お相手宮田くんの原作沿い連載です
長編
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06 プロボクサー
「宮田くん、これ」
バイトが終わり、帰り支度をする宮田くんの前に紙袋を差し出した。
一瞬怪訝そうな顔をした後、
中を覗いてそれがパーカーだと分かると
あぁ、と小さく零して紙袋を受け取った。
「本当にありがとうね。お陰で風邪引かなくて済んだよ」
愛想よく話しかけるあたしに目もくれず
適当に相槌をうつ宮田くん。
少し前なら感じ悪いって思ったけど
今はそれほど思わなくて。
ぶっきら棒なのは、人に対して優しくする自分への照れ隠しで、
一見クールに見えるけど、本当は情に厚いあたたかい人なのかもしれない、
先日の雨の日以来、そんな風に思うようになっていた。
「でさ、よかったらこれからゴハン食べに行かない?」
「行かない」
即答かよ。
ま、予想はしてたけどね。
「なんでー、いいじゃん。あたし奢るよ?」
「そういう問題じゃなくて。第一奢られるような義理はない」
「あるよー!だってすごく助かったんだもん。だからお礼っていうか」
「オレこれから行くとこあるんですよ」
「だったら今日じゃなくてもいいからさ」
「無理。ちなみに来月からはもっと忙しくなる」
「なんで?テスト終わったじゃん」
「とにかくメシ食いにいく時間なんてないし礼もいらない」
急ぎますんで、と言い残して
宮田くんはさっさと帰ってしまった。
予想はしてたけど、ここまで取り付く島もないとは。
まぁでもお礼をしたいっていう誠意は伝わっただろうし、
あたしだってそこまで別に宮田くんと関わりたいってわけでもないしね。
・・・ちょっと、関わりたかったけど。
考えても仕方ないし、また次の機会に誘ってみようと決めて
あたしもバイト先を後にした。
あいにくご飯に誘う機会は訪れなかったけれど
意外な偶然があたしと宮田くんの距離を一気に縮める事になった。
6月に入り季節は本格的な梅雨に入った。
結局あれから何の変化もなく
バイトで顔を合わせても挨拶を交わすと
さすがに仕事面であれこれ言われる事も少なくなったせいか
宮田くんから話しかけてくることは殆どなくなっていた。
それでもあたしはチャンスがあれば話しかけてはみるものの、
学校の事を聞いても学校名を言うだけでそれ以上の会話はなく
店内にかかっている有線に話を振っても
「音楽とかあんまり聴かないんで」
の一言で片付けられてしまう始末。
ま、宮田くんがヘッドフォンつけて横揺れしながら歩いてたり
部屋でガンガン音楽聞いてるってのも想像つかないけどね。
ていうか、普段どんな生活してるんだろ。
宮田くんへの興味は募るものの
叩いても響かない、そんな状態が続いたある日の事だった。
その日も宮田くんと2人の仕事で
連日の雨で客足もまばらだった。
立ち読みしていた客が出て行ったのを見計らって
雑誌コーナーの整理をしようとレジを離れた。
少年誌の発売日はどうしてこうも立ち読みが多いかな。
立ち読みするのはいいけど、読んだら元の場所に戻してよねぇ。
あたしは心の中で愚痴りながら
そこかしこに散らばった少年誌を規定の位置に戻していった。
そしてスポーツ誌のコーナーにまで散らばった少年誌を取ろうとした時、
謝って一冊の雑誌を落としてしまった。
あっ、と小さく呟いて
慌てて拾おうと伸ばした手が思わず止まる。
視界に飛び込んできたのは
無造作に開いたそのページにある、見知った顔。
え?
