お相手宮田くんの原作沿い連載です
長編
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14 触れる心
言われた通り検温は数分で終わった。
体温・脈拍・血圧を測り
食事量を聞いて変わりない事を確認すると
看護師さんはすぐ病室を出て行った。
去り際、必要以上の笑顔で会釈されて
あたしも思わず頭を下げた。
そして、あたしは宮田くんと二人きりになった。
「わざわざ来てくれたんですね」
口火を切ったのは宮田くんだった。
「うん・・・あの、これ、お見舞い・・・・」
そう言って手にした花束を宮田くんに渡す。
病院に来る途中にあった商店街で目に付いた花屋。
お見舞いにいくのに
手ぶらである自分に気付いて店を覗くと
まるで漫画みたいな髪型のおばさんが
にこやかに応対してくれたのを思い出す。
「花か・・・食えねぇな」
「あ・・・ごめん。何がいいかわかんなくて」
「冗談ですよ。ありがとうございます」
最初、看護師さんの後ろにいたあたしを見たとき
宮田くんは一瞬顔を強張らせていた。
ほんの一瞬だったし
きっと見られたとは思ってないだろうけど
あたしは見逃さなかった。
それもあって、張り詰めていたあたしの気持ちが
宮田くんのこの一言で少し和らいだ気がした。
「あのさ、そこの花瓶使っていいかな」
窓辺にあった花瓶に花を生ける。
その間あたしはずっと宮田くんの視線を感じていた。
「よし、と。ね、なかなかいい感じでしょ」
あたしは努めて明るく振舞った。
「・・・そうですね」
「花もね、よくモチーフに使うから結構色んなアレンジ見てるんだけど、種類が多いから花の名前ってなかなか覚えられないんだ」
ベットサイドのパイプイスに座ると
あたしの視線はベットの上で身体を起こしている宮田くんの視線より
ほんの少し低くなった。
だけどその視線を絡めることはやっぱりできなくて
あたしは言葉に詰まってしまった。
暫しの沈黙のあと
宮田くんが「佐倉さん」と呼んだ。
「何?」
「観に来てたんですよね、試合」
当たり障りのない話をしても
回りくどい言い方をされても
今のあたしたちには全く意味のない事で
いきなり核心を突いてきた宮田くんに
一瞬動揺したけれど、むしろ有難く思った。
「・・・うん」
「佐倉さんがくれたバンテージ巻いてたんですけどね・・・こんな結果になってしまってすみません」
「そんな・・・何で宮田くんが謝るの?」
「ボクシングは結果が全てなんですよ。勝てなかったオレが悪い」
「違うっ!」
自分でもびっくりするくらいにきつい口調。
驚いたのは同じなのか
見開いた宮田くんと目が合って
あたしが気付いた時には
ずっと押し込めていた胸の内を言葉として発していた。
「あたし、ボクシングの事はよくわかんないけど、でも、そのあたしですらあれは事故じゃないってわかるよ」
宮田くんの顔が強張った。
今度は明らかに。
その表情を見てあたしなんかが言ってはいけないことなのかもしれないと思った。
だけど、一旦出てしまった言葉は止まらなくて。
「ヒドイよ。あんなの反則だよ。どうして宮田くんが負けなくちゃいけないの?宮田くんと知り合って、まだたったの数ヶ月だけど、あたしずっと見てた。宮田くんがどれだけボクシングに対して真面目で一途で一生懸命なのか。それなのにあんな・・・っ」
感じた視線が、あたしの言葉を止めた。
何も言わず
ただ真っ直ぐに見つめる宮田くんの視線は
あたしを捉えて離さない。
その瞳に、あたしは何も言えなくなる。
「・・・ごめん」
搾り出すようにそれだけ言って
あたしはまた視線を逸らした。
終始、宮田くん優勢で進んだ試合。
事が起こったのは2R。
攻撃を難なくかわそうとした宮田くんの足を
相手の間柴選手が踏み、そのまま顔面を打ち抜かれた。
それからの記憶は
ところどころ飛んでいてうまく思い出せないけれど
ボロボロになりながらも戦い続けた宮田くんの最後の拳が
僅かに届かなかった事だけは鮮明に記憶している。
事故か故意か
それは見てる者には一目瞭然だった。
試合が終わったあの時
素直に泣けたらどれだけ楽だっただろう。
それでも、あたしは意地でも泣かなかった。
―――――あたしなんかが、泣いちゃいけない
ずっと、そう思ってた。
その気持ちが、今日宮田くんに会う決心に繋がった。
―――――あたしなんかが、泣くべきじゃない
俯いていると今にも溢れてしまいそうなものを
あの日と同じように瞳をきつく閉じて
あたしは必死にそれから免れようとしてた。
「澪さん」
二人きりの病室に
あたしの名前が小さく響く。
初めて呼ばれた名前に驚いて顔をあげると
真っ直ぐな瞳の宮田くん。
「サンキュ」
目の前にいる
あたしにだけ聞こえるくらいのその言葉を聞いた瞬間
