休日。

いつの間にか、
映画やランチなんかの"普通のデート"は、ほとんどしなくなっていた。

「天気いいね〜」
「うん。でも外出るの面倒くさいでしょ。ほら○○ちゃんが来てくれるならそれだけで充分〜」

そうやって、彼女の"選択肢"を先回りして潰していく。

最初はさりげなく。
でも徐々に、確実に。

俺の部屋が、"彼女の居場所"になっていくように。

「……覚くんのところ、落ち着くから」

そんな言葉を聞くたびに、喉の奥で笑いたくなる。

落ち着かせてるんだよ、俺が。
君が"俺のもの"になっていくように、
少しずつ、甘く、深く。


今日はもう、昼過ぎからずっと部屋にいる。
映画を流しながら、ずっとソファでくっついていた。

俺の手が、彼女の指先を撫でるように遊びはじめたのは──たぶん彼女も気づいてる。


映画の内容なんて、もうどうでもよくて。

「……ねぇ、○○ちゃん」

「……ん」

彼女の耳元に唇を寄せる。
髪をかきあげて、そのうなじに、吐息をゆっくりかける。

「やっぱり、来てくれてよかった。
　俺さ、最近ほんとに、君がいない夜って眠れないんだよね」

ほんのちょっと、罪悪感を誘う言葉。
でもそれを笑顔で包んで、"俺のそばにいるのが当たり前"という空気を作っていく。

腕を引いて、彼女をソファに横たえる。
頬に手を添えて、ゆっくりと口づけを落とす。

「最近さ、ずっと思ってたんだけど──」

合間に、わざと途切れるように言葉を落とす。

「俺の家に来るたび、○○ちゃんって、すごく可愛くなるよね。……なんで？」

「な、何それ……っ」

真っ赤になるその顔が見たくて、言ってるだけ。

でも、もう彼女は気づいてるはず。

俺が求めれば、君は"応じてしまう"。
それがどんなふうに始まって、どこまで甘くて、どれだけ深くても──
きっと、もう逃げないって。

だって、身体に触れる指先を、彼女が自分から重ねてくるから。


「……もっと可愛くなって。俺のせいで」

耳元でそう囁いて、シーツの上へと彼女を導く。
ふたりで"甘く過ごす日"は、
だんだんと──この形ばかりになっていく。

でも、文句は言わない。
彼女自身が、俺の部屋に来るのを選んでるから。


電話やLINEの文面にも、
彼女の言葉にはっきりとは書かれない"寂しさ"が隠れていて。

それを甘さで潰して、熱でごまかして。

気づいたときには──
君の一週間の予定は、俺が組んでるのと同じになってる。

「○○ちゃん」

そう呼ぶたびに、心の奥がしびれる。

「ねぇ……来週も、また○○ちゃんの予定、俺にくれない？」

笑ってるけど、本気。
彼女の予定も、心も、身体も──全部、俺が握ってたい。


そのためなら、いくらでも優しくするし、
いくらでも甘く触れる。

だって、こうして"可愛がってるうち"に、全部奪えるんだから。