お相手宮田くんの原作沿い連載です
長編
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35 ガールズトーク
店長と祝勝会の話をしてから数日が過ぎた。
宮田くんはもうとうに練習に復帰していて、お店には一週間ほどで復帰できると連絡があったみたいだけれど
試合の翌日から取材がたくさん入っているらしく、なかなかバイトにも来れないでいた。
そんなある日のことだった。
「佐倉ちゃーん」
「あれーお久しぶりです!お元気ですか?」
以前このコンビニでバイトしていた元同僚が訪ねてきた。
彼女はあたしより二つ年上で、この4月から就職して社会人になったばかりだった。
バイトを初めて最初こそ教育係の宮田くんと入ることが多かったけれど、慣れてからは彼女と入ることも多かった。
人見知りのない、今風の大学生だった彼女からは積極的に話しかけられバイト仲間の中でも比較的親しい方だった。
初めて彼女とふたりで仕事に入った時に宮田くんとの関係を聞かれ全力で否定したことも、今となっては懐かしい思い出だ。
仕事帰りの彼女の目当ては宮田くんだったみたいで、どうやら復帰戦のお祝いも兼ねて久しぶりに立ち寄ってくれたらしい。
シフトで次の宮田くんの出勤日を確認しようとするとまた出直すからいい、と断られた。
「それより佐倉ちゃん、今日何時まで?」
「今日は6時までですけど」
「じゃもうすぐね。時間大丈夫だったら一緒にゴハン食べにいかない?」
彼女がまだバイトしてた頃、上がり時間が同じだった時に時々一緒にお茶したり食事に行っていた。
特に断る理由もなかったあたしはOKの返事をした。
バイトを終えて、彼女に連れられて来たのは
見た目もすごくオシャレなイタリアンのお店だった。
味も美味しくて、でも手頃な価格で、オシャレな人は違うなぁなんて考えながら互いの近況を適当に話した。
「ところで佐倉ちゃん」
食事も会話もひと段落したところで改めて声を掛けられる。
「なんですか?」
「よかったね、宮田君戻ってきてくれて」
デザートのケーキに手を付けようとしていたフォークを思わず取り落としそうになる。
慌てて持ち直し、反論しようと彼女を見ると
意味深な笑顔を浮かべていた。
「海外に行くからって宮田君が辞めた時、必死だったもんねぇ。他の人を入れるって言う店長に、あたしが宮田くんの分まで頑張りますから!って」
あたしの真似をしているのか、ちょっと声の調子を変えて彼女が言った。
「ま、結局佐倉ちゃん一人じゃカバーしきれなくてあたしも協力したんだけどね?」
「・・・すみません」
「ごめんごめん。そんなつもりじゃないのよ。私だって宮田君の事は気に入ってたから戻って来てほしかったし。でも、プロボクサーだったなんてビックリだよねぇ」
コーヒーを飲みながら感慨深げに言う彼女に
あたしも頷いた。
ボクサーであることを宮田くんはずっと隠していたけど試合毎に仕事を休むことに加え、
試合を重ねるごとに人気も上がり、熱心なファンがどこで調べたのかバイト先のコンビニに来るようになったのも数人ではなく、
あたしが他言しなくても全員に知れ渡るのにそう時間はかからなかった。
.
