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君が初めて、俺の前で「名前」を書いた日。
白いメモ用紙の端っこに、丁寧に綴られた文字列を見た瞬間。
本当の意味で"俺のもの"になったような気がした。
「名前を一緒に考えてくれない?」
それだけの言葉なのに、
彼女の表情が少しだけ柔らかくなる。
"頼られている"ことへの嬉しさ。
"自分だけが知っている試作"への誇らしさ。
その感情を俺は、
彼女のまぶたの動き、眉間の緩み、
呼吸の間合いですべて読み取ってる。
本当は、もう完成していたチョコだ。
スタッフにも意見をもらい、名前も仮で決まっていた。
けど、それはどうでもよかった。
このチョコの名前が決まるプロセスに、君を組み込みたかった。
"彼女と一緒に作った"という形に変えれば、
彼女の中でこの店と俺との距離は、
もう切り離せないほど曖昧になる。
「こういうの、初めてなんです」
そう言って小さな紙にペンを走らせる彼女を見て、
俺は心の中で静かに笑ってた。
(うん、知ってる)
"味に名前をつける"という行為にどんな心理的な効果があるか、
ちゃんと知ったうえで頼んでる。
クリエイティブな作業に関わることで、
人はそこに自分の感情を置くようになる。
つまり、この一粒のチョコに、
君はもう自分の時間と感情を注いでくれたんだ。
「俺、この名前、すごく気に入った」
返す言葉は、それだけ。
でも、彼女がふいに視線を伏せたのを見逃さない。
誇らしさと戸惑い。
それが交差する顔は、ほんとうにかわいい。
(こんなに単純で、こんなに不器用で、
こんなにも俺のことを信じてる)
君は、自分が"落ちている"ことに気づいていない。
でも、それがいちばん美しい形なんだ。
もちろん、何もかも偶然じゃなかった。
偶然出会ったフリをした再会も。
彼女の行動範囲を、天気と移動経路と習慣から予測したことも。
SNSをやっていない代わりに、
近くの美術館の展示予定を把握して、
神社の祭事日を狙って行動したことも。
「ばったり会った」──その数秒のために、
何日も前から"仕込み"をしていた。
だけど彼女は、それを知らない。
知るはずもない。
俺がどれだけ"先回り"して彼女を導いていたかなんて、
想像すらしていない。
その"拙さ"が愛しくて、可笑しくて、
俺の心をますます溶かしていく。
(ほんとに、いい子だよね。)
落とすのは簡単だった。
でも、それじゃ意味がなかった。
君に"自分の意志でここにいる"と錯覚させたまま、
俺に惹かれていく過程を味わいたかったんだ。
そして、今。
「……ねえ、○○ちゃん。
俺と、恋人になってみない?」
そう言ったときの君の顔が、
"ここまでの全部"を報われた瞬間だった。
「……え?」
予想もしてなかったって顔をしながら、
耳まで赤くして、戸惑って。
でも、目はどこか期待してて──
(ああ、やっぱり、君はずるい)
こんなに素直で、疑いもしない。
こんなに誰かを信じられる人間が、
俺の言葉を真っ直ぐに受け取ってしまう。
だからこそ、君に全部を話すつもりはない。
俺がどれだけ仕掛けたかも、
どれだけ君の心を先に読んでいたかも。
知らないままでいい。
ただ、"恋人"という関係が君の口から初めて語られるその日まで、
俺はまた少しずつ次の手を仕込むだけ。
(この関係は、俺が作った。君が選んだんじゃない)
でも君が、「私は、好きで俺を選んだ」
そう信じるようになるまで、
俺は優しい笑顔のまま、
すべてを整えていく。
白いメモ用紙の端っこに、丁寧に綴られた文字列を見た瞬間。
本当の意味で"俺のもの"になったような気がした。
「名前を一緒に考えてくれない?」
それだけの言葉なのに、
彼女の表情が少しだけ柔らかくなる。
"頼られている"ことへの嬉しさ。
"自分だけが知っている試作"への誇らしさ。
その感情を俺は、
彼女のまぶたの動き、眉間の緩み、
呼吸の間合いですべて読み取ってる。
本当は、もう完成していたチョコだ。
スタッフにも意見をもらい、名前も仮で決まっていた。
けど、それはどうでもよかった。
このチョコの名前が決まるプロセスに、君を組み込みたかった。
"彼女と一緒に作った"という形に変えれば、
彼女の中でこの店と俺との距離は、
もう切り離せないほど曖昧になる。
「こういうの、初めてなんです」
そう言って小さな紙にペンを走らせる彼女を見て、
俺は心の中で静かに笑ってた。
(うん、知ってる)
"味に名前をつける"という行為にどんな心理的な効果があるか、
ちゃんと知ったうえで頼んでる。
クリエイティブな作業に関わることで、
人はそこに自分の感情を置くようになる。
つまり、この一粒のチョコに、
君はもう自分の時間と感情を注いでくれたんだ。
「俺、この名前、すごく気に入った」
返す言葉は、それだけ。
でも、彼女がふいに視線を伏せたのを見逃さない。
誇らしさと戸惑い。
それが交差する顔は、ほんとうにかわいい。
(こんなに単純で、こんなに不器用で、
こんなにも俺のことを信じてる)
君は、自分が"落ちている"ことに気づいていない。
でも、それがいちばん美しい形なんだ。
もちろん、何もかも偶然じゃなかった。
偶然出会ったフリをした再会も。
彼女の行動範囲を、天気と移動経路と習慣から予測したことも。
SNSをやっていない代わりに、
近くの美術館の展示予定を把握して、
神社の祭事日を狙って行動したことも。
「ばったり会った」──その数秒のために、
何日も前から"仕込み"をしていた。
だけど彼女は、それを知らない。
知るはずもない。
俺がどれだけ"先回り"して彼女を導いていたかなんて、
想像すらしていない。
その"拙さ"が愛しくて、可笑しくて、
俺の心をますます溶かしていく。
(ほんとに、いい子だよね。)
落とすのは簡単だった。
でも、それじゃ意味がなかった。
君に"自分の意志でここにいる"と錯覚させたまま、
俺に惹かれていく過程を味わいたかったんだ。
そして、今。
「……ねえ、○○ちゃん。
俺と、恋人になってみない?」
そう言ったときの君の顔が、
"ここまでの全部"を報われた瞬間だった。
「……え?」
予想もしてなかったって顔をしながら、
耳まで赤くして、戸惑って。
でも、目はどこか期待してて──
(ああ、やっぱり、君はずるい)
こんなに素直で、疑いもしない。
こんなに誰かを信じられる人間が、
俺の言葉を真っ直ぐに受け取ってしまう。
だからこそ、君に全部を話すつもりはない。
俺がどれだけ仕掛けたかも、
どれだけ君の心を先に読んでいたかも。
知らないままでいい。
ただ、"恋人"という関係が君の口から初めて語られるその日まで、
俺はまた少しずつ次の手を仕込むだけ。
(この関係は、俺が作った。君が選んだんじゃない)
でも君が、「私は、好きで俺を選んだ」
そう信じるようになるまで、
俺は優しい笑顔のまま、
すべてを整えていく。
