お相手宮田くんの原作沿い連載です
長編
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53 幕之内くん
十月に入って大学の後期課程が始まり
学校に行く日が増え
さらに就活インターンもいくつか申し込んでいて
あたしは慌ただしく過ごしていた。
本当ならバイトは少しお休みしたいところだけど、
そうすると宮田くんに会う機会がなくなってしまうので
あたしはどうにか時間をやりくりしてバイトにも行っていた。
その中でも宮田くんと時々上り時間が同じことがあって
その場合は近くのファミレスで一緒にご飯を食べた。
大抵の場合、宮田くんがジムに行くまでの少しの時間だったけれど
あたしにとっては何より大切な時間だった。
そんな感じで特に何か変化があったわけではないけれど
忙しくも穏やかな日常を過ごしていた。
久しぶりに丸一日大学で講義を受けた帰り道、
あたしは鴨川ジムに向かっていた。
幕之内くんの二回目のタイトルマッチが決まり
頼んでいたチケットの準備ができたと
数日前に木村さん経由で連絡をもらっていた。
夕陽が翳り始めた土手。
—————ホントにここはいいところだなぁ
鴨川ジムまでの道のりを
あたしは自転車を軽快に走らせた。
ジムに到着すると、その前にはたくさんの人だかりができていた。
どうやらタイトルマッチのチケットを買いに来た人たちみたいだ。
すっかり顔見知りになった八木さんが
チケット売り切れのアナウンスをすると
ガッカリした空気が広がった。
どうにかならないのかと詰め寄る人に
別のチケット販売窓口ならまだあるかも、と必死に説明したり
なかなか大変そうな状況だった。
さすがにこのタイミングで受け取りに行くわけにもいかず
あたしは少し離れたこの場所から様子を伺っていた。
それにしても。
—————幕之内くんは人気ボクサーだなぁ
まぁ毎回あの試合内容じゃ
そりゃ人気出るか。
毎試合大激戦の打ち合いで、最後は逆転KO。
素人のあたしでもわかりやすい。
初めて幕之内くんの試合を観た時
宮田くんの試合とはずいぶん違うなぁと思った記憶がある。
ただ、二人とも人気ボクサーなのは同じで
会場はいつも満席に近い状態だ。
で、次のタイトルマッチの相手……現日本チャンピオンの千堂選手。
全日本新人王でも一度対戦していて
その時は幕之内くんが勝って新人王になったんだよね。
あたしはその試合観てないけど。
「あれ、澪さん?」
ぼんやりあれこれ考えていると
不意に名前を呼ばれた。
「幕之内くん」
声のした方を見るとジャージ姿の幕之内くんがいた。
ロードワークの帰りだろうか、ずいぶん汗をかいている。
こんにちは、とお互い挨拶をする。
「こんなところで一体どうしたんですか?」
タオルで汗を拭いながら幕之内くんが言った。
「お願いしてた幕之内くんの試合のチケット、準備ができたって木村さんから連絡もらって受け取りに来たんだけど」
「あの様子で」と鴨川ジムの方に目を向ける。
「うわぁ。一体なんの騒ぎですか?!」
あたしの視線を追いかけて
ジム前の様子に驚く幕之内くん。
「みんな幕之内くんの試合のチケット買いに来たみたいだよ。でも売り切れで買えなくて、帰るに帰れないのかな」
「そ、そうでしたか」
嬉しいような、申し訳ないような幕之内くん。
「すごいね、幕之内くん大人気だね。あたしも応援してるからタイトル奪ってね」
「はい!ありがとうございます。ところで」
「ん?」
「試合は……み、宮田くんと来るんですか?」
「うん。一応そのつもりで二枚お願いしてるよ。まぁ宮田くんはライセンスで入れるんだろうけど」
「そうですか!じゃあ恥ずかしくない試合にしないとです!頑張ります!!」
「う、うん」
宮田くんの話になるといつもキラキラした目になる幕之内くん。
前々から感じてたけど
幕之内くん、宮田くんのことはボクシングのライバルなんだろうけど
なんか、それとは別で……
絶対、好きだよね……
—————てか、幕之内くんが女の子だったら
あたしのライバルじゃん
え。宮田くんは幕之内くんのことどう思ってるだろう
そんな、自分でも何だかよくわからない、
そして宮田くんが聞いたら間違いなく激怒されそうなことを考えてしまって、内心ちょっと焦りつつ、笑いが込み上げてきた。
「じゃあ一緒に行きましょう」
そんなあたしの様子に構わず、
幕之内くんに促されて一緒に鴨川ジムに向かった。
けれど、まだ人だかりが残っているところに
幕之内くんが出ていったもんだから
今度は幕之内くんへの激励で
また大騒ぎになった。
そんなわけであたしがチケットを受け取ったのは
それから一時間ほど後のことだった。
2026/05/20 UP
+++++atogakki+++++
一歩の試合のチケットって
なかなかの争奪戦になりそうだけど
