お相手宮田くんの原作沿い連載です
長編
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
38 距離感
パスタに続きコンソメスープを口にした宮田くんは
ゆっくりと味わいながら只々感心していた。
最初こそ得意になっていたけれど
宮田くんがあんまり何度も褒めるので
そこまで酷かったかな、と一人ごちると
「酷かったです」
と遠慮の欠片もない返事が返ってきた。
「仕方ないじゃん。まともに料理なんてしたことなかったんだから」
言い返そうにも本当の事なので何も言えない。
開き直ってあたしはパスタを食べる。
「そういえば宮田くんも一人暮らしだよね。普段食事ってどうしてるの?」
試合後のお父さんとのやりとりから
宮田くんがお父さんと一緒に暮らしてないことは何となく気付いていた。
ふと気になった疑問をぶつけてみる。
「作ってるけど」
至極当たり前の返事。
もう少し突っ込んで聞いてみる。
「どんなの?」
「普通に、米炊いて味噌汁作って、野菜炒めたり」
「そうなんだ。なんかすごいね」
意外とちゃんとしたものを作っていたので
感心してしまったあたしに宮田くんは続けた。
「別に。海外行く前からやってたし」
パスタを口に運びつつ
淡々とした答えにあたしの疑問符が大きくなった。
「え、料理?」
「一人暮らしだから他にやる人いないだろ」
何でもない、という口振り。
「海外行く前からって・・・高校生の時から一人暮らし?」
「ああ。高2の夏休みから」
「そうなの?!え、でもずっとお父さんにボクシング習ってるんだよね?ていうかお母さんは?」
驚きの余り矢継ぎ早に聞いてからしまったと思ったけれど
食事の手を休めず気分を害した風でもない宮田くんがポツリと言った。
「・・・・・まぁ、色々あるんですよ」
思いがけず聞いてしまった宮田くんの身の話に驚いて
勢いに任せていろいろ聞いてみたくなったけど
この一言があたしの勢いに線を引いた。
「ふ、ふーん・・・」
それ以上聞くことに躊躇いを覚えたあたしは
平静を装って聞き流すことにした。
それから他愛ない話をしながら楽しく食事を続けたのだけれど、あたしの脳裏にひとつの事実が浮き彫りになった。
—————宮田くんと知り合って2年が経つけど
あたしは宮田くんのこと、なにも知らない
目の前にいる宮田くん。
あたしの作った料理を食べて
あたしと話をして。
時折目が合って、宮田くんの瞳にあたしが映って。
今のあたしには
それが宮田くんの全てで。
それ以外のことは、なにも知らない。
「澪さん?」
名前を呼ばれ、ハッと気付くと
向かいに座る宮田くんが怪訝そうな顔をしていた。
「あっ、ごめん。今一瞬ボーっとした」
正直に言ってえへへ、と笑うと
「またですか」とちょっと呆れ顔の宮田くん。
ぼんやりしてたのは本当だけど
その理由までは言えない。
視線を落とすと空になった食器が目に入った。
「あ!ごちそうさまだね。じゃ、片付けて何か飲み物・・・って言ってもあたしコーヒー苦手だから紅茶しかないんだけど」
お砂糖ナシだよね、の言葉に頷いたのを確認してから
空いた食器をキッチンに運んだ。
それからケトルに水を入れ火にかけていると
宮田くんが残りの食器を運んできてくれた。
「わ、ありがとう」
ワンルームの申し訳程度の狭いキッチンなので
振り返ると予想以上に宮田くんが近くにいた。
「ここに置きますね」
少し身をかがめてシンクに食器を置いた宮田くんの顔が
隣に立つあたしの背と
ちょうど同じくらいの高さになったので
宮田くんの声がやけに近くから聞こえた。
同時に感じる宮田くんの気配の近さに
あたしはちょっと緊張したけれど
気付かれる間もなく手ぶらになった宮田くんは部屋に戻った。
お湯が沸いて紅茶を淹れ終えるまでに
頬に集まった熱をどうにか散らして
マグカップを両手にキッチンを後にした。
色んな感情の入り混じった宮田くんとのランチタイムも
気付けばあっという間に時間が過ぎていて
バイトの時間になった宮田くんは帰り支度を始めた。
同じ部屋でごはんを食べて一緒に食器を運んで
玄関先で宮田くんを見送るなんて
出会った頃からは想像もつかなくて
そんな夢みたいなシチュエーションなのにも関わらず
途中から心から楽しめてない自分がいた。
—————少なからず同じ時間を一緒に過ごして
確かに近づいたハズなのに
だんだん遠くなっていく宮田くんの後姿が
不意に『色々ある』と言った宮田くんに重なって
あたしはどこか寂しい気持ちになり
胸の奥がほんの少し痛んだ。
息ができなくなるほどの痛みではないけれど
痛みを無くす手段も思い浮かばない。
気にしなければ全く気にならなかったことなのに
一度気にしてしまったらそう簡単には忘れられない。
そんな得体の知れない感情に
あたしは戸惑いを隠せなかった。
2025/08/27 UP
+++++atogaki+++++
14年と2ヶ月ぶりの更新です。
まさか更新できるとは思ってませんでした。
