お相手宮田くんの原作沿い連載です
長編
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16 バレンタイン
「アンタは前にオレが言ったコト聞いてなかったんですか」
今日は2月14日。
愛情や感謝、目的はそれぞれだけど世の女性達が色んな想いを込めてチョコレートを送る日。
1時間先に仕事上がりだったあたしはロッカーで宮田くんを待って、一緒にバイト先を出た。
しばらく歩いてからさり気なく差し出した包みは明らかに“それ”を現すもので、
宮田くんは自分の気持ちを隠そうともせず大きな溜息の後、冒頭の言葉に繋がる。
「ボクサーにとって甘いモンは毒と同じなんだよ」
毒とまで言われたその包みの中身は宮田くんの予想通りチョコレート。
腕を組み、敵でも見据えるようにあたしが手に持ったそれを睨み付ける。
わかってなかったわけじゃないけど、一年に一度のコトだし、
受け取ってあわよくばひとつくらい食べてくれるかなぁなんて思ってたあたしの考えは
ストイックな宮田くんの逆鱗に触れてしまった。
「ごめん。不謹慎でした」
素直に謝り、引っ込めようとするといきなり包みを奪われる。
流石はカウンターの貴公子。
なんて感心してる場合じゃなくて!
「今の時期なら少しくらい大丈夫だし、食ってやるよ」
「ホント?!ありがとう」
沈んだ顔が一気に明るくなる。
目をキラキラさせてってこういう時に使うのかもしれない。
自覚はあったものの、その反応に目の前の宮田くんがニヤリとする。
「なんでそこで笑う?」
「単細胞なヤツと思って」
「もう!」
軽く上げたあたしの拳を宮田くんは笑いながら軽くかわす。
こんな穏やかな表情の宮田くんは新人王戦以来で
あたしはそれがチョコを受け取ってくれた事よりも嬉しかった。
宮田くんが手際よく包みを開ける。
「もしかして、手作りですか?」
返事の代わりにエヘンと威張ってみる。
ちょっと警戒しながら箱をあける宮田くんに
あたしは緊張した。
「へぇ・・・見た目は及第点ですね。で、毒味は?」
「味見でしょーがっ!ホント失礼なんだから。
大丈夫だって。お料理得意な友達に教えてもらった通りに作ったし。
しかもねー、低カロリーチョコなんだよ。文句は食べてからにしてよね」
自信満々のあたしとは対照的に不安顔の宮田くん。
一粒つまんで、口に運ぶ。
数回咀嚼した後、いきなり目を見開いて動きが止まる。
そしてみるみる表情が歪んできたかと思うと、
口元を押さえ苦悶の表情を浮かべながら一気に飲み込み、
鞄から取り出したペットボトルの水を飲んだ。
「おいっ!コレ一体何入れたんだよ?!」
勢いよく飲んだせいか、ゴホゴホッと咳混じりにすごい形相で宮田くんは言った。
「え?」
「いーから食ってみろ」
間抜けに開いた口にチョコレートを一粒放り込まれる。
あたしは宮田くんと同じように数回咀嚼すると
思わず口元を押さえ、一気に飲み込んだ。
「・・・・なんか、ハミガキ粉みたいな味がした」
「アンタさ、人にモノ渡す前に味見くらいしろよ」
「おかしい・・・ちゃんと教わった通り作ったのに」
生まれて初めて作った手作りのチョコレート。
せっかく宮田くんが食べてくれたのに。
こんな事なら市販のものを用意すればよかった。
思考がどんどんネガティブになっていく。
ガックリと肩を落とすあたしの姿を見て宮田くんがクスリと笑った。
くやしいけど、何も言えないよ・・・
「ま、この味は一生忘れられないですね、確実に」
「うるさいなぁ」
あーもうヤダ。大失敗。
穴があったら入りたいよ・・・
