「輪廻と愛情」
雫が帰った後、
彼は動かなくなり、
何かを考えながら目を細めている彼を見兼ねて、
相談を含め、彼に近づきこう告げた。
「夢見クン、
エット、大変ナ事ニナッチャッタネ。
ド、ドウシヨッカ。」
普通なら物事に集中し過ぎると、何も聞こえなくなってしまいそうではあるが、彼は間髪入れずにこう告げる。
「なら、作戦を立てましょう」
彼は、頬杖をつきながら、
何かを考える様にただ一点を、
見つめながらそう告げた。
「作戦会議?」
彼のその発言に思わず、
彼女は疑問の声を漏らした。
「相手が宣戦布告している以上、
こちらも何もしないという手はないでしょう。
戦いですよ、負ければ死ぬ。
だから、作戦を立てるというわけです。」
「夢見クン………モシカシテ、
チョット、コノ状況ヲ楽シンデル?」
「いえ?そんな事はないと思いますが」
彼はそう言いながらも、
心の奥底から来る黒い感情を抑える事が出来ていなかったのだった。
「まぁ、やるならとことん
やってやりましょうか。」
彼はそう言うと、元気そうに、
勢いよくソファーから立ち上がった。
そして、1度目を閉じ、
彼は思考を巡らす。
相手の力量、目的、体格。
それら全てを考慮する必要がある。
でないと、あのレベルには敵わない可能性も出てきてしまう。
しかし、この問題として対策をしても意味の無いことではあるのを彼は理解しているのだった。
「トリアエズ、お茶デモ、
モッテクルネ。」
彼女は思考している彼を見かねて、
1度休憩の意味を込め、
お茶をいれようとする。
何故だろう。
彼女は一応、命を狙われている立場だ。
なのに、彼女は平然としていた。
浮き足立っている訳でも、
自分に向かってくる死という不幸を理解出来ない訳でもないだろう。
しかし、彼女はその飄々とした態度を変えることはなく、いつも通りであった。
彼は、その様子に違和感と安心感を少しだけ覚えた。
「デモ、
作戦ッテ言ウホドノ作戦を作レルノカナ。
私ニハ、サッパリ思イツカナイカラサ。」
彼女は紅茶を入れると、
それを彼の方へ持っていきテーブルに置くと、
実に痛いところをついてくる。
「確かに、作戦を立てるといった割には対策のしようがない事は理解していますが………」
彼女の言っている通り、
この作戦には対策のしようがない。
強いていえば、彼が彼女に寄り添ってあげることぐらいであろう。
しかし、考えているうちに少しばかり疑問に思うことがあった。
何故だろう。
彼は、彼女の死というものが理解出来なかった。
なんというか、彼女が死ぬというところが想像できないのである
そんな安堵感がより一層、彼を不安で埋めつくそうとしていた。
「チョット、考エスギ」
彼女は彼の頭を擬音が入るとしたら、ぽかっというような力で叩いた。
そして、彼は我に返ったように彼女を見ると苦笑いを続ける。
「それもそうですね、
考え過ぎも良くないでしょうし……」
「ジャアソロソロ、ゴ飯ニシヨッカ。」
そう言い、にこっと可愛らしい笑みを浮かべると彼女は、
キッチンに向かう。
その後ろ姿を男は微笑ましく思い、紅茶を一気に飲み干した。
飲み干した紅茶の味は鉄っぽさと少しだけ甘い香りがした。
時は過ぎ、夕食も食べ終わったあたりで、
現在の時刻は8時を回り、
彼は、彼女をぼんやりと眺めていた。
彼女が口ずさみながら、食器を洗っている。
いつも通りの日常。
彼はそんな当たり前を実感していた。
「やはり、
実感出来ないものですね」
彼はそんな彼女を見て、そう呟くのだった。
それに対し、
彼女はこう問いかける。
「何ガ、実感デキナイノ?」
「貴方の死についてですよ。
私は未だに、貴方の死というものが想像できない。」
「フフ、何ヲ言イ出スカト思エバソンナコト?」
彼女は彼の言葉におかしさを感じ、思わず笑ってしまう。
「死ヌトカ、生キルッテ、
凄ク難シイ話ダヨネ。
ダカラサ、私ハ楽シケレバ、
死ンデテモ、生キテテモ、
ドッチデモ良イト思ウンダ。
私ハ夢見クンと過ゴシテキテ、
トテモ楽シカッタヨ?
