お相手宮田くんの原作沿い連載です
長編
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11 プレゼント
「まだかなぁ」
後楽園ホール1階のエレベーター前であたしはポツリと呟いた。
今日は宮田くんの東日本新人王トーナメントの三回戦で、見事に勝利した彼を待ち伏せていた。
一緒に帰ろうと約束していたわけではなかったけれど、宮田くんにチケットを頼んで手配してもらったからあたしが来てるのは知ってるはず。
ここにいれば気付いてもらえるかもという淡い期待を持っていた。
もう何度目かのエレベーターが到着するが
開いたドアの向こうにやっぱり宮田くんの姿はなかった。
気付かないで、もう帰っちゃったのかな。
次のエレベーターに乗ってなかったら諦めて帰ろう。
そう決めた時だった。
階段の方から慌しい足音が聞こえてきて、つられるように視線を向けると
あたしの待ち人が、早足でこちらに向かってきた。
「宮田くん?」
あたしが声をかけるより前に気付いていたのか驚く様子もなく、むしろ最初からそのつもりだったみたいに真っ直ぐにあたしの元にやって来た。
「どうしたの?そんなに急いでぇぇえぇぇぇっ?!」
いきなり腕を掴まれて鞄を取り落としそうになる。
かろうじて落下は防いだものの、宮田くんに引っ張られるようにホールを後にした。
「宮田くんっ!宮田くんってば!!」
ホールを離れ駅前の人ゴミに紛れると、宮田くんはようやくあたしの腕を離してくれた。
「いたたた・・・」
掴まれてた腕をさすっていると、少し離れた後楽園ホールを伺うように見ていた宮田くんがようやくあたしの様子に気付いた。
「・・・すいません」
「一体どうしたの?」
「記者連中に追いかけられてた」
「インタビュー?」
「・・・・・・とにかく行こうぜ」
できるだけ早くここを離れたいのか、宮田くんはあたしの返事も聞かず改札に向かった。
最寄駅からの帰り道。
あたしがさっきの続きを聞くと
宮田くんは嫌な事を思い出したというように
明らさまにそれを顔に出した。
「嫌なら無理には聞かないけど」
気にならないといえば嘘になるが
言いたがらない事を無理矢理聞き出すほど無神経でもない。
話題を変えようと思案していると
宮田くんが徐に口を開いた。
「プロだからな。インタビューに最低限答える義務があると思って応じてるけど
何であんな質問に答えなきゃなんねーんだよ。コッチは試合後だってのに」
「あんな質問?」
「好きな女のタイプ。ンなモン知るかよ」
いつものクールさは微塵も見られず、怒り心頭といった宮田くん。
その彼らしくなさっぷりがおかしくて、あたしは思わず声を出して笑った。
「あははは。そんな事まで聞かれちゃうんだ」
「笑い事じゃねぇよ。ったく、ボクシングと何の関係があるんだよ。アイドルじゃあるまいし、何でそんな事に答えなきゃなんねーんだよ」
他にも休日の過ごし方や好きな食べ物、趣味等々、プライベートに関する質問をされたそうだ。
宮田くんにとっては心外かもしれないけど
女子としてはわからなくもない。
「まぁまぁ。宮田くんにとっては関係ないかもしれないけど、宮田ファンの女の子からしたら、それはものすごーく重要なコトなのよ」
「冗談じゃないぜ」
チッと舌打して、イライラを隠そうともしない。
これは相当頭にきてるな。
まぁでも。確かに、ね。
「確かに、試合後に聞く事じゃないよね。で、それが嫌で逃げるように出てきた、と」
そういった類の質問は通常取材等でするんだろうけど、宮田くんのことだからあれこれ理由を付けて断ってるに違いない。
今日の試合も宮田くんの快勝だったコトもあって、ここぞとばかり聞いてきたんだろうというコトが容易に想像できた。
「流石に親父やジムの人が見かねてインタビューは強引に終わらせたけど帰りに捕まりたくなかったからな」
「人気者は大変ですねぇ」
茶化すように言って隣を見ると、感情を露にした宮田くんの視線とぶつかった
「わーごめんって。そんな怖い顔で睨まないでよ」
