お相手宮田くんの原作沿い連載です
長編
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02 FirstContact
入学式から2週間が過ぎた。
一通りの講義を聴き、それなりに話の合う友達もできた頃、
講義を終えて帰り支度をしていると
昨日一緒に学食に行った友達から一緒にお茶しないかと声をかけられた。
「ごめん。せっかくなんだけど、今日これからバイトなんだ」
もうバイト決まったの?!と驚かれたけど
それはあたし自身も思ってた。
一昨日、店頭の募集を見て
電話をかけたらその日のうちに面接に行って即採用だもの。
何のバイトかと聞かれてコンビニ、と答えると
今度はさっき以上に驚かれた。
なんで。コンビニのバイトってそんなに変かな。
彼女曰く“地味”なんだそうだ。
だけど別にあたしはバイトに華やかさを求めてないし、
時間の自由がきくこと、家から近いこと、
そういう条件で選択するとこのバイトがピッタリ当てはまった。
どうにも納得し難い彼女を後に
あたしは講義室を出た。
「このロッカーが佐倉さんのだから。
貴重品だけはレジの方に持ってきといてね。
じゃ、エプロン着けてちょっと待ってね」
コンビニ奥。
縦長のロッカーが壁側に並んでいて
部屋の中央にはテーブルとパイプイスがいくつか置かれていた。
ここまで案内してくれたのはこの店の店長で
あたしの面接をして採用してくれた人だ。
羽織っていた薄手のジャケットを脱いでハンガーに掛け、
用意してもらった真新しいエプロンを身に着けた。
バイト初日って、やっぱ緊張するなぁ・・・
あたしの教育係ってどんな人だろ。
歳が近いほうがいいね、とか言ってたけど。
仕事すぐに覚えられるかなぁ・・・
準備を整えて近くにあったパイプイスに腰を下ろし、
言われた通りここで待つことにした。
程なくしてノックがあり、あたしはちょっとびくっとして返事した。
立ち上がると同時くらいにドアが開き、
そこには店長と、その少し斜め後ろに男の子が立っていた。
サラサラの黒髪。
透き通るような肌。
長い睫。
そんな繊細な華やかさとは対照的に
確固たる意思を宿した鋭い瞳。
思わず、視線が止まる。
「・・・何だよ」
前髪の向こうから突き刺さるような視線を向けられ
あたしはハッと我に返った。
「え?あ、いや、その・・・なんでも、ないです・・・・」
そ、そりゃイキナリじっと見られたら嫌な感じだよね。
うわぁ・・・初っ端からやっちゃたよォォォ・・・
初対面にして一気に漂い始めた不穏な空気は
店長の明るい声が遮った。
「佐倉さん。彼が君の教育係の宮田一郎くん。
しばらくは同じ出勤にしておくから分からない事は何でも彼に聞いてね。
じゃ、一郎くん、頼んだよ」
マニュアルらしき書類を残して
店長は部屋を出て行った。
途端に部屋中の空気が重くなる。
なんか、めちゃくちゃ気まずいんですケド!
さっきのコトがあるから
何となく話しかけ辛い。
「名前は?」
ガタンとパイプイスを引き出し、
腰を下ろしながら問いかけてきたのは彼の方だった。
少し場の空気が軽くなったような気がして
あたしは内心ホッとした。
名前ならさっき店長が言ってたし
フルネームで言った方がいいのかな。
「佐倉です。佐倉澪」
自分の名前を改めて言うのって
何かヘンな気分。
「苗字だけでいいって。それよか早く座れよ」
・・・・・ちょと待て。
苗字だけならさっき店長が言ってたでしょーが!
あたしの心のツッコミが届くわけもなく、
それどころか自己紹介したあたしの方を見るでもなく、
店長が置いていった書類に目線を落としたまま
超が付くほど無愛想な声で言った。
なっ、何なんだコイツ。
こっちはバイト初日で緊張してんのよ。
ちょっとは気遣えーーーー!!
そんな心の叫びが聞こえるはずもなく、
彼は淡々と仕事の説明を始めた。
なんだかなーと思いながらも、
仕事の説明は言葉遣いとは裏腹にとても丁寧でわかりやすい。
説明に耳を傾け、マニュアルに視線を向けつつ
チラリと彼を覗き見ると
マニュアルに視線を落とす伏目がちな目の、
その睫の長さにドキッとした。
うわ・・・睫長っ・・・あたしよか長いんじゃない?
