氷帝 短編
君の名は?
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雨が降ると決まって彼女は窓の外を眺める。 前の席の山田さん
授業中も休み時間も飯食いながらもずーっと窓の外を見てる。
何がそんなに気になるんやと視線の先を詮索しても何も無い
雨が好きなんか、嫌いなんか分からん
いつも無表情で心が読めない
人の心読むんは俺の十八番なはずなんやけどな…
『なぁ。雨好きなん?』
初めて話し掛けてみた
チラッと俺を見た山田さんは
「別に…」
素っ気なく返されてしまう
一歩踏み込む事も大事や
『雨が羨ましいわ…』
「はぁ?」
『別嬪さんにそない見つめて貰えるなら俺も雨になりたいわ』
「何それ……」
『口説いてるんや…』
「……そう言う軽い奴嫌い」
冷たい目で俺を見てるけど、逃げへんって事はまだいけるな…
『誰にでも言う訳ちゃうで…』
「あっそ。」
彼女は鞄を取ると席を立って振り返りもせず教室を出て行ってしまった。
腹の中が黒い女に興味は無い、何考えてるか分からん方がワクワクする
好かれると逃げたくなる、嫌われると追いたくなる、我ながら面倒な男だと思う。
山田さんは横顔が綺麗。
笑ったとこはあんまり見た事ない
集団の中に連む訳でもなく、必要最低限って感じや、天気のいい日は席か図書館で本ばっかり読んでる。クラスでは陰で綾波レイって言われとる。
今日は部活も休みやし、帰るかと下駄箱へ向かうと、山田さんが玄関で空を見上げてた。 なんや傘ないんか…
濡れて帰るなら強引に傘に入れてしまおうかと思い、急いで靴を出す。
『傘忘れt……』
声を掛け様としたら、彼女の頭上に大きな傘が開いた。
彼女は傘の持ち主を見上げると少し笑ってその人の腕に捕まった
初めて見る彼女の微笑、誰かと仲のいい姿
無口な彼女がその人には話しかけてる。
何で今まで1回も気づかなかったんや俺は……
『ありえへん……』
2人の背中を呆然と立ち尽くして見送った。
気になる人に彼氏がおったなんて経験は何度かある、ただそう言う時は下調べの段階で大体気付くもんや。
山田さんにはそんな素振り1mmもなかったのに…
悶々としたまま夜も眠れなかった
次の日も雨、今日からテスト期間に入る
皆がテストの問題に苦戦している中チラッと彼女を見ると、また窓の外をぼんやりと見ている。
この横顔がたまらんのや…
あかん、完全にやられとるわ。
休み時間になり廊下に出ると今は会いたくないそいつが立っていた。
『樺地……何や用事か?』
樺『ウスっ……』
樺地の手には似合わない小さな手提げ袋
じっと教室の中を黙って見てる樺地、教室の中が少しザワつく。
いつもなら俺に用事を伝えてさっさと帰って行くのに…
「崇弘…どうしたの?」
樺『忘れもの……』
「ありがと…」
樺『……あほ……』
「ごめん。」
樺地が……あほって言いおったで
ウスって言わんのか……
崇弘? 彼氏なんか……?ホンマに?
ありえへん……
『なぁ、ふ、2人付きおーてるんか?』
我慢ならへん、このモヤモヤ晴らさずにテストなんかやってられるか!!
樺『ありえません。』
「…………」
『な、ならええわ…』
樺『ウスっ』
樺地はくるりと身を返すとスタスタと帰って行った。
「余計な事言わないで。」
あぁ……やってしまった。
地雷踏んでしもーた
初めて見えた彼女の心が俺のせいで傷付いた事を知る。
後ろから手を伸ばして彼女の机にごめんと書いた付箋を貼り付けた。
丸めて捨てられた
昼休み彼女は樺地が持って来た手提げ袋から可愛らしい弁当を出して食べていた。
許してくれそうもない彼女にオレンジジュースのパックをそっと置いた。
申し訳ないと真剣に思っているが、嫌われれば嫌われる程、闘志が燃え上がる。
『山田さん…悪かった。俺が無神経やった、堪忍してや…』
「……忍足さん、私の事はほっといて」
『ほっといてあげたいんやけど、 出来へん。』
「何で?」
『好きやからや……』
「私は何とも思ってないし、これからも何とも思わない」
『それでもえぇ。俺が勝手に好きでおりたいんや…それもあかん?』
「迷惑。」
『未来は誰にも分からんもんやで』
「…………」
彼女の後ろに座って黙ったままの彼女と窓の外を見る。
『雨やな……今日も樺地と帰るん?』
「……帰んないわよ」
『たまたまなん?』
「傘忘れただけ」
『今日は?』
「…………」
『今日は俺と帰ってみいひん?』
「結構です。」
『濡れて帰るん?山田さんが風邪引いて休んだら俺悲しいわ』
「忍足さんってなんでそんな臭い事ばっかり言うの……返事に困る」
『酷い事言ってくれてかまへんで、気持ち言わんとなーんも伝わらんやろ。だから思うた事は口に出す。その方が後悔せーへんやろ。』
「拒絶されると傷付くでしょ」
『まぁな……そうやけど、拒絶を変える為には言ってみるしかないやん。』
「言い続けたら何か変わるのかな……」
『変わるかも知らんし、変わらんかも知らん。やってみな分からん事もある』
「……………………忍足さん、意外と真面目」
『チャラ男と違うやろ?』
「…………」
『だからな、これからは毎日、自分に好きや言うで、覚悟してな』
「…………」
『気が変わるまでやめへんで。』
「ストーカーやん」
『家まで行ったるわ』
「変態」
『褒め言葉やな』
「……いつか捕まるよ」
『そやな…… 本気で嫌やったら警察に通報してくれてかまへん。』
ホンの少しだけ彼女が笑ってくれた。
午後のテスト中も雨は静かに降り続いてた
少しだけ期待して下駄箱に向かう、もしかしたら一緒に帰らせてくれるかもしれへんしな。
彼女はまた空を見上げてる
雨足が強くなり、遠くの空は雷が光って綺麗だった。
バサッ……
傘の開く音がして、濡れそうな彼女を雨から隠す。 薄暗くなり始め足早に皆が帰って行く、2人の背中を今日も見送りながら、1人傘を開いた…
いつか彼女に傘を差し出すのは俺になる日が来るんやろか
女心と秋の空ゆーしな。
未来は誰にも分からんと信じる事にした
END
……………………………………………………
「崇弘……もう傘入れてくれなくてもいいよ。また誰かに勘違いされちゃうと困るでしょ、もう昔みたいに迷子になって雨に濡れて泣いたりしないから、子供じゃないし。もう、面倒見てくれなくてもいいよ」
『…………悪い虫が付くと……困る。』
「悪い虫?」
『……忍足……先輩……』
「悪い……虫……」
おしまい。
頑張れ忍足侑士!負けるな忍足侑士!
とりあえずモテ男は1回上げて落とす
褒めて貶す。