ダカラ、アリガトウネ。」
彼女はなんとか言葉を紡ぐ様にそう一言ずつ、
丁寧に述べていた。
そして、彼はその言葉に、
少しずつ異変を感じ始めていた。
彼女は何故、このタイミングで感謝を伝えてきたのだろうと。
次の瞬間、事態は一変した。
彼女の背後にアイツが突然現れる。
「久しぶりだな、夢見」
そんな含んだ笑みを浮かべるのは、
雫であった。
「最悪な再会ですね」
彼は笑っているが、
雫のその現れ方に彼は、明らかに動揺していた。
頬からは冷や汗が流れ、
緊張が手に取るように分かる。
「さてと、予告通り彼女を殺しにきたのはいいが、なんか呆気ないな。
こんなにも、簡単に殺せてしまうのか。
対策の一つでも立てていたら、
こんな事にはならなかったろうに。
いや、対策すら立てようが無いのか。」
雫は興醒め、と言った様子で
呆れた目で彼女の喉元にナイフを当てる。
「だったら、殺さないという考えにならないんですかね」
彼は自分の無力さを嘆いていた。
自分じゃ何も出来ない。
目の前の大切な人さえ守れないのかと、、、。
「ならないな。」
雫はそう、
きっぱりとそう言い放った。
そうして、その彼女の首に当てているナイフを引いた。
その瞬間、彼の顔に鮮血が飛びつく。
「、、、、は?、、」
彼は理解が追いつかないような、
表情を浮かべ、立ち尽くした。
声が多少震えながら、彼女に発言する。
「何故、こんな事をするんですか」
彼は誰もが思う当然な問いを、
雫に投げかける。
しかし、彼女はこう返した。
「私はただ、幸せを壊したかっただけだ。」
「そんな事で、彼女を殺したのか?」
彼は信じられないという表情を溢すのだった。
彼は明らかに混乱していた。
何故、こんな惨い事を、
平然とするのだろうと。
彼はそれでも抵抗しようとした。
「貴方を倒す」
一言、そう告げて。
そう、彼女に言い放つのだった。
その瞬間、
彼の顔の前にナイフが飛んでくる。
しかし、彼はいとも容易く、
そのナイフを避けた。
雫はそれを見て、告げる。
「やっぱり夢見は、人間じゃないよ」
「おやおや、
貴方よりかは人間の自覚がありますがね」
そうして、戦いの火蓋が切られる。
雫は拳を握りしめ、
彼の顔面めがけて殴る。
しかし、彼はそれをも横に避ける
そして、彼は告げる。
「そんなものですか」
「すごいよ、夢見は、、、、
でも防戦一方じゃ、
私に勝てるとは思えないな!!!」
雫は彼に挑発する様に言う。
そして、彼の顔面めがけて、
拳を当てようとするが、
彼は雫の攻撃が全て読めているかの様な動きで、するり、するり、
と当たることはなかった。
「くそ、何で当たんないんだよ!」
雫は攻撃が当たらない事に対して、
激しく憤怒した。
それもそのはず、彼は雫の攻撃が当たらない、
ギリギリのところで拳が勝手に、
避けていくようなのである。
雫は何度も攻撃を当てようと拳を振り出すが、それが彼の体に掠れる事すらなかった。
「はぁ、はぁ、はぁ、」
「随分と消耗しているようですね」
「おかげさまで。
一つ聞く。
なぜ、私の攻撃は夢見に届かない。」
彼はそれをキッパリと言い放つ
「私の貴方の中に圧倒的な差があるからです」
と、、、、、、
「そんなことない。
私は頑張った!
