お相手宮田くんの原作沿い連載です
長編
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
04 雨
まだ梅雨入りしない5月下旬だというのに
ここ連日降り続く雨にあたしはうんざりしていた。
入学して二ヶ月近くが経ち、学校生活もそれなりに落ち着いてきた。
アルバイトも晴れて見習い期間を終え、週3、4日というペースになり
時間的にゆとりができたので
あたしは好きな絵をまた始めようと思っていた。
高校三年の時は美術部の部長もやっていた。
将来はそっちに進みたいと思った時期もあったけれどそこまでの自信もなく、
結局普通の大学に進み、絵は趣味で続けていくことにした。
あの頃はスケッチブック片手によく出かけたものだ。
三年になり部活を引退してからは受験に専念するため長らく離れていたが
生活が落ち着いたのでそろそろ再開しようと計画していた矢先、連日の悪天候に見舞われた。
窓を叩く雨を恨めしく思いながら
夕方のバイトの時間まで、大人しく課題を片付ける事にした。
そして翌日。
あたしの願いが通じたのか、
カーテンから差し込む朝陽で目が覚める。
ゆるゆると起き上がり、横になっているベットのすぐ傍にあるカーテンを開けると
薄明るかった部屋が一瞬にして暖かな色に変化した。
「うわぁ、いい天気!」
溜まっていたフラストレーションが一気に噴き出したような気分だ。
今日は日曜日。
学校もバイトも休みで久しぶりの一日オフ。
あたしはクローゼットから七分袖の綿シャツを出して袖を通し、
キッチンにあったパンをかじりながら
フローリングに無造作に置いてあったジーンズを履いた。
久しぶりに出したスケッチ道具一式をカバンに詰め込んで肩にかけ、
空いた手でクロッキーブックを持つ。
玄関でスニーカーを履きながら一人用のレジャーシートをカバンに入れ、
ふと目に入った傘が少し気になったが
逸る気持ちがそれを意識の外に追いやった。
「いってきまーす」
一人暮らしの部屋からは当然返事は返ってこないが
久しぶりの快晴にあたしは随分浮かれていた。
思う事は皆同じなのか。
緑地公園も今日は随分と賑やかだった。
日曜日ということもあって、親子連れが目立つ。
父親と戯れる息子を見守る母親、
コマなし自転車の練習に励む親子、
ラジコンカーを走らせる男の子なんかもいて、
ほのぼのとした、何とも優しい時間が流れていた。
あたしも適当な場所にシートを敷き
まるで我が部屋かのように道具を広げて腰を下ろし、
眼前に広がる鮮やかな世界を少しでも逃さないよう
一心に描き始めた。
どのくらいの時間が経ったのだろう。
ラフスケッチを3枚ほど描き終えた頃に腕時計に目をやると
午後2時を過ぎていた。
時間の経過を感じる事で一気に現実に引き戻され
いち早く反応したのがあたしのお腹だった。
そういえば朝からパン一個しか食べてないじゃん。
うーんと伸びをし、何か買いに行こうかと思ったその刹那。
ザ―――――――
空が何となく暗いなと思ったのと同じくらいに
大粒の雨が容赦なく降りかかった。
「画材が・・・!」
散らかったものを引っつかんでひとつにまとめ、
敷いていたシートで覆った。
どこかに移動しなくちゃ
雨がシートにあたるとボタボタボタッと
びっくりするくらいの音がする。
あたしは何とか荷物をシートごと持ち上げようとしたら
隙間からペンケースがズルリと滑り落ちた。
「あっ・・・!」
咄嗟に覆っただけなので
持ち上げようとすると中身がばらけてしまう。
「~~~~~~~っっ!」
どうしよう、このままじゃ濡れちゃう・・・
どうしよう、どうしよう・・・・・・
思考回路をフル回転させても、頭の中は真っ白になるばかりで
なんでもっと早くに雨が降りそうなのに気付かなかったんだろう、とか
玄関にあった傘をあの時何でカバンに入れなかったんだろう、とか
そんな後悔ばかりが浮かんできて、どうしようという思いばかりが頭を巡った。
シートの中が少しでも濡れないように覆いかぶさっていたので
周りがどうなっているのか全くわからなかった。
ただ地面を叩き付ける雨の音だけが現状を知る唯一の情報だった。
と、その時。
雨音が変わる。
今まで背中に感じていたものも急になくなった。
「何やってんだよ!」
代わりに、聞き覚えのある声が降ってきた。
あまりいい印象のなかったその声が
耳の奥に妙に響いた。
「・・・宮田くん・・・・・・」
顔を上げると濡れた髪が頬に張り付き
雨粒が輪郭を伝って次々と滴った。
2008/11/15 PCUP
+++++atogaki+++++
この次からようやっと話が動き出します。
