氷帝 短編
君の名は?
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Runway (鳳長太郎)
彼女が歩く場所は何処だってRunwayになる。 恐らく学校で一、二を争う細身の身体、顔は小さく10等身と言っても過言では無い。 凛とした顔付きは少し近寄り難い印象だった。
高校2年の春、彼女は俺のクラスに編入して来た。
隣の席に座った彼女は何処か儚げで寂しそうに見えた
『鳳長太郎です。よろしくお願いします』
「山田です。よろしく。」
編入初日の放課後、偶然彼女が告白されている所に出くわしてしまった。
何も下駄箱で告らなくてもいいのに…と思いながら下駄箱で宍戸先輩と待ち合わせしていて凄く気まずい。
『一目惚れしました。付き合って下さい。』
一目惚れでそこまでごり押せる彼を少し尊敬する。 下駄箱を挟んだ反対側で座り込む俺は早く宍戸先輩来てと願いつつ、自分の靴はまだ下駄箱から取り出せていない。
「……ごめんなさい。」
『誰か付き合ってる人が…』
「……あ……please let go of my hand!!!!!」
彼女の緊迫した声に思わず立ち上がり駆け付けた、彼女の両手をガッチリ握り締め詰め寄る男、涙目の彼女が俺に助けてと目で訴えている様だった。
鳳『離してあげてください』
男の手首を握り彼女から引き離そうとするが男は手を離さない、
男『お前なんだよ、邪魔すんな!』
鳳『俺は……』
男の充血した赤い目が血走っている、稀に見るヤバい人だと感じた俺は思わず嘘を吐いた。
鳳『彼氏です。俺の彼女なので手を離して貰えますか?』
男『なんだよ、』
男は悔しそうに走って外へ出て行った。
その場にへたり込む彼女の隣に座る
鳳『大丈夫ですか?すみません、勝手に彼氏なんて言ってしまって…』
「……Thank you for your help. i was so scared……」
鳳『you're welcome……』
震える彼女は余程動揺しているのか、立ち上がれそうに無さそうだ。
「……!! ゴメンナサイッ、ワタシ日本語ウマクナイ…あーーもう、待って、落ち着く……」
深呼吸を繰り返して両手で胸を押さえた彼女は、照れくさそうに俺の目を見た。
「助けてくれてありがとう。おーとりさん」
『いいえ』
「私、日系アメリカ人でずっとアメリカで育ったから、母国語が英語で日本語少し苦手なの…ごめんなさい、パニックしました。」
照れ笑いする彼女は凄く可愛くて、近寄り難さは消えていた。
『怪我がなくて良かったです』
「鳳さんのお陰です。」
『困った時は言ってください、助けます』
「本当に?嬉しい!私日本の友達まだいない、日本語下手だから、慌てると片言になるし…鳳さん、初めての友達になってくれる?」
『はい、友達になります!』
「やったー!!これでやってmommyに友達出来たって言える!!」
子供みたいに大喜びする彼女が可愛すぎて胸がきゅっとなった。
宍『ちょーーたろーーーおまた……せっ……どうした?』
下駄箱の前で座り込む俺達に驚いた宍戸先輩と目が合う。
鳳『宍戸先輩!!遅いですよ!!』
宍『悪ぃ!先生に捕まった……その子誰?』
鳳『…えっと、クラスメイトの山田さんです。』
「………」
宍『そ、そっか……よろしくな』
座ったまま見上げた彼女は少し頭を下げた。
鳳『山田さん、宍戸先輩は俺のテニス部の先輩』
「先輩?……あー師匠?」
鳳『師匠?あーえっとupperclassman……かな』
「あーーなるほど〜」
宍『なんだそりゃお前ら激ダサじゃねーの』
