比嘉 長編 初恋の人 (木手永四郎)
君の名は?
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
木手side……
朝、目が覚めると隣に花がいない。 静まり返った室内、心臓がグッと苦しくなる感覚…… まだ慣れないんだ。
俺の勝手な願望が再会する悪戯な夢を見せていたんじゃないかと怖くなる
手元でカーテンの開閉スイッチに触れると、朝日に部屋が照らされ隣の枕が花の痕跡を残していてほっと胸を撫で下ろす。
良かった……今日も夢じゃなかった……。
『おはよう……花……』
「おはよー!珈琲?」
『はい、珈琲をお願いします』
「パンと目玉焼き?スクランブルエッグ?ベーコン?ウィンナー?」
『ベーグルにクリームチーズを、オムレツにベーコンで……って、花……朝から作らなくても……下に頼みなさいよ……』
「えー朝ぐらいさー」
『君、今日も真希さんとランチでしょ?1日忙しいのに……』
「そうだけど……」
『花、下のシェフ達も朝ご飯作る気でいるし、お給料も払ってるんです。だから、ね?朝食ビュッフェの中から選んで持って来てもらいましょ。9時には迎えが来ますよ、その前にメイクして、髪もセットしないと……俺より時間がないのは君でしょうが!』
テーブルの上の端末で下のレストランの朝食をいくつか選ぶ。
『君は?ご飯?クロワッサン?』
「クロワッサン」
『ベーコン?』
「うん、それとオムレツ」
『後は、グリーンスムージー?』
「うん」
『はい、頼みました、今のうちに身支度しましょうね……』
「うん」
いそいそと自室のバスルームに向かう花を見送って、自分もシャワー室へ向かった。
俺達のいつもの朝、花はかなりの頻度で真希さんに呼び出されその度に沢山の事を覚えてくる。
見違える様に、ナイフやフォークも上手くなった。 化粧の仕方も服の着こなしも歩き方も、花が花でなくなる様で少し寂しい。
きっと花も俺を見て同じ事を感じた事があるんじゃないかと思う。
朝スッピンで俺の朝食を作ろうとする姿を見るとほっとする、俺が起きるまでは化粧をしないで欲しいってお願いを守ってくれて嬉しい。
勿論綺麗な花も好きだけど、あどけない所もたまらない……
俺の帰りを待ちくたびれてソファーで寝てしまってたり、たまに面倒でゴミを遠くからポーンと投げてしまう無邪気さも
たまらなく愛おしい。
どんなにいい服を着て着飾っていても、どんなに優雅な暮らしをしても、2人で居る時は楽でいて欲しいし、俺もそうでありたい。
窮屈になって欲しくないんです。
ローブを纏い今日の予定に目を通しながらキッチンで珈琲メーカーのスイッチを押した。
注がれたカップを片手に、ソファーに沈む、明日はやっと沖縄に飛び立つ。
林君のお陰で2週間はゆっくり出来そうだ
、まぁ、夜出来る事はホテルでやるとしても、結婚式場やその他諸々を決めて花とゆっくり沖縄観光でも出来たらいいなと…… 何事もトラブルがなければいいのですがね……
ピンポーン
木『来ましたね……』
ローブのまま玄関を開けると頼んだ朝食がサービスワゴンに乗せられて届いていた。
リビングに戻り朝食をテーブルに並べると慌てた花が自室から出て来た。
「ごめん、取りに行かせちゃった…」
『構いません、さ、温かいうちに食べましょうね』
「永四郎、ありがと。いただきます」
『いただきます。』
慌ただしくも幸せな朝、寝起きに薬を飲み込んでいたのが嘘の様だ。
『花、荷造りは出来ましたか?』
「うん、ばっちり!永四郎は?」
『いつものスーツケースにまとめてあるはずです。』
「私がやるのに……」
『いつでも出られる様にいつでも万全にしてあるだけです。』
「そっか、今からドバイとか良くあるもんね……」
『えぇ、日常の物からチョイスして詰めるより専用のパックがあればスムーズですからね、花もそうしなさいよ。それから、あれもこれも全て持っていく事もありません、全てはカードが解決してくれます。手ぶらでも何の問題もない。』
「荷造りも旅の楽しみでしょ〜!!」
『ふっ……そうですか、まぁ、好きにしなさいよ』
「今日は遅くなる?」
『いえ、程々で帰ります。』
「夜ご飯は?何がいい?」
『何かリクエストは?』
「うーん、明日から沖縄だからな〜」
『また夜に下に頼みますか?まだ時間もハッキリしませんし、』
「うん。帰る時連絡してね」
『分かりました。』
ずっとこんな毎日が続くと祈りたい