お相手宮田くんの原作沿い連載です
長編
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29 試合観戦
「ホラ」
ホールに入って席に着くなり宮田くんが何も言わずにどこかへ行ったと思ったら、ペットボトルのお茶を片手に戻ってきた。
「あ、ありがとう」
ただの言い訳だったから当然ノドが乾いてるわけではなく、だからといってそれを正直に言うわけにもいかず
あたしは差し出されたペットボトルを受け取って蓋をあけ、一口飲んだ。
「すごい人だね」
隣に座った宮田くんに声を掛ける。
会場前もすごかったけれど、メインイベント開始までまだいくらか時間はあるのにホール内はすでに超満員だった。
「ああ。これだったらライセンスで入れても大変だったな。助かりましたよ」
「ううん。あたしも1人より誰かいた方がいいし」
よく考えたら宮田くんと試合を観るのは初めてかもしれない。
いつもはリングの上にいるはずの人が自分の隣にいるというは不思議な気分だ。
「けどよく取れましたね、チケット。大変だったんじゃないですか?」
「そうでもないよ。幕之内くんに頼んだから」
「幕之内?なんで澪さんと幕之内が知り合いなんですか?」
あたしから聞くはずのない名前に宮田くんは素直に驚いてるみたいだった。
「ああ、あのね、宮田くんが向こうに行ってから親しくなったんだ。キッカケは木村さんなんだけど」
木村さんの名前にさらに怪訝な顔になった宮田くん。
あたしは木村さんと知り合って鴨川ジムの皆と親しくなるまでのいきさつを簡単に話した。
勿論、宮田くんがくれた花束の事には触れなかったけど。
「宮田くんがもともと鴨川ジムにいた事も聞いちゃった」
「・・・・・」
「・・・ごめん。なんか、探るようなことして」
何も言わない宮田くんの態度から、あたしはしまったなぁと少し後悔した。
「木村さん・・・」
「ん?」
「木村さん・・・何か言ってませんでしたか?」
ところが予想に反して宮田くんが聞いてきたのはそんな事で、不思議に思ってあたしはその気持ちのまま返事した。
「何かって?」
「・・・・いや。別に、何でもないです」
含んだ言い方がすごく気になったけど、本人のいないところでアレコレ聞いてしまった手前それ以上聞くのも躊躇われて黙っていると宮田くんが続けた。
「ただ、あの連中の事をあまり真に受けない方がいい」
神妙に、疑いの濃い表情の宮田くん。
どうやらあたしの心配とは別なところに意識があるらしい。
「そう?皆親切でいい人だと思うけど」
「イヤ、悪いっていうんじゃなくて・・・あーもう、とにかくあの連中には余計な事絶対に言うなよ?事実に尾ビレ背ビレつけて楽しむような連中だからな!」
珍しく饒舌な宮田くん。
あんまり必死な様子がおかしくて、あたしは思わず笑ってしまった。
「笑いゴトじゃないからな!ホントに余計なコト言うなよ?」
「わかったわかった」
ニヤニヤしながら返事するあたしに宮田くんはムスッとしてそっぽを向いてしまった。
そんなあたしたちを置いてホール内は試合開始に向けて緊張感が高まっていた。
リングの先をじっと見つめる宮田くんに先程の雰囲気はなく、あたしも気持ちを入れ替えて彼の視線の先を見つめた。
「勝つといいね、幕之内くん」
そう声を掛けた時にはもう宮田くんはボクサーの顔になっていた。
.
試合はチャンピオンの王座防衛という結果に終わった。
青コーナーからタオルが投げ込まれ、試合終了のゴングが鳴り響くリングを宮田くんは何も言わず、ただじっと見つめていた。
程なくしてリング上の幕之内くんが支えられながら立ち上がったのを確認すると、宮田くんは「行こうぜ」と席を立ったのに続いてあたしも腰を上げた。
そして出口に向かう宮田くんは黙ったまま、まるであたしの存在を忘れているかのように足早にホールを出た。
「残念だったね、幕之内くん」
振り返って、ホールを見上げる宮田くんに声をかけると「ああ」と短く言った後、ようやく存在を思い出したかのようにあたしを見た。
「あ・・・幕之内の所に行かなくていいんですか?」
あたしは勿論幕之内くんの応援をしていてチケットもお願いしてたくらいだから試合の後、控室にお祝いに駆けつけるつもりだったけれど状況が変わってしまった。
「うん、でも・・・ちょっと、木村さんに連絡してみる」
試合直後で慌しいのか、何度目かでようやく連絡がついた。
あたしは用件を手短に話すと木村さんはその返事と幕之内くんの様態を簡単に話してくれた。
「幕之内くん、とりあえずは大丈夫みたいだって。それと、よろしく言っとくから今日は帰んなって」
「そうか・・・」
それから二人で電車に乗り、帰りはあたしの家まで送ってもらったけれどその間、宮田くんが口を開くことはなかった。
別れ際になって少し申し訳なさそうな素振りを見せた宮田くんにあたしも楽しく会話する気分では全くなかったので、気にしないでとだけ伝えると安心したように帰って行った。
2010/03/22 UP
+++++atogai+++++
この試合、本当は宮田くんひとりで観にきてるんですけどね。
ま、そこはドリームっつーことで脳内補填しつつ見逃していただければ助かります(苦笑)