「激ダサって何?」
鳳『宍戸先輩山田さんは帰国子女……?いえ、この場合は留学生ですね、先輩、彼女は日系アメリカ人で留学生なんです』
宍『へー』
「ねぇ、激ダサって…ナニ???」
鳳『気にしないで、もう帰ろ!ほら立って!』
手を引いて彼女を立たせる。
宍『お前らデカっ!!!』
彼女は180cm近い……当然宍戸先輩より大きい……
「女の子にデカっ!はダメね!お兄ちゃんの人はgentleしないと!」
宍『お、お、お兄ちゃんっ/////』
ムッとした顔の彼女は宍戸先輩を見下ろしグッと顔を近付けると説教をする。
海外で身体について言うのは確かに失礼、特に女性には……
宍戸先輩はお兄ちゃん呼びにFocusしてしまったみたいだけど、耳まで真っ赤にさせて悪かったよと小さく呟く。
「悪かったじゃなくて、ごめんなさいね!」
宍『あー分かった、ごめんなさい』
「OK許す」
宍『長太郎……』
鳳『留学生ですから〜ね?宍戸先輩。』
まーいいよ、と言ってくれた先輩と3人で帰る事にした、先程の出来事を先輩に話しながらゆっくりと歩く。
彼女は何度も怖かったと言い、俺の事をHEROだと褒めてくれた。
彼女が歩くと歩道も人が割れる…
「日本の人皆避けてくれて優しいね、ぶつからない!安全!」
何故人が避けるか分かってなかったのかーと思いつつ、教えてあげるべきなのか?と…
鳳『山田さんが綺麗だからですよ』
「……?私綺麗じゃなくて、大きいだけ。日本は大きいと怖い?日本の女の子小さくて可愛いし羨ましい、私も小さくなりたいよ。アメリカは大きい人多いし、アジア人はあまり人気ない、私のあだ名BIG JAPANだった……」
しょぼーんとする彼女、国が違えば色々とあるんだなーと考えさせられる
宍『分けて欲しいぜ』
「分けてあげたいよ、お兄ちゃん」
宍『お、お兄ちゃん////お前…お兄ちゃんって…』
「私一人っ子、お兄ちゃん欲しかった、宍戸先輩、私の日本のお兄ちゃんになってください」
宍戸先輩の肩を容赦なく掴んで擦り寄っていく彼女。 満更でもない宍戸先輩……
屈託のない笑顔と愛嬌に2人ともノックアウトされた気分だ。
宍『分かったからくっつくな!』
「お兄ちゃんも出来たってmommyに言える〜!」
宍『もーしょーがねーな!じゃぁ、俺はなんて呼べば良いんだよ妹!!』
『妹〜♡ 私花。山田 マリー花ね。』
宍『じゃぁ、花な!』
「うん!鳳くんも、花って呼んで!」
鳳『俺もですか?』
「鳳って言い難い」
鳳『分かりました、じゃぁ、俺も長太郎で、』
「ちょーたろーね、OK、あ!私の家ここ!寄ってく?」
指さしたマンションはそこそこの大きさ、しかし、男二人でいきなり行くのもどうかと思い2人で断る。
「えー残念っ!じゃぁ、また明日ねーお兄ちゃん、ちょーたろー」
にこやかに手を振って颯爽とマンションのエントランスに消えて行く花の後ろ姿は可憐だった。
宍『変な女だな…』
鳳『えぇ……見た目は日本人っぽいですが完全に日本好きなアメリカ人留学生って感じですね。』
宍『喋らなきゃモデルみたいなのにな』
鳳『えぇ……ギャップが……』
宍『でも、まぁ、可愛い……よな』
鳳『えぇ……綺麗ですね……』
宍『お兄ちゃんだって……激ダサ?』
鳳『お兄ちゃん……』
宍『お前はお兄ちゃんって呼ぶな!』
2人とも狐に摘まれた気分で帰宅した。
その日から花とは凄く仲良くなった、国語や日本史が苦手な花に教えながら、俺は花に英語を習う。
昼休みは決まって宍戸先輩と3人でご飯を食べながら花のこれ何?に答えてあげる。
宍『なぁ、花、日本に来たのは親の転勤か?』