肌もすごくキレイで、髪もシルクみたいにサラサラだし
なんか、女のあたし、負けてんじゃ・・・・・・
「おい。聞いてんの?」
あたしの視線に気付いたのか
上目遣いでギロリと睨んできた。
「わっ、は、はい!聞いてマ・・・・・・・」
そこまで言って、言葉を止める。
だって、めちゃくちゃ怒ってるみたいなんだもん・・・!
「・・・・・・ゴメンナサイ。ちょっと、ぼんやりしてました・・・」
「・・・ったく」
項垂れるあたしを一瞥して持っていたペンを手放すと
そのままパイプイスに背を預け、腕組しながらはぁと
これ見よがしに大きな溜息を零した。
「オレだって好きで教えてんじゃないんだぜ。
だいたい人にモノ教えるガラじゃねぇのに・・・」
何でオレが、とでも言わんばかりだ。
そんなのあたしが聞きたいよ、なんであんたなんかに、
という気持ちがなかったでもないが
確かに、人が説明してくれてる時に余計な事を考えるのは失礼だ。
しかも人の顔ジロジロ観察って・・・。
「・・・本当にごめんなさい。ちゃんと聞きますから続けてください」
そう言って勢いよく頭を下げたもんだから
ゴンッ
―――お約束?―――
あたしは机で思いっきり額を打った。
「イッタ・・・・・」
「ぷっ」
ぷ?
額に手を当てながら顔を上げると
そこにはさっきまでのしかめっ面が嘘みたいに歪んで、
痛みを堪えるあたしと目が合った瞬間、
さも堪え切れないかのよう蹲るように全身を震わせて笑っていた。
「ちょっと。そんなに笑う事ないでしょ!
普通『大丈夫?』とか心配しない?」
恥ずかしさで頬が上気する。
なんとか平静を保とうと冷静に言ってみるが
目の前の男はまだ笑っている。
「~~~~~~~!」
今度はあたしが黙りこくると
それに気付いたのか、ようやく顔を上げた。
「今時そんなベタな冗談かますかよ」
言葉全体に笑いがこもってる。
「冗談じゃないわよっ」
「なんだ。素でそれかよ」
「だから違―――」
「そもそもアンタが人の話を上の空で聞いてるから悪いんだろ」
そ、それはそうだけど・・・
「変なヤツ」
なっ、なんですってェェェェ!!
反論しようと口を開いたが
それは空しくも彼の言葉に遮られた。
「ま、そのギャグに免じて許してやるよ。じゃさっきの続きから――――」
だからギャグじゃないっての。
思いながらもあたしは大人しくマニュアルに視線を落とした。
「ただいま」
誰に言うでもなくつぶやいて
バタンと音を立てて閉まったドアをロックし靴を脱いだ。
ズルズルと引きずるように短い廊下を歩き、
ガラス張りのドアを開けて部屋に入ると同時に鞄を手放した。
するとサイフやポーチなんかがフローリングに散乱したが
そんな事には気にも留めず、あたしはそのままベットに倒れこんだ。
「疲れた」
バイト初日ということもあるのかもしれないが
ここ数ヶ月、受験にかこつけてすっかりなまってしまった身体は
ほんの数時間の立ち仕事で悲鳴をあげた。
こんなのでこの先続くのかなぁ。
でもせっかく見つけたバイトだし。
何よりあのコンビニはハイツから自転車で5分という立地に加え、
大学までの通学路途中でもある。
おまけに、入学式の日に立ち寄って以来
すっかりお気に入りになった緑地公園の近くでもある。
「こんな好条件、なかなかないんだから頑張らないと」
言葉に出してみることで自分を奮い立たせてみた。
それにしても。
何なんだ、アイツは。
―――宮田一郎―――
無愛想で口が悪くて、おまけに態度もデカいときた。
きっと性格もとんでもなくヒネてるに決まってる。
うん。絶対そうだ。
今日のことをアレコレ思い出し
あたしは初対面の男をそんな風に位置づける。
そりゃ、見た目はちょっとカッコよかったけどさ・・・って!
