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カラン、とベルが鳴った瞬間。
視界に入るよりも早く、誰が来たのかわかっていた。
靴音、入ってくる間合い、呼吸の置き方。
少し躊躇してからドアを開ける感じも。
──全部、君だ。
(来たね、○○ちゃん)
俺の提案に返事をしに来た。
言葉にするかどうかはわからないけど、それでも来た。
それが、全てだった。
「やあ、来てくれたんだね〜。ちょっと待ってね」
あくまで自然に。
いつもと同じトーンで。
でも、さりげなく彼女の視線の先に
「Reserved」と書かれた札を置いたテーブルを見せる。
「ここ、今日だけ特別に取っておいたんだ。……なんとなく、来てくれる気がしてたから」
ほんとうは、
彼女が来なかったらどうしようなんて一度も考えていない。
彼女の不安も、罪悪感も、優しさも、
ぜんぶ俺の手のひらの上に乗ってる。
彼女が小さく笑って、でもどこか照れ隠しのように視線を落とす。
「……来てごめんなさい」とでも言いたげな気配が、彼女の仕草に混じる。
(ごめん、なんて言う必要、ほんとはないのにね)
だけど──そう思わせるのも、俺の仕掛けだった。
「……返事とか、まだ無理にしなくていいからね〜」
「ただ、来てくれたってことが、もうすっごく嬉しかっただけだから」
優しく微笑んで、
彼女が罪悪感に浸る余白を残しておく。
"まだ言葉にしてないのに優しくされる"
それは、人を縛るにはとても効果的な魔法だ。
「チョコの名前、ほら。
君がつけてくれたやつ、採用になったんだよ〜」
あのとき彼女がぽつりと出した単語を、
スタッフには"決定事項"として伝えておいた。
「商品名、パッケージに印字するよ」
「……君が考えてくれたって、誰にも言わないけど」
彼女の中で、"わたしだけが知ってること"がまた増える。
そうやって、距離を縮めるのではなく、
逃げ場を、奪っていく。
「……それって、ほんとに私でよかったの?」
彼女がポツリと呟いた声に、
少しだけ表情を落として見せる。
「そう言うと思った〜」
小さく笑いながら、
手のひらを彼女の指の近くにそっと置く。
触れない。でも、距離は限りなく近く。
「でも、俺ね。○○ちゃんじゃなかったら、
たぶん、あのチョコ完成してなかったと思うんだよね」
淡々と。
でもしっかりと、彼女の"自己価値"をくすぐる。
「俺にとって、君が必要だったんだよ」
その言葉が、
どれだけ彼女の心を支配するか。
(……君が、"恋愛"を本気でしてきた回数なんて、多くないのはわかってる)
恋人にすら名前を呼ばれなかったって言ってたよね?
敬語を混ぜて話すことが落ち着くって言ってた。
つまり君は、『大事にされることに飢えてる』
でも、それを人に知られたくないから、
"ちゃんとした距離"と"最低限の礼儀"を守ろうとする。
そのすべてを俺は、見抜いた上で、崩す。
「ねえ、○○ちゃん」
少しだけトーンを落として、声をかける。
「……誰かに"必要"だって言われたこと、最近あった?」
沈黙。
彼女のまつ毛が揺れる。
たぶん、うまく答えられないはずだ。
「俺にとっては、君がそうなんだよ。
別に恋人って名前が欲しかったんじゃなくてさ……
君が、俺の"特別"ってことだけ伝えたかっただけ」
どこまでも優しい声音で、
どこまでも甘くて、逃げられない言葉で。
君は、まだ俺に気づいてない。
君の行動範囲も、苦手なことも、休日の過ごし方も、
心が揺れるポイントも。
俺が全部知ってることに。
気づかない君は拙くて可愛くて、
でも、すでに充分すぎるほど絡め取られてる。
これでまた、一歩。
"君が、自分の足で選んだ"ように見せて、
俺の檻に、自分から入ってくれた。
