかも。
どの瞬間が記録されてるのかも。
でも、知らなくていいんだよ。
俺だけが知ってる“○○ちゃん”でいてくれれば、それでいい。
君の過去も、未来も、俺が管理するから。
──君は、俺だけを見て、俺だけに縋って生きていればいい。
そう、思ってることなんて、きっと彼女は一生気づかない。
……でも、それが一番、幸せでしょ?