「で・も。佐倉ちゃんは皆が知るよりずっと前から知ってたんだよねぇ」
「それは偶然っていうかたまたまっていうか・・・」
口篭るあたしに、興味津々の彼女。
「やっぱり私の思った通りになったね。最初から、二人は絶対付き合うと思ったもの」
「あのですね、何度も言いますけど、付き合ってるとかそんなんじゃないですから」
「またまたぁ・・・こないだの試合も会場までシッカリ応援に行ったんでしょ?」
「・・・それは、まぁ・・・ていうか、バイト辞めたのに何で知ってるんですか?」
「ふっふっふ。私の情報網ナメないでよ」
―――何の情報網なんだ
「でもさぁ、佐倉ちゃん」
コーヒーカップを一旦ソーサーに置き、じっと見つめられる。
そこにはさっきまでのからかうような雰囲気は一切なく、その勢いにつられてあたしもフォークを置いて座りなおした。
「宮田君ってさモテるじゃない?ウカウカしてたら誰かに取られちゃうかもよ」
「だから・・・っ!」
「ハイハイハイハわかってるわかってる。でもね?」
真面目かと思ったら茶化してきたり、彼女のテンポにいい加減ついて行けなくなりそうだ。
そんなあたしに構わず、彼女はもう一度あたしを見据えた。
「佐倉ちゃん、宮田君のいない間頑張ってたじゃん。私はそれ見てきたからさ、本気で応援してるのよ」
「・・・・・・」
「料理教室まで通ってたんだから、部屋に呼んで手料理ご馳走しちゃえば?」
「へっ、部屋にですか?!」
「で、そのまま押し倒して既成事実作っちゃえばコッチのモン。宮田君、真面目そうだからちゃんと責任取ってくれるって」
「?!」
「アハハ、冗談冗談」
突拍子もない発言にいい加減頭が混乱してきたあたしは落ち着こうと紅茶を一口飲んだ。
「けどさ、せっかく頑張った成果を出すっていうのも大切だと思うんだけどな」
乗り出していた身体を背もたれに預け、
彼女もコーヒーに口を付ける。
「いきなり誘いにくかったら、そうねぇ・・・祝勝会しよ、とか理由つけてさ」
「や、祝勝会って理由では来ないと思います。店長の誘いも断ってたみたいだし」
あたしの返事に意味深な笑みを隠そうともしない彼女。
「どうかしました?」
「否定する割に前向きに考えてるんだなーって」
「!!」
「アハハ、照れない照れない」
「やっ、ちょ、もう、だから!」
なまじ本音を暴露されたみたいな気がしてあたしは慌てて取り繕おうとしたけれど
何を言っても茶化されるのがオチなので溜息をついて、目の前の食べかけのケーキに手を付けた。
「今日はなんかからっちゃってごめんね」
「いえ。それよりご馳走様でした」
まとめて支払を済ませてくれた彼女に店を出てから自分の分を払おうとすると
初任給が出たから、ということで結局ご馳走してもらう結果になった。
あたしのお礼の返事もそこそこに彼女は話を続ける。
「でも、佐倉ちゃんにその気があるんだったら、応援してるっていうのは本当だからね。頑張んなよ」
にっこり笑ってあたしの肩をポンと叩くと、「じゃあね」と彼女は立ち去っていった。
あれこれ言われたものの、彼女の気持ちが嬉しくて自然と笑みがこぼれた。
あたしは遠くなる背中に向かって一礼し、
その姿が見えなくなるまで見送った。
2011/04/13 UP
+++++atogaki+++++
またも宮田くん出てなくてごめんなさい(汗)
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店長と祝勝会の話をしてから数日が過ぎた。
宮田くんはもうとうに練習に復帰していて、お店には一週間ほどで復帰できると連絡があったみたいだけれど
試合の翌日から取材がたくさん入っているらしく、なかなかバイトにも来れないでいた。
そんなある日のことだった。
「佐倉ちゃーん」
「あれーお久しぶりです!お元気ですか?」
以前このコンビニでバイトしていた元同僚が訪ねてきた。
彼女はあたしより二つ年上で、この4月から就職して社会人になったばかりだった。
バイトを初めて最初こそ教育係の宮田くんと入ることが多かったけれど、慣れてからは彼女と入ることも多かった。
人見知りのない、今風の大学生だった彼女からは積極的に話しかけられバイト仲間の中でも比較的親しい方だった。
初めて彼女とふたりで仕事に入った時に宮田くんとの関係を聞かれ全力で否定したことも、今となっては懐かしい思い出だ。
仕事帰りの彼女の目当ては宮田くんだったみたいで、どうやら復帰戦のお祝いも兼ねて久しぶりに立ち寄ってくれたらしい。
シフトで次の宮田くんの出勤日を確認しようとするとまた出直すからいい、と断られた。
「それより佐倉ちゃん、今日何時まで?」
「今日は6時までですけど」
「じゃもうすぐね。時間大丈夫だったら一緒にゴハン食べにいかない?」
彼女がまだバイトしてた頃、上がり時間が同じだった時に時々一緒にお茶したり食事に行っていた。
特に断る理由もなかったあたしはOKの返事をした。
バイトを終えて、彼女に連れられて来たのは