思わず手をかざしたあたしに宮田くんは思い切り顔を背けた。
「でもさ、応援してくれる人がたくさんいるって有難い事だと思うけどなぁ」
その言葉に返事はなかったけど、宮田くんの纏う空気が俄か和らいだように感じた。
「かくいうあたしも、その中の一人なんだけど」
はいこれ、と鞄から取り出した小さな包みを宮田くんに手渡すと怪訝な顔で包みとあたしを交互に見た。
「なんだよ、コレ」
「バンテージ、っていうの?グローブの下にグルグル巻いてるやつ」
開けてみて、と促すと宮田くんは封を開け、包帯状に巻きつけられた白い布を二つ取り出した。
「準決勝進出おめでとう。それと、もうすぐ誕生日だよね?」
「何で知ってるんですか」
「雑誌に載ってたよ。ね、女の子からしたら重要なのよ、そういうのって」
「意味わかんねぇ」
「・・・っとに朴念仁だなぁ」
「何か言ったか」
「いーえ別に。ところで、バンテージってそれでよかったのかな」
スポーツ用品店に買いに行ったものの、バンテージなんて今までの生活に全く縁のなかったものなので適当に選んできた。
バンテージといってもいくつか種類があり、色もブルーやピンクといったものまであったが白の一番無難そうなのを選んだ。
「ああ。これでいいけど」
「よかった」
素直な気持ちを言葉にすると自然に顔が綻んできた。
そんなあたしから視線を外して、宮田くんはバンテージを袋に戻してそのまま無造作にスポーツバックに入れた。
「いよいよ次は準決勝だね」
「ああ」
「頑張ってね!あたし絶対に応援に行くから」
プレゼントが功を奏したのか、宮田くんの機嫌は直ったみたいだけどなぜかその後はいつも以上に口数が少なくなってしまった。
それでも普段から一緒にいても饒舌な方では全くなかったので気にも留めず、そのまま『帰り道だから』ということで今日も自宅近くまで送ってもらった。
「疲れてるのにありがとう」
最後まで無口だった宮田くんにそれじゃあね、と踵を返すと「なぁ」と呼び止められた。
「・・・次も観に来るんだよな」
「そのつもりだけど・・・何、今更来るなとか言う?」
今まで黙り込んでて、呼び止められたと思ったらそんな事を言われてあたしはちょっと面食らった。
「そんな事言ってねぇだろ」
「あっそ。じゃまたチケットよろしくね」
ようやく視線を合わせた宮田くんに抜かりなく注文すると「わかってますよ」と言って、また視線を外してしまった。
「宮田くん?」
「・・・そろそろ買い換えようと思ってたから・・次の試合で、使わせてもらいますね」
「え?」
「コ・レ」
そう言って手にしたスポーツバックを示され、そこでようやくそれがバンテージを指してることに気がついた。
「あ、あぁ!うん。どーぞどーぞ。是非使って!」
「・・・・・」
「何?」
「・・・いや。別に」
「何その奥歯になんかひっかかったみたいな態度は。気になる」
「別に何でもないですよ。それじゃ」
「あっ・・ちょっ・・・・!!」
人を呼び止めておいて結局気になる物言いを残して宮田くんはさっさと帰ってしまった。
「もう・・・勝手なんだから」
取り残された気持ちになりながら遠くなる背中を見送っていると、ふと、宮田くんの言葉が蘇ってきた。
『次の試合で、使わせてもらいますね』
らしくない彼の言葉に、それが何を意味するのか急に思い立って、その考えが間違ってなければ、宮田くんのあの態度も合点がいく。
「ホント、素直じゃないんだから」
見送るあたしの顔がみるみる緩んでいったのを宮田くんには絶対に見られたくないと思った。
2009/04/16 PCUP
+++++atogaki+++++
宮田くんに、お礼を言わせるか言わせまいかですごい悩みました。
で、結局言わない方に。
この頃の宮田くんなら、まだ素直に言えないんじゃないかなぁと思ったので。
ちょ、コレ宮田視点の話も書きたいとかすごい無謀な事考え始めてるよこの人!(爆)
あと注釈というか・・・この試合は原作では全く触れられていません。
トーナメント表からすると、準決勝の前にもう一試合あったので
それを勝手に捏造しました(爆)
