お相手宮田くんの原作沿い連載です
長編
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37 名誉挽回
2日という日時はあっという間に過ぎ、宮田くんとの約束の日がきた。
料理の下ごしらえと部屋の片付けは昨日のうちに済ませ、寝過ごすこともなく、あたしは朝からいつになく片付いた部屋の中をせわしなく動いていた。
時計の針がもう少しで11時を指す頃、今から行きます、という用件のみのメールが届いき、程なくしてインターホンが鳴った。
確認するより早く玄関まで駆け寄ってドアを開けるとメールの送り主が立っていた。
「ようこそー・・・って、どうしたの?」
いつも以上の仏頂面。
「だから何でいきなりドア開けるんですか。オレじゃなかったらどうすんだよ」
そして、少し怒ったような声。
「だって、約束してたんだし、宮田くん以外の人なんて来ないよ」
あっけらかんというあたしに、溜息ひとつ。
「アンタさぁ、仮にも女の一人暮らしだろ。もう少し警戒心持つとか・・・無防備にも程がありますよ」
「はいはい以後気を付けますぅ。それより早く入んなよ。こんなトコで話し込むのもどうかと思うんだけど?」
ドアを目一杯開け、どーぞと促すと、宮田くんはちょっと納得いかないような顔をしてから部屋に入った。
「今日はキレイじゃん。ま、相変わらず色気はないけど」
「ウルサイ」
短い廊下を抜け、部屋に案内すると宮田くんが言った。
「とりあえず座って?」
テーブルを挟んで向かい合うように用意したクッションを勧めると、宮田くんは腰を下ろした。
「ちょっと待っててね、すぐ用意するから」
「あ、ああ・・・」
いつになく落ち着かない様子の宮田くん。
つられるようにあたしも少し緊張しながらキッチンで準備を急いだ。
「オレ、この匂い好きだな」
不意に宮田くんが言って、その時ちょうど茹で上がったパスタにソースを絡めたところだったのであたしはてっきり料理のことだと思った。
「え?バジル好き?」
「違いますよ、絵の具」
そういえば部屋には絵の具がそこかしこに置いていて日常的に描いてるので、今朝も十分に換気はしたつもりだけど、匂いは染み付いてるハズだ。
毎日この部屋で過ごしているあたしは気付かない。
「あ、そう?あたしは慣れてるけどダメな人はダメみたいだよ」
「まぁ、汗とワセリンよりはな」
「・・・比べる対象がそれってどうなの?」
ちょっと困惑しながらできた料理を運ぶ。
ベビーリーフをのせたバジルソースのパスタとコンソメベースの野菜たっぷりスープ。
「・・・・・・葉っぱ・・・」
見たままの感想を述べる宮田くんにあたしは苦笑して説明を加えた。。
「葉っぱじゃなくてベビーリーフ。柔らかくて栄養価も高くておいしんだから!パスタに絡めて食べてみて」
そうすれば、ドレッシングがなくても生野菜でもおいしく食べられる。
前にファミレスで一緒にご飯を食べた時、ドレッシングもかけずに宮田くんはサラダを食べていた。
宮田くんにとって食事はただ“ボクシングをするために必要な行為”だけど、やっぱりおいしく食べれるに越したことはない。
あたしの言葉に一応耳を傾けてくれているみたいで、宮田くんの向かいにあたしが座ってどうぞ、と勧めると遠慮がちにフォークに手を伸ばした。
「・・・いただきます・・・」
宮田くんは言われた通り、パスタとベビーリーフをフォークに絡ませて口に運んだ。
その動作がどことなくぎこちないのは恐らく前例があるからだろう。
口に入れ、ゆっくり咀嚼すると眉間に刻まれた皺がなくなった。
そして味わうように咀嚼し、飲み込むと宮田くんはポツリと言った。
「・・・うまい」
「ホント?!」
歓喜の声に宮田くんはパスタに向けていた視線をあたしに向けると、さっきまで纏っていた警戒心はなく、感心したように言った。
「イヤ・・・前がアレだったから、とりあえず水はキープしてきたんだけど・・・うまいよ、これ」
アレというのは忘れもしない、一昨年のバレンタインにあげた初めての手作りチョコ。
今から考えたら味見もしないでプレゼントするなんて暴挙にもほどがある。
だけど、まるでハミガキ粉みたいだったそのチョコレートを、あの時宮田くんは全部食べてくれた。
「ふっふっふ。見直したか。あたしだってね、この1年、ただボーっと過ごしてたわけじゃないんだからね」
「いや、ホント、ビックリですよ。人って成長するんですね」
「あのねぇ」
憎まれ口たたかれながらもしっかり味わって食べてくれている宮田くんの姿があたしはものすごく嬉しかった。
2011/06/18 UP
+++++atogai+++++
ほぼ2ヶ月ぶりの更新になってしまいました。更新にあたって数話前から読み返してみたんですが相変わらずこっ恥かしいもんですな(苦笑)
