お相手宮田くんの原作沿い連載です
長編
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51 初デート
美術館で、あたしが前から見たかった展示が始まったので
宮田くんと予定を合わせて出掛けることになった。
宮田くんとバイト以外で会うのは
ボクシング絡みがほとんどで
待ち合わせといえば後楽園ホールだった。
今日の目的地は美術館。
あたしは少し早めに家を出て
お互いの最寄りでもある駅に向かった。
待ち合わせ場所は改札前。
張り切ってる…わけではないけれど
こちらの趣味に付き合ってもらうので
待たせたりはできないからかなり早めに着いてしまった。
今日は秋晴れで
絶好のお出かけ日和。
駅で行き交う人も
心なしか楽しそうに見える。
実は、あたし自身もちょっと浮き足立ってる。
浮き足立つというか、緊張してる。
—————これって、デートだよね?
バイト以外で宮田くんに会うことは何度もあったし
一緒にご飯を食べに行ったこともある。
だけど、目的地を決めて時間を指定して
待ち合わせまでして会うのは初めてだ。
改めて認識するとさらに緊張するので
少しでも気を紛らわせようと腕時計を見た。
—————そういえば
誕生日以降、宮田くんとは何度も顔を合わせたけれど
あたしが贈った腕時計をつけていたことは一度もなかった。
実は少し……というか、かなり気にしてることがあって。
プレゼントを渡した少し後に
何気なく見ていたテレビの情報番組で
プレゼントについての街頭インタビューをしていた。
メインは彼氏彼女の誕生日の予算についてだったけど
友達関係にある異性に誕生日プレゼントを贈るのは
総じて『ナシ』だった。
理由はズバリ『重い』から。
たまたま誕生日前後に会っていて
ちょっと何かをご馳走するくらいならアリだけど
誕生日当日にわざわざ贈るなんて重すぎる。
そんな話題で盛り上がっていた。
—————まじか
ただ、友達でもその関係性によっては
なくはない、との少数意見もあった。
宮田くんがどの意見に当てはまるのかはわからないけれど
贈った腕時計に関してはこれまで無反応で。
まぁ何度もお礼を言われるものでもないし
使ってるよ、なんてわざわざ報告するタイプでもないし
今更あれこれ考えても仕方ないので
あまり考えないようにしていた。
「早いですね」
待ち合わせ時間より少し前に宮田くんがきた。
「おはよ」
もたれかかっていた壁から身体を起こすと
ふと視界に入ったのは
宮田くんの左手首に巻かれた
見覚えのある黒いレザーベルトだった。
「あーもう感無量!実物観れるなんて…しかも日本で観れるなんて思ってなかったもん!」
興奮冷めやらぬあたしの前で
ゆっくりコーヒーに口をつける宮田くん。
「よかったですね」
展示を見終えて
あたしと宮田くんは今
美術館に併設されているカフェにいた。
美術館自体が歴史的な建造物で
有形文化財にも指定されている。
その一角にあるカフェの大きな窓からは
整えられた庭園が広がっていた。
ここも来てみたかったところで
まさか宮田くんと来れるなんて夢にも思ってなかった。
—————今日は願いが二つも叶ってしまった
そんなわけであたしは大満足の時間を過ごしたんだけど。
「宮田くん、退屈じゃなかった?」
最初こそあたしなりに知ってる限りの解説みたいなものをしていたけれど、途中から自分が観るのに夢中になってしまった。
「何かごめんね。夢中になり過ぎて後半ほぼ無言だったよね、あたし」
「まぁ澪さんがこうなるのは最初からわかってたから、気にしないでください。そのつもりだったし」
「え、そうなの?」
「絵に夢中になってる時の澪さん、周りが全然見えなくなるだろ」
あ、と過去のあれこれを思い出す。
「今日はそういう澪さんが見たかっただけだから」
「え……?」
サラリと言う宮田くんだけど
あたしは思わず意味を深読みしそうになる。
それに気づいた宮田くんは慌てて言葉を足した。
「いやっ……だから、その、澪さんが満足したならそれでいいってこと」
そう言って窓の外に視線を向ける宮田くん。
「……ありがと」
あたしも何だか気恥ずかしくて
それだけ言って宮田くんの視線を追いかけた。
美術館を出てから少し街を歩いて
宮田くんが買い物があると言うので
