比嘉 短編
君の名は?
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『また朝帰りですか?』
「うるさい」
『お誘いがあるのは結構な事ですね』
「はぁ……からかわないでよ 仕事の延長なだけだよ」
『クククッ…』
永四郎はただのルームメイトの1人、ちょっと嫌味な所もあるけど根は良い奴でしかない。
4LDKのマンションに女3人と永四郎
奇妙な4人の共同生活を始めて半年。
それぞれ成人しているが、仕事も出身地もバラバラだった。
共通点は永四郎、それぞれ違う場所で永四郎に出会い住む場所を無くした女達を永四郎が拾い集めた
女1 あこ 20歳
水商売 彼氏のDVで家から逃げ出した所を保護
女2 菜月 23歳
事務員 毒親からの逃亡 泣きながら立ちんぼしようとしていた所を保護
女3 私、花 25歳
受付嬢 家が火事になり呆然と炎を見ている所、あこ、菜月、永四郎に声を掛けられ拾われる
永四郎 26歳
高級車販売業 皆の良き相談役
家主 何を考えているのかよく分からない。
一同に顔を合わせる事は少ないが、それぞれの生活リズムを尊重しながら上手くやっているつもりだ。
いつかは皆それぞれに住む場所を見つけて出て行く事にはなっているけれど、何だか居心地が良くてずっとこのまま皆で居られたらなんて思っていた
外で嫌な事があってもココに帰れば誰かがいる、話を聞いて慰めてくれるから
そんな私の悩みは会社の御曹司 跡部景吾
高飛車で強引でしつこいけど顔は良い。
私が見た事も無い世界を見せてくれるけど、先が無い事は分かりきっていて、都合良く遊ばれているんだと思う。
甘い言葉をくれるけど、どこまで本気で言っているのか分からない
昨日の夜だってそう、事が済めば帰るんだろ?と車を回される
その車に揺られて朝帰り、玄関で出勤する永四郎にからかわれた
ここ1ヶ月半そんな事を繰り返している
そろそろ結婚も考えたい25歳
先の無い恋なんてしてる場合じゃないのに…… 断ち切れない自分にもガッカリする
少し眠ってまた出勤した。
涼しい顔で何事も無かった様に受付を通り過ぎてく跡部を見送って溜息をついた。
嬢2『ねぇ、花知ってる?御曹司近々結婚するらしいよ〜』
「そうなの?」
嬢2『うん、一条家のお嬢様と』
「へぇ……そうなんだ……」
分かっていたのに胸が痛い。
いつかのその日がこんなに早く来ちゃうなんて…
まぁ、本人からお前はもう用無しだと言われるよりましかと込み上げる涙を押し込めた。
上の空で一日の業務を終わらせてすぐに会社を出た、トボトボ家へ向かいながら必死に心を整理していく
自分が景吾の事を割と好きだったんだと思い知らされる、見慣れぬ世界にドキドキしていた筈なのに…… 思い出すのは景吾の優しい顔、優しい声ばかりだった。
『花』
ふと声の方を見ると黒塗りの車から永四郎が指で来いと呼んでいた。
『今帰りですか?』
「うん」
『乗るでしょ?』
「うん」
静かに車に乗りこんでシートに沈んだ
早くベットで眠りたい。
『ご飯は食べたんですか?』
「ううん」
『……花、何かあったんですか?』
「別に」
『何も無い様な顔してませんけどね』
「…………」
『嫌な事があったのなら話しなさいよ、溜め込んでたって腹の中で腐るだけですよ』
「…………」
『飯でも行きますか?』
「ううん、いらない」
『はぁ……困りましたね……』
永四郎は優しく私の頭をぽんぽんと叩いて車を走らせた。
流れていく景色を何となく眺めているとたまらなく悲しくなった、何時もとは逆方向に流れる景色、左側で見る風景は切なく胸を締め付けた
信号待ちで隣に並ぶ白いスポーツカー昨日まで私が座っていた助手席には例のお嬢様がお淑やかに座っていた
