比嘉 長編 初恋の人 (木手永四郎)
君の名は?
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花side……
小規模の昼食会、淡いブルーのドレスに高いヒール… 背筋を伸ばして真希さんの後ろに着いて行った。
紹介される方々のお顔、お名前、会社名、肩書きを脳みそに叩き込む……
真『顔の癖を覚えて、会社と肩書きくっ付けて覚えるのよ、あの人は鷲鼻のハゲは花山製菓の会長、花山渉。あっちのもやしノッポはアイシティの加賀美達也社長、眼鏡をやたらと拭くのが癖、 覚えきれなくてもいいわ、後でリストを送るから』
「はい、でもなるべく覚えます。次に初めましてなんて言ってしまったら失礼ですから…」
真『とりあえず、愛想笑いしときなさい』
「はい。」
オジ『真希ちゃ〜ん♡』
真『あら、お久しぶりね、金成会長!最近ちっともお店に来てくれないじゃない?冷たいわね〜♡』
オジ『いや〜忙しくてよ!近いうちに行くから、隣の綺麗な子は新しい子か?おじさんが指名してやろうか!!』
ゴツめの手がお尻に近付いてくる…
あぁ…これはどう逃げればいいの……
叩いちゃダメよね……真希さん……っ……
ペチッ!!
真『コラっ、エロジジィすぐ触ろうとするな!全く油断も隙もない!』
オジ『ちょーっとぐらいえぇじゃねーの!』
真『ダメよ、この子は。blue oceanの殺し屋の婚約者だから』
オジ『!!!!……っと危ねぇ……真希ちゃん今のは無しで!!頼む……』
真『お寿司の後にボトルで黙っといてあげてもいいわよ』
オジ『分かった……分かった!お嬢さんもすまなかったね…今後とも宜しくお願いしますと社長さんに……』
苦笑いで会釈をすると、金成会長はそそくさと傍を離れていった。
真『今のは金成物産のエロジジィ、永四郎の会社にはかなりお世話になってる筈よ。』
「真希さん……殺し屋って……」
真『永四郎、影で皆殺し屋って呼んでるわよ(笑)』
「今でも(笑)」
真『目付きがね〜まぁ、殆どの人はblue oceanって聞けば黙るわな。花も困ったらそう言いなさい…何とかなるわ!!』
「はい。」
真『足疲れたでしょ、少し座ってゆっくりしてなさい。』
真希さんに促されて壁際のソファーに腰掛けた、少しつま先が痛い。
ヒールを脱ぐ訳もいかず、だらけて座る訳にも行かない… はぁ…早く帰りたい…
『Hello beautiful lady, are you bored? There's a baby white lion in my room, would you like to come see it?』
不意に素敵な紳士に声を掛けられて視線を移すとその人は隣にふわりと香水を漂わせて座って来た。
『my name is fazza…』
何も答えられない私が英語が分からないのだろうとゆっくり名乗るその人は品が良くて優しそうな印象だった。
「I'm 花」
付き人『ホワイトライオンノアカチャンミマセンカトシュジンガイッテル』
「えっ…ホワイトライオン?」
『YES、white lion!!』
付き人『カワイイ、チイサイヨ』
ニコニコしながら付き人さんはスマホの画面に写真を表示させる。
「可愛い♡」
ふわふわのホワイトライオンが私を誘う、でも勝手にココから出る訳には行かない…
「ごめんなさい、連れがいるので行けません。写真見せてくれてありがとうございます、とても可愛いですね。」
付き人さんにそう告げると、付き人は残念そうに主人に通訳した、ファッザと名乗ったその人も残念そうにOKと席を立った。
『take me home』
何かを付き人に伝えながら、その人は扉の方へ歩いて行った。
ホッと胸を撫で下ろし御手洗に向かった。
痛む足を解して、化粧を直す、明日は永四郎と沖縄に出発する、1週間で式場やその他諸々を決めなければいけない。
平古場君にも会いたい、あの苦い沖縄の思い出を早く塗り替えたい……
思い出すとまだ少し辛い、永四郎と再会出来た今、この瞬間も夢なんじゃないかとまだ怖くなる。
永四郎の声聞きたいな……
スマホを取り出し時間を確認する、今頃会議かな。 仕事の邪魔をしてはいけないと電話したい気持ちを押し殺した。
スマホに注視していて背後の気配に気付くのが遅かった……
口に充てられた布を振りほどく間もなくぐらりと視界が歪んだ。
深い水の中に落ちていく様に深く意識が沈んで行く……怖い……永四郎っ……
助けて…
付き人『ホワイトライオンミニイクネ』
……
…………
…………
跡『It's my girl, give it back』
遠い所で誰かが喋ってる……
目を覚ましたいのに目が開かない
脳が黒いモヤに包まれる様にまた深く沈む意識……
一面真っ暗な何も無い空間に立っている夢を見た、上も下もない漆黒の闇……手を伸ばしても何も分からない……怖い……声を出したくても出せない……
歩いて見ても進んでいるのか分からない
、ただ手探りでこの世界の終わりを探す。
ねぇ、永四郎……
私は何処に向かえばいい?
どうすればまた永四郎に会える?
会いたい……
会いたいよ……
その場に座り込んで祈るように永四郎の名前を何度も心で呼んだ……
ふわふわと目の前に現れた黄色い小さな光…… あの日の蛍みたいに優しい光……
私の周りを漂うとすーっと離れていく……
「待って……っ……」
見失わない様に、離れないように必死でその光を追い掛けた……
次第に速度を上げる光を息を切らしながら追い掛けた。
次第に大きくなる光……
手を伸ばしてその光を捕まえた瞬間目も眩む程にフラッシュした。
永『花……花っ……良かった……』
「永四郎……っ……」
永『良かった……ホントに……心配しました……』
「私……」
永『何も心配いりません……もう済んだ事です。』
永四郎は泣きそうな顔で私を抱き締めた
震える背中にそっと腕を回して、夢じゃなかったと深く息を吸い込んだ。
「永四郎……会いたかった……」
永『生きた心地がしませんでした。君をまた失うかと……っ……』
「うん……私も……もう会えないかと……」
永『花……』
少しづつ感覚が鮮明に戻って来た。
永四郎が触れる場所が甘く痺れる様に熱くなってお互いを確かめるように体を重ねた。
傍に居る現実を焼き付ける為に体に刻む
傍に居る、隣に、今、現実に、触れられる
夢じゃない……
離れる事が2人ともトラウマになってる
失う事が怖くて、二度と会えない恐怖が私達をおかしくさせる
でも、その恐怖のお陰でこんなにも愛おしい… 隣に居られる事がこんなにも幸せだと思える。
「永四郎っ……好きだよ……」
『俺も……いえ、俺の方がキミを好きです……間違いなくね……』
優しいKissでくったりと永四郎の腕の中で眠りに落ちた。