ただ、時期的に夏くらいかなぁと予想して書きましたのでその辺のツッコミはナシの方向でお願いします;;
「まだかなぁ」
後楽園ホール1階のエレベーター前であたしはポツリと呟いた。
今日は宮田くんの東日本新人王トーナメントの三回戦で、見事に勝利した彼を待ち伏せていた。
一緒に帰ろうと約束していたわけではなかったけれど、宮田くんにチケットを頼んで手配してもらったからあたしが来てるのは知ってるはず。
ここにいれば気付いてもらえるかもという淡い期待を持っていた。
もう何度目かのエレベーターが到着するが
開いたドアの向こうにやっぱり宮田くんの姿はなかった。
気付かないで、もう帰っちゃったのかな。
次のエレベーターに乗ってなかったら諦めて帰ろう。
そう決めた時だった。
階段の方から慌しい足音が聞こえてきて、つられるように視線を向けると
あたしの待ち人が、早足でこちらに向かってきた。
「宮田くん?」
あたしが声をかけるより前に気付いていたのか驚く様子もなく、むしろ最初からそのつもりだったみたいに真っ直ぐにあたしの元にやって来た。
「どうしたの?そんなに急いでぇぇえぇぇぇっ?!」
いきなり腕を掴まれて鞄を取り落としそうになる。
かろうじて落下は防いだものの、宮田くんに引っ張られるようにホールを後にした。
「宮田くんっ!宮田くんってば!!」
ホールを離れ駅前の人ゴミに紛れると、宮田くんはようやくあたしの腕を離してくれた。
「いたたた・・・」
掴まれてた腕をさすっていると、少し離れた後楽園ホールを伺うように見ていた宮田くんがようやくあたしの様子に気付いた。
「・・・すいません」
「一体どうしたの?」
「記者連中に追いかけられてた」
「インタビュー?」
「・・・・・・とにかく行こうぜ」
できるだけ早くここを離れたいのか、宮田くんはあたしの返事も聞かず改札に向かった。
最寄駅からの帰り道。
あたしがさっきの続きを聞くと
宮田くんは嫌な事を思い出したというように
明らさまにそれを顔に出した。
「嫌なら無理には聞かないけど」
気にならないといえば嘘になるが
言いたがらない事を無理矢理聞き出すほど無神経でもない。
話題を変えようと思案していると
宮田くんが徐に口を開いた。
「プロだからな。インタビューに最低限答える義務があると思って応じてるけど
何であんな質問に答えなきゃなんねーんだよ。コッチは試合後だってのに」
「あんな質問?」
「好きな女のタイプ。ンなモン知るかよ」
いつものクールさは微塵も見られず、怒り心頭といった宮田くん。
その彼らしくなさっぷりがおかしくて、あたしは思わず声を出して笑った。
「あははは。そんな事まで聞かれちゃうんだ」
「笑い事じゃねぇよ。ったく、ボクシングと何の関係があるんだよ。アイドルじゃあるまいし、何でそんな事に答えなきゃなんねーんだよ」
他にも休日の過ごし方や好きな食べ物、趣味等々、プライベートに関する質問をされたそうだ。
宮田くんにとっては心外かもしれないけど
女子としてはわからなくもない。
「まぁまぁ。宮田くんにとっては関係ないかもしれないけど、宮田ファンの女の子からしたら、それはものすごーく重要なコトなのよ」
「冗談じゃないぜ」
チッと舌打して、イライラを隠そうともしない。
これは相当頭にきてるな。
まぁでも。確かに、ね。
「確かに、試合後に聞く事じゃないよね。で、それが嫌で逃げるように出てきた、と」
そういった類の質問は通常取材等でするんだろうけど、宮田くんのことだからあれこれ理由を付けて断ってるに違いない。
今日の試合も宮田くんの快勝だったコトもあって、ここぞとばかり聞いてきたんだろうというコトが容易に想像できた。
「流石に親父やジムの人が見かねてインタビューは強引に終わらせたけど帰りに捕まりたくなかったからな」
「人気者は大変ですねぇ」
茶化すように言って隣を見ると、感情を露にした宮田くんの視線とぶつかった
「わーごめんって。そんな怖い顔で睨まないでよ」
思わず手をかざしたあたしに宮田くんは思い切り顔を背けた。
「でもさ、応援してくれる人がたくさんいるって有難い事だと思うけどなぁ」