毎日死ぬほど、、、、、
努力して、努力して、努力して、
やっとこの地位に登りつめる事が出来たんだ!」
彼女は認めたくなかった。
その埋まるはずのない差を。
彼女はまるで、否定する様に、
ヒステリックにでもなったように、
叫び、呻きながら、
淡々と言葉を並べた。
しかし、そんな単調な言葉を並べたとて、
彼の耳に入るどころか、彼は何もない空中を見て、
相手にすらしないだろう。
努力とは、人間が皆等しく所有しているスキルにしか過ぎない。
故に彼が、
彼女の努力とやらを聞き入れる事は無かった。
「努力とはどのような形なんでしょうか。
幾ら努力を積み重ねたとて、天才には敵わない。
故に、努力は必要ないのかというと、、、、
世間は努力を求める。
不思議な世の中ですよね」
彼はまるで、自分が天才とでも言い張るような言い回しを使った。
それは、彼が完全に彼女こと雫の力量を把握した事が理由であろう。
それほどまでに、
彼と雫との間には絶対的な差があったのだった。
「そっか。
私には、夢見に追いつく事も出来ないんだね。」
彼女は落ち込んだ様に、顔を下に向けた。
そして、彼女は言う。
「だったら、これはどうかな。」
彼女は淡々と述べる。
彼女の手には、爆弾が握られていた。
そう、彼女は彼に追い詰められた時の為に、
身のうちに爆弾を忍ばせていたのだった。
「なるほど……。
自爆というやつですか。
考えましたね。
私の頭にはそんな発想はありませんでしたよ。」
彼は取ってつけた様な演技でそのような事を告げるが、彼女には呆れながらこう告げる。
「ふん、どうせこれも計算通りなんでしょ。
全部、結局は夢見の手のひらで転がされていたんだね。
じゃあ、一緒にタヒのうか。」
そう言い、彼女はスイッチを押そうとした。
「まぁ、それも良いでしょう。
しかし、この計画を思いついたのは私ではありません。
では、誰がこの計画を立てたのでしょうね。」
彼はそう言うや否や、彼女から爆弾を奪い、
爆弾を最小限に抑えようと爆弾を飲み込んだ。
そうすると、
彼の体は真っ二つに分けながら爆散した。
そんな状況を彼女は理解が出来なかった。
「え、え?
なんで、?どうして、?」
彼女は彼の爆散した上下を見ながら、
そう言葉を溢した。
当然、彼の目に光はない。
呼吸もしてるはずもなかった。
彼女は彼の体の傍に座り、体を揺すってみる。
「本当に死んじゃったの?、、、、、」
彼女はそんな悲しげな声を出す。
しかし、その返事が返ってくる事は無かった。
そうして、突然雫の背後から音がして、、、
「隙アリ」
何者かの声を聞いた瞬間、首に重い一撃を貰い、
彼女の意識は下へ、下へと堕ちて行くのだった。
彼は動かなくなり、
何かを考えながら目を細めている彼を見兼ねて、
相談を含め、彼に近づきこう告げた。
「夢見クン、
エット、大変ナ事ニナッチャッタネ。
ド、ドウシヨッカ。」
普通なら物事に集中し過ぎると、何も聞こえなくなってしまいそうではあるが、彼は間髪入れずにこう告げる。
「なら、作戦を立てましょう」
彼は、頬杖をつきながら、
何かを考える様にただ一点を、
見つめながらそう告げた。
「作戦会議?」
彼のその発言に思わず、
彼女は疑問の声を漏らした。
「相手が宣戦布告している以上、
こちらも何もしないという手はないでしょう。
戦いですよ、負ければ死ぬ。
だから、作戦を立てるというわけです。」
「夢見クン………モシカシテ、
チョット、コノ状況ヲ楽シンデル?」
「いえ?そんな事はないと思いますが」
彼はそう言いながらも、
心の奥底から来る黒い感情を抑える事が出来ていなかったのだった。
「まぁ、やるならとことん
やってやりましょうか。」
彼はそう言うと、元気そうに、
勢いよくソファーから立ち上がった。
そして、1度目を閉じ、
彼は思考を巡らす。
相手の力量、目的、体格。
それら全てを考慮する必要がある。
でないと、あのレベルには敵わない可能性も出てきてしまう。
しかし、この問題として対策をしても意味の無いことではあるのを彼は理解しているのだった。
「トリアエズ、お茶デモ、
モッテクルネ。」
彼女は思考している彼を見かねて、
1度休憩の意味を込め、
お茶をいれようとする。
何故だろう。
