お相手宮田くんの原作沿い連載です
長編
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27 サラダと侍
宮田くんが帰国して数日が過ぎた。
程なくしてバイトにも復帰してきたので、あたしの生活もバイト中心から少しずつ自分の時間を持てるようになった。
今日は休みだったけれど、夕方6時前、あたしはバイト先のコンビニの裏口でセキュリティーシステムのついたドアが開くのをじっと待っていた。
まだまだ寒さの厳しいこの季節。
吐く息は白く、足踏みしたり身体を揺すったりしながら何とか寒さに耐えていた。
10分程したところでドアが開いて、出てきた人物を確認してから声を掛けた。
「どうしたんですか、こんなところで」
少し驚いた宮田くんがすぐに気付いて近づいてきた。
「ちょっと、ね。今から時間ある?」
「これからメシ食ってジムに行きますけど」
「・・だよね。えっと、今ちょっとだけいいかな?あのさ」
「あー・・・よかったら一緒にどうですか?」
急いで用件だけを伝えようとしたあたしの言葉を宮田くんが遮った。
「え、ジムに?」
「ンなわけないだろ。メシですよ、メシ」
あたしの間抜けな答えに宮田くんは呆れたように言った。
「あ、ああ、そっか。そうだよね、ハハ」
「・・・ボケたところも変わってねぇな」
「何か言った?」
「いえ何も。それよりどうします?」
「うん。行く行く」
.
あたしたちはバイト先を後にして、手短に駅前のファミリーレストランに入った。
オーダーする時、サラダにドレッシングをかけないよう注文した宮田くんにちょっとびっくりした。
程なくして料理が届き、その中のドレッシングのかかってないサラダから宮田くんは手をつけた。
「ドレッシング、嫌いなの?」
まるで作業みたいにサラダを食べる宮田くん。
「そういうわけじゃないですけど、日頃からカロリーあるものはなるべく控えてるんです」
「減量?」
「試合前じゃないからそこまでシビアじゃないですけど、海外に行ってからウエイトコントロールがキツくなったから」
そういえば宮田くん、この一年でまた背が伸びたよね。
「でも、無理な減量繰り返すと背が伸びなくなるよ?」
「むしろその方が有難いですよ」
そう言って淡々とサラダを口に運んだ。
宮田くんにとってボクシングは一部ではなく
それが全てなのかもしれない。
生きるために食べる食事ですら、ボクシングの為、自分の好みなんて考えることもなくただ作業のように行われている。
宮田くんをここまでストイックにするボクシングとは一体何なんだろう。
.
「宮田くんって、すごいね」
「?何ですか、唐突に」
怪訝そうにあたしを見る宮田くんの目をじっと見つめ返した。
自分の決めた道を、わき目も振らずに真っ直ぐ走りつづけて、それってすごいことだよ。
あたしは絵を描くことが好きだけど、そこまでストイックにはなれない。
「かっこいいね、宮田くん」
脳内で自己完結した内容の結果だけを言ったせいで、傍から見れば互いに見つめ合いながら彼に賛辞の言葉を告げたように見える。
案の定、宮田くんはいきなり喉を詰まらせた。
目の前で咳き込む宮田くんにあたしは慌てて水を差し出すとそれを一気に飲み干した。
「大丈夫?」
「・・・ゴホッ・・・ったく、イキナリ何言い出すんだよ」
「え?」
「サラダからなんでそんな話になるんだよ」
「えー、だって、なんか侍みたいでカッコいいなぁって」
「だから何でサラダから侍・・・あー、もういい」
頭が痛い、と言わんばかりの仕草の宮田くんにあたしはえへへ、と笑った。
.
