お相手宮田くんの原作沿い連載です
長編
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22 鴨川軍団
「ごめんねー澪ちゃん。びっくりしただろう」
「は、はぁ・・・」
中をこっそり覗き見していたところ、いきなり大男に抱えられて有無を言う間もなく鴨川ジムに連れ込まれたあたしは
一騒ぎした後にようやく解放されて、今はジム内のベンチに腰を下ろし、目の前に立つ木村さんと話していた。
その隣のベンチで『木村の知り合いかよ』なんて愚痴をこぼしながら、さっきあたしにした事なんて全く気にも留めず
呑気に欠伸なんてしているのこの男の名前は鷹村守。
国内現役最強と言われている、ミドル級の現日本チャンピオンだ。
さっきはいきなり抱えられて気付かなかったけど、にわかボクシングファンのあたしでも知ってる、それくらい有名な人。
でもそれがこんな・・・
「鷹村さんにはマジで気をつけた方がいいぜ。女となるとホント見境ないっつーか」
「誰が見境いねーんだよ。人のこと言う前にキサマのそのマニアックな女の趣味をどうにかしろ」
「あんたに言われたかねーよ。このスケベ大王」
・・・スケベ大王だったなんて。
鷹村さんをうまいこと表現した青木さん―――ベンチに座ってすぐに自己紹介された―――がプロレス技をかけられてるのをよそに、木村さんがあたしの隣に座った。
「鷹村さんっていつもあんな感じなんですか?」
「まぁ、ね。別名理不尽大王ってのもあるよ」
プロレス技をガッチリと決められ、今にも泡を吹きそうな青木さんとさも満足げな鷹村さん。
それに苦笑する木村さん。
きっとこれは日常茶飯事なんだろうというのがすぐに分かって、理不尽大王という事にもすぐに合点がいった。
「だけど、楽しそうなジムですね」
そう言ってみたものの、他のボクシングジムなど見たことがないので比べようもないのだけれど
イメージしていたものとは全然違っていた。
「宮田くんも、元はこのジムにいたんですよね。どうして辞めちゃったんですか?」
「あー・・・それは・・・」
木村さんが口篭るとちょうどガラリとドアが開いて、汗だくになった男の子が入ってきた。
「お、ちょうどいいところに帰ってきた。おーい!」
木村さんに呼ばれてすぐに気付いたその人は
肩からかけたタオルで汗を拭いながら、鷹村さん達の方へも視線を向けつつ近づいてきた。
この人、知ってる。
「一体何の騒ぎですか木村さん・・・って、あのそちらの方は?」
宮田くんが目標としてきた、新人王トーナメントの覇者。
「青木は鷹村さんのいつものアレだよ。それより彼女な」
今年のフェザー級全日本新人王。
「幕之内一歩選手ですよね」
「はい。あれ、ボクの事知ってるんですか?」
「ん~?何だ澪の目当ては木村じゃなくて一歩か?」
「いえ!目当てとかじゃなくて・・・あ!」
着いた途端に色々なことがあって本来の目的をすっかり忘れていた。
「これを返そうと思ってお店に伺ったらお休みだったので、ここに来れば会えるかと思って」
あたしは慌てて鞄から花言葉辞典を取り出し
隣に座る木村さんに渡した。
「そんなのいつでもよかったのに、わざわざありがとな。で、どうだった?」
「・・・・どうって言うか」
手にした本とあたしの顔を交互に見て、興味深い表情で木村さんが言う。
それに口ごもるあたし。
「おい」
そんなあたしたちの会話に割り込んできたのは、やっぱり鷹村さんだった。
「キサマら一体何の話してやがるんだ?オレ様にもわかるように説明してみなさい」
どこか上から目線の問いかけ。
「え~・・・っと、いやぁ、大した事じゃないッスよ。な、澪ちゃん」
鷹村さんの質問にいかにも『合わせて』といわんばかりの木村さんの、どかか焦ったような視線にあたしはわけも分からず合わせたつもりが
「ええっと・・・あの、宮田くんから貰った花の花言葉が知りたくてですね」
「宮田だと?」
「宮田くんだって?!」
つい宮田くんの名前を出してしまい、それに対して鷹村さんと、そして幕之内くんまでが反応した。
それが意外で戸惑うあたしの横で、しまったとばかりに木村さんが頭を抱えた。
「そういえば前に宮田が木村ンとこに花買いに来たって言ってたな。ん・・・?キサマよく見たら宮田のバイト先の女じゃねーか」
鷹村さんの言葉にあたしもハッと思い出した。
前に木村さんとバイト先に来た大男はこの鷹村さんで、あっちで泡吹いてる青木さんが一緒にいたパーマの人だ。
あの時はボクシングにこれっぽっちも興味なかったから全然気付かなかったけれど。
思わぬところでピースが重なり、変に感心してしまったあたしを
ロクな事を考えてなさそうな笑顔の鷹村さんが見ていた。
「そうか、宮田か・・・」
ニタ~っという表現が似合うのはこういう笑顔のことを言うんだろう。
そんな鷹村さんを前に、あたしの第六感は警笛を鳴らした。
この男は危険だ、と。
「澪ちゃん、君そろそろ帰った方がいいんじゃないか」
「そ、そうですよねー。あんまり長居して皆さんの練習の邪魔しちゃ悪いですしねー」
タイミングよく木村さんが助け舟を出してくれたので、あたしは躊躇うことなく乗りかかった。
何やら悪巧みを考えている鷹村さんをよそに
急いで席を立って、木村さんに見送られながらあたしは鴨川ジムを後にした。
2009/11/16 UP
+++++atogaki+++++
キャラをたくさん登場させるのは滅法苦手なのでこんなんでいいのかしら・・・と戦々恐々です。