頭を抱えたくなるほどの失態に落ち込むあたしに宮田くんは言葉を重ねる。
「本当に、忘れられないですよ」
「もう、しつこいなぁ」
いい加減にしてよね、と言いかけた言葉は
あたしの名前を呼ぶ宮田くんに止められた。
「澪さん」
その声があまりにも真剣だったのであたしは宮田くんを見た。
「・・・・澪さん」
「?どうしたの宮田くん」
何度も呼ばれ、あたしは疑問符を浮かべると
少し何か考えてるみたいだったけど、すぐに思い直したようにあたしを見た。
「・・・・・・いや・・・チョコ、ありがとうござます」
違和感を覚えながらもあたしは敢えて気にしない風に振舞った。
「お世辞でも嬉しいよ」
「お世辞じゃないですよ」
「いいよー別に。来年はビックリするくらいおいしいの作るから」
「来年・・そうですね。期待してますよ」
「まかせて!」
腕まくりでもしそうな勢いで気合を入れるあたしに宮田くんが小さく笑った。
「それにしても大学に入ってもうすぐ一年か。早かったなぁ。宮田くんは卒業だね」
並んで歩く宮田くんを見上げると目が合った。
「・・・そうですね」
「春からはボクシング一本だよね。頑張ってね」
「澪さん」
「うん?」
「・・・・・あの」
やっぱり何かおかしい。
さっきから宮田くんは何かあたしに言おうとしている。
「あ、もしかして次の試合決まったの?」
「いや、それはまだ・・・」
とりあえずすぐに思い当たったことを聞いてみたけれど、それはあっさり否定された。
「そっか。でも決まったらすぐ教えてよね。あたし絶対応援に行くから」
「澪さん」
「・・・・どうしたの、宮田くん」
「・・・・・・・」
「何か、言いたい事でもある?」
「・・・・・いや、その」
宮田くんが口篭るなんて珍しい。
普段から口数が多いほうではないけれど、
言いたい事はハッキリと言う方だ、宮田くんは。
「言いにくいのなら、無理には聞かないけど」
「いえ、すみません。何でもないです」
そう言った宮田くんが何故だか無償に寂しく見えて、妙にあたしの胸にひっかかった。
だけどこの時のあたしは何故かこれ以上は聞いてはいけない、聞かない方がいい気がして、
結局なにも聞かないまま、送ってくれた宮田くんを見送った。
2009/06/28 PCUP
+++++atogaki+++++
とりあえず味見はしようよヒロインさん(苦笑)
ハミガキ粉味のチョコレート・・・夫がお土産に買ってきたパンダのチョコレートがそんな味でした。
おまけに土食べてるような食感だったよ(爆)
「アンタは前にオレが言ったコト聞いてなかったんですか」
今日は2月14日。
愛情や感謝、目的はそれぞれだけど世の女性達が色んな想いを込めてチョコレートを送る日。
1時間先に仕事上がりだったあたしはロッカーで宮田くんを待って、一緒にバイト先を出た。
しばらく歩いてからさり気なく差し出した包みは明らかに“それ”を現すもので、
宮田くんは自分の気持ちを隠そうともせず大きな溜息の後、冒頭の言葉に繋がる。
「ボクサーにとって甘いモンは毒と同じなんだよ」
毒とまで言われたその包みの中身は宮田くんの予想通りチョコレート。
腕を組み、敵でも見据えるようにあたしが手に持ったそれを睨み付ける。
わかってなかったわけじゃないけど、一年に一度のコトだし、
受け取ってあわよくばひとつくらい食べてくれるかなぁなんて思ってたあたしの考えは
ストイックな宮田くんの逆鱗に触れてしまった。
「ごめん。不謹慎でした」
素直に謝り、引っ込めようとするといきなり包みを奪われる。
流石はカウンターの貴公子。
なんて感心してる場合じゃなくて!
