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彼女が今日も来るかどうか──
正直、五分五分だった。
ここ最近は、俺が追うよりも"来させる側"に立っていたから。
ほんの少しだけ足を止めてくれること。
渡した試作品を手にして、どんな顔をするのかを想像するだけで、
俺の方がどうしようもなく楽しくなってしまっていた。
来なければ、追えばいい。
来たら、落とせばいい。
そんなふうに割り切れたらいいのに。
君が目の前に現れるたび、俺の心がほんの一瞬だけ甘くなるのが、面倒くさい。
(わかってるんだよ、○○ちゃん)
君が"他の人と違う扱い"に気づき始めてること。
でも、それを恋だと認めるには、まだ自分を縛ってること。
君のプライドと自己防衛は、思ったよりも深い。
自分が他人より優れているとは思っていないくせに、
それでも「選ばれたい」と願ってしまう君の気質は、すごく人間らしい。
そして、俺は──
そういう人間らしさが、一番好きだ。
店の奥に小さなガラスケースを一つ用意する。
明日から出すつもりの季節のチョコ。
そこに並べる前に、彼女に見せる。
「名前、まだ決めてないんだ〜。
ねえ、○○ちゃんだったらどうする?」
本当はもう三つ候補があって、
スタッフとも相談済み。
でも、そんなことは言わない。
君が考えた名前が、採用されるように仕向けるだけ。
"君だけが知ってるチョコレート"を作ってしまえば、
もう君はこの関係から抜けられない。
そのことを君はまだ知らない。
でも、気づかせないまま、足元に甘い罠を敷き詰めていく。
「……俺、恋人とかいないし」
そう言ったときの彼女の、あのちょっとした反応も、
全部覚えてる。
一瞬だけ遅れた目線。
言葉の調整。
"聞かされた"側の反応じゃない。
"自分がどう受け取るべきか"を探ってた顔だった。
君はもう、俺の言葉を"関係性の中"で受け取ろうとしてる。
その時点で、勝負はほとんど決まってるんだ。
でも、俺は決して焦らない。
呼び捨てにはまだ慣れてない。
「恋人」というラベルがないと不安。
そんな過去があることも、何となく読めている。
だから、俺からは絶対に関係性に"名前"をつけない。
"曖昧なまま"進めていく。
その不安と甘さの混在が、君の感情を育てる。
「この関係、名前なんていらないよ」
なんて言うつもりはない。
でも、"名前がない関係"に、
君が初めて「苦しくない」と思えたとき──
それが、俺の勝ちなんだ。
店の奥。
君が紙とペンを手にして、チョコの名前を考える姿を見ながら、俺は静かに思う。
(○○ちゃん、君は今──
"俺の作品に触れてる"んじゃない)
(君自身が、俺の作品の一部になりかけてるんだ)
次にチョコに名前がついたとき、
それは、"君の名残"と"俺の支配"が同居したものになる。
正直、五分五分だった。
ここ最近は、俺が追うよりも"来させる側"に立っていたから。
ほんの少しだけ足を止めてくれること。
渡した試作品を手にして、どんな顔をするのかを想像するだけで、
俺の方がどうしようもなく楽しくなってしまっていた。
来なければ、追えばいい。
来たら、落とせばいい。
そんなふうに割り切れたらいいのに。
君が目の前に現れるたび、俺の心がほんの一瞬だけ甘くなるのが、面倒くさい。
(わかってるんだよ、○○ちゃん)
君が"他の人と違う扱い"に気づき始めてること。
でも、それを恋だと認めるには、まだ自分を縛ってること。
君のプライドと自己防衛は、思ったよりも深い。
自分が他人より優れているとは思っていないくせに、
それでも「選ばれたい」と願ってしまう君の気質は、すごく人間らしい。
そして、俺は──
そういう人間らしさが、一番好きだ。
店の奥に小さなガラスケースを一つ用意する。
明日から出すつもりの季節のチョコ。
そこに並べる前に、彼女に見せる。
「名前、まだ決めてないんだ〜。
ねえ、○○ちゃんだったらどうする?」
本当はもう三つ候補があって、
スタッフとも相談済み。
でも、そんなことは言わない。
君が考えた名前が、採用されるように仕向けるだけ。
"君だけが知ってるチョコレート"を作ってしまえば、
もう君はこの関係から抜けられない。
そのことを君はまだ知らない。
でも、気づかせないまま、足元に甘い罠を敷き詰めていく。
「……俺、恋人とかいないし」
そう言ったときの彼女の、あのちょっとした反応も、
全部覚えてる。
一瞬だけ遅れた目線。
言葉の調整。
"聞かされた"側の反応じゃない。
"自分がどう受け取るべきか"を探ってた顔だった。
君はもう、俺の言葉を"関係性の中"で受け取ろうとしてる。
その時点で、勝負はほとんど決まってるんだ。
でも、俺は決して焦らない。
呼び捨てにはまだ慣れてない。
「恋人」というラベルがないと不安。
そんな過去があることも、何となく読めている。
だから、俺からは絶対に関係性に"名前"をつけない。
"曖昧なまま"進めていく。
その不安と甘さの混在が、君の感情を育てる。
「この関係、名前なんていらないよ」
なんて言うつもりはない。
でも、"名前がない関係"に、
君が初めて「苦しくない」と思えたとき──
それが、俺の勝ちなんだ。
店の奥。
君が紙とペンを手にして、チョコの名前を考える姿を見ながら、俺は静かに思う。
(○○ちゃん、君は今──
"俺の作品に触れてる"んじゃない)
(君自身が、俺の作品の一部になりかけてるんだ)
次にチョコに名前がついたとき、
それは、"君の名残"と"俺の支配"が同居したものになる。