お嬢様に笑いかけた運転手と目が合った、不意にニヤリと口端を釣り上げると見せ付けるようにお嬢様を抱き寄せた
『花っ』
呆然としている私の肩は痛い程の力で引っ張られ、永四郎に唇を塞がれた
一瞬の出来事で何が起きたのか把握するのに時間が必要だった
信号が変わると白いスポーツカーは左折して姿を消した
何も言わない永四郎、私は固まったまま動けなかった。 ただ胸は苦しいままで涙が止まらない、このままどこか遠くに行ってしまいたい。永遠に続く様に思えた、真っ暗な暗闇の中、もがいても、もがいても光なんて1mmも見えそうにない、この先私に幸せなんて永久に来ないとさえ感じた、消えて無くなりたかった。
駐車場に止まった車から永四郎は無言で降りると助手席のドアを開き私の手を引いた、何も言わないまま付いていく私、
家に帰るとあこと菜月が出迎えてくれて私をぎゅっと抱き締めてくれた。
あ「大丈夫、私達が付いてるよ」
菜「ずっと一緒にいるからね」
2人の優しい言葉に声を上げて泣いた、本気で好きだった訳じゃないのに何でこんなに悲しいのか分からない。
好きだと言われたわけじゃない、付き合ってくれと言われた訳じゃない、何も約束されたわけじゃない、自分の不甲斐なさが悲しかったのかもしれない。
永四郎は気を使ってかそのまま外へ出て行った。
私たちは家中のアルコールに手を出した。
あ「男なんて馬鹿野郎〜!!」
菜「そーだそーだー!馬鹿野郎ッ!」
あ「後悔しろ!花はいい女なんだぞーっ!!」
菜「逃がした魚はデカイんだぞー!」
あ「御曹司かなんか知んないけど調子乗り過ぎ!」
菜「親の力じゃん!坊ちゃんじゃん!何も偉くねー!」
あ「そーだそーだ!」
2人は酔いに任せて文句を言いまくる
ついでに自分の周りの男の文句まで言いまくる。
あ「悔しいから私、石油王ぐらいお金持ち捕まえるんだ!愛より金に生きる!」
菜「あこなら出来る!」
あ「好きになったら負け!私のピュアな愛はもう誰にもあげないっ!」
菜「私は色んな世界を見て回りたい。恋愛とかいいからさ。」
あ「皆でさちょっと遠出したいよね、船旅とか。」
菜「いーねー!」
あ「陸地から離れてさ、現実とはおさらば!」
「船旅か……いいね。」
あ菜「「でしょーー!!!」」
あ「休みとれるかなー?1週間は短いよね」
菜「10日は行きたいっ!」
「そうだね」
『行ってくれば良いでしょ失恋旅行』
いつの間にか帰宅した永四郎がリビングの入口に苦笑いしながらこちらを見ている。
散らかった部屋にうんざりしているように息を吐いて部屋に入ると直ぐに出て来た
ドカッとソファーに座るとタブレットを叩く
『日本船がいいの?外国船がいいの?』
あ「どっちがいいかなー?」
菜「英語苦手だからな……」
『翻訳機でも使いなさいよ、3人ともパスポートは?』
あ菜「「ない」」
「あ……燃えたんだった……」
『では日本の船にしましょう、部屋は皆同じで?』
「「「もちろん!」」」
『…………はい、出発は12時、晴海ふ頭から船が出ます、荷造りしなさいよ、』
あ「今日?え?仕事は?何泊?」
『病気で入院した事にしといてあげます、その辺は俺がやっときますから、君たちは荷造りしなさいよ、とりあえず9泊10日、日本一周って所ですかね。』
菜「永四郎、私も?休める?」
『えぇ、何とでも出来ますから。』
あ菜「「持つべきものは永四郎様っ!!」」
『花っ……君も好きなだけ休んで楽しんで帰って来て下さい。』
永四郎はそう言って自分のクレジットカードを差し出した。
「永四郎……」
『何も心配しないで良いから、カード無くさない様にね。』
「ありがと……」
『さぁ、ゆっくりしてる暇はありませんよ!』
あ菜「「よーし!準備しよ〜!!」」
私達は慌ただしく荷造りを始めた、あれもこれもとキャリーに詰め込んだ