彼女は一応、命を狙われている立場だ。
なのに、彼女は平然としていた。
浮き足立っている訳でも、
自分に向かってくる死という不幸を理解出来ない訳でもないだろう。
しかし、彼女はその飄々とした態度を変えることはなく、いつも通りであった。
彼は、その様子に違和感と安心感を少しだけ覚えた。
「デモ、
作戦ッテ言ウホドノ作戦を作レルノカナ。
私ニハ、サッパリ思イツカナイカラサ。」
彼女は紅茶を入れると、
それを彼の方へ持っていきテーブルに置くと、
実に痛いところをついてくる。
「確かに、作戦を立てるといった割には対策のしようがない事は理解していますが………」
彼女の言っている通り、
この作戦には対策のしようがない。
強いていえば、彼が彼女に寄り添ってあげることぐらいであろう。
しかし、考えているうちに少しばかり疑問に思うことがあった。
何故だろう。
彼は、彼女の死というものが理解出来なかった。
なんというか、彼女が死ぬというところが想像できないのである
そんな安堵感がより一層、彼を不安で埋めつくそうとしていた。
「チョット、考エスギ」
彼女は彼の頭を擬音が入るとしたら、ぽかっというような力で叩いた。
そして、彼は我に返ったように彼女を見ると苦笑いを続ける。
「それもそうですね、
考え過ぎも良くないでしょうし……」
「ジャアソロソロ、ゴ飯ニシヨッカ。」
そう言い、にこっと可愛らしい笑みを浮かべると彼女は、
キッチンに向かう。
その後ろ姿を男は微笑ましく思い、紅茶を一気に飲み干した。
飲み干した紅茶の味は鉄っぽさと少しだけ甘い香りがした。
時は過ぎ、夕食も食べ終わったあたりで、
現在の時刻は8時を回り、
彼は、彼女をぼんやりと眺めていた。
彼女が口ずさみながら、食器を洗っている。
いつも通りの日常。
彼はそんな当たり前を実感していた。
「やはり、
実感出来ないものですね」
彼はそんな彼女を見て、そう呟くのだった。
それに対し、
彼女はこう問いかける。
「何ガ、実感デキナイノ?」
「貴方の死についてですよ。
私は未だに、貴方の死というものが想像できない。」
「フフ、何ヲ言イ出スカト思エバソンナコト?」
彼女は彼の言葉におかしさを感じ、思わず笑ってしまう。
「死ヌトカ、生キルッテ、
凄ク難シイ話ダヨネ。
ダカラサ、私ハ楽シケレバ、
死ンデテモ、生キテテモ、
ドッチデモ良イト思ウンダ。
私ハ夢見クンと過ゴシテキテ、
トテモ楽シカッタヨ?
ダカラ、アリガトウネ。」
彼女はなんとか言葉を紡ぐ様にそう一言ずつ、
丁寧に述べていた。
そして、彼はその言葉に、
少しずつ異変を感じ始めていた。
彼女は何故、このタイミングで感謝を伝えてきたのだろうと。
次の瞬間、事態は一変した。
彼女の背後にアイツが突然現れる。
「久しぶりだな、夢見」
そんな含んだ笑みを浮かべるのは、
雫であった。
「最悪な再会ですね」
彼は笑っているが、
雫のその現れ方に彼は、明らかに動揺していた。
頬からは冷や汗が流れ、
緊張が手に取るように分かる。
「さてと、予告通り彼女を殺しにきたのはいいが、なんか呆気ないな。
こんなにも、簡単に殺せてしまうのか。
対策の一つでも立てていたら、
こんな事にはならなかったろうに。
いや、対策すら立てようが無いのか。」
雫は興醒め、と言った様子で
呆れた目で彼女の喉元にナイフを当てる。
「だったら、殺さないという考えにならないんですかね」
彼は自分の無力さを嘆いていた。
自分じゃ何も出来ない。
目の前の大切な人さえ守れないのかと、、、。
「ならないな。」
雫はそう、
きっぱりとそう言い放った。
そうして、その彼女の首に当てているナイフを引いた。
その瞬間、彼の顔に鮮血が飛びつく。
「、、、、は?、、」
彼は理解が追いつかないような、
表情を浮かべ、立ち尽くした。
声が多少震えながら、彼女に発言する。
「何故、こんな事をするんですか」
彼は誰もが思う当然な問いを、
雫に投げかける。
しかし、彼女はこう返した。
「私はただ、幸せを壊したかっただけだ。」
「そんな事で、彼女を殺したのか?」
彼は信じられないという表情を溢すのだった。
彼は明らかに混乱していた。
何故、こんな惨い事を、
平然とするのだろうと。
彼はそれでも抵抗しようとした。