「ううん、一応日本は私のルーツだから!知っておきたくて、学生の時に留学するのが1番だから、mommy達はアメリカいるよ」
鳳『え?じゃぁ、1人で来たんですか?』
「そう、1人。誰も知らないし、友達居ないし、凄く怖かったけど、どうせ大学は皆、家から出るし、自立!!」
宍『すげーな、』
「そう?皆留学するし、普通よ……あー昨日電車で買い物行ったら、電車でお尻触られたね、that is ちかん!ね」
鳳『!!! 大丈夫だったんですか??』
「んーすぐ駅降りたから、大丈夫!でも少し怖かった。」
宍『花に良く触ろうと思ったなそいつ……』
「どういう意味?お兄ちゃん!」
宍『いや、分かりやすく言うとな、もの凄く高級なグラスとか触るの怖いだろ?割っちゃうとか、壊しちゃうとか、』
「……ワカラナイ……」
鳳『つまり、綺麗すぎるから、花に触れるのは普通は出来ないって事です。』
「……?お兄ちゃん、褒めてる?」
宍『あー褒めてるよ、喋らなきゃ高級品だよ花は!』
「喋ったらガタクタ?」
鳳『ガラクタなんて何処で覚えたんですか(笑)』
「昨日アニメで見た!日本語勉強はアニメがいいって、アメリカの友達が言ってたから。日本語はアニメとYouTubeで覚えたし。」
宍『え……親は?』
「英語onlyよ、日本語は殆ど話さない。2人とも生まれた時からアメリカだから。おじいさん、おばぁさんはもう天国だし」
鳳『てっきり、家の中は日本語かと……』
それでいきなり日本に編入って……実は物凄く頭がいいんじゃ……
「好きこそ物の上手なれ?好きだから頑張る。最近、困ってるのは、お兄ちゃんとちょーたろーの前だと片言なりやすい。心が安心だから。」
宍『通じてんだからいいんじゃねーの?』
鳳『英語でもいいですけど、、』
「ダメ!それじゃぁ、いつまで経っても日本語上手くならない。だから日本語にする!」
改めて彼女のストイックさは見習わなければいけないなと思う。
授業中や他のクラスメイトに話しかけられた時は気を張って少し怖い顔をしてるのはそのせいかと気付く、自分といる事で少しでも安らぎがあると言ってくれて嬉しかった。
もっと力になりたいし、もっと日本の事を教えてあげたいとも思った。
痴漢した奴に天罰が下ればいいと心の底から祈った
部活が終わるまで彼女はコートの傍にあるガゼボで宿題をしたり日本語の勉強をして待つのが日課になっていた。
合間に視線をやると少し遠くに花の姿が見える、風に揺らされた長い髪がふわっと靡いて古い映画のワンシーンの様にガゼボの周りだけゆったりと時間が流れている様だった。
宍『長太郎、見とれ過ぎだ』
鳳『すみませんっ』
榊監督の号令と共に一斉に解散する。
大所帯の部員が動き出す…
早く着替えて花を迎えに行かなきゃそう思ってガゼボに視線をやると、花が立ち上がって奥の方に後退りしていくのが見えた
入口には見覚えのある姿…
あの男だ……
鳳『花っ!!』
宍『長太郎ッ!』
花の危機に俺はコートを囲む柵をよじ登って飛び降りた、足が少し痺れたが構ってる暇は無い、集まっていたギャラリーが歓声を上げながら道を開けて行く。
ガゼボまで15m… 迫る男に花は固まっている
手を広げた男が花に掴みかかって花は大きな声を出した
「長太郎っ!!!!」
試合よりも早く走った気がした
男の襟首を掴み投げ飛ばした、男は後ろに大きく飛び尻餅を着いて崩れ落ちた。
鳳『俺の女だって言っただろう!!』
背中に花を庇い男を怒鳴りつけた、シャツを握り締めた花の手が震えているのが伝わってくる。