当人と知り合いだとやっぱり確保しやすいよね。。。
(某ライブチケ取り惨敗中なので羨ましい)
十月に入って大学の後期課程が始まり
学校に行く日が増え
さらに就活インターンもいくつか申し込んでいて
あたしは慌ただしく過ごしていた。
本当ならバイトは少しお休みしたいところだけど、
そうすると宮田くんに会う機会がなくなってしまうので
あたしはどうにか時間をやりくりしてバイトにも行っていた。
その中でも宮田くんと時々上り時間が同じことがあって
その場合は近くのファミレスで一緒にご飯を食べた。
大抵の場合、宮田くんがジムに行くまでの少しの時間だったけれど
あたしにとっては何より大切な時間だった。
そんな感じで特に何か変化があったわけではないけれど
忙しくも穏やかな日常を過ごしていた。
久しぶりに丸一日大学で講義を受けた帰り道、
あたしは鴨川ジムに向かっていた。
幕之内くんの二回目のタイトルマッチが決まり
頼んでいたチケットの準備ができたと
数日前に木村さん経由で連絡をもらっていた。
夕陽が翳り始めた土手。
—————ホントにここはいいところだなぁ
鴨川ジムまでの道のりを
あたしは自転車を軽快に走らせた。
ジムに到着すると、その前にはたくさんの人だかりができていた。
どうやらタイトルマッチのチケットを買いに来た人たちみたいだ。
すっかり顔見知りになった八木さんが
チケット売り切れのアナウンスをすると
ガッカリした空気が広がった。
どうにかならないのかと詰め寄る人に
別のチケット販売窓口ならまだあるかも、と必死に説明したり
なかなか大変そうな状況だった。
さすがにこのタイミングで受け取りに行くわけにもいかず
あたしは少し離れたこの場所から様子を伺っていた。
それにしても。
—————幕之内くんは人気ボクサーだなぁ
まぁ毎回あの試合内容じゃ
そりゃ人気出るか。
毎試合大激戦の打ち合いで、最後は逆転KO。
素人のあたしでもわかりやすい。
初めて幕之内くんの試合を観た時
宮田くんの試合とはずいぶん違うなぁと思った記憶がある。
ただ、二人とも人気ボクサーなのは同じで
会場はいつも満席に近い状態だ。
で、次のタイトルマッチの相手……現日本チャンピオンの千堂選手。
全日本新人王でも一度対戦していて
その時は幕之内くんが勝って新人王になったんだよね。
あたしはその試合観てないけど。
「あれ、澪さん?」
ぼんやりあれこれ考えていると
不意に名前を呼ばれた。
「幕之内くん」
声のした方を見るとジャージ姿の幕之内くんがいた。
ロードワークの帰りだろうか、ずいぶん汗をかいている。
こんにちは、とお互い挨拶をする。
「こんなところで一体どうしたんですか?」
タオルで汗を拭いながら幕之内くんが言った。
「お願いしてた幕之内くんの試合のチケット、準備ができたって木村さんから連絡もらって受け取りに来たんだけど」
「あの様子で」と鴨川ジムの方に目を向ける。
「うわぁ。一体なんの騒ぎですか?!」
あたしの視線を追いかけて
ジム前の様子に驚く幕之内くん。
「みんな幕之内くんの試合のチケット買いに来たみたいだよ。でも売り切れで買えなくて、帰るに帰れないのかな」
「そ、そうでしたか」
嬉しいような、申し訳ないような幕之内くん。
「すごいね、幕之内くん大人気だね。あたしも応援してるからタイトル奪ってね」
「はい!ありがとうございます。ところで」
「ん?」
「試合は……み、宮田くんと来るんですか?」
「うん。一応そのつもりで二枚お願いしてるよ。まぁ宮田くんはライセンスで入れるんだろうけど」
「そうですか!じゃあ恥ずかしくない試合にしないとです!頑張ります!!」
「う、うん」
宮田くんの話になるといつもキラキラした目になる幕之内くん。
前々から感じてたけど
幕之内くん、宮田くんのことはボクシングのライバルなんだろうけど
なんか、それとは別で……
絶対、好きだよね……
—————てか、幕之内くんが女の子だったら
あたしのライバルじゃん
え。宮田くんは幕之内くんのことどう思ってるだろう
そんな、自分でも何だかよくわからない、
そして宮田くんが聞いたら間違いなく激怒されそうなことを考えてしまって、内心ちょっと焦りつつ、笑いが込み上げてきた。
「じゃあ一緒に行きましょう」
そんなあたしの様子に構わず、
幕之内くんに促されて一緒に鴨川ジムに向かった。
けれど、まだ人だかりが残っているところに
幕之内くんが出ていったもんだから
今度は幕之内くんへの激励で
また大騒ぎになった。
そんなわけであたしがチケットを受け取ったのは
それから一時間ほど後のことだった。
2026/05/20 UP
+++++atogakki+++++
一歩の試合のチケットって
なかなかの争奪戦になりそうだけど
当人と知り合いだとやっぱり確保しやすいよね。。。
(某ライブチケ取り惨敗中なので羨ましい)