お相手宮田くんの原作沿い連載です
長編
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
56 クリスマス
十二月二十五日。今日はクリスマス。
きらびやかに装飾された街はきっと
友達や恋人と過ごす人で溢れているんだろう。
そんな中、あたしは今日も朝からバイトに勤しんでいた。
シフトを組む際、店長にさり気なく予定を聞かれた時
何もないからガッツリ入りますよ!と答えると
ホントにガッツリと入っていた。
こんな日にバイトなんて、って思う人もいるかもしれない。
でもあたしにとっては全然そんなことなくて。
今日は宮田くんも一緒だった。
最近は別々なことが多かったので
あたしはそれだけで十分だった。
ただクリスマスのコンビニというのは案外忙しくて
宮田くんとはほとんど話すことはできなかった。
「あれ?まだいたの」
退勤時間になりロッカーに行くと
少し前に帰ったはずの宮田くんがいた。
「お疲れ様です」
「ジムは?」
「バイト前に行ったから今日はもう帰ります」
「そうなんだ」
エプロンを外しロッカーに戻すと
コートを取り出して袖を通す。
それからカバンを持ってバタン、とロッカーを閉めた。
「じゃお疲れ様」
「なぁ」
カバンを肩に掛け、帰ろうとすると呼び止められた。
「ん?」
宮田くんの方を見ると
何か言い出しにくそうな素振りを見せる。
意味がわからず、次の言葉をじっと待っていると
宮田くんは、なぁ、ともう一度言った。
「これ、一緒に食わねぇ?」
持っていたビニール袋を少し高く上げる。
あれは確か、クリスマス限定で予約を受け付けていたチキンの丸焼き。
「……手違いで注文したっていうか……一人でこんなに食わないし、よかったら、ですけど……」
「食べる!!!」
小ぶりとはいえ、一人で食べるにはさすがに大きい。
やったぁ!とカバンを置いて
袋の中身を確認すると、赤と緑のリボンのついたチキン。
「わぁ!めっちゃ美味しそう!でもこれってやっぱお皿とかナイフいるよね。キッチンで借りてこようか」
店のキッチンに行こうとするあたしを宮田くんが止める。
「オレの家で食べませんか」
バイト先で二人で買い物するのも気が引けたので
帰りにちょっと遠回りしてスーパーに寄って
飲み物とサラダを買って宮田くんの部屋に来た。
ここに来るのは二回目だ。
一回目は雨に濡れたあたしを
近くだからと宮田くんが連れてきてくれた。
宮田くんが鍵を開け、玄関の電気をつける。
「どうぞ」
「お邪魔します」
思いがけない提案に誘われるがまま来てみたものの
今更になってものすごく緊張してきた。
それを悟られたくなくて、平静を装って部屋に入った。
部屋の明かりをつけてスポーツバッグを置いた宮田くんは
ビニール袋を持ったままキッチンに向かった。
「荷物その辺に置いて洗面…あ、場所わかりますよね。手洗って適当に座っててください」
「わかった」
宮田くんがキッチンで準備してる間に
あたしは洗面で手を洗ってリビングに戻ると
お皿やナイフ、コップなんかが二人分用意されていた。
あたしは前回来た時に座った場所に座ることにした。
前に来た時は初めてだったし
突然すぎてそんな余裕なかったけど
改めて宮田くんの部屋を見てみる。
整然としてるというより、そもそもあまり生活感がない。
ただ部屋の一角にある本棚には
ボクシング関連の本や雑誌が上から下までびっしりと並んでいて
それだけが、ここは宮田くんの部屋なんだと思わせた。
あたしがチラチラと部屋を観察している間に
宮田くんがチキンとスーパーで買ってきた諸々を準備してくれた。
「じゃ食べましょうか」
「うん。いただきます」
「美味しかったぁ!クリスマスにチキン食べれて最高!宮田くん、今日はありがとね」
チキンを食べ終え、一緒に片付けをして
一人で帰ろうとしたら、宮田くんが送ると言い出した。
知らない道でもないし、大丈夫と何度言っても聞き入れられず
結局、今は宮田くんの部屋からあたしの部屋までの道を
並んで歩いていた。
「こちらこそ助かりました」
クリスマスにバイトとはいえ、会えただけでも嬉しかったのに
宮田くんの部屋で一緒にチキンまで食べられて
今年のクリスマスは最高だったなぁ
宮田くんの隣で嬉しい余韻に浸っていると
「澪さん」と改まった声で呼ばれた。
「何?」
「来年の春頃に決まりそうです」
主語のない言葉。
だけどあたしは何のことかすぐに理解した。
「次の試合?」
「東洋太平洋のタイトルマッチ」
「えっ」
タイトルマッチ、という
予想もしなかった言葉に思わず立ち止まる。
東洋……
宮田くんにとって初めてのタイトルマッチだ
隣を見るとすぐに目が合った。
まっすぐにあたしを見る宮田くん。
「日程決まったら連絡します」
「うん。絶対教えてね」
それからまたどちらからともなく歩き出した。
歩幅を合わせて、ゆっくりと歩く。
「じゃあバイトもお休みになるのかな」
「まぁ……徐々に減らしますけど、一ヶ月前くらいまでは入ります」
「そかそか。じゃああたし頑張っちゃうね」
あたしができることなんて、
バイトの穴を埋めるくらいしかない。
それがどれだけ宮田くんの役に立っているのかわからない。
だけど努めて明るく言うと、
宮田くんはちょっと優しい顔になった。
「よろしくお願いします」
2026/10/21 UP
+++++atogaki+++++
