比嘉 短編
君の名は?
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同じクラスの木手永四郎君。
ちょっと強面で愛想はあまり良い方では無い。女子と話してる所はあまり見た事がなくて、必要最低限、硬派な印象だった。話しかければ返事はしてくれるけれど、優しいかと言えばそうでもない。
彼を好きになったのは雨の日の事
忘れ物をして学校に取りに行った時だった、生徒はもうとっくに帰っていて校内はガランとしていた。
怖がりな私は慣れた廊下ですらビクビクしながら歩く……
あーやばい、昨日CMで見た韓国の学校ホラーを思い出しちゃった、やばい、まじで、早く帰りたいっ。
3階の教室に辿り着き机を漁る、今思えば普通に電気をつければ良かったのだ。
小雨だった雨が本降りになり急激に暗くなり始めた
「あった……」
明日提出のプリントを見つけカバンにしまう、よし帰ろう!
ピカッ!!!! ドカーーン!!!!
窓の外が激しく光ったと思ったら、直ぐに大きな音が鳴り響いた。
「きゃぁぁぁ!!!!ぅぅっ…」
雷も大っ嫌い……
小さい頃留守番していた時に雷が鳴りまくって、でも両親は全然帰って来なくて一人心細くて怖くて、その日から雷も暗闇も苦手……
机の傍にしゃがんで頭を抱えたまま腰を抜かして動けない、最悪のシュチュエーション。
ガラッ!!!!
勢いよく開いたドアに立つ人影…… 脳裏に蘇るホラー映像、同時に光る雷と爆音……
「ぎゃぁぁぁあぁぁあぁあぁぁぁあぁぁぁあぁあぁぁぁあぁぁあぁぁぁあぁぁあぁ!!!! 」
もう滝のように涙も汗も止まらない……
叫ぶ私の頭に大きなタオルがかけられて、優しく両耳を押さえられる。
顔を上げると雷に照らされて木手君の眼鏡が光っていた。
目の前にしゃがんで私の耳をタオル越しに押さえる木手君は凄く困った顔をしていた。
雷が鳴り止むまで傍に居てくれた。
しばらくぎゅっと目を閉じて耳を塞ぐ木手君の両手首を掴んでた……
スルッと離された手
『もう、大丈夫ですよ、山田さん』
「ありがと……」
『忘れ物ですか?』
「そう、明日提出のプリント……」
『見つかったんですか?』
「うん…」
『帰りましょう、そろそろ鍵が締まります』
「うん」
非常灯だけの校内を並んで歩く、木手君は隣に居てくれるけど、やっぱり怖い……
ビクビクしながら歩く
『山田さん』
「なっ、何っ!!!」
『そんなに驚かなくても……』
「ご、ごめん、」
『怖いんですか?』
「……うん」
『意外です。』
「……だって」
『君は空手部でしょ?何が来ても一蹴りで倒せる筈でしょ?』
私が空手部って知ってるんだ……意外だった。
「そりゃ、生きてる人間は倒せるけど……」
『あーお化けが怖いんですね、ククッ……』
「……だって、倒せないし……」
『極真空手の日本チャンピョンがお化けが怖いとはね。ククッ……』
「笑わないでよっ」
『意外と可愛い所があるんですね』
「意外とで悪かったわね!」
『ククククッ……』
靴箱まで来て本降りの雨を見上げる
「凄い雨……」
『しばらく降りそうですね……』
「木手君、傘持ってるの?」
『いえ、朝は晴れてましたから……』
「私のに入る?」
『1人で帰るのが怖いんでしょ?』
「……だって暗いし……」
『素直な人は好きですよ』
「…………」
『さ、帰りましょう』
私の手から傘を取ると2人で歩き出す。
そんなにくっつく間柄でも無い、当然肩が濡れる……
『肩が……俺の腕に捕まって、ほら、風邪引くでしょ』
「……じゃぁ、失礼して……」
『はい、どうぞ』
傘を持つ木手君の腕に捕まって寄り添うと肩は濡れなくなった。
「意外と優しいんだね……」
『意外……ですか?』
「だって、いつもちょっと怖そうだし」
『……そんなつもりは』
「あんまり女子と話さないし」
『…………まぁ、話す事がないだけです』
「あんまり笑わないし……」
『俺だって、面白ければ笑います』
「……まぁ…そうだよね…」
『君とはこうして話してるでしょ』
「今日が初めてじゃん……」
『初め……t…… えぇ、そうですね。』
ゆっくり歩いて私の家の前まで来た。
家には灯りがついている
