お相手宮田くんの原作沿い連載です
長編
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30 突然の来訪
チャンピオンカーニバルから数日が過ぎた。
試合の翌日、木村さんに連絡して幕之内くんの容態を聞くと、幸い入院するような状態ではないが当面は休養期間に入る事になるだろう、との事だった。
数日後、幕之内くんに電話すると思ったより元気そうで、応援してくれてありがとうございました、と、何とも彼らしい返事が返ってきた。
それをバイト先で会った宮田くんに伝えると
「そうか」と一言言っただけだった。
三月に入り、宮田くんが凱旋帰国したことが各方面に伝わって、彼の周りが少しずつ賑やかになってきた。
だからといって変わる宮田くんではなかったけれど、バイトに入る日数は格段に少なかった。
その為、顔を合わす機会もあまりなく、実際、幕之内くんの試合を一緒に見に行ってからバイト先で顔を合わせたのはほんの数回で、何れも入れ違いでゆっくり話をする機会も少なかった。
それでもいつでも会える距離に宮田くんがいると思うだけで、あたしは今まで感じたことのない安堵感に包まれた。
そして宮田くんに会わない日が一週間ほど続いた日のことだった。
その日は朝から1日、自宅でキャンバスに向かっていた。
ワンルームには画材道具が散乱し、あたしはといえば絵の具まみれの格好でキャンバスに色を重ねていた。
集中するとそれ以外のことがまったくお留守になる性格は相変わらずで、気付けばとうに日が暮れすっかり夜になっていた。
それでも筆を休めないあたしを止めたのは
インターホンの無機質な音だった。
窓からすっかり暗くなった外が視界に入り、カーテン閉めなくちゃと思いながら見た応対画面に思考が一瞬停止して、それから慌てて筆を置いて玄関に向かった。
「宮田くん?」
何の応対もないままいきなりドアが開いたので、名前を呼ばれた来訪者は面食らっているようだった。
「・・・・いきなりドア開けるのって無用心じゃないですか」
「だって、カメラで宮田くんってわかってたし」
えへへ、と笑うあたしに宮田くんが大きなため息をついた。
「だからって、警戒心なさすぎ」
「もーいいじゃん。それより、本当にどうしたの?」
「あ、ああ。これ、店長から預かってきたから」
そう言って宮田くんが手にしていた茶封筒を受け取る。
「契約更新の書類。判押して次のバイトの時持ってきてくれって」
「え、これ届ける為だけにわざわざ来てくれたの?」
「・・・・店長がずっと渡すの忘れててなるべく早く欲しいからって」
「そうなんだ。ありがとう」
「それと」
言って宮田くんはスポーツバックから別の封筒を取り出し、そのままあたしに差し出した。
.
.
「なに?」
「試合、決まったから」
「え?」
「国内復帰戦、5月に決まったから」
驚いてるあたしに構わずそれだけ言って、じゃ、と宮田くんは背を向けた。
「あ!ちょっと待って、チケット代」
立ち去ろうとする宮田くんに慌てて声をかけると、首だけ傾けるように振り返った。
そして「別にいりませんよ」と言い残して再び歩き出したので、あたしはその辺のサンダルを履き、玄関を出て宮田くんの上着の裾を掴んだ。
「そんなわけにはいかないから!ちょっと待ってよ」
「ホントにいらないって」
「ダメだよ、こんなコトされたらこれから宮田くんに頼めない」
「あーもう、ホントにいいって言ってんだろ」
隣の部屋のドアの前でそんな押し問答していると不意に鍵の開く音がして、あたし達のいるすぐ横のドアがゆっくりと開いた。
チェーンロックのかかったまま開いたドアから言わずもがな、隣の住人がひょっこり顔を出して『静かにしてもらえませんか』と注意された。
隣人と言ってもお互い学生の一人暮らしで、何度か顔を合わせたことがあるだけの格段親しくもなかったあたしは慌ててすみません、と頭を下げると、同じくすみませんと頭を下げた宮田くんの声と重なった。
ドアが閉まった途端に静寂が辺りを包む。
このままここで押し問答を続けるわけにもいかず、だからといってそのまま宮田くんを帰すわけにもいかないあたしは半ば強引に部屋に招き入れることにした。
最初は渋っていたがまた騒ぎになるわけにもいかず、あたしが断固引かないことを悟ったのか、宮田くんは諦めたように部屋に入った。
2010/4/30 UP
+++++atogaki+++++