あたしの中で何かが弾け
こらえていたものが一気に溢れ出した。
言葉にならない涙を流すあたしと
そんなあたしを見つめる宮田くん。
宮田くんが手を伸ばしたのと
あたしが求めたのと。
近づいた二人の距離がゼロになった時。
あたしは宮田くんの腕の中で
声を上げて思い切り泣いた。
どれくらいの時間が経ったのだろうか。
ひとしきり泣いて少し落ち着いてくると
今のこの状況が途端に恥ずかしくなった。
宮田くんもそれを感じたのか
抱きしめられていた腕の力が抜け
あたしはそっと身体を離した。
「落ち着きましたか?」
「うん。ごめん」
宮田くんの視線を痛いくらいに感じながらも
あたしはそれに応えられない。
俯いたままの視界の先には病室の床と
不自然なくらいに白いシーツ、宮田くんの手。
「お見舞いに来たのに、コッチが心配されてちゃダメだよね」
やっと出た言葉がそれで
あたしはどうにか笑顔を作って顔を上げた。
「そんな顔、しないでくださいよ」
「・・・ごめん」
「だから、澪さんが謝る事じゃないだろ」
「うん。ごめん」
そうしてあたしはまた謝ってしまっている。
今度は情けなくて泣きそうだ。
「澪さん、今日は謝ってばっかりだな」
俯いたあたしの頭上からそんな声が聞こえる。
お見舞いに来たのに
本当にあたしは一体何をやってるんだろう。
「バイトでヘマした時も、今くらい素直に謝ってくれたら助かるんですけどね」
え、と顔をあげるあたし。
ニヤリと人が悪い笑みを浮かべる宮田くん。
今それ関係ないでしょう、と大袈裟に言ったその裏で
当事者にこんなに気を遣わせてしまっている自分を嫌悪した。
それから他愛ない話をして、あたしは病室を後にした。
話題を変えてからあたしは努めて明るく振舞い
それを宮田くんはきっと気付いていたけど
敢えて気付かないフリをしてくれていた。
それが有難くもあり、情けなくもあった。
病院を出ると外は夕焼け空が広がっていた。
思わず見惚れてしまうほど鮮やかなその色が
今のあたしにとっては
その美しささえ自分の愚かさを浮き彫りにするようで
思わず目を伏せ、それから逃れるように立ち去った。
2009/05/05 PCUP
+++++atogaki+++++
ギャーーーーッス!!
もうなんなんだコレェェェェェ!!
もっ、ちょ、すごいコメントに困るんですけどォォォォォ・・・と、書いた時の自分に叫んでみる。
とりあえず死ぬほど恥ずかしいです。
でも当時はちょっと半泣きになりながら書いてました(痛)
言われた通り検温は数分で終わった。
体温・脈拍・血圧を測り
食事量を聞いて変わりない事を確認すると
看護師さんはすぐ病室を出て行った。
去り際、必要以上の笑顔で会釈されて
あたしも思わず頭を下げた。
そして、あたしは宮田くんと二人きりになった。
「わざわざ来てくれたんですね」
口火を切ったのは宮田くんだった。
「うん・・・あの、これ、お見舞い・・・・」
そう言って手にした花束を宮田くんに渡す。
病院に来る途中にあった商店街で目に付いた花屋。
お見舞いにいくのに
手ぶらである自分に気付いて店を覗くと
まるで漫画みたいな髪型のおばさんが
にこやかに応対してくれたのを思い出す。
「花か・・・食えねぇな」
「あ・・・ごめん。何がいいかわかんなくて」
「冗談ですよ。ありがとうございます」
最初、看護師さんの後ろにいたあたしを見たとき
宮田くんは一瞬顔を強張らせていた。
ほんの一瞬だったし
きっと見られたとは思ってないだろうけど
あたしは見逃さなかった。
それもあって、張り詰めていたあたしの気持ちが
宮田くんのこの一言で少し和らいだ気がした。
「あのさ、そこの花瓶使っていいかな」
窓辺にあった花瓶に花を生ける。
その間あたしはずっと宮田くんの視線を感じていた。
「よし、と。ね、なかなかいい感じでしょ」
あたしは努めて明るく振舞った。
「・・・そうですね」
「花もね、よくモチーフに使うから結構色んなアレンジ見てるんだけど、種類が多いから花の名前ってなかなか覚えられないんだ」
ベットサイドのパイプイスに座ると
あたしの視線はベットの上で身体を起こしている宮田くんの視線より
ほんの少し低くなった。
だけどその視線を絡めることはやっぱりできなくて
あたしは言葉に詰まってしまった。
暫しの沈黙のあと
宮田くんが「佐倉さん」と呼んだ。
「何?」
「観に来てたんですよね、試合」
当たり障りのない話をしても
回りくどい言い方をされても
今のあたしたちには全く意味のない事で
いきなり核心を突いてきた宮田くんに
一瞬動揺したけれど、むしろ有難く思った。
「・・・うん」
「佐倉さんがくれたバンテージ巻いてたんですけどね・・・こんな結果になってしまってすみません」
「そんな・・・何で宮田くんが謝るの?」