初めての船旅に盛り上がる3人を永四郎は笑って見ていた。
アドレナリンに支配された私達は眠らないまま朝を迎え永四郎が呼んでくれた大きなTAXiに乗り込んだ。
あぁ、そっか……永四郎は行かないんだ……
エントランスで隣に立つ永四郎を見あげると永四郎は少し寂しそうな顔をしている様に見えた。
「永四郎……」
『ん?』
「寂しい?」
『いいえ、家が静かになって仕事が捗りそうですよ』
「お土産買ってくるね」
『えぇ、忘れ物はありませんか?』
「うん」
『何かあったら電話しなさいね』
「うん」
『花……』
「ん?」
『全て流れに任せるといい……何もかも』
「………うん」
『ほら、置いて行かれますよ』
「うん」
タクシーではしゃぐ2人の所へ行こうとすると、永四郎は私を引き止めて身をかがめた、髪をそっと撫でて耳元で囁く。
『早く俺の所に帰って来なさいよ』
低い声が脳に響いて甘く心臓を掴まれそうになった。
耳朶を甘く噛んで永四郎は頭をぽんぽんと叩くと私をタクシーへ乗せた。
ヒラヒラとにこやかに手を振る永四郎にあこと菜月は行ってくるねーと元気に手を振っていた。
噛まれた耳がやけに熱い……
ぼーっとしているうちにふ頭へ到着して慌ただしく乗船した、永四郎が取ってくれた船室はスイートで3人では持て余す程に広かった。
はしゃぎながら荷解きして美味しいランチを食べて船を散策した、何もかもどうでもいい、高校生の修学旅行みたい。
楽しくて嬉しくて沢山写真を撮った
穏やな海を見ていると心が浄化されていくみたいに自分の愚かさを少しづつ許せる気がした。
私達は心置きなく永四郎のカードで船旅を満喫しまくった
夜になったら今までの自分達の話を沢山語った、辛かった事、楽しかった事今まで知らなかった過去をお互いにさらけ出した。
話す事で自分を客観的に見る事が出来た
話の最後は決まって永四郎の話になる
あ「永四郎良い奴だよね〜」
菜「まじ神だと思ったもん」
あ「ホントホントまじ神、地獄に仏!」
「そうだね……私あの時人生終わったと思ったもん」
あ「そんな顔してた」
菜「うんうん、してた。」
あ「菜月もしてたけどね、最初の日」
菜「ふふふ、あんまり覚えてないんだけどね、じじいにしつこくされてて怖くてさ、そしたらさー探しました、帰りますよ!とか言っちゃって車に乗せられて拉致られた」
あ「やだーカッコイー永四郎ww」
菜「車の中でもっと自分を大切にしなさいっ!って説教されてさ。ちょっとウザかった」
あ「言いそ〜」
「あこは?最初どうだったの?」
あ「私ホストの彼と同棲してたんだけどさー私の方が稼ぎ良くてヒモになってDV。永四郎はお客さんだったんだ、取引先の人とか接待で来てくれてて、私の痣見つけて心配してくれてさ、逃げたくなったら連絡しなさいって名刺くれたの。なかなか別れられなかったんだけど、最後に顔やられて決心ついた、だから永四郎に電話して匿ってもらったの」
「そうだったんだ……大変だったね」
あ「うん、でももう過去の事、今仕事割と楽しいし、結構稼げてるし、本当ならもう自立しなきゃいけないって思ってるんだけど、皆といると楽しくてさ。」
菜「私も……」
「私も……」
あ「いつかさ、皆それぞれの道を歩かなきゃいけないけどさ……私達幸せになろうね」
菜「「うん」」
硬い握手を交わしてそれぞれベッドに潜り込んだ。
帰ったら思い切って転職しよう、しっかり生きていかなきゃ、脳裏には何故か永四郎の寂しそうな笑顔が浮かんだ
電話してみようかな……
私は静かにバルコニーに出て永四郎の名前をタップした。
『……花っ……』
寝起きの低い声で私を呼ぶとしばらくの沈黙
「ごめん、寝てたよね…」
『…………何か……あったの?』
「ううん、何も。」
『……少しは俺に……会いたくなりましたか?………』