「今の時期なら少しくらい大丈夫だし、食ってやるよ」
「ホント?!ありがとう」
沈んだ顔が一気に明るくなる。
目をキラキラさせてってこういう時に使うのかもしれない。
自覚はあったものの、その反応に目の前の宮田くんがニヤリとする。
「なんでそこで笑う?」
「単細胞なヤツと思って」
「もう!」
軽く上げたあたしの拳を宮田くんは笑いながら軽くかわす。
こんな穏やかな表情の宮田くんは新人王戦以来で
あたしはそれがチョコを受け取ってくれた事よりも嬉しかった。
宮田くんが手際よく包みを開ける。
「もしかして、手作りですか?」
返事の代わりにエヘンと威張ってみる。
ちょっと警戒しながら箱をあける宮田くんに
あたしは緊張した。
「へぇ・・・見た目は及第点ですね。で、毒味は?」
「味見でしょーがっ!ホント失礼なんだから。
大丈夫だって。お料理得意な友達に教えてもらった通りに作ったし。
しかもねー、低カロリーチョコなんだよ。文句は食べてからにしてよね」
自信満々のあたしとは対照的に不安顔の宮田くん。
一粒つまんで、口に運ぶ。
数回咀嚼した後、いきなり目を見開いて動きが止まる。
そしてみるみる表情が歪んできたかと思うと、
口元を押さえ苦悶の表情を浮かべながら一気に飲み込み、
鞄から取り出したペットボトルの水を飲んだ。
「おいっ!コレ一体何入れたんだよ?!」
勢いよく飲んだせいか、ゴホゴホッと咳混じりにすごい形相で宮田くんは言った。
「え?」
「いーから食ってみろ」
間抜けに開いた口にチョコレートを一粒放り込まれる。
あたしは宮田くんと同じように数回咀嚼すると
思わず口元を押さえ、一気に飲み込んだ。
「・・・・なんか、ハミガキ粉みたいな味がした」
「アンタさ、人にモノ渡す前に味見くらいしろよ」
「おかしい・・・ちゃんと教わった通り作ったのに」
生まれて初めて作った手作りのチョコレート。
せっかく宮田くんが食べてくれたのに。
こんな事なら市販のものを用意すればよかった。
思考がどんどんネガティブになっていく。
ガックリと肩を落とすあたしの姿を見て宮田くんがクスリと笑った。
くやしいけど、何も言えないよ・・・
「ま、この味は一生忘れられないですね、確実に」
「うるさいなぁ」
あーもうヤダ。大失敗。
穴があったら入りたいよ・・・
頭を抱えたくなるほどの失態に落ち込むあたしに宮田くんは言葉を重ねる。
「本当に、忘れられないですよ」
「もう、しつこいなぁ」
いい加減にしてよね、と言いかけた言葉は
あたしの名前を呼ぶ宮田くんに止められた。
「澪さん」
その声があまりにも真剣だったのであたしは宮田くんを見た。
「・・・・澪さん」
「?どうしたの宮田くん」
何度も呼ばれ、あたしは疑問符を浮かべると
少し何か考えてるみたいだったけど、すぐに思い直したようにあたしを見た。
「・・・・・・いや・・・チョコ、ありがとうござます」
違和感を覚えながらもあたしは敢えて気にしない風に振舞った。
「お世辞でも嬉しいよ」
「お世辞じゃないですよ」
「いいよー別に。来年はビックリするくらいおいしいの作るから」
「来年・・そうですね。期待してますよ」
「まかせて!」
腕まくりでもしそうな勢いで気合を入れるあたしに宮田くんが小さく笑った。
「それにしても大学に入ってもうすぐ一年か。早かったなぁ。宮田くんは卒業だね」
並んで歩く宮田くんを見上げると目が合った。
「・・・そうですね」
「春からはボクシング一本だよね。頑張ってね」
「澪さん」
「うん?」
「・・・・・あの」
やっぱり何かおかしい。
さっきから宮田くんは何かあたしに言おうとしている。
「あ、もしかして次の試合決まったの?」
「いや、それはまだ・・・」
とりあえずすぐに思い当たったことを聞いてみたけれど、それはあっさり否定された。
「そっか。でも決まったらすぐ教えてよね。あたし絶対応援に行くから」
「澪さん」
「・・・・どうしたの、宮田くん」
「・・・・・・・」
「何か、言いたい事でもある?」
「・・・・・いや、その」
宮田くんが口篭るなんて珍しい。
普段から口数が多いほうではないけれど、
言いたい事はハッキリと言う方だ、宮田くんは。
「言いにくいのなら、無理には聞かないけど」
「いえ、すみません。何でもないです」
そう言った宮田くんが何故だか無償に寂しく見えて、妙にあたしの胸にひっかかった。
だけどこの時のあたしは何故かこれ以上は聞いてはいけない、聞かない方がいい気がして、
結局なにも聞かないまま、送ってくれた宮田くんを見送った。
2009/06/28 PCUP
+++++atogaki+++++
とりあえず味見はしようよヒロインさん(苦笑)
ハミガキ粉味のチョコレート・・・夫がお土産に買ってきたパンダのチョコレートがそんな味でした。
おまけに土食べてるような食感だったよ(爆)