男『どうせ、嘘なんだろ?彼氏なんて、俺に諦めさせるつもりで…分かってるんだ、本当はマリーは俺の事が好きなんだよ…邪魔すんなよ2年』
鳳『嘘じゃありませんっ』
守りたい一心だった。
たった1人で日本に来て頑張っている花に怖い思いをさせるこいつが許せなかった。
こいつのせいで学校が嫌な場所になる
日本人が嫌いになるかもしれない
日本が嫌いになるかもしれない
花が毎日笑えなくなるかもしれない
後ろに隠れた花を引き寄せて
両手で小さな頬を包みKissをした
柔らかくて震えた唇がリアルに暖かくて
愛おしかった。
行く末を見守るギャラリーから悲鳴が上がる
五月蝿い、何もしない奴は黙ってろよ
俺が守るんだ……
宍『長太郎ッ!!花っ!!……!!!!まじかよっ……ってこいつか!!てめぇ!このっ!』
男『僕のマリーを汚しやがって……』
宍戸先輩と駆け付けた他の部員が男を羽交い締めにして止めていたなんて露知らず、俺は花の事ばかり考えていた。
背中をポンポンと叩く花の手で我に返り唇を離した。
「……はぁ……」
顔を赤くした花がにっこり笑って男を睨み付けた
「マリーは長太郎のね、貴方の物違うよ!!変態野郎消えろクズ!!大嫌いよ!!私、長太郎が好き」
鳳『何処でそんな言葉を…』
俺の言葉を遮るように花は少しだけ背伸びして俺に口付けた
再びあがる歓声に俺は花の腰に手を回し抱き上げた。
唇を離し額同士をくっ付けた花は優しく笑って
「昨日アニメで見た。でも嘘じゃない、私長太郎が好き♡」
ぎゅっと抱きついた花が可愛くてもう男の姿なんて眼中になかった
鳳『俺も花が大好きです。本物の彼女になってくれますか?』
「YES!」
男は警備員らに引き摺られ連れて行かれた様だ。
過去にも女生徒を付け回したり家まで行き郵便物を漁ったり、体操服を盗んだりしていたらしく、注意では済まされないと判断された、しばらくの間、療養という名の施設に入れられたとの事だった。
恐らく外に出て来れないだろう、勿論学校も退学処分となった。
花をストンと降ろして散らばった荷物を2人でかき集める。
「長太郎……やっぱり私のHEROね♡カッコ良かった!!タキシード仮面ね♡」
鳳『タキシード仮面(笑)』
「mommyにBoyfriendが出来たって言わなきゃ!!」
鳳『そのうちご挨拶させて下さい』
「うん」
宍『おいっ!!……お兄ちゃんに何か言う事は無いのか長太郎っ!!』
鳳『宍戸先輩っ!!』
「お兄ちゃん餅焼いてるね」
鳳『花、焼くは燃えるの焼くじゃないですよ』
「でもお兄ちゃん、餅みたいに膨らんでるよ」
宍『……お兄ちゃんは許さねぇ!!』
すっかり兄心が板に着いた先輩のヤキモチはしばらく続く事になる
見た目はパリコレモデルにも引けを取らない10等身絶世の美女、中身は天然で可愛いアニメが大好きな片言外国人、愛すべき俺の自慢の彼女。
俺は彼女の為ならHEROにでもSupermanにでもなる。
数ヶ月後、スカウトされた彼女は化粧品会社の広告モデルとして超大型のパネルが街の至る所に飾られる、後々大きな舞台のRunwayを颯爽と歩く事になるのはまだ知らぬ先の話。
「何でも経験するの大事ね!」
強引に俺まで歩かされるのは予想も出来ない未来だった。
宍『お兄ちゃんは認めてないぞーーー!長太郎ぉーーー!!!!!!』
END
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
おまけ
「長太郎、ももたろさんはbabyなのに桃にどうやって入ったの?」
鳳『……えっと……』
「きんたろは捨て子なの?」
鳳『……』
