短編
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猫舌
食べ終えた食器はひとまずキッチンに運んで。
愛用のミルをゆっくり回して熱を持たさないように豆を挽くと
たちまち香ばしい風味が鼻腔をくすぐる。
ドリッパーにペーパーをセットし
蒸らしながらゆっくり湯を注いで
注ぎきったら最後まで落ちきらないうちに手早くドリッパーを外し
温めておいたお気に入りのカップに注ぐ。
お腹が満たされたところに入る
ほんのり苦い、この黒い飲み物。
あたしはこれがたまらなく好きだ。
「コーヒー入ったよ、宮田くん」
赤と青のマグカップを挟んで
向かい合う二人。
友達というには遠くて
恋人というには近すぎる存在。
互いの部屋を行き来するようになってもう随分経つのに
あたしはまだ、彼を名前で呼べないでいる。
赤いマグカップから立ち込める白い湯気をふーっと吹くと
コーヒー豆の香ばしい香りが立ち込めた。
カップに口をつけ
もう一度小さく息を吹きかけてから一口すする。
うん。おいしい。
薄く立ち込める湯気の向こうに、宮田くんが見えた。
「飲まないの?」
「飲むけど」
言う割りにそれらしい素振りを見せない。
「紅茶の方がよかった?」
「別に」
相変わらず、必要最低限なことしか言わないなぁ。
いつものこと過ぎて最近ではむしろ笑ってしまうんだけどね。
それだけで会話が成り立ってる事実に。
だけど同時に嬉しくもなってくる。
それだけ一緒にいることが自然になってるって事実に。
それにしても、今日はちょっと様子が違う。
「早く飲まないと冷めちゃうよ?」
「・・・・・・」
「ねぇ」
「うるさいなぁ、わかったよ。飲めばいいんだろ」
なによ急に。そんな言い方しなくても。
ちょっとムッとするあたしの前で
青いマグカップに指が絡む。
大きくて、ちょっと骨ばってて
男の人の割りにすごくキレイなのに
いくつもある小さな傷跡が、彼がボクサーなんだと再確認させる。
だけどいつまで経ってもカップが口元に運ばれることはなくて。
「苦手なら無理に飲まなくてもいいよ?」
「いや、コーヒーは飲めるけど」
「けど?」
「・・・・・・・」
おかしいおかしいおかしい。
何度も一緒にゴハン食べたけど
いつもコーヒー飲んでたのに。
味に問題がないとしたら、
あと考えられることって・・・・
「もしかして猫舌なの?」
「・・・・・・・!」
ホントわかりやすいんだよね。
世間はクールだなんだ言ってるけど
実際これほどわかりやすいひとも珍しいんだけどな。
考えてみれば、宮田くんは
運ばれてきたコーヒーをすぐに飲んだ事がないかもしれない。
「無理しないで後で飲めば」
「誰も猫舌なんて言ってないだろ」
ムキになるところがそうですって言ってるようなもんだよ宮田くん。
そんな事を考えるあたしの前で
青いマグカップの淵に唇が触れる。
きっと本人はスマートに事を運んでるつもりなんだろうけど
ガチガチだよ。言わないけど。
「アチッ!」
「大丈夫?!」
予想以上の反応にあたしの方がビックリした。
ホントに猫舌なんだ・・・
「・・・大丈夫・・・・けど、もう少ししてから飲む」
「うん」
それなりに同じ時間を過ごして
色んな面を見てきたつもりだけど
まだまだ知らないことがいっぱいだ。
それが無償に嬉しくて。
「何笑ってんだよ」
「笑ってないよ」
「じゃあ何ニヤけてんだよ」
「ニヤけてなんかないよ。元々こーいう顔なの」
「締まりない顔だな」
「うるさい」
そんなやりとりをしながら
今度から青いマグカップは温めないでおこうと思って
赤いマグカップに口をつけた。
END
2008/11/07 PCUP
+++atogaki+++
15の質問に答えてて思いついたネタです。
本人意識してるんだかしてないんだか知らないけど
完璧主義を装ってるつもりだけど実は全然そうでなくて
そんな風に回りからそう思われてるとは微塵も思ってない
そんな宮田くんがかわいくて好きです。
しかし宮田くんをかわいいと思う日が来るとは思ってもみなかったな・・・
