お相手宮田くんの原作沿い連載です
長編
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09 近づく距離
偶然、宮田くんがプロボクサーだという事を知って、
勢いで、生まれて初めてボクシングの試合を観に行った。
試合の後、宮田くんを待ち伏せして、
ふたりで並んで帰って以来、
あたしは宮田くんのことをよく考えるようになった。
ボクシング雑誌を読んで、
ボクシングがどういうスポーツなのかも勉強した。
体重別に階級が決められていること。
ライセンスは三種類あって、
4回戦から始まるC級は十七歳から取れるライセンスだということ。
4回戦というのは、1R三分間を4R戦うこと。
テレビでよくやってる世界タイトルマッチなんかは12回戦で、
日本で認められているのはWBAとWBCの二団体ということ。
宮田くんに言うと、
「それは常識」と一蹴されたけど。
足を止めて戦うインファイターと、
軽やかなフットワークで相手を翻弄するアウトボクサーがあって、
宮田くんは後者の方。
相手のパンチを誘ってかわし、
その力を利用するカウンターを得意としていて、
前の試合はそのカウンターでKOしたんだよね、と言うと、
ちょっと驚いてたみたいだった。
(まぁほとんどが雑誌の受け売りだけど)
そんな風に、最近はバイト先でも
空いた時間に色々話をするようになった。
とは言っても、専らあたしの方から話しかけないと始まらないのだけれど、それでも前のように会話が続かないということは、もうなかった。
「佐倉さんって美術系の大学に行ってるんですか?」
七月に入り、ちょうど夏休みに入った頃。
珍しく宮田くんの方から話しかけてきた。
しかも、あたしに質問なんてびっくりだ。
「ううん、違うよ。普通の文系だけど…何で?」
宮田くんは高校生で、世間一般でいう受験生だけど、
進学はしないって前に店長と話してたのを聞いたことがある。
今となっては、それも理解できるんだけど、
どうしてそんな事聞くんだろう。
「佐倉さん、絵描いてる時は別人だから」
「?なんであたしが絵描くの知って…あぁ、あの時?」
以前、緑地公園で急な雨に遭い、
困っていたところを助けられたことを思い出す。
降り出した雨に濡れないよう、
荷物を庇ってうずくまってたところに、
宮田くんが通りかかって助けてくれた。
だから絵を描いてるところは見られてないはずで。
確かにあたしは、時間を見つけてはあの場所に出掛けていたけれど、
あの日以外、宮田くんに会ったことは一度もない。
「緑地公園。ロードワークのコースなんですよ」
「そうなの?!見かけたんなら声かけてよ。何、ストーカー?」
「…あのな。だから、声かけられる雰囲気じゃないんですよ、佐倉さんの方が」
「そ、そうかな」
「声かけても、まず聞こえてなさそうだし。だからあの日も、雨が降り出すまで全く気付かなかったんじゃないんですか」
そう言われればそうかもしれない。
絵を描いてる時、あたしは限りなく無になっている。
「好きなんですね、絵」
「うん、好きだよ、絵を描くのは。こう見えても高校の美術部で部長だったのよ」
エヘン、と威張ってみると、
宮田くんはちょっと意外そうな顔をした。
「絵も好きだけど、編集の仕事にも興味あってね。出版関係の仕事に就けば、編集とデザインの両方できるかなぁと思って、それで今の大学を選んだの」
「へぇ。案外ちゃんと考えてるんですね。ボーっとしてるように見えて」
「一言多いっ」
振りかざしたあたしの拳は、いとも簡単にかわされる。
「ちょっと、素人相手にフットワーク使わないでよ」
「そんなもん使わなくても佐倉さんの動きくらい避けれますよ」
「もー。ホント生意気なんだから」
むくれるあたしに、宮田くんはフッと表情を和らげる。
最近宮田くんは時々こうやって笑うようになった。
そしてその度にあたしは、
胸の奥がくすぐったくなった。
2009/02/16 PCUP
+++++atogaki+++++
宮田くんが、フッと笑ってくれたらもうそれだけで十分です。安上がりな女だなわたし(笑)
ていうか。
このお話で宮田くんがまともにヒロインさんの名前呼んだの初めてじゃない?
