氷帝 短編
君の名は?
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見惚れる程の透き通った肌、綺麗にまとめ上げられた髪、制服から覗く細くて長い手足、容姿端麗とはこう言う事だ。
日本人離れしたスタイルはすれ違う男全員が振り返る
ひと目見た瞬間から目が離せなくなった
彼女の周りは涼しい風が吹いている様に優雅で美しかった
8月の末、合同の学園祭、いつもよりごった返した校舎の中、取り巻きの暑苦しい女に絡まれながら廊下を進む。
「跡部さまぁ〜」
『うるせぇ…離れろ』
廊下の奥から歩いてくる姿は後光が差してるかに思えた、思わず足を止めてその姿に見惚れた……
俺様の姿が目に入っていないかの様に颯爽と通り過ぎて行く、身惚れられるのは慣れていると言わんばかりに俺様の視線も気にもしない。
「何あの女…」
『……フンッ……』
いい匂いだ…何の香水だろう…
何も手に付かないとはこの事か、寝ても醒めても頭から離れない。
話した事も無い女に胸が苦しくなるなんて俺様らしくもない…
取り巻きを振り切って本部に戻った。
『はぁ……』
窓から下の広場に目をやると、照り付ける太陽の下で模擬店の準備に追われている他校生徒が汗を流していた。
『赤也っ!!たるんどる!!』
怒鳴り散らしている立海の真田…見ているだけで暑苦しい…
トントンッ
『入れ!』
「失礼します。」
柔らかい声に振り返ると、想いの人が遠慮がちに部屋に入って来て息を呑む…
俺様は跡部景吾だぞ、何ビビってんだ
「本日の活動予定報告書です。よろしくお願いします。 失礼します。」
『あぁ…… 御苦労。』
パタンッ……
『あ……』
おい、名前も聞けねぇのかよ俺は…
いつも通り…(お前、名前は?)って言えばいい話だろ。
『はぁ……』
「お綺麗な方でしたね…」
『!!!…鳳っ…お前何時からそこにっ……』
「今ですけど…」
『そうか…』
「あの制服は立海ですね」
『立海!!』
「はい。確か立海の運営委員さんだった気がします。」
『運営か……』
「跡部さんも普通の男でなんだか安心しました」
『あーん?どう言う意味だ、鳳!』
「綺麗な人に見惚れるんだな〜って…」
何時もならそんな事はねぇとか、見惚れてねぇとか言い返す所だが具の根も出ねぇ。
美術館で美しい彫刻に見惚れるのと似た感覚にも思える、心が洗われる程静かに時が止まる、彼女の美しさは正に美術品だ。
『……』
「跡部さん…」
『うるせぇ…』
「……僕、もう行きますね。お疲れ様です」
パタンッ……
また1人になって窓の外に目をやる…
立海の数人が目に止まり、ガヤガヤと騒いでいる中に彼女が現れやしないかとどこか期待してる俺がいる。
思い通りにならない所かこの俺様がまともに声も掛けられないなんて…
毎日毎日その姿を探して、見かければ心が震える。 何時もより早く登校して本部の窓から彼女が来るのを探してる
そして今日もまた彼女が帰る姿を見送って溜息をついた。
彼女の周りには何時も立海のメンバーが騒がしく囲んでいる… 当たり前か、彼女も立海の生徒なんだから。
名前も知らないまま最終日を終えた。
外はキャンプファイヤーを囲んで盛り上がっている様だ。
取り巻きからダンスの誘いを受けそうで校舎に逃げて来た、他の女と踊っている所を彼女に見られでもしたら屈辱だ…
また本部で眺めるかと思い、誰もいない校舎を進み階段に続く角を曲がった。
ドンっ!!!!!!