覚えていてくださる方が果たしているのか・・・
いやもうただの自己満足なんですが
完結まで走り抜けます。
パスタに続きコンソメスープを口にした宮田くんは
ゆっくりと味わいながら只々感心していた。
最初こそ得意になっていたけれど
宮田くんがあんまり何度も褒めるので
そこまで酷かったかな、と一人ごちると
「酷かったです」
と遠慮の欠片もない返事が返ってきた。
「仕方ないじゃん。まともに料理なんてしたことなかったんだから」
言い返そうにも本当の事なので何も言えない。
開き直ってあたしはパスタを食べる。
「そういえば宮田くんも一人暮らしだよね。普段食事ってどうしてるの?」
試合後のお父さんとのやりとりから
宮田くんがお父さんと一緒に暮らしてないことは何となく気付いていた。
ふと気になった疑問をぶつけてみる。
「作ってるけど」
至極当たり前の返事。
もう少し突っ込んで聞いてみる。
「どんなの?」
「普通に、米炊いて味噌汁作って、野菜炒めたり」
「そうなんだ。なんかすごいね」
意外とちゃんとしたものを作っていたので
感心してしまったあたしに宮田くんは続けた。
「別に。海外行く前からやってたし」
パスタを口に運びつつ
淡々とした答えにあたしの疑問符が大きくなった。
「え、料理?」
「一人暮らしだから他にやる人いないだろ」
何でもない、という口振り。
「海外行く前からって・・・高校生の時から一人暮らし?」
「ああ。高2の夏休みから」
「そうなの?!え、でもずっとお父さんにボクシング習ってるんだよね?ていうかお母さんは?」
驚きの余り矢継ぎ早に聞いてからしまったと思ったけれど
食事の手を休めず気分を害した風でもない宮田くんがポツリと言った。
「・・・・・まぁ、色々あるんですよ」
思いがけず聞いてしまった宮田くんの身の話に驚いて
勢いに任せていろいろ聞いてみたくなったけど
この一言があたしの勢いに線を引いた。
「ふ、ふーん・・・」
それ以上聞くことに躊躇いを覚えたあたしは
平静を装って聞き流すことにした。
それから他愛ない話をしながら楽しく食事を続けたのだけれど、あたしの脳裏にひとつの事実が浮き彫りになった。
—————宮田くんと知り合って2年が経つけど
あたしは宮田くんのこと、なにも知らない
目の前にいる宮田くん。
あたしの作った料理を食べて
あたしと話をして。
時折目が合って、宮田くんの瞳にあたしが映って。
今のあたしには
それが宮田くんの全てで。
それ以外のことは、なにも知らない。
「澪さん?」
名前を呼ばれ、ハッと気付くと
向かいに座る宮田くんが怪訝そうな顔をしていた。
「あっ、ごめん。今一瞬ボーっとした」
正直に言ってえへへ、と笑うと
「またですか」とちょっと呆れ顔の宮田くん。
ぼんやりしてたのは本当だけど
その理由までは言えない。
視線を落とすと空になった食器が目に入った。
「あ!ごちそうさまだね。じゃ、片付けて何か飲み物・・・って言ってもあたしコーヒー苦手だから紅茶しかないんだけど」
お砂糖ナシだよね、の言葉に頷いたのを確認してから
空いた食器をキッチンに運んだ。
それからケトルに水を入れ火にかけていると
宮田くんが残りの食器を運んできてくれた。
「わ、ありがとう」
ワンルームの申し訳程度の狭いキッチンなので
振り返ると予想以上に宮田くんが近くにいた。
「ここに置きますね」
少し身をかがめてシンクに食器を置いた宮田くんの顔が
隣に立つあたしの背と
ちょうど同じくらいの高さになったので
宮田くんの声がやけに近くから聞こえた。
同時に感じる宮田くんの気配の近さに
あたしはちょっと緊張したけれど
気付かれる間もなく手ぶらになった宮田くんは部屋に戻った。
お湯が沸いて紅茶を淹れ終えるまでに
頬に集まった熱をどうにか散らして
マグカップを両手にキッチンを後にした。
色んな感情の入り混じった宮田くんとのランチタイムも
気付けばあっという間に時間が過ぎていて
バイトの時間になった宮田くんは帰り支度を始めた。
同じ部屋でごはんを食べて一緒に食器を運んで
玄関先で宮田くんを見送るなんて
出会った頃からは想像もつかなくて
そんな夢みたいなシチュエーションなのにも関わらず
途中から心から楽しめてない自分がいた。
—————少なからず同じ時間を一緒に過ごして
確かに近づいたハズなのに
だんだん遠くなっていく宮田くんの後姿が
不意に『色々ある』と言った宮田くんに重なって
あたしはどこか寂しい気持ちになり
胸の奥がほんの少し痛んだ。
息ができなくなるほどの痛みではないけれど
痛みを無くす手段も思い浮かばない。
気にしなければ全く気にならなかったことなのに
一度気にしてしまったらそう簡単には忘れられない。
そんな得体の知れない感情に
あたしは戸惑いを隠せなかった。
2025/08/27 UP
+++++atogaki+++++
14年と2ヶ月ぶりの更新です。
まさか更新できるとは思ってませんでした。
覚えていてくださる方が果たしているのか・・・
いやもうただの自己満足なんですが
完結まで走り抜けます。