見た目もすごくオシャレなイタリアンのお店だった。
味も美味しくて、でも手頃な価格で、オシャレな人は違うなぁなんて考えながら互いの近況を適当に話した。
「ところで佐倉ちゃん」
食事も会話もひと段落したところで改めて声を掛けられる。
「なんですか?」
「よかったね、宮田君戻ってきてくれて」
デザートのケーキに手を付けようとしていたフォークを思わず取り落としそうになる。
慌てて持ち直し、反論しようと彼女を見ると
意味深な笑顔を浮かべていた。
「海外に行くからって宮田君が辞めた時、必死だったもんねぇ。他の人を入れるって言う店長に、あたしが宮田くんの分まで頑張りますから!って」
あたしの真似をしているのか、ちょっと声の調子を変えて彼女が言った。
「ま、結局佐倉ちゃん一人じゃカバーしきれなくてあたしも協力したんだけどね?」
「・・・すみません」
「ごめんごめん。そんなつもりじゃないのよ。私だって宮田君の事は気に入ってたから戻って来てほしかったし。でも、プロボクサーだったなんてビックリだよねぇ」
コーヒーを飲みながら感慨深げに言う彼女に
あたしも頷いた。
ボクサーであることを宮田くんはずっと隠していたけど試合毎に仕事を休むことに加え、
試合を重ねるごとに人気も上がり、熱心なファンがどこで調べたのかバイト先のコンビニに来るようになったのも数人ではなく、
あたしが他言しなくても全員に知れ渡るのにそう時間はかからなかった。
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「で・も。佐倉ちゃんは皆が知るよりずっと前から知ってたんだよねぇ」
「それは偶然っていうかたまたまっていうか・・・」
口篭るあたしに、興味津々の彼女。
「やっぱり私の思った通りになったね。最初から、二人は絶対付き合うと思ったもの」
「あのですね、何度も言いますけど、付き合ってるとかそんなんじゃないですから」
「またまたぁ・・・こないだの試合も会場までシッカリ応援に行ったんでしょ?」
「・・・それは、まぁ・・・ていうか、バイト辞めたのに何で知ってるんですか?」
「ふっふっふ。私の情報網ナメないでよ」
―――何の情報網なんだ
「でもさぁ、佐倉ちゃん」
コーヒーカップを一旦ソーサーに置き、じっと見つめられる。
そこにはさっきまでのからかうような雰囲気は一切なく、その勢いにつられてあたしもフォークを置いて座りなおした。
「宮田君ってさモテるじゃない?ウカウカしてたら誰かに取られちゃうかもよ」
「だから・・・っ!」
「ハイハイハイハわかってるわかってる。でもね?」
真面目かと思ったら茶化してきたり、彼女のテンポにいい加減ついて行けなくなりそうだ。
そんなあたしに構わず、彼女はもう一度あたしを見据えた。
「佐倉ちゃん、宮田君のいない間頑張ってたじゃん。私はそれ見てきたからさ、本気で応援してるのよ」
「・・・・・・」
「料理教室まで通ってたんだから、部屋に呼んで手料理ご馳走しちゃえば?」
「へっ、部屋にですか?!」
「で、そのまま押し倒して既成事実作っちゃえばコッチのモン。宮田君、真面目そうだからちゃんと責任取ってくれるって」
「?!」
「アハハ、冗談冗談」
突拍子もない発言にいい加減頭が混乱してきたあたしは落ち着こうと紅茶を一口飲んだ。
「けどさ、せっかく頑張った成果を出すっていうのも大切だと思うんだけどな」
乗り出していた身体を背もたれに預け、
彼女もコーヒーに口を付ける。
「いきなり誘いにくかったら、そうねぇ・・・祝勝会しよ、とか理由つけてさ」
「や、祝勝会って理由では来ないと思います。店長の誘いも断ってたみたいだし」
あたしの返事に意味深な笑みを隠そうともしない彼女。
「どうかしました?」
「否定する割に前向きに考えてるんだなーって」
「!!」
「アハハ、照れない照れない」
「やっ、ちょ、もう、だから!」
なまじ本音を暴露されたみたいな気がしてあたしは慌てて取り繕おうとしたけれど
何を言っても茶化されるのがオチなので溜息をついて、目の前の食べかけのケーキに手を付けた。
「今日はなんかからっちゃってごめんね」
「いえ。それよりご馳走様でした」
まとめて支払を済ませてくれた彼女に店を出てから自分の分を払おうとすると
初任給が出たから、ということで結局ご馳走してもらう結果になった。
あたしのお礼の返事もそこそこに彼女は話を続ける。
「でも、佐倉ちゃんにその気があるんだったら、応援してるっていうのは本当だからね。頑張んなよ」
にっこり笑ってあたしの肩をポンと叩くと、「じゃあね」と彼女は立ち去っていった。
あれこれ言われたものの、彼女の気持ちが嬉しくて自然と笑みがこぼれた。
あたしは遠くなる背中に向かって一礼し、
その姿が見えなくなるまで見送った。
2011/04/13 UP
+++++atogaki+++++
またも宮田くん出てなくてごめんなさい(汗)
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