お相手宮田くんの原作沿い連載です
長編
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52 目撃情報
宮田くんと美術館に行ってから数日後。
後輩の伊藤くんとバイトに入った時のことだった。
「佐倉さん。オレ、見ちゃったんです」
忙しさがひと段落し、備品整理をしていたあたしの横で
意味深にニヤニヤしながら伊藤くんが話しかけてきた。
「見たって、何を?」
さほど興味もなかったので
仕事の手を休めないで適当に相槌を打つ。
「宮田さんですよ。こないだ都内に遊びに行った時偶然見かけたんですけどね」
声を潜め、何やら勿体ぶる伊藤くん。
「やっぱいましたよ、彼女」
一瞬、仕事の手が止まる。
動揺を悟られるわけにもいかないので
平静を装いながら仕事を続け、次の言葉を待つ。
「でも遠目に見ただけで、人も多かったし、一緒にいた女の人は後ろ姿しか見えなかったんスけど、あれ絶対彼女だと思います」
自信満々な伊藤くん。
へぇ、と何でもないように相槌を打ちつつ
内心は気が気じゃない。
—————どういうこと?
宮田くん、彼女いたの??
うぬぼれてる訳ではないけれど
あたしと宮田くんはバイト仲間の中でも
結構近い距離にいると思ってる。
宮田くんの生活って、ほとんどがボクシングで
その次がバイトだと思う。
ボクシング関連で彼女がいるのは考えにくいし
だとしたらバイト先になるけど、あたしの知る限りではバイトの中でそういう相手がいるとは到底思えない。
それに彼女がいるんだったら
そもそもあたしの趣味の美術館に付き合うかな。
—————あ、待って。もしかして……
さり気なく、いつだったか聞くと
あたしと宮田くんが美術館に行った日だった。
—————やっぱり。
てか、こないだの見られてたんだ
「へぇ。そうなんだ」
だけど幸い、あたしの顔までは見られてない。
「宮田さん、女に全く興味無さそうに見えてやっぱいたんスねー。だから宮田さん目当てのお客さんが来てもあの態度なんスねー」
伊藤くんの言葉に宮田くんの態度を思い出す。
どこで調べたのか、
宮田くんが帰国してしばらく経った頃から
時々若い女性客がやってくるようになった。
その人たちはこぞって宮田くんのレジにしか行かないから
目的は一目瞭然だった。
その中には、声をかける猛者もいるけれど
何を言われても完全スルーの宮田くんを何度も見た。
客商売でそれってどうよ、と思う態度でも
ファンからすればたまらないらしい。
「今度どんな人か聞いてみよっかなー。ね!佐倉さんも気になりますよね?!」
呑気に話す伊藤くんの隣で
あたしの心中は穏やかではない。
—————これは、非常に、マズイ
「うん、まぁ確かに気にはなるよね」
「ですよね!!」
今度一緒に聞きましょうよ、と嬉々としている伊藤くんに
あたしは「あー…でも」と何かを思い出したように言った。
「気にはなるけど聞くのはやめた方がいいんじゃないかなぁ。宮田くん、インタビューでそのテの質問されてるの見たことあるけど、こっちがドン引くくらい塩対応だったよ」
いやぁ……あの時はインタビュアーが本っ当に気の毒だったなぁ
ウンウンと頷きながらあたしは大袈裟に呟いた。
「え、マジすか」
「公共の場であれだから、伊藤くん相手だったらどうなるんだろうねぇ」
おーこわこわ。
「聞くならあたしのいない時にしてね」
一気に畳みかけ、
最後にしっかり釘を刺してから作業に戻るあたしの隣で
状況を想像したのか、若干顔色を悪くしながら
やっぱ何も見なかったことにしようかなと呟く伊藤くん。
「佐倉さん、今の話……」
「うんうん。何も聞かなかったことにするね」
安堵する伊藤くんに気づかれないように
あたしはホッとため息をついた。
2026/04/12 UP
+++++atogaki+++++
宮田くんの誕生日の後だから
このお話は9月頃の設定なんだけど
更新するタイミングが毎度季節感ゼロというか。
そのうちお話とリアル季節が
バチっと合うタイミングで更新してみたいです。
宮田くんと美術館に行ってから数日後。
後輩の伊藤くんとバイトに入った時のことだった。
「佐倉さん。オレ、見ちゃったんです」
忙しさがひと段落し、備品整理をしていたあたしの横で
意味深にニヤニヤしながら伊藤くんが話しかけてきた。
「見たって、何を?」
さほど興味もなかったので
仕事の手を休めないで適当に相槌を打つ。
「宮田さんですよ。こないだ都内に遊びに行った時偶然見かけたんですけどね」
声を潜め、何やら勿体ぶる伊藤くん。
「やっぱいましたよ、彼女」
一瞬、仕事の手が止まる。
動揺を悟られるわけにもいかないので
平静を装いながら仕事を続け、次の言葉を待つ。
「でも遠目に見ただけで、人も多かったし、一緒にいた女の人は後ろ姿しか見えなかったんスけど、あれ絶対彼女だと思います」
自信満々な伊藤くん。
へぇ、と何でもないように相槌を打ちつつ
内心は気が気じゃない。
—————どういうこと?