甘ったるい聞いた事のない永四郎の寝ぼけた声に戸惑いながら耳を大きくした
何時もはからかってばかりの意地悪な永四郎の癖に……
『……すぅ……』
穏やかな寝息に思わず拍子抜けした。
完全に寝ぼけてたのね……しかも寝た……
まぁこんな夜更けに電話した私も悪いかと静かに電話を切った。
この半年永四郎には本当に助けられた、全てを失った私に何も心配しないでと失くしたものを与えてくれた。
見ず知らずの私に何故そこまでしてくれるのかと聞いた事もあったけど、ただの気まぐれだとはぐらかされた
私が疲れてる時は好きなデザートやお酒を帰りに買って来てくれて、風邪を引いたら薬を買ってくれて、お粥も作ってくれた。
からかうけど、永四郎はいつも優しかった、あこと菜月にもきっとそうなんだろうと、ただのいい人なんだと思ってたけど…… あこと菜月から永四郎にKissされたなんて話は聞いた事がない
菜「花?眠れないの?」
振り返ると心配そうな菜月がバルコニーに出てきた。
「ううん。」
菜「……ねぇ、花、私あと1年お金貯めたら海外に行こうと思ってるんだ。」
「え、そうなの?」
菜「うん、オペア留学でオーストラリア。1年はそこで頑張るつもり。」
「そっか。」
菜「うん、皆と離れるのは寂しいけどさ」
「うん。」
菜「花は?」
「とりあえず、帰ったら転職しようと思ってる。」
菜「そっか。ねぇ、正直さ、永四郎の事なし?」
「なし?」
菜「恋愛対象にはならない?」
「え?何で?」
菜「……お節介かもだけど、永四郎に怒られるかもだけど、永四郎はさ花の事本気だと思う。あこと私にも優しけど、花を見る目は私達とは別格だし、最近花帰りが遅かったじゃん、永四郎落ち込んでた。彼氏でも出来たんですかねって……恋愛対象にならないならそれは仕方ないと思うけど、もし、もし、1%でも永四郎を男として見れるならさ……2人が上手くいってくれたらあこも私も嬉しい。……ごめん、急に……」
「ううん。正直さ、あこと菜月にも優しいから私も同じだと思ってて、私だけ別とか感じた事なくて、良い人だし、変な事してくるけど、からかってるって思ってる。」
菜「そうだよね……それは永四郎が悪い。本当素直じゃないと思う。多分嫌われるぐらいなら良い人のままでいいとか思ってるんじゃないかな……」
あ「ほーんと、見てられないっ!」
「あこっ!」
あ「もっと早くくっつくと思ってたんだけどなー」
菜「はっきり言わない永四郎が悪いよね」
あ「花も少し鈍感だけど笑」
「鈍感?私?」
『『うん、凄く〜』』
「全然分かんなかった。」
あ「まじで?あんなベタベタ触るし距離近いし、熱出したら夜通しタオルしぼってるし、せっせと好きな物買いに行って冷蔵庫に入れたりしてるのに?」
「あこと菜月にもしてるんだと……」
『『ないない、』』
「そうなの?」
菜「私達が邪魔しちゃってるのかも…」
あ「そうかも……」
「え?え?やだ、2人とも居てくれなきゃ寂しいよ、」
あ「永四郎の、アピール薄めちゃってた、ごめん。」
菜「……花、帰ったらさ、ちょっとでいいから、永四郎の行動見てくれる?どう感じるかは分からないとしてさ……」
「あの……実はさ……あの日……車の中でKissされた……」
『『!!!!!!』』
あの日の事を説明すると2人はポカンと口を開けて固まった
「でも、何も言われてないし、隣に御曹司の、車並んでて隣に女乗ってたし、こっち見てニヤニヤしながら女抱き締めてたから、仕返しって言うか。庇ってくれたんだと思ってて……それから、旅行の出発の日早く俺の所に帰って来なさいっては言われたけど、耳噛まれたけど……でも……でも、好きだとか付き合ってとか言われてないし……」
あ「あーーーもぅ、もどかしぃーー」