「わっ……!」
『お……!!!!』
階段から勢い良く降りて来た影とぶつかり、細い身体が跳ね返って行く
受け止めれば良かったのだが、油断していた…
『大丈夫か?』
「ごめんなさいっ……急いでて……っ」
立ち上がろうとした顔が歪む。
美しいその目が少し潤んでぎゅっと閉じられる姿に不覚にも唆られた。
『足……捻ったか?』
「……っ…大丈夫です。」
『あまり動かさない方がいい…』
彼女の細い身体を抱き上げた
「あ、あのっ……」
『本部で直ぐに冷そう』
軽すぎる彼女を抱えて階段を登り始める、顔を赤くした彼女がそっと俺の肩に掴まり、小さくすみませんと謝った。
声まで美しいのかと早くなる鼓動がバレそうで余計に心臓が熱くなった。
本部に着くと貸し出し用の救急箱から湿布を出した。 椅子に座らせた彼女の前に跪くとそっとスリッパを脱がす。
細い足に纏った白い靴下に手を掛けると慌てる様に彼女が俺を止める
「あのっ……大丈夫です、自分でっ」
『いいから、大人しくしてろ』
動かさない様にゆっくりと靴下を下ろして行く、まだ数分しか経っていないのに細い筈の足首が腫れ上がっている。
折れてはいなさそうだが……
『明日にでも病院に行った方がいい』
「……はい、すみません。」
そっと湿布を巻き付けて、テーピングを緩めに施す。
『固定したから、なるべく動かさずに……』
見上げた彼女の瞳と目が合う…
なんて綺麗な瞳をしているんだろう、吸い込まれそうになる。
『綺麗だ……』
「……え」
思わず口走ってしまった…
もう取り返しもクソもない、世の中の男はこうやって自滅してんのか?
今までの俺ならこのまま強引に唇でも奪って俺の女になれとか言えたのに…
ガチャッ!!!!
?『花…いるかっ…!!!!』
『「……っ」』
怒鳴り込むように入って来た男に2人して目を見開いた。
「弦ちゃん!!!!」
彼女は嬉しそうに男を呼んだ……
真田弦一郎。
真『跡部っ、貴様!!!!花 に何をっ!!!!』
「弦ちゃん、待って!!! そうやって大きな声出さないっていつも言ってるでしょ!」
真『……す、すまん。花 だが、なかなか戻って来ないから、心配して探したんだぞ、電話にも出ない、何かあったかと、ムッ!!!! その足はどうしたッ!!!!跡部っ!貴様!!!!』
「弦ちゃん!!!! 違うの!!!! 私がぶつかって勝手に転んで、手当して貰ったの!!!! ……あの、跡部さん、ごめんなさい。」
『……いや、大丈夫だ…』
真『手当ッ!!!! 捻ったのか??……っ病院だっ!タ、タ、タ、タクシー!!!!』
「落ち着いてってば!もう!」
真『しかしだな、花 嫁入り前の身体に何かあったら俺はお前の両親に顔向け出来んぞ!!!!』
『嫁入り前っ……』
「ただの捻挫!!!! 嫁入り前って言ってもまだ先の話でしょ」
『……真田…』
「弦ちゃんは心配性過ぎるよ。過干渉!!!!」
真『……す、すまん。』
「跡部さん、ご迷惑かけてすみませんでした。ありがとうございます。」
真『……俺からも礼を……ウチのが世話をかけた。すまん、跡部。』
『ウチの……』
「……跡部さん?……あの、幼なじみなんです。」
真『許嫁だ…』
『許嫁……』
颯爽と彼女を抱えて帰って行った
2人の背中を見送り、その後どうやって家に戻ったかは覚えていない。
跡部景吾17歳 夏。
人生初めて恋に散った……
あんなガサツな堅物ゴリラに負けただと。
初めから勝負にもなっていなかった
幼なじみと許嫁のWパンチに為す術はなかった。
その後しばらく抜け殻になってしまった跡部様なのでした。
…………………………………………
おまけの帰り道。。。
真『れい 痛むか?』
「うん……」
真『他の男に助けられるなど、全く…たるんどるぞ…』
「弦ちゃんが来てくれて嬉しかった」
真『///……全くっ… 足を触られたのか?』
「そりゃ……手当てしてもらったし……」
真『………』
「またヤキモチ?」
真『……お前は、すぐ惚れられるのだから、気が気じゃない! 俺の身にもなれ!!』
「私が好きなのは弦ちゃんだけだよ」
真『フンッ!!!! 分かってる。』
「心配し過ぎ!」
真『頼むからスマホだけは手放さないでくれ、電車にも1人で乗るな!男は狼なのだぞ!お前の美しさは大罪だ。』
「美しくなくなっても、弦ちゃんは好きでいてくれる?」
真『どんな姿になっても変わらん。お前の真の美しさは心にある、俺はそこに惚れたのだ。』
「ありがと。でもたまには綺麗とか可愛いって褒めてよ!弦ちゃんには言われたい!!」
真『………そんな照れくさい事が言えるか!』
「跡部さんは言ってくれた」
真『なにっ!!跡部っ!!!!けしからん!!!!』
「……(じとーーーー)」
真『れい 綺麗だ。世界で1番お前が美しい。』
「……ふふっ……大好き♡」
真『俺もだ……』
END
クソっ!!!!こんなバカップルに勝てる訳ないじゃん。
跡部様失恋させてごめん。
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