「うらしまたろは何故溺れないしおじーさんになったの?乙姫は悪い女ね?魔女なの?」
鳳『…………』
「日本難しいねー」
彼女が歩く場所は何処だってRunwayになる。 恐らく学校で一、二を争う細身の身体、顔は小さく10等身と言っても過言では無い。 凛とした顔付きは少し近寄り難い印象だった。
高校2年の春、彼女は俺のクラスに編入して来た。
隣の席に座った彼女は何処か儚げで寂しそうに見えた
『鳳長太郎です。よろしくお願いします』
「山田です。よろしく。」
編入初日の放課後、偶然彼女が告白されている所に出くわしてしまった。
何も下駄箱で告らなくてもいいのに…と思いながら下駄箱で宍戸先輩と待ち合わせしていて凄く気まずい。
『一目惚れしました。付き合って下さい。』
一目惚れでそこまでごり押せる彼を少し尊敬する。 下駄箱を挟んだ反対側で座り込む俺は早く宍戸先輩来てと願いつつ、自分の靴はまだ下駄箱から取り出せていない。
「……ごめんなさい。」
『誰か付き合ってる人が…』
「……あ……please let go of my hand!!!!!」
彼女の緊迫した声に思わず立ち上がり駆け付けた、彼女の両手をガッチリ握り締め詰め寄る男、涙目の彼女が俺に助けてと目で訴えている様だった。
鳳『離してあげてください』
男の手首を握り彼女から引き離そうとするが男は手を離さない、
男『お前なんだよ、邪魔すんな!』
鳳『俺は……』
男の充血した赤い目が血走っている、稀に見るヤバい人だと感じた俺は思わず嘘を吐いた。
鳳『彼氏です。俺の彼女なので手を離して貰えますか?』
男『なんだよ、』
男は悔しそうに走って外へ出て行った。
その場にへたり込む彼女の隣に座る
鳳『大丈夫ですか?すみません、勝手に彼氏なんて言ってしまって…』
「……Thank you for your help. i was so scared……」
鳳『you're welcome……』
震える彼女は余程動揺しているのか、立ち上がれそうに無さそうだ。
「……!! ゴメンナサイッ、ワタシ日本語ウマクナイ…あーーもう、待って、落ち着く……」
深呼吸を繰り返して両手で胸を押さえた彼女は、照れくさそうに俺の目を見た。
「助けてくれてありがとう。おーとりさん」
『いいえ』
「私、日系アメリカ人でずっとアメリカで育ったから、母国語が英語で日本語少し苦手なの…ごめんなさい、パニックしました。」
照れ笑いする彼女は凄く可愛くて、近寄り難さは消えていた。
『怪我がなくて良かったです』
「鳳さんのお陰です。」
『困った時は言ってください、助けます』
「本当に?嬉しい!私日本の友達まだいない、日本語下手だから、慌てると片言になるし…鳳さん、初めての友達になってくれる?」
『はい、友達になります!』
「やったー!!これでやってmommyに友達出来たって言える!!」
子供みたいに大喜びする彼女が可愛すぎて胸がきゅっとなった。
宍『ちょーーたろーーーおまた……せっ……どうした?』
下駄箱の前で座り込む俺達に驚いた宍戸先輩と目が合う。
鳳『宍戸先輩!!遅いですよ!!』
宍『悪ぃ!先生に捕まった……その子誰?』
鳳『…えっと、クラスメイトの山田さんです。』
「………」
宍『そ、そっか……よろしくな』
座ったまま見上げた彼女は少し頭を下げた。
鳳『山田さん、宍戸先輩は俺のテニス部の先輩』
「先輩?……あー師匠?」
鳳『師匠?あーえっとupperclassman……かな』
「あーーなるほど〜」
宍『なんだそりゃお前ら激ダサじゃねーの』
「激ダサって何?」