キャラのイメージを壊してなければいいのですが・・・;;
「ごめんねー澪ちゃん。びっくりしただろう」
「は、はぁ・・・」
中をこっそり覗き見していたところ、いきなり大男に抱えられて有無を言う間もなく鴨川ジムに連れ込まれたあたしは
一騒ぎした後にようやく解放されて、今はジム内のベンチに腰を下ろし、目の前に立つ木村さんと話していた。
その隣のベンチで『木村の知り合いかよ』なんて愚痴をこぼしながら、さっきあたしにした事なんて全く気にも留めず
呑気に欠伸なんてしているのこの男の名前は鷹村守。
国内現役最強と言われている、ミドル級の現日本チャンピオンだ。
さっきはいきなり抱えられて気付かなかったけど、にわかボクシングファンのあたしでも知ってる、それくらい有名な人。
でもそれがこんな・・・
「鷹村さんにはマジで気をつけた方がいいぜ。女となるとホント見境ないっつーか」
「誰が見境いねーんだよ。人のこと言う前にキサマのそのマニアックな女の趣味をどうにかしろ」
「あんたに言われたかねーよ。このスケベ大王」
・・・スケベ大王だったなんて。
鷹村さんをうまいこと表現した青木さん―――ベンチに座ってすぐに自己紹介された―――がプロレス技をかけられてるのをよそに、木村さんがあたしの隣に座った。
「鷹村さんっていつもあんな感じなんですか?」
「まぁ、ね。別名理不尽大王ってのもあるよ」
プロレス技をガッチリと決められ、今にも泡を吹きそうな青木さんとさも満足げな鷹村さん。
それに苦笑する木村さん。
きっとこれは日常茶飯事なんだろうというのがすぐに分かって、理不尽大王という事にもすぐに合点がいった。
「だけど、楽しそうなジムですね」
そう言ってみたものの、他のボクシングジムなど見たことがないので比べようもないのだけれど
イメージしていたものとは全然違っていた。
「宮田くんも、元はこのジムにいたんですよね。どうして辞めちゃったんですか?」
「あー・・・それは・・・」
木村さんが口篭るとちょうどガラリとドアが開いて、汗だくになった男の子が入ってきた。
「お、ちょうどいいところに帰ってきた。おーい!」
木村さんに呼ばれてすぐに気付いたその人は
肩からかけたタオルで汗を拭いながら、鷹村さん達の方へも視線を向けつつ近づいてきた。
この人、知ってる。
「一体何の騒ぎですか木村さん・・・って、あのそちらの方は?」
宮田くんが目標としてきた、新人王トーナメントの覇者。
「青木は鷹村さんのいつものアレだよ。それより彼女な」
今年のフェザー級全日本新人王。
「幕之内一歩選手ですよね」
「はい。あれ、ボクの事知ってるんですか?」
「ん~?何だ澪の目当ては木村じゃなくて一歩か?」
「いえ!目当てとかじゃなくて・・・あ!」
着いた途端に色々なことがあって本来の目的をすっかり忘れていた。
「これを返そうと思ってお店に伺ったらお休みだったので、ここに来れば会えるかと思って」
あたしは慌てて鞄から花言葉辞典を取り出し
隣に座る木村さんに渡した。
「そんなのいつでもよかったのに、わざわざありがとな。で、どうだった?」
「・・・・どうって言うか」
手にした本とあたしの顔を交互に見て、興味深い表情で木村さんが言う。
それに口ごもるあたし。
「おい」
そんなあたしたちの会話に割り込んできたのは、やっぱり鷹村さんだった。
「キサマら一体何の話してやがるんだ?オレ様にもわかるように説明してみなさい」
どこか上から目線の問いかけ。
「え~・・・っと、いやぁ、大した事じゃないッスよ。な、澪ちゃん」
鷹村さんの質問にいかにも『合わせて』といわんばかりの木村さんの、どかか焦ったような視線にあたしはわけも分からず合わせたつもりが
「ええっと・・・あの、宮田くんから貰った花の花言葉が知りたくてですね」
「宮田だと?」
「宮田くんだって?!」
つい宮田くんの名前を出してしまい、それに対して鷹村さんと、そして幕之内くんまでが反応した。
それが意外で戸惑うあたしの横で、しまったとばかりに木村さんが頭を抱えた。
「そういえば前に宮田が木村ンとこに花買いに来たって言ってたな。ん・・・?キサマよく見たら宮田のバイト先の女じゃねーか」
鷹村さんの言葉にあたしもハッと思い出した。
前に木村さんとバイト先に来た大男はこの鷹村さんで、あっちで泡吹いてる青木さんが一緒にいたパーマの人だ。
あの時はボクシングにこれっぽっちも興味なかったから全然気付かなかったけれど。
思わぬところでピースが重なり、変に感心してしまったあたしを
ロクな事を考えてなさそうな笑顔の鷹村さんが見ていた。
「そうか、宮田か・・・」
ニタ~っという表現が似合うのはこういう笑顔のことを言うんだろう。
そんな鷹村さんを前に、あたしの第六感は警笛を鳴らした。
この男は危険だ、と。
「澪ちゃん、君そろそろ帰った方がいいんじゃないか」
「そ、そうですよねー。あんまり長居して皆さんの練習の邪魔しちゃ悪いですしねー」
タイミングよく木村さんが助け舟を出してくれたので、あたしは躊躇うことなく乗りかかった。
何やら悪巧みを考えている鷹村さんをよそに
急いで席を立って、木村さんに見送られながらあたしは鴨川ジムを後にした。
2009/11/16 UP
+++++atogaki+++++
キャラをたくさん登場させるのは滅法苦手なのでこんなんでいいのかしら・・・と戦々恐々です。
キャラのイメージを壊してなければいいのですが・・・;;