比嘉 長編 初恋の人 (木手永四郎)
君の名は?
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花side……
ドレス選びの日を迎えてうきうきしながら永四郎の待つ会社へ向かったが、私の前に立ちはだかったのは、180cmのゴージャスな女性だった。
冷たい視線で全身を舐め回されると、溜息を吐かれ、あっという間に連れ出された。
真『全く、もっと早く会わせてくれたら良かったのにっ!!! 裕次郎!!!急いで私のサロンよ!』
甲『はいぃ〜!』
真『いい、あんた、これからは全て永四郎の隣に立つ人間として恥ずかしくない様にならなきゃダメ!!! 永四郎が愛してくれるからなんて言い訳通用しないの!!!分かった?』
「はい。」
真『永四郎の為に頑張れるわね?』
「永四郎の為……頑張ります!!!」
真『家にある靴、服、アクセサリー、鞄、化粧品、下着も全て今後使わないから、思い入れのある物以外は処分よ。
』
「はい。」
真『こう言うのは一気に入れ替える方がいいの、チマチマやっても仕方ないからね、怖がらずに飛び込みなさい!! 』
「はい!」
真『自信無さげな目をしてはダメよ、姿勢は伸ばす、お腹に力を入れて』
「はいぃ!!!」
真『大丈夫よ、私が世界一いい女に仕立ててあげるから。』
真希さんは、キツいけど、怖いけど、優しい人。 決して敵では無いと思った。
背中をスっと支えて、大丈夫よって、頼りない私に勇気を与えてくれる。
優しく大きな雰囲気、強い眼差し、うっとり見つめてしまう程美しい……
心の中で真希様と崇拝する事にした。
真希さんのサロンに着くと、数人の女性スタッフが慌ただしく準備をしてくれていた。
真『髪はカットとトリートメントでいいわ、ネイルとデコルテ、フットまで同時進行でお願い。時間が無いから宜しくね。花さん、ドレスは決めてるの?』
「はい、L'ATELIER MARIAGEのこれを」
真『オーダーでもいいのに、まぁ、いいでしょ、皆これに合わせて頂戴!』
staff『はい!』
私のスマホの画像を皆で確認すると、私は試着室?で全裸に剥かれバスローブ1枚になった。
座り心地のいい椅子に案内され数人のスタッフが同時進行に動き出した。
真『可愛い感じと、綺麗なのとどっちが好みなの?』
「えっと、何方が似合うでしょうか……」
真『まぁ、どちらかと言うと可愛い系かしらね』
「じゃぁ、可愛い系で、」
真『ヒールは履けるの?』
「4cmぐらいなら……」
真『要訓練ね…』
「はいぃ…」
真『今日はドレスに合わせるけど、今後は日常全てに対応する様にスケジュール組むから、最初にあなたの予定を教えて頂戴。』
「1週間後に沖縄に式場を選びに行きます、滞在は1週間です。」
真『式の日程は?』
「半年後位に親族や友達だけでの予定です。」
真『半年ね、何とかするわ、お料理は出来る?』
「あまり……」
真『ナイフとフォークは使えるわよね?』
「……えっと……使えるとは……」
真『察した。大丈夫、変な癖が無い方が習得は早い。車の免許は?』
「ありません」
真『ま、この辺は後からでもいいわね、車の免許だけは取っておきなさい。小さい車でもいいから永四郎に買ってもらうの!これから先、子供が産まれたりするでしょ?専属の運転手やタクシー救急車を待ってられない時もあるの、それにね、1人でドライブしたい夜もあると思うわ!1人の時間も大切よ!』
「はい。」
真『永四郎の都合ばかり気にして生きてたら自分を見失うわよ。趣味を持って、自分軸をしっかりね、』
『はい!』
きっと私が考えているより、永四郎はすごい世界で生きて来た。
その隣に立つと言う事は好きなだけではダメなんだと思う。
しっかりしなきゃ……
真『大丈夫よ、根性ありそうだもの!自信は行動すれば伴うものよ!』
真希さんはそう言って優しく微笑んでくれた。
その後は、何人もの人が店へやって来て下着、服、靴、鞄、アクセサリー、化粧品、真希さんにどっちが好き?と見せられて選んだ
分からなそうな物は真希さんが、こっちがオススメよと合わせてくれた。
14時を回る頃には全てが整った
鏡に映る自分は今まで見た事も無い様な私。
真『綺麗よ、さ、永四郎が待ってるわ』
「はい!」
真『姿勢は正しく、麗しいハリウッド女優の様に、目線は遠くに!』
「はい!」
スタッフの皆さんにお礼を言って車に乗り込んだ。
甲『えーい、見違えたやっしー!花!!!』
真『裕次郎!外で花なんて呼び捨てにしちゃダメよ!』
甲『わかったさー』
真『裕次郎、あなたも早くその方言何とかしないとね、出世したければ!』
甲『お、俺は……出世はいいや、永四郎の運転手しながら、あいつの傍にいてやりたいさ〜』
真『そう、ならいいけど。あみちゃんはいいのかしら〜』
甲『……真希さん……』
真『あみちゃん、人気よ〜!あの子ぽわっとしてるけど、仕事は出来るからね』
甲『くぅ……』
真『秘書にしとくのは勿体ないくらいよ、どっかの愚息に目を付けたら取られちゃうわよ!あの子割といい所のお嬢さんだものね』
甲『そ、そうなのか!』
真『そうよ、知らなかったの?』
甲『知らなかったさ……』
真『相手の好意に甘えて自分はありのままでいいなんて、努力をサボってはダメよ!』
耳が痛い……
心にグサッと来る〜
甲斐君が買って来てくれたサンドイッチが喉に詰まりそうになりながら15時前に店に到着した。