鳳『宍戸先輩山田さんは帰国子女……?いえ、この場合は留学生ですね、先輩、彼女は日系アメリカ人で留学生なんです』
宍『へー』
「ねぇ、激ダサって…ナニ???」
鳳『気にしないで、もう帰ろ!ほら立って!』
手を引いて彼女を立たせる。
宍『お前らデカっ!!!』
彼女は180cm近い……当然宍戸先輩より大きい……
「女の子にデカっ!はダメね!お兄ちゃんの人はgentleしないと!」
宍『お、お、お兄ちゃんっ/////』
ムッとした顔の彼女は宍戸先輩を見下ろしグッと顔を近付けると説教をする。
海外で身体について言うのは確かに失礼、特に女性には……
宍戸先輩はお兄ちゃん呼びにFocusしてしまったみたいだけど、耳まで真っ赤にさせて悪かったよと小さく呟く。
「悪かったじゃなくて、ごめんなさいね!」
宍『あー分かった、ごめんなさい』
「OK許す」
宍『長太郎……』
鳳『留学生ですから〜ね?宍戸先輩。』
まーいいよ、と言ってくれた先輩と3人で帰る事にした、先程の出来事を先輩に話しながらゆっくりと歩く。
彼女は何度も怖かったと言い、俺の事をHEROだと褒めてくれた。
彼女が歩くと歩道も人が割れる…
「日本の人皆避けてくれて優しいね、ぶつからない!安全!」
何故人が避けるか分かってなかったのかーと思いつつ、教えてあげるべきなのか?と…
鳳『山田さんが綺麗だからですよ』
「……?私綺麗じゃなくて、大きいだけ。日本は大きいと怖い?日本の女の子小さくて可愛いし羨ましい、私も小さくなりたいよ。アメリカは大きい人多いし、アジア人はあまり人気ない、私のあだ名BIG JAPANだった……」
しょぼーんとする彼女、国が違えば色々とあるんだなーと考えさせられる
宍『分けて欲しいぜ』
「分けてあげたいよ、お兄ちゃん」
宍『お、お兄ちゃん////お前…お兄ちゃんって…』
「私一人っ子、お兄ちゃん欲しかった、宍戸先輩、私の日本のお兄ちゃんになってください」
宍戸先輩の肩を容赦なく掴んで擦り寄っていく彼女。 満更でもない宍戸先輩……
屈託のない笑顔と愛嬌に2人ともノックアウトされた気分だ。
宍『分かったからくっつくな!』
「お兄ちゃんも出来たってmommyに言える〜!」
宍『もーしょーがねーな!じゃぁ、俺はなんて呼べば良いんだよ妹!!』
『妹〜♡ 私花。山田 マリー花ね。』
宍『じゃぁ、花な!』
「うん!鳳くんも、花って呼んで!」
鳳『俺もですか?』
「鳳って言い難い」
鳳『分かりました、じゃぁ、俺も長太郎で、』
「ちょーたろーね、OK、あ!私の家ここ!寄ってく?」
指さしたマンションはそこそこの大きさ、しかし、男二人でいきなり行くのもどうかと思い2人で断る。
「えー残念っ!じゃぁ、また明日ねーお兄ちゃん、ちょーたろー」
にこやかに手を振って颯爽とマンションのエントランスに消えて行く花の後ろ姿は可憐だった。
宍『変な女だな…』
鳳『えぇ……見た目は日本人っぽいですが完全に日本好きなアメリカ人留学生って感じですね。』
宍『喋らなきゃモデルみたいなのにな』
鳳『えぇ……ギャップが……』
宍『でも、まぁ、可愛い……よな』
鳳『えぇ……綺麗ですね……』
宍『お兄ちゃんだって……激ダサ?』
鳳『お兄ちゃん……』
宍『お前はお兄ちゃんって呼ぶな!』
2人とも狐に摘まれた気分で帰宅した。
その日から花とは凄く仲良くなった、国語や日本史が苦手な花に教えながら、俺は花に英語を習う。
昼休みは決まって宍戸先輩と3人でご飯を食べながら花のこれ何?に答えてあげる。
宍『なぁ、花、日本に来たのは親の転勤か?』
「ううん、一応日本は私のルーツだから!知っておきたくて、学生の時に留学するのが1番だから、mommy達はアメリカいるよ」