相変わらず季節感皆無ですが
まぁそれはもう20年前からなので気にしない(笑)
十二月二十五日。今日はクリスマス。
きらびやかに装飾された街はきっと
友達や恋人と過ごす人で溢れているんだろう。
そんな中、あたしは今日も朝からバイトに勤しんでいた。
シフトを組む際、店長にさり気なく予定を聞かれた時
何もないからガッツリ入りますよ!と答えると
ホントにガッツリと入っていた。
こんな日にバイトなんて、って思う人もいるかもしれない。
でもあたしにとっては全然そんなことなくて。
今日は宮田くんも一緒だった。
最近は別々なことが多かったので
あたしはそれだけで十分だった。
ただクリスマスのコンビニというのは案外忙しくて
宮田くんとはほとんど話すことはできなかった。
「あれ?まだいたの」
退勤時間になりロッカーに行くと
少し前に帰ったはずの宮田くんがいた。
「お疲れ様です」
「ジムは?」
「バイト前に行ったから今日はもう帰ります」
「そうなんだ」
エプロンを外しロッカーに戻すと
コートを取り出して袖を通す。
それからカバンを持ってバタン、とロッカーを閉めた。
「じゃお疲れ様」
「なぁ」
カバンを肩に掛け、帰ろうとすると呼び止められた。
「ん?」
宮田くんの方を見ると
何か言い出しにくそうな素振りを見せる。
意味がわからず、次の言葉をじっと待っていると
宮田くんは、なぁ、ともう一度言った。
「これ、一緒に食わねぇ?」
持っていたビニール袋を少し高く上げる。
あれは確か、クリスマス限定で予約を受け付けていたチキンの丸焼き。
「……手違いで注文したっていうか……一人でこんなに食わないし、よかったら、ですけど……」
「食べる!!!」
小ぶりとはいえ、一人で食べるにはさすがに大きい。
やったぁ!とカバンを置いて
袋の中身を確認すると、赤と緑のリボンのついたチキン。
「わぁ!めっちゃ美味しそう!でもこれってやっぱお皿とかナイフいるよね。キッチンで借りてこようか」
店のキッチンに行こうとするあたしを宮田くんが止める。
「オレの家で食べませんか」
バイト先で二人で買い物するのも気が引けたので
帰りにちょっと遠回りしてスーパーに寄って
飲み物とサラダを買って宮田くんの部屋に来た。
ここに来るのは二回目だ。
一回目は雨に濡れたあたしを
近くだからと宮田くんが連れてきてくれた。
宮田くんが鍵を開け、玄関の電気をつける。
「どうぞ」
「お邪魔します」
思いがけない提案に誘われるがまま来てみたものの
今更になってものすごく緊張してきた。
それを悟られたくなくて、平静を装って部屋に入った。
部屋の明かりをつけてスポーツバッグを置いた宮田くんは
ビニール袋を持ったままキッチンに向かった。
「荷物その辺に置いて洗面…あ、場所わかりますよね。手洗って適当に座っててください」
「わかった」
宮田くんがキッチンで準備してる間に
あたしは洗面で手を洗ってリビングに戻ると
お皿やナイフ、コップなんかが二人分用意されていた。
あたしは前回来た時に座った場所に座ることにした。
前に来た時は初めてだったし
突然すぎてそんな余裕なかったけど
改めて宮田くんの部屋を見てみる。
整然としてるというより、そもそもあまり生活感がない。
ただ部屋の一角にある本棚には
ボクシング関連の本や雑誌が上から下までびっしりと並んでいて
それだけが、ここは宮田くんの部屋なんだと思わせた。
あたしがチラチラと部屋を観察している間に
宮田くんがチキンとスーパーで買ってきた諸々を準備してくれた。
「じゃ食べましょうか」
「うん。いただきます」
「美味しかったぁ!クリスマスにチキン食べれて最高!宮田くん、今日はありがとね」
チキンを食べ終え、一緒に片付けをして
一人で帰ろうとしたら、宮田くんが送ると言い出した。
知らない道でもないし、大丈夫と何度言っても聞き入れられず
結局、今は宮田くんの部屋からあたしの部屋までの道を
並んで歩いていた。
「こちらこそ助かりました」
クリスマスにバイトとはいえ、会えただけでも嬉しかったのに
宮田くんの部屋で一緒にチキンまで食べられて
今年のクリスマスは最高だったなぁ
宮田くんの隣で嬉しい余韻に浸っていると
「澪さん」と改まった声で呼ばれた。
「何?」
「来年の春頃に決まりそうです」
主語のない言葉。
だけどあたしは何のことかすぐに理解した。
「次の試合?」
「東洋太平洋のタイトルマッチ」
「えっ」
タイトルマッチ、という
予想もしなかった言葉に思わず立ち止まる。
東洋……
宮田くんにとって初めてのタイトルマッチだ
隣を見るとすぐに目が合った。
まっすぐにあたしを見る宮田くん。
「日程決まったら連絡します」
「うん。絶対教えてね」
それからまたどちらからともなく歩き出した。
歩幅を合わせて、ゆっくりと歩く。
「じゃあバイトもお休みになるのかな」
「まぁ……徐々に減らしますけど、一ヶ月前くらいまでは入ります」
「そかそか。じゃああたし頑張っちゃうね」
あたしができることなんて、
バイトの穴を埋めるくらいしかない。
それがどれだけ宮田くんの役に立っているのかわからない。
だけど努めて明るく言うと、
宮田くんはちょっと優しい顔になった。
「よろしくお願いします」
2026/10/21 UP
+++++atogaki+++++
相変わらず季節感皆無ですが
まぁそれはもう20年前からなので気にしない(笑)
56/56ページ