「それより、何ですか話って」
気を取り直して宮田くんが聞いてきて、あたしは本来の目的をすっかり忘れていたことに気付いた。
「あ、そうそう。あのね」
あたしは幕之内くんの試合に誘おうと思っていた。
宮田くんのいない間、あたしは少しでも宮田くんの情報を得たくて鴨川ジムによく顔を出していた。
頻繁に顔を合わせるうちに自然と親しくなり、彼らの試合もよく見に行くようになった。
今度の試合は幕之内くんの初めてのタイトルマッチで、毎年行われているチャンピオンカーニバルだった。
試合の日程を告げ、予定を聞いてみる。
「すいません。その日はちょっと外せない用があるんです」
「そっか・・・残念」
「別の日なら構わないですよ」
「ううん。その日じゃないと駄目なんだ」
「何かあるんですか?」
「チャンピオンカーニバル。その日がフェザー級でね、頼んだチケットが2枚届いてさ、よかったら宮田くん、一緒にどうかなって思ったんだけど」
「オレ、その試合見に行くつもりなんですよ」
「そうなの?!」
「ホールならライセンスで入れるし、そのつもりだったんです」
「じゃ、一緒に行こうよ」
「別に、構わないですよ」
「やった!」
大喜びするあたしを目の前にして少し笑った宮田くんだったけれど、すっかり浮かれてしまったあたしは全然気付かなかった。
その後食事を終え、会計を済ませて店を出た。
「ホントに奢ってもらっていいの?」
席を立つと同時に宮田くんは伝票を持ってレジに向かい、さっさと会計を済ませてしまった。
すぐに自分の分を支払おうとしたが、短いやりとりがあって、結局受け取ってもらえなかった。
「まぁ、お礼っていうか」
「お礼?」
「店長から聞きました。オレが抜けた分、澪さんが入ってくれてたんですよね」
「あ・・・」
「お陰で帰国してすぐバイトに復帰できてすごく助かったんで、そのお礼」
「そ、そう?じゃ、お言葉に甘えてごちそうさまでした」
あたしはにっこり笑って手のひらを合わせて言った。
「じゃ、オレこれからジムに行きますね。今日はちょっと送れないけど」
「あーそんなのいいいい、大丈夫だよ、子供じゃないんだから」
そういうあたしに宮田くんは表情を和らげた。
「じゃ、待ち合わせなんかは今度バイト一緒の時にでも」
「うん。そうだね。練習がんばって」
宮田くんの背中を見送った後の帰り道、無事約束を取り付けたあたしの足取りは軽かった。
2010/02/22 UP
+++atogaki+++
長い海外遠征から帰ってきました。
これからはドリームっぽい展開に・・・と思った矢先、名前変換がひとつって・・・(爆)
ところで、プロのライセンス持ってたら後楽園ホールに入れるとかだったと思うんですが、記憶違いだったらごめんなさい;;
宮田くんが帰国して数日が過ぎた。
程なくしてバイトにも復帰してきたので、あたしの生活もバイト中心から少しずつ自分の時間を持てるようになった。
今日は休みだったけれど、夕方6時前、あたしはバイト先のコンビニの裏口でセキュリティーシステムのついたドアが開くのをじっと待っていた。
まだまだ寒さの厳しいこの季節。
吐く息は白く、足踏みしたり身体を揺すったりしながら何とか寒さに耐えていた。
10分程したところでドアが開いて、出てきた人物を確認してから声を掛けた。
「どうしたんですか、こんなところで」
少し驚いた宮田くんがすぐに気付いて近づいてきた。
「ちょっと、ね。今から時間ある?」
「これからメシ食ってジムに行きますけど」
「・・だよね。えっと、今ちょっとだけいいかな?あのさ」
「あー・・・よかったら一緒にどうですか?」
急いで用件だけを伝えようとしたあたしの言葉を宮田くんが遮った。
「え、ジムに?」
「ンなわけないだろ。メシですよ、メシ」
あたしの間抜けな答えに宮田くんは呆れたように言った。
「あ、ああ、そっか。そうだよね、ハハ」
「・・・ボケたところも変わってねぇな」
「何か言った?」
「いえ何も。それよりどうします?」
「うん。行く行く」
.
あたしたちはバイト先を後にして、手短に駅前のファミリーレストランに入った。
オーダーする時、サラダにドレッシングをかけないよう注文した宮田くんにちょっとびっくりした。
程なくして料理が届き、その中のドレッシングのかかってないサラダから宮田くんは手をつけた。
「ドレッシング、嫌いなの?」
まるで作業みたいにサラダを食べる宮田くん。
「そういうわけじゃないですけど、日頃からカロリーあるものはなるべく控えてるんです」
「減量?」
「試合前じゃないからそこまでシビアじゃないですけど、海外に行ってからウエイトコントロールがキツくなったから」
そういえば宮田くん、この一年でまた背が伸びたよね。
「でも、無理な減量繰り返すと背が伸びなくなるよ?」
「むしろその方が有難いですよ」
そう言って淡々とサラダを口に運んだ。
宮田くんにとってボクシングは一部ではなく
それが全てなのかもしれない。
生きるために食べる食事ですら、ボクシングの為、自分の好みなんて考えることもなくただ作業のように行われている。
宮田くんをここまでストイックにするボクシングとは一体何なんだろう。
.