鳳『え?じゃぁ、1人で来たんですか?』
「そう、1人。誰も知らないし、友達居ないし、凄く怖かったけど、どうせ大学は皆、家から出るし、自立!!」
宍『すげーな、』
「そう?皆留学するし、普通よ……あー昨日電車で買い物行ったら、電車でお尻触られたね、that is ちかん!ね」
鳳『!!! 大丈夫だったんですか??』
「んーすぐ駅降りたから、大丈夫!でも少し怖かった。」
宍『花に良く触ろうと思ったなそいつ……』
「どういう意味?お兄ちゃん!」
宍『いや、分かりやすく言うとな、もの凄く高級なグラスとか触るの怖いだろ?割っちゃうとか、壊しちゃうとか、』
「……ワカラナイ……」
鳳『つまり、綺麗すぎるから、花に触れるのは普通は出来ないって事です。』
「……?お兄ちゃん、褒めてる?」
宍『あー褒めてるよ、喋らなきゃ高級品だよ花は!』
「喋ったらガタクタ?」
鳳『ガラクタなんて何処で覚えたんですか(笑)』
「昨日アニメで見た!日本語勉強はアニメがいいって、アメリカの友達が言ってたから。日本語はアニメとYouTubeで覚えたし。」
宍『え……親は?』
「英語onlyよ、日本語は殆ど話さない。2人とも生まれた時からアメリカだから。おじいさん、おばぁさんはもう天国だし」
鳳『てっきり、家の中は日本語かと……』
それでいきなり日本に編入って……実は物凄く頭がいいんじゃ……
「好きこそ物の上手なれ?好きだから頑張る。最近、困ってるのは、お兄ちゃんとちょーたろーの前だと片言なりやすい。心が安心だから。」
宍『通じてんだからいいんじゃねーの?』
鳳『英語でもいいですけど、、』
「ダメ!それじゃぁ、いつまで経っても日本語上手くならない。だから日本語にする!」
改めて彼女のストイックさは見習わなければいけないなと思う。
授業中や他のクラスメイトに話しかけられた時は気を張って少し怖い顔をしてるのはそのせいかと気付く、自分といる事で少しでも安らぎがあると言ってくれて嬉しかった。
もっと力になりたいし、もっと日本の事を教えてあげたいとも思った。
痴漢した奴に天罰が下ればいいと心の底から祈った
部活が終わるまで彼女はコートの傍にあるガゼボで宿題をしたり日本語の勉強をして待つのが日課になっていた。
合間に視線をやると少し遠くに花の姿が見える、風に揺らされた長い髪がふわっと靡いて古い映画のワンシーンの様にガゼボの周りだけゆったりと時間が流れている様だった。
宍『長太郎、見とれ過ぎだ』
鳳『すみませんっ』
榊監督の号令と共に一斉に解散する。
大所帯の部員が動き出す…
早く着替えて花を迎えに行かなきゃそう思ってガゼボに視線をやると、花が立ち上がって奥の方に後退りしていくのが見えた
入口には見覚えのある姿…
あの男だ……
鳳『花っ!!』
宍『長太郎ッ!』
花の危機に俺はコートを囲む柵をよじ登って飛び降りた、足が少し痺れたが構ってる暇は無い、集まっていたギャラリーが歓声を上げながら道を開けて行く。
ガゼボまで15m… 迫る男に花は固まっている
手を広げた男が花に掴みかかって花は大きな声を出した
「長太郎っ!!!!」
試合よりも早く走った気がした
男の襟首を掴み投げ飛ばした、男は後ろに大きく飛び尻餅を着いて崩れ落ちた。
鳳『俺の女だって言っただろう!!』
背中に花を庇い男を怒鳴りつけた、シャツを握り締めた花の手が震えているのが伝わってくる。
男『どうせ、嘘なんだろ?彼氏なんて、俺に諦めさせるつもりで…分かってるんだ、本当はマリーは俺の事が好きなんだよ…邪魔すんなよ2年』