「貴方を倒す」
一言、そう告げて。
そう、彼女に言い放つのだった。
その瞬間、
彼の顔の前にナイフが飛んでくる。
しかし、彼はいとも容易く、
そのナイフを避けた。
雫はそれを見て、告げる。
「やっぱり夢見は、人間じゃないよ」
「おやおや、
貴方よりかは人間の自覚がありますがね」
そうして、戦いの火蓋が切られる。
雫は拳を握りしめ、
彼の顔面めがけて殴る。
しかし、彼はそれをも横に避ける
そして、彼は告げる。
「そんなものですか」
「すごいよ、夢見は、、、、
でも防戦一方じゃ、
私に勝てるとは思えないな!!!」
雫は彼に挑発する様に言う。
そして、彼の顔面めがけて、
拳を当てようとするが、
彼は雫の攻撃が全て読めているかの様な動きで、するり、するり、
と当たることはなかった。
「くそ、何で当たんないんだよ!」
雫は攻撃が当たらない事に対して、
激しく憤怒した。
それもそのはず、彼は雫の攻撃が当たらない、
ギリギリのところで拳が勝手に、
避けていくようなのである。
雫は何度も攻撃を当てようと拳を振り出すが、それが彼の体に掠れる事すらなかった。
「はぁ、はぁ、はぁ、」
「随分と消耗しているようですね」
「おかげさまで。
一つ聞く。
なぜ、私の攻撃は夢見に届かない。」
彼はそれをキッパリと言い放つ
「私の貴方の中に圧倒的な差があるからです」
と、、、、、、
「そんなことない。
私は頑張った!
毎日死ぬほど、、、、、
努力して、努力して、努力して、
やっとこの地位に登りつめる事が出来たんだ!」
彼女は認めたくなかった。
その埋まるはずのない差を。
彼女はまるで、否定する様に、
ヒステリックにでもなったように、
叫び、呻きながら、
淡々と言葉を並べた。
しかし、そんな単調な言葉を並べたとて、
彼の耳に入るどころか、彼は何もない空中を見て、
相手にすらしないだろう。
努力とは、人間が皆等しく所有しているスキルにしか過ぎない。
故に彼が、
彼女の努力とやらを聞き入れる事は無かった。
「努力とはどのような形なんでしょうか。
幾ら努力を積み重ねたとて、天才には敵わない。
故に、努力は必要ないのかというと、、、、
世間は努力を求める。
不思議な世の中ですよね」
彼はまるで、自分が天才とでも言い張るような言い回しを使った。
それは、彼が完全に彼女こと雫の力量を把握した事が理由であろう。
それほどまでに、
彼と雫との間には絶対的な差があったのだった。
「そっか。
私には、夢見に追いつく事も出来ないんだね。」
彼女は落ち込んだ様に、顔を下に向けた。
そして、彼女は言う。
「だったら、これはどうかな。」
彼女は淡々と述べる。
彼女の手には、爆弾が握られていた。
そう、彼女は彼に追い詰められた時の為に、
身のうちに爆弾を忍ばせていたのだった。
「なるほど……。
自爆というやつですか。
考えましたね。
私の頭にはそんな発想はありませんでしたよ。」
彼は取ってつけた様な演技でそのような事を告げるが、彼女には呆れながらこう告げる。
「ふん、どうせこれも計算通りなんでしょ。
全部、結局は夢見の手のひらで転がされていたんだね。
じゃあ、一緒にタヒのうか。」
そう言い、彼女はスイッチを押そうとした。
「まぁ、それも良いでしょう。
しかし、この計画を思いついたのは私ではありません。
では、誰がこの計画を立てたのでしょうね。」
彼はそう言うや否や、彼女から爆弾を奪い、
爆弾を最小限に抑えようと爆弾を飲み込んだ。
そうすると、
彼の体は真っ二つに分けながら爆散した。
そんな状況を彼女は理解が出来なかった。
「え、え?
なんで、?どうして、?」
彼女は彼の爆散した上下を見ながら、
そう言葉を溢した。
当然、彼の目に光はない。
呼吸もしてるはずもなかった。
彼女は彼の体の傍に座り、体を揺すってみる。
「本当に死んじゃったの?、、、、、」
彼女はそんな悲しげな声を出す。
しかし、その返事が返ってくる事は無かった。
そうして、突然雫の背後から音がして、、、
「隙アリ」
何者かの声を聞いた瞬間、首に重い一撃を貰い、
彼女の意識は下へ、下へと堕ちて行くのだった。
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