その言葉に返事はなかったけど、宮田くんの纏う空気が俄か和らいだように感じた。
「かくいうあたしも、その中の一人なんだけど」
はいこれ、と鞄から取り出した小さな包みを宮田くんに手渡すと怪訝な顔で包みとあたしを交互に見た。
「なんだよ、コレ」
「バンテージ、っていうの?グローブの下にグルグル巻いてるやつ」
開けてみて、と促すと宮田くんは封を開け、包帯状に巻きつけられた白い布を二つ取り出した。
「準決勝進出おめでとう。それと、もうすぐ誕生日だよね?」
「何で知ってるんですか」
「雑誌に載ってたよ。ね、女の子からしたら重要なのよ、そういうのって」
「意味わかんねぇ」
「・・・っとに朴念仁だなぁ」
「何か言ったか」
「いーえ別に。ところで、バンテージってそれでよかったのかな」
スポーツ用品店に買いに行ったものの、バンテージなんて今までの生活に全く縁のなかったものなので適当に選んできた。
バンテージといってもいくつか種類があり、色もブルーやピンクといったものまであったが白の一番無難そうなのを選んだ。
「ああ。これでいいけど」
「よかった」
素直な気持ちを言葉にすると自然に顔が綻んできた。
そんなあたしから視線を外して、宮田くんはバンテージを袋に戻してそのまま無造作にスポーツバックに入れた。
「いよいよ次は準決勝だね」
「ああ」
「頑張ってね!あたし絶対に応援に行くから」
プレゼントが功を奏したのか、宮田くんの機嫌は直ったみたいだけどなぜかその後はいつも以上に口数が少なくなってしまった。
それでも普段から一緒にいても饒舌な方では全くなかったので気にも留めず、そのまま『帰り道だから』ということで今日も自宅近くまで送ってもらった。
「疲れてるのにありがとう」
最後まで無口だった宮田くんにそれじゃあね、と踵を返すと「なぁ」と呼び止められた。
「・・・次も観に来るんだよな」
「そのつもりだけど・・・何、今更来るなとか言う?」
今まで黙り込んでて、呼び止められたと思ったらそんな事を言われてあたしはちょっと面食らった。
「そんな事言ってねぇだろ」
「あっそ。じゃまたチケットよろしくね」
ようやく視線を合わせた宮田くんに抜かりなく注文すると「わかってますよ」と言って、また視線を外してしまった。
「宮田くん?」
「・・・そろそろ買い換えようと思ってたから・・次の試合で、使わせてもらいますね」
「え?」
「コ・レ」
そう言って手にしたスポーツバックを示され、そこでようやくそれがバンテージを指してることに気がついた。
「あ、あぁ!うん。どーぞどーぞ。是非使って!」
「・・・・・」
「何?」
「・・・いや。別に」
「何その奥歯になんかひっかかったみたいな態度は。気になる」
「別に何でもないですよ。それじゃ」
「あっ・・ちょっ・・・・!!」
人を呼び止めておいて結局気になる物言いを残して宮田くんはさっさと帰ってしまった。
「もう・・・勝手なんだから」
取り残された気持ちになりながら遠くなる背中を見送っていると、ふと、宮田くんの言葉が蘇ってきた。
『次の試合で、使わせてもらいますね』
らしくない彼の言葉に、それが何を意味するのか急に思い立って、その考えが間違ってなければ、宮田くんのあの態度も合点がいく。
「ホント、素直じゃないんだから」
見送るあたしの顔がみるみる緩んでいったのを宮田くんには絶対に見られたくないと思った。
2009/04/16 PCUP
+++++atogaki+++++
宮田くんに、お礼を言わせるか言わせまいかですごい悩みました。
で、結局言わない方に。
この頃の宮田くんなら、まだ素直に言えないんじゃないかなぁと思ったので。
ちょ、コレ宮田視点の話も書きたいとかすごい無謀な事考え始めてるよこの人!(爆)
あと注釈というか・・・この試合は原作では全く触れられていません。
トーナメント表からすると、準決勝の前にもう一試合あったので
それを勝手に捏造しました(爆)
ただ、時期的に夏くらいかなぁと予想して書きましたのでその辺のツッコミはナシの方向でお願いします;;