鳳『嘘じゃありませんっ』
守りたい一心だった。
たった1人で日本に来て頑張っている花に怖い思いをさせるこいつが許せなかった。
こいつのせいで学校が嫌な場所になる
日本人が嫌いになるかもしれない
日本が嫌いになるかもしれない
花が毎日笑えなくなるかもしれない
後ろに隠れた花を引き寄せて
両手で小さな頬を包みKissをした
柔らかくて震えた唇がリアルに暖かくて
愛おしかった。
行く末を見守るギャラリーから悲鳴が上がる
五月蝿い、何もしない奴は黙ってろよ
俺が守るんだ……
宍『長太郎ッ!!花っ!!……!!!!まじかよっ……ってこいつか!!てめぇ!このっ!』
男『僕のマリーを汚しやがって……』
宍戸先輩と駆け付けた他の部員が男を羽交い締めにして止めていたなんて露知らず、俺は花の事ばかり考えていた。
背中をポンポンと叩く花の手で我に返り唇を離した。
「……はぁ……」
顔を赤くした花がにっこり笑って男を睨み付けた
「マリーは長太郎のね、貴方の物違うよ!!変態野郎消えろクズ!!大嫌いよ!!私、長太郎が好き」
鳳『何処でそんな言葉を…』
俺の言葉を遮るように花は少しだけ背伸びして俺に口付けた
再びあがる歓声に俺は花の腰に手を回し抱き上げた。
唇を離し額同士をくっ付けた花は優しく笑って
「昨日アニメで見た。でも嘘じゃない、私長太郎が好き♡」
ぎゅっと抱きついた花が可愛くてもう男の姿なんて眼中になかった
鳳『俺も花が大好きです。本物の彼女になってくれますか?』
「YES!」
男は警備員らに引き摺られ連れて行かれた様だ。
過去にも女生徒を付け回したり家まで行き郵便物を漁ったり、体操服を盗んだりしていたらしく、注意では済まされないと判断された、しばらくの間、療養という名の施設に入れられたとの事だった。
恐らく外に出て来れないだろう、勿論学校も退学処分となった。
花をストンと降ろして散らばった荷物を2人でかき集める。
「長太郎……やっぱり私のHEROね♡カッコ良かった!!タキシード仮面ね♡」
鳳『タキシード仮面(笑)』
「mommyにBoyfriendが出来たって言わなきゃ!!」
鳳『そのうちご挨拶させて下さい』
「うん」
宍『おいっ!!……お兄ちゃんに何か言う事は無いのか長太郎っ!!』
鳳『宍戸先輩っ!!』
「お兄ちゃん餅焼いてるね」
鳳『花、焼くは燃えるの焼くじゃないですよ』
「でもお兄ちゃん、餅みたいに膨らんでるよ」
宍『……お兄ちゃんは許さねぇ!!』
すっかり兄心が板に着いた先輩のヤキモチはしばらく続く事になる
見た目はパリコレモデルにも引けを取らない10等身絶世の美女、中身は天然で可愛いアニメが大好きな片言外国人、愛すべき俺の自慢の彼女。
俺は彼女の為ならHEROにでもSupermanにでもなる。
数ヶ月後、スカウトされた彼女は化粧品会社の広告モデルとして超大型のパネルが街の至る所に飾られる、後々大きな舞台のRunwayを颯爽と歩く事になるのはまだ知らぬ先の話。
「何でも経験するの大事ね!」
強引に俺まで歩かされるのは予想も出来ない未来だった。
宍『お兄ちゃんは認めてないぞーーー!長太郎ぉーーー!!!!!!』
END
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おまけ
「長太郎、ももたろさんはbabyなのに桃にどうやって入ったの?」
鳳『……えっと……』
「きんたろは捨て子なの?」
鳳『……』
「うらしまたろは何故溺れないしおじーさんになったの?乙姫は悪い女ね?魔女なの?」
鳳『…………』
「日本難しいねー」