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夢小説設定
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駅の改札を抜けて、
まだ少し肌寒い風が頬を撫でる時間帯。
今日は彼女が仕事終わりに俺の家に来る日。
だけど、約束の時間になっても姿が見えない。
スマホの画面をさっと開く。
地図アプリには、何も知らない彼女の名前と、ゆっくり動く位置情報のピン。
……ほんと、変なところで寄り道するんだもんなぁ〜。
思ってた方向とは少し違う裏路地で、動きが止まったのを見て、
なんとなく嫌な予感がした。
いや、"なんとなく"じゃない。
この感じ、今までも何度かあった。
そういう時に限って、彼女は人を信じやすくて、
ちょっと鈍感で……でも可愛いから、余計に危なっかしい。
だから俺は、毎回ちゃんと迎えに行ってる。
「たまたま近くにいた」って、嘘ついて。
今回も──例外じゃなかった。
角を曲がった先の暗がり、背を向ける彼女と、距離を詰めて話しかけている男の姿。
ちょっと軽い声。
馴れ馴れしい距離感。
彼女は困ったように笑ってるけど、
その笑みが引きつっているのはすぐ分かった。
「……○○ちゃん」
俺が名を呼ぶと、彼女の肩がピクリと震えた。
男が振り返る。
少し驚いた表情。
でも俺はそっちを見ない。
ただ、彼女の横まで歩いていって、
いつも通りの口調で話しかける。
「ごめんね、待たせちゃった? 来るのちょっと遅いから、心配になって見にきたんだ〜」
自然な笑顔を貼り付けながら、
彼女の手首を軽く取る。
そのまま手を繋ぐのではなく、
少しだけ親指で彼女の脈を撫でる。
──いつもより、ちょっと速いね。やっぱり緊張してたんだ。
男の方には一瞥もくれず、俺は彼女にだけ視線を向けた。
「大丈夫だった?」
その一言が、彼女の心を静かにえぐる。
"何が大丈夫?"なんて訊けない空気を、
わざと作る。
彼女は、小さく首を振った。
「うん……大丈夫。ごめんね、ちょっと迷ってただけ」
「そっか〜。じゃ、帰ろっか。寒いし、温かい飲み物用意してるよ」
そのまま自然に肩を抱くようにして、
彼女を自分の方へ引き寄せる。
男の気配はもう気にしていない。
というか、最初から"彼女に触れるための導線"に過ぎなかった。
家に着いてからも、
彼女はほんの少しだけ不安そうだった。
でも、俺の前ではそれを隠そうとしているのがわかる。
優しく笑いかける。
「大丈夫、○○ちゃん。今日は俺だけ見てて」
そう囁いて髪を撫でると、彼女はふっと表情を緩めた。
可愛いなぁ。
でもさ──
その"不安の正体"が俺だって気づいた時、
君はどんな顔をするんだろうね。
まだ少し肌寒い風が頬を撫でる時間帯。
今日は彼女が仕事終わりに俺の家に来る日。
だけど、約束の時間になっても姿が見えない。
スマホの画面をさっと開く。
地図アプリには、何も知らない彼女の名前と、ゆっくり動く位置情報のピン。
……ほんと、変なところで寄り道するんだもんなぁ〜。
思ってた方向とは少し違う裏路地で、動きが止まったのを見て、
なんとなく嫌な予感がした。
いや、"なんとなく"じゃない。
この感じ、今までも何度かあった。
そういう時に限って、彼女は人を信じやすくて、
ちょっと鈍感で……でも可愛いから、余計に危なっかしい。
だから俺は、毎回ちゃんと迎えに行ってる。
「たまたま近くにいた」って、嘘ついて。
今回も──例外じゃなかった。
角を曲がった先の暗がり、背を向ける彼女と、距離を詰めて話しかけている男の姿。
ちょっと軽い声。
馴れ馴れしい距離感。
彼女は困ったように笑ってるけど、
その笑みが引きつっているのはすぐ分かった。
「……○○ちゃん」
俺が名を呼ぶと、彼女の肩がピクリと震えた。
男が振り返る。
少し驚いた表情。
でも俺はそっちを見ない。
ただ、彼女の横まで歩いていって、
いつも通りの口調で話しかける。
「ごめんね、待たせちゃった? 来るのちょっと遅いから、心配になって見にきたんだ〜」
自然な笑顔を貼り付けながら、
彼女の手首を軽く取る。
そのまま手を繋ぐのではなく、
少しだけ親指で彼女の脈を撫でる。
──いつもより、ちょっと速いね。やっぱり緊張してたんだ。
男の方には一瞥もくれず、俺は彼女にだけ視線を向けた。
「大丈夫だった?」
その一言が、彼女の心を静かにえぐる。
"何が大丈夫?"なんて訊けない空気を、
わざと作る。
彼女は、小さく首を振った。
「うん……大丈夫。ごめんね、ちょっと迷ってただけ」
「そっか〜。じゃ、帰ろっか。寒いし、温かい飲み物用意してるよ」
そのまま自然に肩を抱くようにして、
彼女を自分の方へ引き寄せる。
男の気配はもう気にしていない。
というか、最初から"彼女に触れるための導線"に過ぎなかった。
家に着いてからも、
彼女はほんの少しだけ不安そうだった。
でも、俺の前ではそれを隠そうとしているのがわかる。
優しく笑いかける。
「大丈夫、○○ちゃん。今日は俺だけ見てて」
そう囁いて髪を撫でると、彼女はふっと表情を緩めた。
可愛いなぁ。
でもさ──
その"不安の正体"が俺だって気づいた時、
君はどんな顔をするんだろうね。