永四郎は別の車で既に到着していた。
木『花……見違えました……良く似合っています。』
「本当?真希さんが全部」
木『真希さん、ありがとうございました、俺が気が利かないばかりに……』
真『永四郎、まだまだこれからよ、この子は私に任せて頂戴、それと、専属の運転手を付けて。裕次郎1人では無理よ。』
木『はい。』
真『スケジュール管理も出来る子がいいわ。』
木『はい。』
真『あ、太一がいいわ』
木『壇太一ですか?』
真『そう、あれくらいフレンドリーな子が傍に居た方が花さんもいいでしょ』
木『はい。』
真『郵便係にしとくには太一は勿体ないわよ。』
「壇太一……確か……ちっちゃい山吹の……」
甲『あにひゃーでかくなりやがってよ、180はあるんじゃね?』
「え!そうなの?」
甲『うん、しばらく亜久津のトレーナーしてたらしいんだけどさ、海外ででかい事故に巻き込まれたとかで、亜久津が日本に返したんだと。』
「そうなんだ……」
甲『今は元気に会社中走り回ってるけどな(笑)』
真『物腰も柔らかで、ズバッと言う客観性もあるし、運転は直ぐに慣れるでしょ、』
木『はい。』
真『さ、じゃぁ、早くドレスを見せて!ほら、着替えてらっしゃい!』
「はい!」
一目惚れしたL'ATELIER MARIAGEに身を包む、張り感のあるメシュオーガンジーがたっぷりふんわり、身頃のタックからスカートのタックへ伸びた曲線、シンプルなボリュームのシルエット、胸元にはフランス製の繊細なリバーレース、永四郎は気に入ってくれるかな……
似合ってるかな……
ゆっくりとカーテンが開いていく
木『………………綺麗です、とても……』
甲『馬子にも衣装やっし〜』
真『裕次郎、黙る』
甲『はい。』
木『ホントに……似合ってます……花……』
「良かった……」
木『もっと早く……キミに……』
「永四郎、」
木『…………他に着てみたいドレスは?』
「ううん、これがいい」
木『えぇ、そうですね。』
真『永四郎も決めなきゃね。白のタキシードでいいんじゃない?』
永四郎が着替える間、真希さんは沢山写真を撮ってくれた、両親に送りなさいって。
ティアラやブーケ、イヤリングにネックレス、靴も真希さんと一緒に選んだ。
そうしてるうちにカーテンが開いた。
「……永四郎似合ってる、カッコイイ!!!」
木『なんだか……照れますね……』
真『ほら、並んで、写真撮っておかないと!』
真希さんに急かされて並んでみる。
一気に現実味を帯びて来た、結婚式か……永四郎と結婚出来るんだ……本当に……
そう思うと夢心地から急に現実味が押し寄せた。
込み上げる何とも言えない不安なのか嬉しさなのか分からない感情に堪らなくなった。
木『花っ……どうしたんです?』
「……っ……分かんない。なんか、急に……」
木『泣かないで、大丈夫ですから、ずっと俺と一緒に生きていくんです。ね?』
「うん。なんか、信じられなくて、永四郎と結婚……するの……。」
木『俺もです。まだ夢みたいですよ』
「うん。」
木『何も心配いりません。』
「うん……」
止まらない涙をどうする事も出来ずにソファーに座った、渡されたティッシュに涙を吸わせて、深呼吸した。
隣に座った真希さんは目を潤ませながら慰めてくれる。
真『マリッジブルーかしら、羨ましいわね……ちょっと人生急展開だもの、不安になるのも仕方ないわ。』
「うぅ……っ……真希さんっ……」
真『大丈夫よ、永四郎も私も、ついでに裕次郎もいるでしょ?皆あなたの味方だからね』
「はいぃ……っ……頼りにしてます。」
甲『俺はついでかよ……ま、花大丈夫やっし!なんくるないさー!』
「うん。」
木『ドレスも決まったし、今夜は花の好きな物を食べに行きましょう。皆で……』
真『あら、2人で行きなさいよ、お邪魔する程野暮じゃないわ!』
「真希さんも、皆で行きましょ…」
真『ダメよ、2人の時間も大切!私とはこれから先、嫌になる程、沢山ランチに行くわ、訓練も兼ねて♡それに今夜も同伴なの!吟の真希は忙しいのよ!』
「今日はホントにありがとうございました。」
真『困った時は何時でも連絡しなさいね』
「はい」
木『真希さん、本当に……』
真『いいの、お節介したいだけよ、あら、もう行かないと!迎えが来たわ!』
そう言うと真希は颯爽と出て迎えの車に消えた。
甲『相変わらずすげー人さー』
木『ですね……』
「うん。」
木『さて、では俺達も出ましょうかね』
衣装を脱いで店を後にした。
木『花、何を食べましょうかね』
「うーん、タコライス食べたい。ゴーヤーチャンプルーも!」
木『いいですね、』
甲『うげぇーゴーヤーかよ……』
木『予約しましょうね……えっと、ゆんたく……ゆんたく……あった。はいさい、木手やいびん、今から4人で。えぇ、はい。』
「永四郎の方言久しぶりに聞いた……」
木『……あ、そうですね……知り合いですからつい。』
「4人?って言ったけど、」
木『甲斐君、会社に戻って壇太一を連れて来て下さい。』
甲『へーい。分かったさ〜。』
木『林君も連れて来たいの?』
甲『……そりゃーまぁ……永四郎と花見てると羨ましくなるさー』
木『連れて来なさいよ、店に行ってからもう1人増えると言えばいいでしょ』
甲『永四郎ぉー!持つべきものは友さ〜!』
店の前で私と永四郎を降ろした甲斐君は上機嫌で会社に戻って行った。