咄嗟にレジの方を見ると
あたしの教育係は伝票とにらめっこをしている。
もう一度、手にした雑誌に視線を落とすと
そこにはやっぱり同じ顔があって。
ただ、雑誌の中の視線は恐ろしいほどに真剣で鋭く、
硬く握った拳をグローブで包み、一直線に相手の顔面を殴りつけていた。
飛び散る汗と、眩しいスポットライト。
「えーーーーーーー!!!!」
仕事中だということも忘れて
気付くとあたしは叫んでいた。
「何だよ!どうし・・・・・」
何事かとレジから慌ててやってきた宮田くんは
あたしの手元に気付いて思わず息を呑んだ。
それからあたしとバッチリ目が合うと
しまったとばかりに顔を歪め、すぐにそっぽを向いてしまった。
「ね、これ、宮田くんだよね?」
「・・・」
「ボクシング、やってるんだ?」
「・・・・・」
「東日本新人王トーナメント開幕直前特集・・・って、ぇえっ、プロボクサー?!」
「・・・・・・・」
「っていうか、なんかすごい扱いが大きいっていうか・・・」
「・・・・・・・・・・」
「天才とか超大型新人とか優勝候補最有力とかすごいワードが並んでるんですケド」
「あーもう、ちょっと黙れよ、頼むから」
あたしの質問攻めにようやく口を挟んだ宮田くんは
心底参った顔をして頭を抱えた。
それでもあたしは宮田くんをじっと見ていると
観念したのか、はぁ、と大きな溜息をついてから
とりあえず仕事に戻るよう促された。
レジに戻ってから絶対に誰にも言わないでくださいよ、と念押しされ
先程落とした『月刊ボクシングファン』を手にあたしは大きく頷くと
宮田くんはポツリと話してくれた。
去年プロのライセンスを取ったプロボクサーである事、
今月から新人王トーナメントが始まる事、
大袈裟に騒がれたくないので(今のあたしみたいに)
バイト先では店長しかその事を知らないので
くれぐれも他言しないで欲しいという事。
「ごめん。なんか無駄に騒いじゃって」
「別にいいですよ、もう」
「ありがと。でも凄いなぁ。プロボクサーかぁ」
スポーツ観戦は好きな方なので
野球やサッカーなんかは何度か見に行ったことがある。
でも周りにボクシングをやってる人はおろか
興味のある人もいないのであたしにとっては未知の世界だ。
「ねね、次の試合、観に行っていい?」
「はぁ?!」
「いいじゃん。宮田くんの試合観てみたいもん。ね。いいでしょ?」
「来るな」
「いいよー別に。勝手にチケット取って行くもん」
「残念でした。チケットは完売しました」
「えー!」
「くだらねぇ事言ってねぇで仕事しろよ」
「・・・・・・わかった」
わかればいいんだよとばかりに勝ち誇った宮田くんに
あたしは爆弾発言を食らわせた。
「皆にこの雑誌見せびらかす」
「なっ・・・!」
「それが嫌ならチケットちょーだい。選手なんだから別ルートで何とかなるでしょ」
「アンタなぁ」
「あたし絶っっっっっ対観たいもん。だからお願いっ」
両手を重ね、拝むように懇願する。
「・・・・・・明日も仕事だよな?」
「え・・うん。そうだけど」
トーンの違う声に顔をあげると
そこには諦めたような宮田くんの顔があった。
「明日、チケット持ってくるから。くれぐれも雑誌見せびらかすとか馬鹿なマネしないように」
「本当?!ありがとう宮田くん!!あたしめちゃくちゃ応援するね」
喜ぶあたしの隣で
宮田くんは深い溜息をついた。
「応援はいいから、頼むから大人しくしててくれよな・・・」
2008/11/27 PCUP
+++++atogaki+++++
やっと・・・やっと原作に沿ってきた・・・!
次はようやく試合です。原作だと4巻かな。
「宮田くん、これ」
バイトが終わり、帰り支度をする宮田くんの前に紙袋を差し出した。
一瞬怪訝そうな顔をした後、
中を覗いてそれがパーカーだと分かると
あぁ、と小さく零して紙袋を受け取った。
「本当にありがとうね。お陰で風邪引かなくて済んだよ」
愛想よく話しかけるあたしに目もくれず
適当に相槌をうつ宮田くん。
少し前なら感じ悪いって思ったけど
今はそれほど思わなくて。
ぶっきら棒なのは、人に対して優しくする自分への照れ隠しで、
一見クールに見えるけど、本当は情に厚いあたたかい人なのかもしれない、
先日の雨の日以来、そんな風に思うようになっていた。
「でさ、よかったらこれからゴハン食べに行かない?」
「行かない」
即答かよ。
ま、予想はしてたけどね。
「なんでー、いいじゃん。あたし奢るよ?」
「そういう問題じゃなくて。第一奢られるような義理はない」
「あるよー!だってすごく助かったんだもん。だからお礼っていうか」
「オレこれから行くとこあるんですよ」
「だったら今日じゃなくてもいいからさ」
「無理。ちなみに来月からはもっと忙しくなる」
「なんで?テスト終わったじゃん」
「とにかくメシ食いにいく時間なんてないし礼もいらない」
急ぎますんで、と言い残して
宮田くんはさっさと帰ってしまった。
予想はしてたけど、ここまで取り付く島もないとは。
まぁでもお礼をしたいっていう誠意は伝わっただろうし、
あたしだってそこまで別に宮田くんと関わりたいってわけでもないしね。
・・・ちょっと、関わりたかったけど。
考えても仕方ないし、また次の機会に誘ってみようと決めて
あたしもバイト先を後にした。
あいにくご飯に誘う機会は訪れなかったけれど
意外な偶然があたしと宮田くんの距離を一気に縮める事になった。
6月に入り季節は本格的な梅雨に入った。
結局あれから何の変化もなく
バイトで顔を合わせても挨拶を交わすと
さすがに仕事面であれこれ言われる事も少なくなったせいか
宮田くんから話しかけてくることは殆どなくなっていた。
それでもあたしはチャンスがあれば話しかけてはみるものの、
学校の事を聞いても学校名を言うだけでそれ以上の会話はなく
店内にかかっている有線に話を振っても
「音楽とかあんまり聴かないんで」
の一言で片付けられてしまう始末。
ま、宮田くんがヘッドフォンつけて横揺れしながら歩いてたり
部屋でガンガン音楽聞いてるってのも想像つかないけどね。
ていうか、普段どんな生活してるんだろ。
宮田くんへの興味は募るものの
叩いても響かない、そんな状態が続いたある日の事だった。
その日も宮田くんと2人の仕事で
連日の雨で客足もまばらだった。
立ち読みしていた客が出て行ったのを見計らって
雑誌コーナーの整理をしようとレジを離れた。
少年誌の発売日はどうしてこうも立ち読みが多いかな。
立ち読みするのはいいけど、読んだら元の場所に戻してよねぇ。
あたしは心の中で愚痴りながら
そこかしこに散らばった少年誌を規定の位置に戻していった。
そしてスポーツ誌のコーナーにまで散らばった少年誌を取ろうとした時、
謝って一冊の雑誌を落としてしまった。
あっ、と小さく呟いて
慌てて拾おうと伸ばした手が思わず止まる。
視界に飛び込んできたのは
無造作に開いたそのページにある、見知った顔。
え?