「オトコは顔じゃないのよ、中身中身!」
あたしの叫びは一人暮らしのこの部屋に空しく響いた。
2008/10/23 PCUP
+++++atogaki+++++
ということで出会いました。
なんだか昭和テイスト溢れる展開ですが
その辺は突っ込まないでいただきたく思っとります。
いやでも原作もちょっとそんな感じなトコあるっていうか・・・あ、禁句?(笑)
入学式から2週間が過ぎた。
一通りの講義を聴き、それなりに話の合う友達もできた頃、
講義を終えて帰り支度をしていると
昨日一緒に学食に行った友達から一緒にお茶しないかと声をかけられた。
「ごめん。せっかくなんだけど、今日これからバイトなんだ」
もうバイト決まったの?!と驚かれたけど
それはあたし自身も思ってた。
一昨日、店頭の募集を見て
電話をかけたらその日のうちに面接に行って即採用だもの。
何のバイトかと聞かれてコンビニ、と答えると
今度はさっき以上に驚かれた。
なんで。コンビニのバイトってそんなに変かな。
彼女曰く“地味”なんだそうだ。
だけど別にあたしはバイトに華やかさを求めてないし、
時間の自由がきくこと、家から近いこと、
そういう条件で選択するとこのバイトがピッタリ当てはまった。
どうにも納得し難い彼女を後に
あたしは講義室を出た。
「このロッカーが佐倉さんのだから。
貴重品だけはレジの方に持ってきといてね。
じゃ、エプロン着けてちょっと待ってね」
コンビニ奥。
縦長のロッカーが壁側に並んでいて
部屋の中央にはテーブルとパイプイスがいくつか置かれていた。
ここまで案内してくれたのはこの店の店長で
あたしの面接をして採用してくれた人だ。
羽織っていた薄手のジャケットを脱いでハンガーに掛け、
用意してもらった真新しいエプロンを身に着けた。
バイト初日って、やっぱ緊張するなぁ・・・
あたしの教育係ってどんな人だろ。
歳が近いほうがいいね、とか言ってたけど。
仕事すぐに覚えられるかなぁ・・・
準備を整えて近くにあったパイプイスに腰を下ろし、
言われた通りここで待つことにした。
程なくしてノックがあり、あたしはちょっとびくっとして返事した。
立ち上がると同時くらいにドアが開き、
そこには店長と、その少し斜め後ろに男の子が立っていた。
サラサラの黒髪。
透き通るような肌。
長い睫。
そんな繊細な華やかさとは対照的に
確固たる意思を宿した鋭い瞳。
思わず、視線が止まる。
「・・・何だよ」
前髪の向こうから突き刺さるような視線を向けられ
あたしはハッと我に返った。
「え?あ、いや、その・・・なんでも、ないです・・・・」
そ、そりゃイキナリじっと見られたら嫌な感じだよね。
うわぁ・・・初っ端からやっちゃたよォォォ・・・
初対面にして一気に漂い始めた不穏な空気は
店長の明るい声が遮った。
「佐倉さん。彼が君の教育係の宮田一郎くん。
しばらくは同じ出勤にしておくから分からない事は何でも彼に聞いてね。
じゃ、一郎くん、頼んだよ」
マニュアルらしき書類を残して
店長は部屋を出て行った。
途端に部屋中の空気が重くなる。
なんか、めちゃくちゃ気まずいんですケド!
さっきのコトがあるから
何となく話しかけ辛い。
「名前は?」
ガタンとパイプイスを引き出し、
腰を下ろしながら問いかけてきたのは彼の方だった。
少し場の空気が軽くなったような気がして
あたしは内心ホッとした。
名前ならさっき店長が言ってたし
フルネームで言った方がいいのかな。
「佐倉です。佐倉澪」
自分の名前を改めて言うのって
何かヘンな気分。
「苗字だけでいいって。それよか早く座れよ」
・・・・・ちょと待て。
苗字だけならさっき店長が言ってたでしょーが!
あたしの心のツッコミが届くわけもなく、
それどころか自己紹介したあたしの方を見るでもなく、
店長が置いていった書類に目線を落としたまま
超が付くほど無愛想な声で言った。
なっ、何なんだコイツ。
こっちはバイト初日で緊張してんのよ。
ちょっとは気遣えーーーー!!
そんな心の叫びが聞こえるはずもなく、
彼は淡々と仕事の説明を始めた。
なんだかなーと思いながらも、
仕事の説明は言葉遣いとは裏腹にとても丁寧でわかりやすい。
説明に耳を傾け、マニュアルに視線を向けつつ
チラリと彼を覗き見ると
マニュアルに視線を落とす伏目がちな目の、
その睫の長さにドキッとした。
うわ・・・睫長っ・・・あたしよか長いんじゃない?
