お相手宮田くんの原作沿い連載です
長編
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28 繋いだ手
夕方近くになった後楽園ホールの最寄駅周辺は、改札を出た辺りからすでに混雑し、人が溢れ返っていた。
整列を促すアナウンスが響き、今日の試合予想をするファンとダフ屋の声が入り混じってそこかしこから聞こえてくる。
あたしは手持ちの鞄を前で抱え込むように持って人ごみを縫うよう先を急いだ。
「宮田くん!」
ホール入り口から少し離れた場所にその姿を見つけると向こうもすぐに気付いたみたいで、壁にもたれ掛かった身体を起こし、視線で応えてくれた。
「ごめん、お待たせ」
「まだ十分間に合いますよ」
「ホント?よかったぁ」
荒い呼吸は白い吐息を生み出し、あたしはゆっくり深呼吸して落ち着かせた。
「それにしてもすごい人だね。改札からココまで来るのにいつもの倍かかったよ」
「注目のカードですからね」
あたしの呼吸が整うのを見計らって宮田くんがそろそろ行きましょうかと言ったので頷くと、入り口に向かった宮田くんの背中を追うようにあたしも歩き出した。
「ねぇちょっと。あれ宮田君じゃない?」
雑踏の中、不意にそんな声が耳に飛び込んできた。
あたしのすぐ近くで囁かれる声。
少し先を行く宮田くんには聞こえてないみたいだ。
「えー嘘ォ!海外に行ってるんじゃないの?」
「ていうか、一緒にいる女誰よ」
えと・・・もしかしなくても、あたしのコト、かな・・・・
明らかに敵意のこもった声が突き刺さる。
知らん顔を決めたものの何となく気まずくなって、追いつきそうだった宮田くんの背中から距離をとった。
少しずつ、遠くなっていく背中。
―――ここではぐれても、ホールの中で会えるよね
手にしたチケットを握り締め歩く速度を緩めていくと、宮田くんとの間にできた距離はあっという間に人波に埋もれていった。
何とも言えない気持ちになったあたしは自然と視線を落としていた。
.
「何やってんだよ」
頭上から降ってきた声にはっと顔を上げると、そこには先に行ったはずの宮田くんがいた。
「ボーっとしてたらはぐれるだろ」
怒ったような困ったような、それでいてちょっと呆れたような声。
「ご、ごめーん!えと、あの、ホラ、あ!ちょっとノド乾いたなーとか思って」
えへへ、と誤魔化すあたしに宮田くんは大きな溜息をひとつ。
「自販機ならホールの中にもありますから。早く行こうぜ」
「う、うん・・・」
当然、一部始終を見ている二人から声があがる。
「何アレー」
「もしかして彼女?!」
「やだァ!嘘でしょー!!ありえないんだけど」
あからさまな声はすぐ傍にいた宮田くんにも聞こえたみたいで、振り返って彼女たちの方を見たけれど、特に表情を変える事もなくすぐに視線を背けた。
それに気付いた二人は小さな歓声をあげ、あたしはどうにも居心地が悪くて宮田くんの隣にますます行き辛くなってしまい、その場に立ち竦んでしまった。
「早く」
そんなあたしの右手を宮田くんが強引に掴んだ。
問答無用で宮田くんの隣に引き寄せられたあたしは繋いだ手はそのまま、ホールの入り口に向かった。
そして彼女たちの嘆きの声だけが耳に残った。
2010/03/07 UP
+++++atogaki+++++
28話目にしてようやく手を繋ぐというミッションクリア。
手フェチのわたしとしては外せない萌シチュなのでございます(笑)
夕方近くになった後楽園ホールの最寄駅周辺は、改札を出た辺りからすでに混雑し、人が溢れ返っていた。
整列を促すアナウンスが響き、今日の試合予想をするファンとダフ屋の声が入り混じってそこかしこから聞こえてくる。
あたしは手持ちの鞄を前で抱え込むように持って人ごみを縫うよう先を急いだ。
「宮田くん!」
ホール入り口から少し離れた場所にその姿を見つけると向こうもすぐに気付いたみたいで、壁にもたれ掛かった身体を起こし、視線で応えてくれた。
「ごめん、お待たせ」
「まだ十分間に合いますよ」
「ホント?よかったぁ」
荒い呼吸は白い吐息を生み出し、あたしはゆっくり深呼吸して落ち着かせた。
「それにしてもすごい人だね。改札からココまで来るのにいつもの倍かかったよ」
「注目のカードですからね」
あたしの呼吸が整うのを見計らって宮田くんがそろそろ行きましょうかと言ったので頷くと、入り口に向かった宮田くんの背中を追うようにあたしも歩き出した。
「ねぇちょっと。あれ宮田君じゃない?」
雑踏の中、不意にそんな声が耳に飛び込んできた。
あたしのすぐ近くで囁かれる声。
少し先を行く宮田くんには聞こえてないみたいだ。
「えー嘘ォ!海外に行ってるんじゃないの?」
「ていうか、一緒にいる女誰よ」
えと・・・もしかしなくても、あたしのコト、かな・・・・
明らかに敵意のこもった声が突き刺さる。
知らん顔を決めたものの何となく気まずくなって、追いつきそうだった宮田くんの背中から距離をとった。
少しずつ、遠くなっていく背中。
―――ここではぐれても、ホールの中で会えるよね
手にしたチケットを握り締め歩く速度を緩めていくと、宮田くんとの間にできた距離はあっという間に人波に埋もれていった。
何とも言えない気持ちになったあたしは自然と視線を落としていた。
.
「何やってんだよ」
頭上から降ってきた声にはっと顔を上げると、そこには先に行ったはずの宮田くんがいた。
「ボーっとしてたらはぐれるだろ」
怒ったような困ったような、それでいてちょっと呆れたような声。
「ご、ごめーん!えと、あの、ホラ、あ!ちょっとノド乾いたなーとか思って」
えへへ、と誤魔化すあたしに宮田くんは大きな溜息をひとつ。
「自販機ならホールの中にもありますから。早く行こうぜ」
「う、うん・・・」
当然、一部始終を見ている二人から声があがる。
「何アレー」
「もしかして彼女?!」
「やだァ!嘘でしょー!!ありえないんだけど」
あからさまな声はすぐ傍にいた宮田くんにも聞こえたみたいで、振り返って彼女たちの方を見たけれど、特に表情を変える事もなくすぐに視線を背けた。
それに気付いた二人は小さな歓声をあげ、あたしはどうにも居心地が悪くて宮田くんの隣にますます行き辛くなってしまい、その場に立ち竦んでしまった。
「早く」
そんなあたしの右手を宮田くんが強引に掴んだ。
問答無用で宮田くんの隣に引き寄せられたあたしは繋いだ手はそのまま、ホールの入り口に向かった。
そして彼女たちの嘆きの声だけが耳に残った。
2010/03/07 UP
+++++atogaki+++++
28話目にしてようやく手を繋ぐというミッションクリア。
手フェチのわたしとしては外せない萌シチュなのでございます(笑)