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「輪廻と愛情」

「グハッ……」
その瞬間、一瞬で男の体は宙へとサッカーボールの様に投げ出される。
「エ?」
彼女は、困惑の表情をしていた。
空中に投げ出される彼、それを見て困惑をこぼしている自分
そして、自分に背を向けて立つ見覚えのある彼が立っていた。
”それ” が誰なのか彼女は一瞬で理解する。
「夢見クン!?」
そう彼女が叫ぶと、彼は一瞬彼女の方を見て、ニコッと微笑むと、再び前に向き直り、空中に放り出され地面に落下した男に、冷笑しこう告げる。

「これは、全然関係ない話なのですが。
貴方は、田舎のネズミ、都会のネズミ
どっちが宜しいですか?
因みに、私は田舎のネズミ方が良いです。」

何処かのチェンソーを振り回しているような発言はさておき、彼は目の前の男に向かって、ただ歩く。
「人がもっと恐怖するのはなんだと思いますか?
ずばり、人です。
目には目をという言葉があるように、人を”壊せる”のは人だけなのですよ。
ですから、小生は貴方を今から壊します。」
ただ、冷徹に、無表情で彼にそう告げる。
男は声にならない声で叫び声を出し始める。


やはり、助けなど来るはずがない。
因果応報、自業自得、向天吐唾、悪因悪果、
やはり、御天道様は全てを見ているようだ
いい者には善を、わるい者には罰を。

彼が男を殴れる距離まで近づいた時には、もう男は泡を吹き気絶していた。
そうすると、彼は男が気絶したのを確認すると、彼女の方に真っ直ぐに走り、彼女に近寄るや否や、力強く抱きしめる。
「ごめんなさい」
彼は彼女に謝った。
それに対し、彼女は無言を返す。
「さてと……帰りましょうか……」
彼は軽そうにそう告げると、自分の来ている上着を全て、彼女に着せると、
手を繋ぎ歩き出す。
その時間はゆっくりに感じ、一言も話さずにただ静かだった。
しかし、その時間が何故だか、とても心地よく感じる。まるで安心したかのように……
そうして、彼と彼女は岐路をたどるのだった………
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