比嘉 長編 初恋の人 (木手永四郎)
君の名は?
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『……っ……花が……居なくなった……真希さんっ、どういう事です?何故っ…今どこですか?いや、いつ……向かいます、場所を……』
幸せな朝食を終え花は壇君の迎えで真希さんの所へ行った筈だった。
林君が電話を取り次いだのは15時を回っていて、花の姿が見えなくなって1時間が経っていた。
今日はランチを兼ねたパーティーだったらしく、人数は100人程、少し目を離したら姿が見えなくなったと、外には出ていない。
ホテルの中だとしたら探すのはかなり難しいかもしれない……
花のスマホの位置を探すがホテルの何処かまではまだ分からない。
『甲斐君っ!!!急いで、帝国ホテルまで行ってください。』
甲『何かあったんば?』
『花が、いなくなりました。』
甲『なっ……分かった、急ぐ!!!』
『林君、この後の約束は知念君に』
林『はい。』
コートを羽織るのも忘れて車に飛び乗った。 花のスマホを何度もコールさせるが応答はない。
『花っ……出てください……』
祈る様にコールさせる手が震える……
『甲斐君…どれぐらいで着きそうです?』
甲『20分……急ぐから、木手落ち着け。大丈夫さ……大丈夫だからよぅ…』
『…………』
いつもは頼りない甲斐君の声が折れそうな俺の心を支える様に響く。
友人と言うのは本当に有難い…
落ち着け……大丈夫……きっと……何かの間違いだ……
1分が地獄の様に長い、猛スピードで走る車は裏道を抜けながらナビを無視して目的地へ近付く。
♩♩♩♩♩〜
握りしめたスマホが震える。
『真希さんっ!!見つかりましたか?』
真『ごめんなさい、まだなの…騒ぎにならない様に探してるんだけど、』
『分かりました。着いたら掛け直します』
甲『木手、後5分で着く、正面でいいか?』
『えぇ、正面に付けてください。車を置いたら檀君と合流して花を探してください、騒ぎにならない様に』
甲『分かった。』
ホテル正面に滑り込んだ車、眼鏡をあげてロビーに入ると、電話を折り返す前に真希さんが早足で近寄って来た。
真『ごめんなさい、私がいながら。ホテル全てのトイレや非常階段、他も探してるんだけどいないのよ。後は客室だけなんだけど……流石に開けるわけに行かないじゃない……』
『……っ……一般客室に居る可能性は低い……恐らく……いるとすれば………』
真『……永四郎……何する気?……』
『火災報知器でも鳴らしますか?……』
真『ダメよ、とんでもない事になるわ』
『支配人を。』
真『えぇ。』
目星を付けたのは最上階のロイヤルスイート2部屋、スイート4部屋だ。
恐らく今日のパーティーに来ていた誰かが6部屋の何処かに花を連れ込んだ筈……
『支配人、ロイヤルから、頼みます。』
支『はい。』
ロイヤル1000号室
重厚な観音開きのドアを支配人がノックする。
支『失礼致します。ファッザ様……支配人の神岡で御座います。』
カチャッ……
使用人らしき人物が流暢な日本語で応対している。
支『申し訳ございません、至急退避を……』
使『ハイ、ワカリマシタ。ヒミツノヘヤデスカ?』
支『はい、安全が確認されましたらお戻り下さい』
帝国ホテルには緊急脱出の為の隠し通路がある。地下深くに核シェルターを備え秘密の部屋と呼ばれている。
非常階段にある従業員専用の扉を開けるとロイヤル専用のエレベーターがある、ロイヤルのカードキーでしか動かない。
支配人が出向き退避をと告げたら客人は何も聞かず退避する。
余程の事だと察するからだ
(ファッザ様……アラブの王子か……)
使用人5人が直ぐに王子を囲みながら出て来た。
ホワイトライオンの子供を2頭連れて……
なんでもありの俺でも驚く…
非常階段に御一行様が入られたのを確認して物陰から真希さんと俺は飛び出し部屋を捜索した。
花のスマホのコールは聞こえない……
ここじゃない……
『次へ……』
支『はい。では、お隣へ……』
通路を進んでまた物陰に隠れた俺達のは支配人の声に耳を澄ませる
ロイヤル1001号室。
トントン……
支『失礼致します。跡部様……支配人の神岡で御座います。』