スポーツ用品店に寄ったりしているうちに夕方になり
あたしたちは帰ることにした。
待ち合わせの駅に着いて、何も言わなくても宮田くんはあたしの家の方向に向かって歩き出した。
いつも申し訳ないなぁと思いつつ
嬉しくて、甘えてしまう。
「いつも家まで送ってくれてありがとね」
右隣を歩く宮田くんの左手首が目に入る。
「あと、それ」
あたしの言葉に
宮田くんが顔を向ける。
「腕時計。使ってくれてるんだ」
朝からずっと気になっていたことを
思い切って声をかけてみる。
「よかった。渡した時宮田くんちょっと困ってたみたいだから、申し訳ないことしちゃったかなって思ってた」
「いや、そんなことは全然ないです。ただ」
「ただ?」
「オレあんまりプレゼントとか貰ったことないから、どんな顔して使っていいかわからないって言うか……」
「え?宮田くん、ファンの人からたくさん貰ってるじゃない」
誕生日当日の光景を思い出す。
きっと誕生日だけじゃない。
それ以外の時でもきっと色々贈られるはずで
貰ったことがないわけがない。
「受け取ってませんよ。ジムには色々届いてるみたいだけど、物に関しては全部ジムで使ってもらってる。手紙の類だけはさすがに目は通してるけど」
「そうなんだ」
「別に欲しいものとかねぇし、欲しけりゃ自分で買えばいいし」
「うん……そうだよね。なんかごめん。余計なことして」
「あ……いや、だからそういうことじゃなくて」
大事にしたいから、なかなか使えないっていうか。
最後は独り言みたいな声で言って
宮田くんは顔を背けた。
「えっと、それは嬉しかったってことでいいのかな」
言ってから、頬に全身の血液が集まったみたいな感覚に陥る。
「……だからそう言ってんだろ。もうこの話は終わり」
辺りはすっかり暗くなって
しかも宮田くんは全然こっちを見てくれないので、
どんな顔をしているのかわからなかった。
だけどあたし自身も、もうどうにかなってしまいそうなくらい恥ずかしくなっていたので
宮田くんの言う通り、この話は終わりにすることにした。
2026/03/28
+++++atogaki+++++
デートどころか
宮田くんって遊びに行ったりとかの
お出掛けイメージが全然ないのは私だけかな(苦笑)
きっとそんなことはないんだろうけど。
美術館で、あたしが前から見たかった展示が始まったので
宮田くんと予定を合わせて出掛けることになった。
宮田くんとバイト以外で会うのは
ボクシング絡みがほとんどで
待ち合わせといえば後楽園ホールだった。
今日の目的地は美術館。
あたしは少し早めに家を出て
お互いの最寄りでもある駅に向かった。
待ち合わせ場所は改札前。
張り切ってる…わけではないけれど
こちらの趣味に付き合ってもらうので
待たせたりはできないからかなり早めに着いてしまった。
今日は秋晴れで
絶好のお出かけ日和。
駅で行き交う人も
心なしか楽しそうに見える。
実は、あたし自身もちょっと浮き足立ってる。
浮き足立つというか、緊張してる。
—————これって、デートだよね?
バイト以外で宮田くんに会うことは何度もあったし
一緒にご飯を食べに行ったこともある。
だけど、目的地を決めて時間を指定して
待ち合わせまでして会うのは初めてだ。
改めて認識するとさらに緊張するので
少しでも気を紛らわせようと腕時計を見た。
—————そういえば
誕生日以降、宮田くんとは何度も顔を合わせたけれど
あたしが贈った腕時計をつけていたことは一度もなかった。
実は少し……というか、かなり気にしてることがあって。
プレゼントを渡した少し後に
何気なく見ていたテレビの情報番組で
プレゼントについての街頭インタビューをしていた。
メインは彼氏彼女の誕生日の予算についてだったけど
友達関係にある異性に誕生日プレゼントを贈るのは
総じて『ナシ』だった。
理由はズバリ『重い』から。
たまたま誕生日前後に会っていて
ちょっと何かをご馳走するくらいならアリだけど
誕生日当日にわざわざ贈るなんて重すぎる。
そんな話題で盛り上がっていた。
—————まじか
ただ、友達でもその関係性によっては
なくはない、との少数意見もあった。
宮田くんがどの意見に当てはまるのかはわからないけれど
贈った腕時計に関してはこれまで無反応で。
まぁ何度もお礼を言われるものでもないし
使ってるよ、なんてわざわざ報告するタイプでもないし