「ボクシングは結果が全てなんですよ。勝てなかったオレが悪い」
「違うっ!」
自分でもびっくりするくらいにきつい口調。
驚いたのは同じなのか
見開いた宮田くんと目が合って
あたしが気付いた時には
ずっと押し込めていた胸の内を言葉として発していた。
「あたし、ボクシングの事はよくわかんないけど、でも、そのあたしですらあれは事故じゃないってわかるよ」
宮田くんの顔が強張った。
今度は明らかに。
その表情を見てあたしなんかが言ってはいけないことなのかもしれないと思った。
だけど、一旦出てしまった言葉は止まらなくて。
「ヒドイよ。あんなの反則だよ。どうして宮田くんが負けなくちゃいけないの?宮田くんと知り合って、まだたったの数ヶ月だけど、あたしずっと見てた。宮田くんがどれだけボクシングに対して真面目で一途で一生懸命なのか。それなのにあんな・・・っ」
感じた視線が、あたしの言葉を止めた。
何も言わず
ただ真っ直ぐに見つめる宮田くんの視線は
あたしを捉えて離さない。
その瞳に、あたしは何も言えなくなる。
「・・・ごめん」
搾り出すようにそれだけ言って
あたしはまた視線を逸らした。
終始、宮田くん優勢で進んだ試合。
事が起こったのは2R。
攻撃を難なくかわそうとした宮田くんの足を
相手の間柴選手が踏み、そのまま顔面を打ち抜かれた。
それからの記憶は
ところどころ飛んでいてうまく思い出せないけれど
ボロボロになりながらも戦い続けた宮田くんの最後の拳が
僅かに届かなかった事だけは鮮明に記憶している。
事故か故意か
それは見てる者には一目瞭然だった。
試合が終わったあの時
素直に泣けたらどれだけ楽だっただろう。
それでも、あたしは意地でも泣かなかった。
―――――あたしなんかが、泣いちゃいけない
ずっと、そう思ってた。
その気持ちが、今日宮田くんに会う決心に繋がった。
―――――あたしなんかが、泣くべきじゃない
俯いていると今にも溢れてしまいそうなものを
あの日と同じように瞳をきつく閉じて
あたしは必死にそれから免れようとしてた。
「澪さん」
二人きりの病室に
あたしの名前が小さく響く。
初めて呼ばれた名前に驚いて顔をあげると
真っ直ぐな瞳の宮田くん。
「サンキュ」
目の前にいる
あたしにだけ聞こえるくらいのその言葉を聞いた瞬間
あたしの中で何かが弾け
こらえていたものが一気に溢れ出した。
言葉にならない涙を流すあたしと
そんなあたしを見つめる宮田くん。
宮田くんが手を伸ばしたのと
あたしが求めたのと。
近づいた二人の距離がゼロになった時。
あたしは宮田くんの腕の中で
声を上げて思い切り泣いた。
どれくらいの時間が経ったのだろうか。
ひとしきり泣いて少し落ち着いてくると
今のこの状況が途端に恥ずかしくなった。
宮田くんもそれを感じたのか
抱きしめられていた腕の力が抜け
あたしはそっと身体を離した。
「落ち着きましたか?」
「うん。ごめん」
宮田くんの視線を痛いくらいに感じながらも
あたしはそれに応えられない。
俯いたままの視界の先には病室の床と
不自然なくらいに白いシーツ、宮田くんの手。
「お見舞いに来たのに、コッチが心配されてちゃダメだよね」
やっと出た言葉がそれで
あたしはどうにか笑顔を作って顔を上げた。
「そんな顔、しないでくださいよ」
「・・・ごめん」
「だから、澪さんが謝る事じゃないだろ」
「うん。ごめん」
そうしてあたしはまた謝ってしまっている。
今度は情けなくて泣きそうだ。
「澪さん、今日は謝ってばっかりだな」
俯いたあたしの頭上からそんな声が聞こえる。
お見舞いに来たのに
本当にあたしは一体何をやってるんだろう。
「バイトでヘマした時も、今くらい素直に謝ってくれたら助かるんですけどね」
え、と顔をあげるあたし。
ニヤリと人が悪い笑みを浮かべる宮田くん。
今それ関係ないでしょう、と大袈裟に言ったその裏で
当事者にこんなに気を遣わせてしまっている自分を嫌悪した。
それから他愛ない話をして、あたしは病室を後にした。
話題を変えてからあたしは努めて明るく振舞い
それを宮田くんはきっと気付いていたけど
敢えて気付かないフリをしてくれていた。
それが有難くもあり、情けなくもあった。
病院を出ると外は夕焼け空が広がっていた。
思わず見惚れてしまうほど鮮やかなその色が
今のあたしにとっては
その美しささえ自分の愚かさを浮き彫りにするようで
思わず目を伏せ、それから逃れるように立ち去った。
2009/05/05 PCUP
+++++atogaki+++++
ギャーーーーッス!!
もうなんなんだコレェェェェェ!!
もっ、ちょ、すごいコメントに困るんですけどォォォォォ・・・と、書いた時の自分に叫んでみる。
とりあえず死ぬほど恥ずかしいです。
でも当時はちょっと半泣きになりながら書いてました(痛)