木手君はその灯りのついた窓を確認すると、少し安心した様に笑った。
「傘、持ってって」
『ありがとう、明日返します。じゃぁ。』
「木手君、ありがと」
あれ、木手君、なんで私の家知ってるんだろう、どっち?とか1度も聞かなかった。
あっという間に小さくなった背中、私に合わせてゆっくり歩いてくれたんだ…
この日から私は木手君が好きになった。
いつかまた一緒に帰れたらいいな……なんて思ってる。
最近教室で良く目が合う…
目が合うと少し笑ってくれたり、眼鏡を直してドヤ顔してくれたり、私を笑わせてくれる。
少しづつ距離が縮まってくれたら嬉しい
次の席替えは近くになれたらいいな……
木手side……
同じクラスの山田花
彼女は極真空手の日本チャンピョン
強く、凛々しく、そしてとても美人だ…
男女共に人気が高く、俺には高嶺の花。
昔から愛想が良くて誰にでも優しい、
その優しさに救われた……
俺が琉球空手を始めたのも彼女が理由だった。
幼稚園の頃、俺は気弱で良く虐められていた、園庭の隅で数人の園児に囲まれている所で助けてくれたのが山田さんでした。
「ダメだよ!小さい子には優しくしないと!」
俺は皆より少し体が小さかったので、彼女は年下だと思ったのでしょう。
他の子は人気の山田さんに言われると素直に従った。
その日から俺はずっと山田さんを見ている。 彼女が空手教室に通い始めたと聞いて、俺も琉球空手を始めた。
いつか彼女を守れるぐらい強くなりたい、
そう思って彼女の、背中を追い掛けた……
……が、彼女は日本チャンピョンになってしまった。
いつか彼女より強くなれたら、この思いを伝えたいと思っている……
3年で同じクラスになれた時は素直に嬉しくて、彼女の姿ばかり目で追った…
中々席が近くにならなくて話し掛けるチャンスがない。
あの日部活終わりに彼女が学校に入って行くのが見えた、とっくに生徒は下校した筈で、外は雨足が強くなり始めていた。
急激に暗くなる事を予測すると、彼女を1人で帰宅させるのは少し心配で後を追いかけた。
まぁ、彼女は俺より強いから、護衛にもならないだろうけど……
教室へ近づく頃激しい雷と彼女の悲鳴が聞こえ教室に走った、床に座り込んだ彼女が震えながら蹲っている姿に思わず首にかけたタオルで頭を包み耳を塞いだ。
音が和らげば少しは怖くないだろう…
彼女は震える手で俺の手首に縋るように握り締めて涙目で見上げる。
大丈夫、俺がいます。
雷が鳴り止むまでしばらくの間そばに居た、抱き締めてしまいたい気持ちを押し殺して、ただ彼女の耳を塞いでいた
雷が鳴り止んでホッとした顔の彼女を促して一緒に帰る事にする。
話すチャンスだと思い彼女の名を呼ぶと彼女は脅えたように返事をする
暗がりでお化けが怖いか……なんて可愛らしい、意外な弱みに笑ってしまう。
本降りの雨、鞄の中に折り畳み傘があるのは分かっていたけれど、忘れたフリをして彼女の傘に入れてもらう。
恥ずかしそうな彼女の肩は少し濡れていて、腕に捕まるように促すと素直に捕まってくれた。
こんなに近くに彼女がいる、鼓動を早めながら他愛もない話しをする、女子と話さないのは山田さんに他の女と仲良くしていると誤解させない為。
怖く見せているのは山田さんに男らしく見せたいからなんて言えませんが……。
優しくしたいのは山田さんにだけ……。
迷いなく彼女の家にたどり着けるのは何度か通り掛かった事があるから。
家まで送り届けたら、窓に灯りがついていた、家族が帰宅しているのだろう。
安心して立ち去れます
彼女の傘を借りて帰宅の途につく
昔の事は覚えていない様だった
弱い俺を忘れてくれていて好都合です。
これで彼女との接点が出来た。
これで少しづつ距離を縮めて行けばいい
まずは次の席替えで隣になる所からですかね……
まぁ、隣の奴を脅してでも隣になりますけどね。
席替えの日。
脅す必要はなく隣を引き当てた
あぁ、最初から隣の奴を脅してしまえば良かったですね、俺とした事が……
『隣ですね。山田さん』
「うん、よろしくね!木手君!」
これからはずっと俺の隣に居てもらいますよ……(眼鏡キランッ)
END
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