ここが、どんなに甘くて優しい牢屋だとしても──
もう君には、気づけない。
視界に入るよりも早く、誰が来たのかわかっていた。
靴音、入ってくる間合い、呼吸の置き方。
少し躊躇してからドアを開ける感じも。
──全部、君だ。
(来たね、○○ちゃん)
俺の提案に返事をしに来た。
言葉にするかどうかはわからないけど、それでも来た。
それが、全てだった。
「やあ、来てくれたんだね〜。ちょっと待ってね」
あくまで自然に。
いつもと同じトーンで。
でも、さりげなく彼女の視線の先に
「Reserved」と書かれた札を置いたテーブルを見せる。
「ここ、今日だけ特別に取っておいたんだ。……なんとなく、来てくれる気がしてたから」
ほんとうは、
彼女が来なかったらどうしようなんて一度も考えていない。
彼女の不安も、罪悪感も、優しさも、
ぜんぶ俺の手のひらの上に乗ってる。
彼女が小さく笑って、でもどこか照れ隠しのように視線を落とす。
「……来てごめんなさい」とでも言いたげな気配が、彼女の仕草に混じる。
(ごめん、なんて言う必要、ほんとはないのにね)
だけど──そう思わせるのも、俺の仕掛けだった。
「……返事とか、まだ無理にしなくていいからね〜」
「ただ、来てくれたってことが、もうすっごく嬉しかっただけだから」
優しく微笑んで、
彼女が罪悪感に浸る余白を残しておく。
"まだ言葉にしてないのに優しくされる"
それは、人を縛るにはとても効果的な魔法だ。
「チョコの名前、ほら。
君がつけてくれたやつ、採用になったんだよ〜」
あのとき彼女がぽつりと出した単語を、
スタッフには"決定事項"として伝えておいた。
「商品名、パッケージに印字するよ」
「……君が考えてくれたって、誰にも言わないけど」
彼女の中で、"わたしだけが知ってること"がまた増える。
そうやって、距離を縮めるのではなく、
逃げ場を、奪っていく。
「……それって、ほんとに私でよかったの?」
彼女がポツリと呟いた声に、
少しだけ表情を落として見せる。
「そう言うと思った〜」
小さく笑いながら、
手のひらを彼女の指の近くにそっと置く。
触れない。でも、距離は限りなく近く。
「でも、俺ね。○○ちゃんじゃなかったら、
たぶん、あのチョコ完成してなかったと思うんだよね」
淡々と。
でもしっかりと、彼女の"自己価値"をくすぐる。
「俺にとって、君が必要だったんだよ」
その言葉が、
どれだけ彼女の心を支配するか。
(……君が、"恋愛"を本気でしてきた回数なんて、多くないのはわかってる)
恋人にすら名前を呼ばれなかったって言ってたよね?
敬語を混ぜて話すことが落ち着くって言ってた。
つまり君は、『大事にされることに飢えてる』
でも、それを人に知られたくないから、
"ちゃんとした距離"と"最低限の礼儀"を守ろうとする。
そのすべてを俺は、見抜いた上で、崩す。
「ねえ、○○ちゃん」
少しだけトーンを落として、声をかける。
「……誰かに"必要"だって言われたこと、最近あった?」
沈黙。
彼女のまつ毛が揺れる。
たぶん、うまく答えられないはずだ。
「俺にとっては、君がそうなんだよ。
別に恋人って名前が欲しかったんじゃなくてさ……
君が、俺の"特別"ってことだけ伝えたかっただけ」
どこまでも優しい声音で、
どこまでも甘くて、逃げられない言葉で。
君は、まだ俺に気づいてない。
君の行動範囲も、苦手なことも、休日の過ごし方も、
心が揺れるポイントも。
俺が全部知ってることに。
気づかない君は拙くて可愛くて、
でも、すでに充分すぎるほど絡め取られてる。
これでまた、一歩。
"君が、自分の足で選んだ"ように見せて、
俺の檻に、自分から入ってくれた。
ここが、どんなに甘くて優しい牢屋だとしても──
もう君には、気づけない。