宮田くん、彼女いたの??
うぬぼれてる訳ではないけれど
あたしと宮田くんはバイト仲間の中でも
結構近い距離にいると思ってる。
宮田くんの生活って、ほとんどがボクシングで
その次がバイトだと思う。
ボクシング関連で彼女がいるのは考えにくいし
だとしたらバイト先になるけど、あたしの知る限りではバイトの中でそういう相手がいるとは到底思えない。
それに彼女がいるんだったら
そもそもあたしの趣味の美術館に付き合うかな。
—————あ、待って。もしかして……
さり気なく、いつだったか聞くと
あたしと宮田くんが美術館に行った日だった。
—————やっぱり。
てか、こないだの見られてたんだ
「へぇ。そうなんだ」
だけど幸い、あたしの顔までは見られてない。
「宮田さん、女に全く興味無さそうに見えてやっぱいたんスねー。だから宮田さん目当てのお客さんが来てもあの態度なんスねー」
伊藤くんの言葉に宮田くんの態度を思い出す。
どこで調べたのか、
宮田くんが帰国してしばらく経った頃から
時々若い女性客がやってくるようになった。
その人たちはこぞって宮田くんのレジにしか行かないから
目的は一目瞭然だった。
その中には、声をかける猛者もいるけれど
何を言われても完全スルーの宮田くんを何度も見た。
客商売でそれってどうよ、と思う態度でも
ファンからすればたまらないらしい。
「今度どんな人か聞いてみよっかなー。ね!佐倉さんも気になりますよね?!」
呑気に話す伊藤くんの隣で
あたしの心中は穏やかではない。
—————これは、非常に、マズイ
「うん、まぁ確かに気にはなるよね」
「ですよね!!」
今度一緒に聞きましょうよ、と嬉々としている伊藤くんに
あたしは「あー…でも」と何かを思い出したように言った。
「気にはなるけど聞くのはやめた方がいいんじゃないかなぁ。宮田くん、インタビューでそのテの質問されてるの見たことあるけど、こっちがドン引くくらい塩対応だったよ」
いやぁ……あの時はインタビュアーが本っ当に気の毒だったなぁ
ウンウンと頷きながらあたしは大袈裟に呟いた。
「え、マジすか」
「公共の場であれだから、伊藤くん相手だったらどうなるんだろうねぇ」
おーこわこわ。
「聞くならあたしのいない時にしてね」
一気に畳みかけ、
最後にしっかり釘を刺してから作業に戻るあたしの隣で
状況を想像したのか、若干顔色を悪くしながら
やっぱ何も見なかったことにしようかなと呟く伊藤くん。
「佐倉さん、今の話……」
「うんうん。何も聞かなかったことにするね」
安堵する伊藤くんに気づかれないように
あたしはホッとため息をついた。
2026/04/12 UP
+++++atogaki+++++
宮田くんの誕生日の後だから
このお話は9月頃の設定なんだけど
更新するタイミングが毎度季節感ゼロというか。
そのうちお話とリアル季節が
バチっと合うタイミングで更新してみたいです。