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「輪廻と愛情」

有名と彼は聞いた瞬間、
少し疑問を浮かべる。
しかし、
それは隣の彼女の一言で掻き消される事となる。
「ウソデハナイヨ、夢見クン。
私モ少ナカラズ、
聞いた事ハアルカラ」
何に対して雫が有名なのかはさておき、
彼はまた、
質問を繰り出す。
笑顔で、そして、冷徹に。
「雫は何故、
ここに私が居ると分かったんですか?」
その瞬間、明らかに空気が変わる。
そして、雫の体が多少動いたところを、
彼は見逃さなかった。
その視線も雫は気付き、
思わず、あ、という様な顔をするが、
己の頬を叩き、感情を自制する。
彼は、ある確信を覚えると”あの時”のような、
あの威圧する様な存在感を醸し出させていた。
しかし、それに雫が臆することは無かった。
逆にワクワクしているかの様にも感じる、
その瞳を彼は見続けた。
「今日は一旦、帰った方がいいんじゃないか?」
数秒おき、彼はそう伝えた。
そうすると、彼女はこう告げる。
「あぁ、そうした方が良さそうだ。
明日また来る。
その時は、隣の彼女を殺すとしようか。」
その言葉に男は言い返さず、ただ彼女を睨めつけ、
見送るのだった。
そして、彼女の気配が完全に消えると、
彼は疲れた様にソファーに座り込むと、
こう呟いた。
「彼女は想像で、
私を殺す為の方法を、試行錯誤していた。
それに対し、私は成す術も無かった。」
彼女には、彼が何を言っているのか分からなかったが、
ただ一つだけ分かることは、
彼と、自分の命が危ないという事だけだった。
しかし、彼女はもう一つ分からない事があった。
彼が何故か、笑っている様に見えたのだ。
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