ずっと一歩ばりに『宮田くんかっこいい!』って思ってたからさ(笑)
食べ終えた食器はひとまずキッチンに運んで。
愛用のミルをゆっくり回して熱を持たさないように豆を挽くと
たちまち香ばしい風味が鼻腔をくすぐる。
ドリッパーにペーパーをセットし
蒸らしながらゆっくり湯を注いで
注ぎきったら最後まで落ちきらないうちに手早くドリッパーを外し
温めておいたお気に入りのカップに注ぐ。
お腹が満たされたところに入る
ほんのり苦い、この黒い飲み物。
あたしはこれがたまらなく好きだ。
「コーヒー入ったよ、宮田くん」
赤と青のマグカップを挟んで
向かい合う二人。
友達というには遠くて
恋人というには近すぎる存在。
互いの部屋を行き来するようになってもう随分経つのに
あたしはまだ、彼を名前で呼べないでいる。
赤いマグカップから立ち込める白い湯気をふーっと吹くと
コーヒー豆の香ばしい香りが立ち込めた。
カップに口をつけ
もう一度小さく息を吹きかけてから一口すする。
うん。おいしい。
薄く立ち込める湯気の向こうに、宮田くんが見えた。
「飲まないの?」
「飲むけど」
言う割りにそれらしい素振りを見せない。
「紅茶の方がよかった?」
「別に」
相変わらず、必要最低限なことしか言わないなぁ。
いつものこと過ぎて最近ではむしろ笑ってしまうんだけどね。
それだけで会話が成り立ってる事実に。
だけど同時に嬉しくもなってくる。
それだけ一緒にいることが自然になってるって事実に。
それにしても、今日はちょっと様子が違う。
「早く飲まないと冷めちゃうよ?」
「・・・・・・」
「ねぇ」
「うるさいなぁ、わかったよ。飲めばいいんだろ」
なによ急に。そんな言い方しなくても。
ちょっとムッとするあたしの前で
青いマグカップに指が絡む。
大きくて、ちょっと骨ばってて
男の人の割りにすごくキレイなのに
いくつもある小さな傷跡が、彼がボクサーなんだと再確認させる。
だけどいつまで経ってもカップが口元に運ばれることはなくて。
「苦手なら無理に飲まなくてもいいよ?」
「いや、コーヒーは飲めるけど」
「けど?」
「・・・・・・・」
おかしいおかしいおかしい。
何度も一緒にゴハン食べたけど
いつもコーヒー飲んでたのに。
味に問題がないとしたら、
あと考えられることって・・・・
「もしかして猫舌なの?」
「・・・・・・・!」
ホントわかりやすいんだよね。
世間はクールだなんだ言ってるけど
実際これほどわかりやすいひとも珍しいんだけどな。
考えてみれば、宮田くんは
運ばれてきたコーヒーをすぐに飲んだ事がないかもしれない。
「無理しないで後で飲めば」
「誰も猫舌なんて言ってないだろ」
ムキになるところがそうですって言ってるようなもんだよ宮田くん。
そんな事を考えるあたしの前で
青いマグカップの淵に唇が触れる。
きっと本人はスマートに事を運んでるつもりなんだろうけど
ガチガチだよ。言わないけど。
「アチッ!」
「大丈夫?!」
予想以上の反応にあたしの方がビックリした。
ホントに猫舌なんだ・・・
「・・・大丈夫・・・・けど、もう少ししてから飲む」
「うん」
それなりに同じ時間を過ごして
色んな面を見てきたつもりだけど
まだまだ知らないことがいっぱいだ。
それが無償に嬉しくて。
「何笑ってんだよ」
「笑ってないよ」
「じゃあ何ニヤけてんだよ」
「ニヤけてなんかないよ。元々こーいう顔なの」
「締まりない顔だな」
「うるさい」
そんなやりとりをしながら
今度から青いマグカップは温めないでおこうと思って
赤いマグカップに口をつけた。
END
2008/11/07 PCUP
+++atogaki+++
15の質問に答えてて思いついたネタです。
本人意識してるんだかしてないんだか知らないけど
完璧主義を装ってるつもりだけど実は全然そうでなくて
そんな風に回りからそう思われてるとは微塵も思ってない
そんな宮田くんがかわいくて好きです。
しかし宮田くんをかわいいと思う日が来るとは思ってもみなかったな・・・
ずっと一歩ばりに『宮田くんかっこいい!』って思ってたからさ(笑)