咄嗟にレジの方を見ると
あたしの教育係は伝票とにらめっこをしている。
もう一度、手にした雑誌に視線を落とすと
そこにはやっぱり同じ顔があって。
ただ、雑誌の中の視線は恐ろしいほどに真剣で鋭く、
硬く握った拳をグローブで包み、一直線に相手の顔面を殴りつけていた。
飛び散る汗と、眩しいスポットライト。
「えーーーーーーー!!!!」
仕事中だということも忘れて
気付くとあたしは叫んでいた。
「何だよ!どうし・・・・・」
何事かとレジから慌ててやってきた宮田くんは
あたしの手元に気付いて思わず息を呑んだ。
それからあたしとバッチリ目が合うと
しまったとばかりに顔を歪め、すぐにそっぽを向いてしまった。
「ね、これ、宮田くんだよね?」
「・・・」
「ボクシング、やってるんだ?」
「・・・・・」
「東日本新人王トーナメント開幕直前特集・・・って、ぇえっ、プロボクサー?!」
「・・・・・・・」
「っていうか、なんかすごい扱いが大きいっていうか・・・」
「・・・・・・・・・・」
「天才とか超大型新人とか優勝候補最有力とかすごいワードが並んでるんですケド」
「あーもう、ちょっと黙れよ、頼むから」
あたしの質問攻めにようやく口を挟んだ宮田くんは
心底参った顔をして頭を抱えた。
それでもあたしは宮田くんをじっと見ていると
観念したのか、はぁ、と大きな溜息をついてから
とりあえず仕事に戻るよう促された。
レジに戻ってから絶対に誰にも言わないでくださいよ、と念押しされ
先程落とした『月刊ボクシングファン』を手にあたしは大きく頷くと
宮田くんはポツリと話してくれた。
去年プロのライセンスを取ったプロボクサーである事、
今月から新人王トーナメントが始まる事、
大袈裟に騒がれたくないので(今のあたしみたいに)
バイト先では店長しかその事を知らないので
くれぐれも他言しないで欲しいという事。
「ごめん。なんか無駄に騒いじゃって」
「別にいいですよ、もう」
「ありがと。でも凄いなぁ。プロボクサーかぁ」
スポーツ観戦は好きな方なので
野球やサッカーなんかは何度か見に行ったことがある。
でも周りにボクシングをやってる人はおろか
興味のある人もいないのであたしにとっては未知の世界だ。
「ねね、次の試合、観に行っていい?」
「はぁ?!」
「いいじゃん。宮田くんの試合観てみたいもん。ね。いいでしょ?」
「来るな」
「いいよー別に。勝手にチケット取って行くもん」
「残念でした。チケットは完売しました」
「えー!」
「くだらねぇ事言ってねぇで仕事しろよ」
「・・・・・・わかった」
わかればいいんだよとばかりに勝ち誇った宮田くんに
あたしは爆弾発言を食らわせた。
「皆にこの雑誌見せびらかす」
「なっ・・・!」
「それが嫌ならチケットちょーだい。選手なんだから別ルートで何とかなるでしょ」
「アンタなぁ」
「あたし絶っっっっっ対観たいもん。だからお願いっ」
両手を重ね、拝むように懇願する。
「・・・・・・明日も仕事だよな?」
「え・・うん。そうだけど」
トーンの違う声に顔をあげると
そこには諦めたような宮田くんの顔があった。
「明日、チケット持ってくるから。くれぐれも雑誌見せびらかすとか馬鹿なマネしないように」
「本当?!ありがとう宮田くん!!あたしめちゃくちゃ応援するね」
喜ぶあたしの隣で
宮田くんは深い溜息をついた。
「応援はいいから、頼むから大人しくしててくれよな・・・」
2008/11/27 PCUP
+++++atogaki+++++
やっと・・・やっと原作に沿ってきた・・・!
次はようやく試合です。原作だと4巻かな。