偶然、宮田くんがプロボクサーだという事を知って、
勢いで、生まれて初めてボクシングの試合を観に行った。
試合の後、宮田くんを待ち伏せして、
ふたりで並んで帰って以来、
あたしは宮田くんのことをよく考えるようになった。
ボクシング雑誌を読んで、
ボクシングがどういうスポーツなのかも勉強した。
体重別に階級が決められていること。
ライセンスは三種類あって、
4回戦から始まるC級は十七歳から取れるライセンスだということ。
4回戦というのは、1R三分間を4R戦うこと。
テレビでよくやってる世界タイトルマッチなんかは12回戦で、
日本で認められているのはWBAとWBCの二団体ということ。
宮田くんに言うと、
「それは常識」と一蹴されたけど。
足を止めて戦うインファイターと、
軽やかなフットワークで相手を翻弄するアウトボクサーがあって、
宮田くんは後者の方。
相手のパンチを誘ってかわし、
その力を利用するカウンターを得意としていて、
前の試合はそのカウンターでKOしたんだよね、と言うと、
ちょっと驚いてたみたいだった。
(まぁほとんどが雑誌の受け売りだけど)
そんな風に、最近はバイト先でも
空いた時間に色々話をするようになった。
とは言っても、専らあたしの方から話しかけないと始まらないのだけれど、それでも前のように会話が続かないということは、もうなかった。
「佐倉さんって美術系の大学に行ってるんですか?」
七月に入り、ちょうど夏休みに入った頃。
珍しく宮田くんの方から話しかけてきた。
しかも、あたしに質問なんてびっくりだ。
「ううん、違うよ。普通の文系だけど…何で?」
宮田くんは高校生で、世間一般でいう受験生だけど、
進学はしないって前に店長と話してたのを聞いたことがある。
今となっては、それも理解できるんだけど、
どうしてそんな事聞くんだろう。
「佐倉さん、絵描いてる時は別人だから」
「?なんであたしが絵描くの知って…あぁ、あの時?」
以前、緑地公園で急な雨に遭い、
困っていたところを助けられたことを思い出す。
降り出した雨に濡れないよう、
荷物を庇ってうずくまってたところに、
宮田くんが通りかかって助けてくれた。
だから絵を描いてるところは見られてないはずで。
確かにあたしは、時間を見つけてはあの場所に出掛けていたけれど、
あの日以外、宮田くんに会ったことは一度もない。
「緑地公園。ロードワークのコースなんですよ」
「そうなの?!見かけたんなら声かけてよ。何、ストーカー?」
「…あのな。だから、声かけられる雰囲気じゃないんですよ、佐倉さんの方が」
「そ、そうかな」
「声かけても、まず聞こえてなさそうだし。だからあの日も、雨が降り出すまで全く気付かなかったんじゃないんですか」
そう言われればそうかもしれない。
絵を描いてる時、あたしは限りなく無になっている。
「好きなんですね、絵」
「うん、好きだよ、絵を描くのは。こう見えても高校の美術部で部長だったのよ」
エヘン、と威張ってみると、
宮田くんはちょっと意外そうな顔をした。
「絵も好きだけど、編集の仕事にも興味あってね。出版関係の仕事に就けば、編集とデザインの両方できるかなぁと思って、それで今の大学を選んだの」
「へぇ。案外ちゃんと考えてるんですね。ボーっとしてるように見えて」
「一言多いっ」
振りかざしたあたしの拳は、いとも簡単にかわされる。
「ちょっと、素人相手にフットワーク使わないでよ」
「そんなもん使わなくても佐倉さんの動きくらい避けれますよ」
「もー。ホント生意気なんだから」
むくれるあたしに、宮田くんはフッと表情を和らげる。
最近宮田くんは時々こうやって笑うようになった。
そしてその度にあたしは、
胸の奥がくすぐったくなった。
2009/02/16 PCUP
+++++atogaki+++++
宮田くんが、フッと笑ってくれたらもうそれだけで十分です。安上がりな女だなわたし(笑)
ていうか。
このお話で宮田くんがまともにヒロインさんの名前呼んだの初めてじゃない?