今更あれこれ考えても仕方ないので
あまり考えないようにしていた。
「早いですね」
待ち合わせ時間より少し前に宮田くんがきた。
「おはよ」
もたれかかっていた壁から身体を起こすと
ふと視界に入ったのは
宮田くんの左手首に巻かれた
見覚えのある黒いレザーベルトだった。
「あーもう感無量!実物観れるなんて…しかも日本で観れるなんて思ってなかったもん!」
興奮冷めやらぬあたしの前で
ゆっくりコーヒーに口をつける宮田くん。
「よかったですね」
展示を見終えて
あたしと宮田くんは今
美術館に併設されているカフェにいた。
美術館自体が歴史的な建造物で
有形文化財にも指定されている。
その一角にあるカフェの大きな窓からは
整えられた庭園が広がっていた。
ここも来てみたかったところで
まさか宮田くんと来れるなんて夢にも思ってなかった。
—————今日は願いが二つも叶ってしまった
そんなわけであたしは大満足の時間を過ごしたんだけど。
「宮田くん、退屈じゃなかった?」
最初こそあたしなりに知ってる限りの解説みたいなものをしていたけれど、途中から自分が観るのに夢中になってしまった。
「何かごめんね。夢中になり過ぎて後半ほぼ無言だったよね、あたし」
「まぁ澪さんがこうなるのは最初からわかってたから、気にしないでください。そのつもりだったし」
「え、そうなの?」
「絵に夢中になってる時の澪さん、周りが全然見えなくなるだろ」
あ、と過去のあれこれを思い出す。
「今日はそういう澪さんが見たかっただけだから」
「え……?」
サラリと言う宮田くんだけど
あたしは思わず意味を深読みしそうになる。
それに気づいた宮田くんは慌てて言葉を足した。
「いやっ……だから、その、澪さんが満足したならそれでいいってこと」
そう言って窓の外に視線を向ける宮田くん。
「……ありがと」
あたしも何だか気恥ずかしくて
それだけ言って宮田くんの視線を追いかけた。
美術館を出てから少し街を歩いて
宮田くんが買い物があると言うので
スポーツ用品店に寄ったりしているうちに夕方になり
あたしたちは帰ることにした。
待ち合わせの駅に着いて、何も言わなくても宮田くんはあたしの家の方向に向かって歩き出した。
いつも申し訳ないなぁと思いつつ
嬉しくて、甘えてしまう。
「いつも家まで送ってくれてありがとね」
右隣を歩く宮田くんの左手首が目に入る。
「あと、それ」
あたしの言葉に
宮田くんが顔を向ける。
「腕時計。使ってくれてるんだ」
朝からずっと気になっていたことを
思い切って声をかけてみる。
「よかった。渡した時宮田くんちょっと困ってたみたいだから、申し訳ないことしちゃったかなって思ってた」
「いや、そんなことは全然ないです。ただ」
「ただ?」
「オレあんまりプレゼントとか貰ったことないから、どんな顔して使っていいかわからないって言うか……」
「え?宮田くん、ファンの人からたくさん貰ってるじゃない」
誕生日当日の光景を思い出す。
きっと誕生日だけじゃない。
それ以外の時でもきっと色々贈られるはずで
貰ったことがないわけがない。
「受け取ってませんよ。ジムには色々届いてるみたいだけど、物に関しては全部ジムで使ってもらってる。手紙の類だけはさすがに目は通してるけど」
「そうなんだ」
「別に欲しいものとかねぇし、欲しけりゃ自分で買えばいいし」
「うん……そうだよね。なんかごめん。余計なことして」
「あ……いや、だからそういうことじゃなくて」
大事にしたいから、なかなか使えないっていうか。
最後は独り言みたいな声で言って
宮田くんは顔を背けた。
「えっと、それは嬉しかったってことでいいのかな」
言ってから、頬に全身の血液が集まったみたいな感覚に陥る。
「……だからそう言ってんだろ。もうこの話は終わり」
辺りはすっかり暗くなって
しかも宮田くんは全然こっちを見てくれないので、
どんな顔をしているのかわからなかった。
だけどあたし自身も、もうどうにかなってしまいそうなくらい恥ずかしくなっていたので
宮田くんの言う通り、この話は終わりにすることにした。
2026/03/28
+++++atogaki+++++
デートどころか
宮田くんって遊びに行ったりとかの
お出掛けイメージが全然ないのは私だけかな(苦笑)
きっとそんなことはないんだろうけど。