本当は動き出したトコまで続いてたんですが
長かったので切りました。
まだ梅雨入りしない5月下旬だというのに
ここ連日降り続く雨にあたしはうんざりしていた。
入学して二ヶ月近くが経ち、学校生活もそれなりに落ち着いてきた。
アルバイトも晴れて見習い期間を終え、週3、4日というペースになり
時間的にゆとりができたので
あたしは好きな絵をまた始めようと思っていた。
高校三年の時は美術部の部長もやっていた。
将来はそっちに進みたいと思った時期もあったけれどそこまでの自信もなく、
結局普通の大学に進み、絵は趣味で続けていくことにした。
あの頃はスケッチブック片手によく出かけたものだ。
三年になり部活を引退してからは受験に専念するため長らく離れていたが
生活が落ち着いたのでそろそろ再開しようと計画していた矢先、連日の悪天候に見舞われた。
窓を叩く雨を恨めしく思いながら
夕方のバイトの時間まで、大人しく課題を片付ける事にした。
そして翌日。
あたしの願いが通じたのか、
カーテンから差し込む朝陽で目が覚める。
ゆるゆると起き上がり、横になっているベットのすぐ傍にあるカーテンを開けると
薄明るかった部屋が一瞬にして暖かな色に変化した。
「うわぁ、いい天気!」
溜まっていたフラストレーションが一気に噴き出したような気分だ。
今日は日曜日。
学校もバイトも休みで久しぶりの一日オフ。
あたしはクローゼットから七分袖の綿シャツを出して袖を通し、
キッチンにあったパンをかじりながら
フローリングに無造作に置いてあったジーンズを履いた。
久しぶりに出したスケッチ道具一式をカバンに詰め込んで肩にかけ、
空いた手でクロッキーブックを持つ。
玄関でスニーカーを履きながら一人用のレジャーシートをカバンに入れ、
ふと目に入った傘が少し気になったが
逸る気持ちがそれを意識の外に追いやった。
「いってきまーす」
一人暮らしの部屋からは当然返事は返ってこないが
久しぶりの快晴にあたしは随分浮かれていた。
思う事は皆同じなのか。
緑地公園も今日は随分と賑やかだった。
日曜日ということもあって、親子連れが目立つ。
父親と戯れる息子を見守る母親、
コマなし自転車の練習に励む親子、
ラジコンカーを走らせる男の子なんかもいて、
ほのぼのとした、何とも優しい時間が流れていた。
あたしも適当な場所にシートを敷き
まるで我が部屋かのように道具を広げて腰を下ろし、
眼前に広がる鮮やかな世界を少しでも逃さないよう
一心に描き始めた。
どのくらいの時間が経ったのだろう。
ラフスケッチを3枚ほど描き終えた頃に腕時計に目をやると
午後2時を過ぎていた。
時間の経過を感じる事で一気に現実に引き戻され
いち早く反応したのがあたしのお腹だった。
そういえば朝からパン一個しか食べてないじゃん。
うーんと伸びをし、何か買いに行こうかと思ったその刹那。
ザ―――――――
空が何となく暗いなと思ったのと同じくらいに
大粒の雨が容赦なく降りかかった。
「画材が・・・!」
散らかったものを引っつかんでひとつにまとめ、
敷いていたシートで覆った。
どこかに移動しなくちゃ
雨がシートにあたるとボタボタボタッと
びっくりするくらいの音がする。
あたしは何とか荷物をシートごと持ち上げようとしたら
隙間からペンケースがズルリと滑り落ちた。
「あっ・・・!」
咄嗟に覆っただけなので
持ち上げようとすると中身がばらけてしまう。
「~~~~~~~っっ!」
どうしよう、このままじゃ濡れちゃう・・・
どうしよう、どうしよう・・・・・・
思考回路をフル回転させても、頭の中は真っ白になるばかりで
なんでもっと早くに雨が降りそうなのに気付かなかったんだろう、とか
玄関にあった傘をあの時何でカバンに入れなかったんだろう、とか
そんな後悔ばかりが浮かんできて、どうしようという思いばかりが頭を巡った。
シートの中が少しでも濡れないように覆いかぶさっていたので
周りがどうなっているのか全くわからなかった。
ただ地面を叩き付ける雨の音だけが現状を知る唯一の情報だった。
と、その時。
雨音が変わる。
今まで背中に感じていたものも急になくなった。
「何やってんだよ!」
代わりに、聞き覚えのある声が降ってきた。
あまりいい印象のなかったその声が
耳の奥に妙に響いた。
「・・・宮田くん・・・・・・」
顔を上げると濡れた髪が頬に張り付き
雨粒が輪郭を伝って次々と滴った。
2008/11/15 PCUP
+++++atogaki+++++
この次からようやっと話が動き出します。
本当は動き出したトコまで続いてたんですが
長かったので切りました。