シーンと静まり返った廊下
応答が無い…
真『跡部……はぁ……景吾ね、そう言えば景吾も姿が……全く!!!』
真希さんは躊躇いなくドアを拳で叩いた。
真『景吾っ!!!いるんでしょ!開けなさい!!!開けないと蹴破るわよ!景吾っ!!!』
跡『……ちっ……うるせぇな…体くらい拭かせろよ真希……』
ローブを羽織って髪から滴る雫を柔らかなタオルで拭きながら、不機嫌にドアを開けたのは、跡部景吾その人だった。
真『あんた、私の連れを連れ込んだわね!手を出すなって言ったでしょ!!!……っあんた、まさか!食ったの!!!』
跡『あーん?』
真『どきなさいっ!花っ!』
真希さんは跡部を押し退けて部屋に入って行った。
直ぐに真希さんは部屋から出て来た。
真『永四郎、居たわ。落ち着いて。支配人、ありがとう、皆に見つかったって伝えて、さっきの王子にも1番高いワインを……』
俺は物陰から真希さんの元へ、跡部は俺を見ると驚いた様に目を見開いた……
跡『なんだ……お前の女か……チッ……いい女だと思ったんだけどな…』
残念そうに俺の肩を叩いて、耳元で囁く
いやらしい低い声で……
跡『何もしてねーよ。』
ポンポンと肩を叩かれて足を進めた。
1番奥にある大きな天蓋付きのベッドには、スヤスヤ眠る花の姿があった。
木『花……』
何の乱れもない姿に震える手で頬を撫でる、また君を失ったかと…
無意識に視界が歪み寄せた顔に落ちて行く雫が花を濡らす。
瞬きをしたら目の前から消えてしまいそうで怖い、花の事になると俺はどうしようもなく弱くなる……
真『景吾……説明して。』
跡『あ〜ん?薬でも盛られたんだろ、隣のライオン王子が仕切りに口説いてたぞ、ホワイトの可愛いライオンが部屋にいるから見に来いって。妃の1人に連れ帰りたかったんじゃねーの? シャワー浴びようと部屋に戻る時に非常階段から使用人が抱えて出て来たから部屋に入る前に俺が俺の女だって保護したって訳。なびかなかったから眠らせて自家用ジェットでお持ち帰るつもりだったんだろうな。』
真『そう……ありがとう景吾……』
跡『もう少しで食っちまう所だったけどな……フッ……眠ってるのを抱いてもつまんねーからな。』
真『景吾に理性があって良かったわ』
跡『もう少し危機感教えねーと、次は見つからないぞ…木手……』
木『……はい……』
跡『いい女になったじゃねーの?あの時の子だろ』
木『えぇ……』
跡『ちゃんと…守ってやれよ』
木『はい……ありがとうございました
。このご恩は決して忘れません……』
跡『あぁ……忘れんなよ(笑)目が覚めるまで寝かせといてもいいぞ、俺は髪を乾かしたら出る』
真『景吾、ありがとう』
跡『真希、礼は高くつくぞ』
真『分かってる』
トントン……
真希さんがドアを開けると、心配そうな甲斐君と壇君が立っていた。
真『2人ともありがとう、もう大丈夫よ』
甲『花、怪我はないのか?』
真『大丈夫、眠ってるだけよ』
壇『僕も傍に居れば良かったです。』
真『次からは太一も護衛に居てね、今回は私の落ち度よ。ごめんなさい。』
壇『真希さん、コレ……トイレのゴミ箱に捨ててあったです……』
真『はぁ……花さんのバック……酷いやり方ね……太一は林に連絡しておいて』
壇『はい』
真『永四郎……どうする?』
木『連れて帰ります……』
真『手配するわ』
真希さんは支配人を呼び、隣の出入りが無い事を確認して、従業員の清掃専用通路を使い誰の目にも触れさせず俺達を車に乗せた。
真『永四郎、本当にごめんなさい、私のせいよ。』
木『いえ、対策を考えます 』
甲斐君の運転する車で家に戻った。
壇君は先に会社に戻した
甲『木手、何か用意する物ないか?』
木『大丈夫です。ありがとう、一緒に来てくれて心強かったですよ甲斐君。』
甲『お、おう……なんかあったらすぐ言え、すぐ来るからよぉ……』
木『えぇ……』
そっと花をベッドへ寝かせ髪を撫でる。
木『花……まるで眠れる森の美女ですね……それとも白雪姫……そろそろ起きてくれないと、明日………一緒に……沖縄にいけませんよ…………ね?……花……俺のお姫様……』
そっと触れるだけのKissをキミに……
どうか目を覚まして俺の名を呼んで下さい
いつもの優しい笑顔で好きだと囁いて……