2日という日時はあっという間に過ぎ、宮田くんとの約束の日がきた。
料理の下ごしらえと部屋の片付けは昨日のうちに済ませ、寝過ごすこともなく、あたしは朝からいつになく片付いた部屋の中をせわしなく動いていた。
時計の針がもう少しで11時を指す頃、今から行きます、という用件のみのメールが届いき、程なくしてインターホンが鳴った。
確認するより早く玄関まで駆け寄ってドアを開けるとメールの送り主が立っていた。
「ようこそー・・・って、どうしたの?」
いつも以上の仏頂面。
「だから何でいきなりドア開けるんですか。オレじゃなかったらどうすんだよ」
そして、少し怒ったような声。
「だって、約束してたんだし、宮田くん以外の人なんて来ないよ」
あっけらかんというあたしに、溜息ひとつ。
「アンタさぁ、仮にも女の一人暮らしだろ。もう少し警戒心持つとか・・・無防備にも程がありますよ」
「はいはい以後気を付けますぅ。それより早く入んなよ。こんなトコで話し込むのもどうかと思うんだけど?」
ドアを目一杯開け、どーぞと促すと、宮田くんはちょっと納得いかないような顔をしてから部屋に入った。
「今日はキレイじゃん。ま、相変わらず色気はないけど」
「ウルサイ」
短い廊下を抜け、部屋に案内すると宮田くんが言った。
「とりあえず座って?」
テーブルを挟んで向かい合うように用意したクッションを勧めると、宮田くんは腰を下ろした。
「ちょっと待っててね、すぐ用意するから」
「あ、ああ・・・」
いつになく落ち着かない様子の宮田くん。
つられるようにあたしも少し緊張しながらキッチンで準備を急いだ。
「オレ、この匂い好きだな」
不意に宮田くんが言って、その時ちょうど茹で上がったパスタにソースを絡めたところだったのであたしはてっきり料理のことだと思った。
「え?バジル好き?」
「違いますよ、絵の具」
そういえば部屋には絵の具がそこかしこに置いていて日常的に描いてるので、今朝も十分に換気はしたつもりだけど、匂いは染み付いてるハズだ。
毎日この部屋で過ごしているあたしは気付かない。
「あ、そう?あたしは慣れてるけどダメな人はダメみたいだよ」
「まぁ、汗とワセリンよりはな」
「・・・比べる対象がそれってどうなの?」
ちょっと困惑しながらできた料理を運ぶ。
ベビーリーフをのせたバジルソースのパスタとコンソメベースの野菜たっぷりスープ。
「・・・・・・葉っぱ・・・」
見たままの感想を述べる宮田くんにあたしは苦笑して説明を加えた。。
「葉っぱじゃなくてベビーリーフ。柔らかくて栄養価も高くておいしんだから!パスタに絡めて食べてみて」
そうすれば、ドレッシングがなくても生野菜でもおいしく食べられる。
前にファミレスで一緒にご飯を食べた時、ドレッシングもかけずに宮田くんはサラダを食べていた。
宮田くんにとって食事はただ“ボクシングをするために必要な行為”だけど、やっぱりおいしく食べれるに越したことはない。
あたしの言葉に一応耳を傾けてくれているみたいで、宮田くんの向かいにあたしが座ってどうぞ、と勧めると遠慮がちにフォークに手を伸ばした。
「・・・いただきます・・・」
宮田くんは言われた通り、パスタとベビーリーフをフォークに絡ませて口に運んだ。
その動作がどことなくぎこちないのは恐らく前例があるからだろう。
口に入れ、ゆっくり咀嚼すると眉間に刻まれた皺がなくなった。
そして味わうように咀嚼し、飲み込むと宮田くんはポツリと言った。
「・・・うまい」
「ホント?!」
歓喜の声に宮田くんはパスタに向けていた視線をあたしに向けると、さっきまで纏っていた警戒心はなく、感心したように言った。
「イヤ・・・前がアレだったから、とりあえず水はキープしてきたんだけど・・・うまいよ、これ」
アレというのは忘れもしない、一昨年のバレンタインにあげた初めての手作りチョコ。
今から考えたら味見もしないでプレゼントするなんて暴挙にもほどがある。
だけど、まるでハミガキ粉みたいだったそのチョコレートを、あの時宮田くんは全部食べてくれた。
「ふっふっふ。見直したか。あたしだってね、この1年、ただボーっと過ごしてたわけじゃないんだからね」
「いや、ホント、ビックリですよ。人って成長するんですね」
「あのねぇ」
憎まれ口たたかれながらもしっかり味わって食べてくれている宮田くんの姿があたしはものすごく嬉しかった。
2011/06/18 UP
+++++atogai+++++
ほぼ2ヶ月ぶりの更新になってしまいました。更新にあたって数話前から読み返してみたんですが相変わらずこっ恥かしいもんですな(苦笑)
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