比嘉 長編 初恋の人 (木手永四郎)
君の名は?
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甲『永四郎〜薬局ないー!』
『分かりました、今日は帰ります。家に向かって下さい』
甲『了解〜』
予想通りの流れに呆れつつ、今日はもう帰って寝る事にする。
この数年は殆ど休んでいない、何かを振り切るようにただ我武者羅に働いて来た。
テニスで結果が出せないと悟った時、他の何でもいいからのし上がりたいと思った。
俺から野心を取り除いたら何も残らない、誰よりも堕落してしまう事は自分が1番分かっている。
自宅へ戻り甲斐君を家に返すと、フラフラとベッドへ沈んだ。
『はぁ……』
サイドテーブルの引き出しから鎮痛剤を探り噛み砕く、水を取りに行く余力はもうない。
とりあえず1時間だけでも眠りたい……
…
……
これはきっと夢の中だろう。
「木手くん、どこいくの?」
『また君ですか…』
「一緒に行っていい?」
『ダメです』
「なんでよー!」
『はぁ……』
「手伝うから!」
『邪魔だけはしないで下さいね』
「はーい!あ!!!なんか実があるよ!」
上ばかり見ている君は足元を見ない。
『危ない!』
何度落ちそうになる君の腕を捕まえた事か。
「へへへ。ごめーん!見てなかった」
『全く……』
悪びれる様子も無く、にっこり笑うその顔に怒る気も失せてしまう。
何度来るなと言っても付いて来る君に愛着が湧いてしまうのにそう時間はかからなかった。
ただ、仲良くなればなる程、離れる日が来る事が寂しくなるのは当たり前で、壁を作っていなければ耐えられないと思った。
それでも壁を壊してくる勢いで向けられるその眼差しに心奪われてしまった。
夜も眠れない程に。
他の男と話しているだけで、あの笑顔が他の男に向けられるだけで胸が苦しかった。
誰にも渡したく無かった
『俺と付き合ってくれませんか?』
別れの日に思い切って告白した
離れていてもきっと大丈夫だと、大人になれば毎日傍に居られるようになる、しばらくの辛抱だと思っていました。
子供だった、君を繋ぎ止める事が出来ると過信していたんです。