肌もすごくキレイで、髪もシルクみたいにサラサラだし
なんか、女のあたし、負けてんじゃ・・・・・・
「おい。聞いてんの?」
あたしの視線に気付いたのか
上目遣いでギロリと睨んできた。
「わっ、は、はい!聞いてマ・・・・・・・」
そこまで言って、言葉を止める。
だって、めちゃくちゃ怒ってるみたいなんだもん・・・!
「・・・・・・ゴメンナサイ。ちょっと、ぼんやりしてました・・・」
「・・・ったく」
項垂れるあたしを一瞥して持っていたペンを手放すと
そのままパイプイスに背を預け、腕組しながらはぁと
これ見よがしに大きな溜息を零した。
「オレだって好きで教えてんじゃないんだぜ。
だいたい人にモノ教えるガラじゃねぇのに・・・」
何でオレが、とでも言わんばかりだ。
そんなのあたしが聞きたいよ、なんであんたなんかに、
という気持ちがなかったでもないが
確かに、人が説明してくれてる時に余計な事を考えるのは失礼だ。
しかも人の顔ジロジロ観察って・・・。
「・・・本当にごめんなさい。ちゃんと聞きますから続けてください」
そう言って勢いよく頭を下げたもんだから
ゴンッ
―――お約束?―――
あたしは机で思いっきり額を打った。
「イッタ・・・・・」
「ぷっ」
ぷ?
額に手を当てながら顔を上げると
そこにはさっきまでのしかめっ面が嘘みたいに歪んで、
痛みを堪えるあたしと目が合った瞬間、
さも堪え切れないかのよう蹲るように全身を震わせて笑っていた。
「ちょっと。そんなに笑う事ないでしょ!
普通『大丈夫?』とか心配しない?」
恥ずかしさで頬が上気する。
なんとか平静を保とうと冷静に言ってみるが
目の前の男はまだ笑っている。
「~~~~~~~!」
今度はあたしが黙りこくると
それに気付いたのか、ようやく顔を上げた。
「今時そんなベタな冗談かますかよ」
言葉全体に笑いがこもってる。
「冗談じゃないわよっ」
「なんだ。素でそれかよ」
「だから違―――」
「そもそもアンタが人の話を上の空で聞いてるから悪いんだろ」
そ、それはそうだけど・・・
「変なヤツ」
なっ、なんですってェェェェ!!
反論しようと口を開いたが
それは空しくも彼の言葉に遮られた。
「ま、そのギャグに免じて許してやるよ。じゃさっきの続きから――――」
だからギャグじゃないっての。
思いながらもあたしは大人しくマニュアルに視線を落とした。
「ただいま」
誰に言うでもなくつぶやいて
バタンと音を立てて閉まったドアをロックし靴を脱いだ。
ズルズルと引きずるように短い廊下を歩き、
ガラス張りのドアを開けて部屋に入ると同時に鞄を手放した。
するとサイフやポーチなんかがフローリングに散乱したが
そんな事には気にも留めず、あたしはそのままベットに倒れこんだ。
「疲れた」
バイト初日ということもあるのかもしれないが
ここ数ヶ月、受験にかこつけてすっかりなまってしまった身体は
ほんの数時間の立ち仕事で悲鳴をあげた。
こんなのでこの先続くのかなぁ。
でもせっかく見つけたバイトだし。
何よりあのコンビニはハイツから自転車で5分という立地に加え、
大学までの通学路途中でもある。
おまけに、入学式の日に立ち寄って以来
すっかりお気に入りになった緑地公園の近くでもある。
「こんな好条件、なかなかないんだから頑張らないと」
言葉に出してみることで自分を奮い立たせてみた。
それにしても。
何なんだ、アイツは。
―――宮田一郎―――
無愛想で口が悪くて、おまけに態度もデカいときた。
きっと性格もとんでもなくヒネてるに決まってる。
うん。絶対そうだ。
今日のことをアレコレ思い出し
あたしは初対面の男をそんな風に位置づける。
そりゃ、見た目はちょっとカッコよかったけどさ・・・って!
「オトコは顔じゃないのよ、中身中身!」
あたしの叫びは一人暮らしのこの部屋に空しく響いた。
2008/10/23 PCUP
+++++atogaki+++++
ということで出会いました。
なんだか昭和テイスト溢れる展開ですが
その辺は突っ込まないでいただきたく思っとります。
いやでも原作もちょっとそんな感じなトコあるっていうか・・・あ、禁句?(笑)