「宮田くんって、すごいね」
「?何ですか、唐突に」
怪訝そうにあたしを見る宮田くんの目をじっと見つめ返した。
自分の決めた道を、わき目も振らずに真っ直ぐ走りつづけて、それってすごいことだよ。
あたしは絵を描くことが好きだけど、そこまでストイックにはなれない。
「かっこいいね、宮田くん」
脳内で自己完結した内容の結果だけを言ったせいで、傍から見れば互いに見つめ合いながら彼に賛辞の言葉を告げたように見える。
案の定、宮田くんはいきなり喉を詰まらせた。
目の前で咳き込む宮田くんにあたしは慌てて水を差し出すとそれを一気に飲み干した。
「大丈夫?」
「・・・ゴホッ・・・ったく、イキナリ何言い出すんだよ」
「え?」
「サラダからなんでそんな話になるんだよ」
「えー、だって、なんか侍みたいでカッコいいなぁって」
「だから何でサラダから侍・・・あー、もういい」
頭が痛い、と言わんばかりの仕草の宮田くんにあたしはえへへ、と笑った。
.
「それより、何ですか話って」
気を取り直して宮田くんが聞いてきて、あたしは本来の目的をすっかり忘れていたことに気付いた。
「あ、そうそう。あのね」
あたしは幕之内くんの試合に誘おうと思っていた。
宮田くんのいない間、あたしは少しでも宮田くんの情報を得たくて鴨川ジムによく顔を出していた。
頻繁に顔を合わせるうちに自然と親しくなり、彼らの試合もよく見に行くようになった。
今度の試合は幕之内くんの初めてのタイトルマッチで、毎年行われているチャンピオンカーニバルだった。
試合の日程を告げ、予定を聞いてみる。
「すいません。その日はちょっと外せない用があるんです」
「そっか・・・残念」
「別の日なら構わないですよ」
「ううん。その日じゃないと駄目なんだ」
「何かあるんですか?」
「チャンピオンカーニバル。その日がフェザー級でね、頼んだチケットが2枚届いてさ、よかったら宮田くん、一緒にどうかなって思ったんだけど」
「オレ、その試合見に行くつもりなんですよ」
「そうなの?!」
「ホールならライセンスで入れるし、そのつもりだったんです」
「じゃ、一緒に行こうよ」
「別に、構わないですよ」
「やった!」
大喜びするあたしを目の前にして少し笑った宮田くんだったけれど、すっかり浮かれてしまったあたしは全然気付かなかった。
その後食事を終え、会計を済ませて店を出た。
「ホントに奢ってもらっていいの?」
席を立つと同時に宮田くんは伝票を持ってレジに向かい、さっさと会計を済ませてしまった。
すぐに自分の分を支払おうとしたが、短いやりとりがあって、結局受け取ってもらえなかった。
「まぁ、お礼っていうか」
「お礼?」
「店長から聞きました。オレが抜けた分、澪さんが入ってくれてたんですよね」
「あ・・・」
「お陰で帰国してすぐバイトに復帰できてすごく助かったんで、そのお礼」
「そ、そう?じゃ、お言葉に甘えてごちそうさまでした」
あたしはにっこり笑って手のひらを合わせて言った。
「じゃ、オレこれからジムに行きますね。今日はちょっと送れないけど」
「あーそんなのいいいい、大丈夫だよ、子供じゃないんだから」
そういうあたしに宮田くんは表情を和らげた。
「じゃ、待ち合わせなんかは今度バイト一緒の時にでも」
「うん。そうだね。練習がんばって」
宮田くんの背中を見送った後の帰り道、無事約束を取り付けたあたしの足取りは軽かった。
2010/02/22 UP
+++atogaki+++
長い海外遠征から帰ってきました。
これからはドリームっぽい展開に・・・と思った矢先、名前変換がひとつって・・・(爆)
ところで、プロのライセンス持ってたら後楽園ホールに入れるとかだったと思うんですが、記憶違いだったらごめんなさい;;