ようやく宮田くん、国内再始動です。
チャンピオンカーニバルから数日が過ぎた。
試合の翌日、木村さんに連絡して幕之内くんの容態を聞くと、幸い入院するような状態ではないが当面は休養期間に入る事になるだろう、との事だった。
数日後、幕之内くんに電話すると思ったより元気そうで、応援してくれてありがとうございました、と、何とも彼らしい返事が返ってきた。
それをバイト先で会った宮田くんに伝えると
「そうか」と一言言っただけだった。
三月に入り、宮田くんが凱旋帰国したことが各方面に伝わって、彼の周りが少しずつ賑やかになってきた。
だからといって変わる宮田くんではなかったけれど、バイトに入る日数は格段に少なかった。
その為、顔を合わす機会もあまりなく、実際、幕之内くんの試合を一緒に見に行ってからバイト先で顔を合わせたのはほんの数回で、何れも入れ違いでゆっくり話をする機会も少なかった。
それでもいつでも会える距離に宮田くんがいると思うだけで、あたしは今まで感じたことのない安堵感に包まれた。
そして宮田くんに会わない日が一週間ほど続いた日のことだった。
その日は朝から1日、自宅でキャンバスに向かっていた。
ワンルームには画材道具が散乱し、あたしはといえば絵の具まみれの格好でキャンバスに色を重ねていた。
集中するとそれ以外のことがまったくお留守になる性格は相変わらずで、気付けばとうに日が暮れすっかり夜になっていた。
それでも筆を休めないあたしを止めたのは
インターホンの無機質な音だった。
窓からすっかり暗くなった外が視界に入り、カーテン閉めなくちゃと思いながら見た応対画面に思考が一瞬停止して、それから慌てて筆を置いて玄関に向かった。
「宮田くん?」
何の応対もないままいきなりドアが開いたので、名前を呼ばれた来訪者は面食らっているようだった。
「・・・・いきなりドア開けるのって無用心じゃないですか」
「だって、カメラで宮田くんってわかってたし」
えへへ、と笑うあたしに宮田くんが大きなため息をついた。
「だからって、警戒心なさすぎ」
「もーいいじゃん。それより、本当にどうしたの?」
「あ、ああ。これ、店長から預かってきたから」
そう言って宮田くんが手にしていた茶封筒を受け取る。
「契約更新の書類。判押して次のバイトの時持ってきてくれって」
「え、これ届ける為だけにわざわざ来てくれたの?」
「・・・・店長がずっと渡すの忘れててなるべく早く欲しいからって」
「そうなんだ。ありがとう」
「それと」
言って宮田くんはスポーツバックから別の封筒を取り出し、そのままあたしに差し出した。
.
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「なに?」
「試合、決まったから」
「え?」
「国内復帰戦、5月に決まったから」
驚いてるあたしに構わずそれだけ言って、じゃ、と宮田くんは背を向けた。
「あ!ちょっと待って、チケット代」
立ち去ろうとする宮田くんに慌てて声をかけると、首だけ傾けるように振り返った。
そして「別にいりませんよ」と言い残して再び歩き出したので、あたしはその辺のサンダルを履き、玄関を出て宮田くんの上着の裾を掴んだ。
「そんなわけにはいかないから!ちょっと待ってよ」
「ホントにいらないって」
「ダメだよ、こんなコトされたらこれから宮田くんに頼めない」
「あーもう、ホントにいいって言ってんだろ」
隣の部屋のドアの前でそんな押し問答していると不意に鍵の開く音がして、あたし達のいるすぐ横のドアがゆっくりと開いた。
チェーンロックのかかったまま開いたドアから言わずもがな、隣の住人がひょっこり顔を出して『静かにしてもらえませんか』と注意された。
隣人と言ってもお互い学生の一人暮らしで、何度か顔を合わせたことがあるだけの格段親しくもなかったあたしは慌ててすみません、と頭を下げると、同じくすみませんと頭を下げた宮田くんの声と重なった。
ドアが閉まった途端に静寂が辺りを包む。
このままここで押し問答を続けるわけにもいかず、だからといってそのまま宮田くんを帰すわけにもいかないあたしは半ば強引に部屋に招き入れることにした。
最初は渋っていたがまた騒ぎになるわけにもいかず、あたしが断固引かないことを悟ったのか、宮田くんは諦めたように部屋に入った。
2010/4/30 UP
+++++atogaki+++++
ようやく宮田くん、国内再始動です。