「ホラ」
ホールに入って席に着くなり宮田くんが何も言わずにどこかへ行ったと思ったら、ペットボトルのお茶を片手に戻ってきた。
「あ、ありがとう」
ただの言い訳だったから当然ノドが乾いてるわけではなく、だからといってそれを正直に言うわけにもいかず
あたしは差し出されたペットボトルを受け取って蓋をあけ、一口飲んだ。
「すごい人だね」
隣に座った宮田くんに声を掛ける。
会場前もすごかったけれど、メインイベント開始までまだいくらか時間はあるのにホール内はすでに超満員だった。
「ああ。これだったらライセンスで入れても大変だったな。助かりましたよ」
「ううん。あたしも1人より誰かいた方がいいし」
よく考えたら宮田くんと試合を観るのは初めてかもしれない。
いつもはリングの上にいるはずの人が自分の隣にいるというは不思議な気分だ。
「けどよく取れましたね、チケット。大変だったんじゃないですか?」
「そうでもないよ。幕之内くんに頼んだから」
「幕之内?なんで澪さんと幕之内が知り合いなんですか?」
あたしから聞くはずのない名前に宮田くんは素直に驚いてるみたいだった。
「ああ、あのね、宮田くんが向こうに行ってから親しくなったんだ。キッカケは木村さんなんだけど」
木村さんの名前にさらに怪訝な顔になった宮田くん。
あたしは木村さんと知り合って鴨川ジムの皆と親しくなるまでのいきさつを簡単に話した。
勿論、宮田くんがくれた花束の事には触れなかったけど。
「宮田くんがもともと鴨川ジムにいた事も聞いちゃった」
「・・・・・」
「・・・ごめん。なんか、探るようなことして」
何も言わない宮田くんの態度から、あたしはしまったなぁと少し後悔した。
「木村さん・・・」
「ん?」
「木村さん・・・何か言ってませんでしたか?」
ところが予想に反して宮田くんが聞いてきたのはそんな事で、不思議に思ってあたしはその気持ちのまま返事した。
「何かって?」
「・・・・いや。別に、何でもないです」
含んだ言い方がすごく気になったけど、本人のいないところでアレコレ聞いてしまった手前それ以上聞くのも躊躇われて黙っていると宮田くんが続けた。
「ただ、あの連中の事をあまり真に受けない方がいい」
神妙に、疑いの濃い表情の宮田くん。
どうやらあたしの心配とは別なところに意識があるらしい。
「そう?皆親切でいい人だと思うけど」
「イヤ、悪いっていうんじゃなくて・・・あーもう、とにかくあの連中には余計な事絶対に言うなよ?事実に尾ビレ背ビレつけて楽しむような連中だからな!」
珍しく饒舌な宮田くん。
あんまり必死な様子がおかしくて、あたしは思わず笑ってしまった。
「笑いゴトじゃないからな!ホントに余計なコト言うなよ?」
「わかったわかった」
ニヤニヤしながら返事するあたしに宮田くんはムスッとしてそっぽを向いてしまった。
そんなあたしたちを置いてホール内は試合開始に向けて緊張感が高まっていた。
リングの先をじっと見つめる宮田くんに先程の雰囲気はなく、あたしも気持ちを入れ替えて彼の視線の先を見つめた。
「勝つといいね、幕之内くん」
そう声を掛けた時にはもう宮田くんはボクサーの顔になっていた。
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試合はチャンピオンの王座防衛という結果に終わった。
青コーナーからタオルが投げ込まれ、試合終了のゴングが鳴り響くリングを宮田くんは何も言わず、ただじっと見つめていた。
程なくしてリング上の幕之内くんが支えられながら立ち上がったのを確認すると、宮田くんは「行こうぜ」と席を立ったのに続いてあたしも腰を上げた。
そして出口に向かう宮田くんは黙ったまま、まるであたしの存在を忘れているかのように足早にホールを出た。
「残念だったね、幕之内くん」
振り返って、ホールを見上げる宮田くんに声をかけると「ああ」と短く言った後、ようやく存在を思い出したかのようにあたしを見た。
「あ・・・幕之内の所に行かなくていいんですか?」
あたしは勿論幕之内くんの応援をしていてチケットもお願いしてたくらいだから試合の後、控室にお祝いに駆けつけるつもりだったけれど状況が変わってしまった。
「うん、でも・・・ちょっと、木村さんに連絡してみる」
試合直後で慌しいのか、何度目かでようやく連絡がついた。
あたしは用件を手短に話すと木村さんはその返事と幕之内くんの様態を簡単に話してくれた。
「幕之内くん、とりあえずは大丈夫みたいだって。それと、よろしく言っとくから今日は帰んなって」
「そうか・・・」
それから二人で電車に乗り、帰りはあたしの家まで送ってもらったけれどその間、宮田くんが口を開くことはなかった。
別れ際になって少し申し訳なさそうな素振りを見せた宮田くんにあたしも楽しく会話する気分では全くなかったので、気にしないでとだけ伝えると安心したように帰って行った。
2010/03/22 UP
+++++atogai+++++
この試合、本当は宮田くんひとりで観にきてるんですけどね。
ま、そこはドリームっつーことで脳内補填しつつ見逃していただければ助かります(苦笑)