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ふたりで座ったソファ。
隣にいるのに、どうしてこんなに距離があるんだろうって思った。
──いや、私が開けたんだ。自分から。
彼は何も言わず、ゆっくりとワイングラスを回していた。
何でもないみたいな顔で。
だけど、すべて分かってるような空気をまとって。
(……もう、ほんと、ずるい)
グラスを置いて、私は静かに隣へ、少しだけ体をずらす。
その音に気づいて、彼がこちらを見る。
「……ん?」
ちょっとだけ驚いたような顔。
けれどすぐ、笑った。
声には出してないけれど、「そっか」って言ったような目で。
その顔を見た瞬間、私は反射的に、彼の胸に抱きついた。
ぎゅっと、胸の前に手を添えて、顔を押し当てて。
恋人同士みたいな、甘いやつじゃない。
……たぶん、子どもが不安になったときに、お兄ちゃんにしがみつくみたいな、そんなの。
彼の肩が、びくって少しだけ揺れた。
「……○○ちゃん?」
びっくりしたみたいな声。
私は目を閉じたまま、小さな声で言った。
「びっくりした?」
彼の体が、静かに笑った気がした。
声じゃなく、空気が笑った。
「うん、ちょっとだけ。……なんか、可愛いのきたな〜って」
私はそのまま、彼の服の匂いを吸い込んだ。
洗剤の香りと、ワインと……うっすら甘い、カカオの残り香。
(ほんとはね、ぎゅってされたいの。
キスもしたいし、もっと…って思ってる。
でも、彼は"無理に何かしようとは思ってない"って言った。
……私から言わない限り、きっと触れてこない)
それが誠実さであることもわかってるし、
ちゃんと尊重してくれてるのもわかってる。
でも、その"待ってるよ"って空気が、時々くやしい。
なんでもかんでも私の気持ちに任せてくれる、あの余裕が。
……だから。
私は、ふざけたふりして、ちょっとだけ"壊した"。
この空気を、甘いままじゃ終わらせたくなかったから。
彼の腕の中で、小さく笑ってみせる。
「なに、その顔……。笑いすぎ」
「だってさ〜、まさかこんな風に来ると思わなかったんだもん」
「子どもっぽかった?」
「ううん。……可愛かった」
彼はそう言って、頭をそっと撫でた。
──あぁ、だめだな。
私のこの"ふざけた抱きつき"すら、甘さに変えちゃうんだ、この人は。
だからたぶん、私はまた負ける。
だけど、それでも。
私はもう、ここが心地よくて、悔しくて、離れられなくなってる。
隣にいるのに、どうしてこんなに距離があるんだろうって思った。
──いや、私が開けたんだ。自分から。
彼は何も言わず、ゆっくりとワイングラスを回していた。
何でもないみたいな顔で。
だけど、すべて分かってるような空気をまとって。
(……もう、ほんと、ずるい)
グラスを置いて、私は静かに隣へ、少しだけ体をずらす。
その音に気づいて、彼がこちらを見る。
「……ん?」
ちょっとだけ驚いたような顔。
けれどすぐ、笑った。
声には出してないけれど、「そっか」って言ったような目で。
その顔を見た瞬間、私は反射的に、彼の胸に抱きついた。
ぎゅっと、胸の前に手を添えて、顔を押し当てて。
恋人同士みたいな、甘いやつじゃない。
……たぶん、子どもが不安になったときに、お兄ちゃんにしがみつくみたいな、そんなの。
彼の肩が、びくって少しだけ揺れた。
「……○○ちゃん?」
びっくりしたみたいな声。
私は目を閉じたまま、小さな声で言った。
「びっくりした?」
彼の体が、静かに笑った気がした。
声じゃなく、空気が笑った。
「うん、ちょっとだけ。……なんか、可愛いのきたな〜って」
私はそのまま、彼の服の匂いを吸い込んだ。
洗剤の香りと、ワインと……うっすら甘い、カカオの残り香。
(ほんとはね、ぎゅってされたいの。
キスもしたいし、もっと…って思ってる。
でも、彼は"無理に何かしようとは思ってない"って言った。
……私から言わない限り、きっと触れてこない)
それが誠実さであることもわかってるし、
ちゃんと尊重してくれてるのもわかってる。
でも、その"待ってるよ"って空気が、時々くやしい。
なんでもかんでも私の気持ちに任せてくれる、あの余裕が。
……だから。
私は、ふざけたふりして、ちょっとだけ"壊した"。
この空気を、甘いままじゃ終わらせたくなかったから。
彼の腕の中で、小さく笑ってみせる。
「なに、その顔……。笑いすぎ」
「だってさ〜、まさかこんな風に来ると思わなかったんだもん」
「子どもっぽかった?」
「ううん。……可愛かった」
彼はそう言って、頭をそっと撫でた。
──あぁ、だめだな。
私のこの"ふざけた抱きつき"すら、甘さに変えちゃうんだ、この人は。
だからたぶん、私はまた負ける。
だけど、それでも。
私はもう、ここが心地よくて、悔しくて、離れられなくなってる。