菜「永四郎のばかーーーーーそこまでするならはっきり言えー!!!!」
2人は海に向かって叫んだ。
「ちょっと2人とも夜中っ!!」
『そうですよ、少しは静かにしなさいね2人とも……少々お節介が過ぎます。』
『『『!!!!!!!!!!!!』』』
隣のベランダから怖い顔をした永四郎が顔を覗かせて、仕切りを軽々と手摺を伝ってこちら側へ来た。
ビックリしすぎて声も出ない私達の前に仁王立ちした永四郎は深い溜息を着くとメガネをあげた。
『あこ、菜月、人の気持ちを勝手にばらさないで貰えますか?帰って来たら話そうと思ってたのに……全く。』
あ、菜「「ごめん……なさい……」」
『はぁ……2人とも、もう中に入りなさい』
「「はーい」」
2人はごめんっと手を合わせて大人しく中へ入って行った。
永四郎は気まづそうにセットされてない髪をかいて、困った顔をしながら私の手を引いた。
すっぽりと永四郎の腕の中に収まると、優しく抱き締められた
『あこと菜月が全部バラしてしまいましたね……傷心の君に急いで答えをくれとは言いません。車の中での事は謝ります、辛そうな顔を見ていられなかった、君を粗末に扱ったあいつが許せなくて、君を泣かせるあんな奴を好きな君を見ていられなくて……俺ならもっと君を大切に出来るのにそう思ったらつい……すみません。この船旅から帰ったら、君の傷が癒えたら俺の気持ちを伝えようと思ってました、初めて君と出会ったあの日……一目惚れでした。俺なりにアピールしたつもりが……君をあんな奴に横取りされてしまって、つい意地悪を……はっきり言ってしまえば良かったのに、嫌われて君が家から出ていってしまうかもしれないと思うと、怖くて言えませんでした。』
「永四郎……」
『花……俺は君が好きです。俺を1人の男として見て欲しい。ただのいい人じゃなくて……』
「……うん。」
『1%ぐらいの可能性はありますか?』
「……うん、ちゃんと永四郎を見る」
『良かった……ゆっくりでいい……仲良くしましょうね』
「うん。」
『では、残り2日の船旅を存分に3人で楽しんで下さい』
「え?帰っちゃうの?ってか何でいるの?」
『あぁ、2時間前に鹿児島に着岸したでしょ?休みが取れたので飛行機で来たんです。どうしても……君に会いたくてね……』
「じゃぁ、さっき電話した時隣に?」
『えぇ、少し横になったら眠くなってしまって……』
「……すぐ帰っちゃうの?」
『いえ、残り2日はリモートで仕事します。ここで…食事ぐらいは一緒にしましょう』
「そっか……じゃぁ、一緒に帰れるって事だよね」
『えぇ、2日後に大阪港で下船してあこと菜月は飛行機で東京に帰って貰いましょうかね。』
「え?ん?んん??」
『俺達はそこから別の船に乗りましょうか……国内傷心旅行の次は優雅に海外旅行でもしましょうね。』
「え?海外?私パスポートないけど?」
『手配済です。直ぐに届きます。』
「え?は?」
『何も心配いりません、俺がいますから』
「……………」
『流れに任せていればいいんです、あ、因みに君の会社には退職すると代行しておきました。』
「はぁ????」
『転職するんでしょ?旅から帰ったら俺の会社のショールームで働きなさいよ。給料は弾みますから』
「ボーナスも?」
『もちろんです。』
「流石、永四郎様」
『全て、俺に任せなさいよ。花、何も心配いらないから』
「はーい。」
大きな永四郎の人生の船に乗ってみる
いや、とっくに拾われたあの日から乗船していたのかもしれない。
大きな波が来てもきっと大丈夫な気がする、タイタニックになったら永四郎はきっとジャックになる人だ。
命を懸けて私を守り救おうとしてくれる
私はこれから真っ直ぐに本当の永四郎を知ろうと思う。
END
あ菜『『2人ともずるいーーー!海外船旅連れてけーーー!!!!』』
